議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

決算の議決

2015-06-29 | 国会雑学
先月、「決算の審査」として紹介しましたが、日本国憲法第90条に基づき、毎会計年度の決算は国会に提出され、衆参それぞれで審議が行われます。

本日、参議院決算委員会では、平成25年度決算の委員会採決が行われました。

参議院の決算審議は、本会議にて昭和20年度から内閣に対して警告を含む議決を行っています。また、昭和40年度からは決算全体に対する議決と警告決議を区分けして議決しています。

明後日、7月1日に予定される参議院本会議で、警告決議の回数は58回、昭和40年度からは38回になります。

というわけで、今日の審議から、参議院は「起き」あがりました。

表現の自由

2015-06-27 | 憲法
○日本国憲法第21条

集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。


ここ数日、大きなニュースになっている問題があります。今のところ、このブログでは、個別の政策の是非には触れない、との立場にありますので、6月26日(金)の各朝刊該当記事だけ書き留めておきたいと思います。

あんまりにもあんまりなニュースなので、色々と書きたいことはあるんですけどね。

まず、各紙の見出しのみ、次に全文を紹介します。

・首相支持の若手勉強会-初会合に約40人-
・首相支持若手が勉強会-自民「ハト派」は急きょ中止に-
・報道広告主を通じて規制を-政権批判をめぐり自民勉強会で意見-
・議員「マスコミ懲らしめるためには広告収入をなくせ」-自民若手が勉強会-
・H氏「沖縄の2紙つぶさないといけない」-自民勉強会、報道批判続出-

[日本経済新聞]首相支持の若手勉強会-初会合に約40人-

首相に近い自民党の若手議員がつくる「文化芸術懇話会」が25日、党本部で初会合を開いた。首相の出身派閥であるH派や、A派、N派などから約40人が出席。作家のH氏が講演し、憲法改正の必要性を訴えた。

官房副長官、党総裁特別補佐も参加。出席者からは「安全保障関連法案をどうわかりやすく説明したらいいか」との質問や「(安保関連法案を違憲とする)憲法学者や元内閣法制局長官に全く権威はない」との声が出た。

懇話会は9月に予定される総裁選で首相再選の流れをつくる狙いがあるとみられる。会の代表は会合後、記者団に「政局のための会合ではない」と強調する一方、総裁選は無投票が望ましいとの認識を示した。月1回のペースで会合を開き、外部から講師を呼んで話を聞く予定だ。

[読売新聞]首相支持若手が勉強会-自民「ハト派」は急きょ中止に-

自民党の保守系の中堅・若手国会議員らによる勉強会「文化芸術懇話会」が25日、党本部で初会合を開いた。9月の総裁選を前に、首相の進める安全保障政策や憲法改正論について学ぶ、首相支持の機運を高める狙いもある。

会合には、首相に近い官房副長官や党総裁特別補佐も含め、37人が出席。作家のH氏が、憲法改正や安全保障法制整備の必要性などに関して講演した。今後、首相と考え方の近い文化人や芸術家などを講師に、勉強会を月1回程度開く予定だ。

同会は設立目的に、「真の政治家」になるための教養を学ぶことを掲げる。党内では若手による「首相応援団」と見る向きが多い。会代表は会合後、記者団に「政局のための会ではないが、結果として首相を応援することになる」と語った。

一方、党内で「ハト派勉強会」と呼ばれる「過去を学び分厚い保守政治を目指す若手議員の会」は、25日の勉強会を急きょ中止にするなど、意気消沈気味だ。

関係者によると、予定していた講師が安全保障関連法案に批判的な立場だったため、「党内に安保法案への反対論があるとの誤解を招き、法案審議に影響するおそれがある」と判断したという。

この会は先月発足したが、党内で「首相へのけん制狙いか」との声が出て以降、同会メンバーは「総裁選は関係ない」と火消しに追われてきた。

総裁選は9月8日告示、20日投開票の日程が有力だが、表立った対抗馬擁立の動きはない。今国会の会期が9月27日まで大幅延長されたこともあり、無投票ムードが一段と高まっている。

[朝日新聞]報道広告主を通じて規制を-政権批判をめぐり自民勉強会で意見-

現政権と考え方が近い文化人を通し、発信力の強化を目指そうと首相に近い若手議員が立ち上げた勉強会「文化芸術懇話会」の初会合が25日、自民党本部であった。出席議員からは、広告を出す企業やスポンサーに働きかけて、メディア規制をすべきだとの声が上がった。

出席者によると、議員からは「マスコミを懲らしめるためには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」など、政権に批判的な報道を規制するべきだという意見が出た。

初会合には37人が参加した。官邸からは官房副長官が出席し、講師役に首相と親しい作家のH氏が招かれた。

[毎日新聞]議員「マスコミ懲らしめるためには広告収入をなくせ」-自民若手が勉強会-

首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合を党本部で開いた。安全保障関連法案に対する国民の理解が広がらない現状を踏まえ、報道機関を批判する意見が噴出した。

講師として招いた作家のH氏に助言を求める場面も目立った。出席者によると、H氏は集団的自衛権行使容認に賛成の立場を表明した上で、政府の対応について「国民に対するアピールが下手だ。気持ちにいかに訴えるかが大事だ」と指摘した。

出席議員からは、安保法案を批判する報道に関し「マスコミを懲らしめるためには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けて欲しい」との声が上がった。

沖縄県の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対し、H氏は「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張した。

懇話会は青年局長が代表で、首相側近の官房副長官や党総裁特別補佐も参加した。出席者の発言について、自民党中堅は「自分たちの言動が国民からどのような目で見られるか理解していない。安保法案の審議にマイナスだ」と指摘。公明党幹部は「気に入らない報道を圧力でつぶそうとするのは情けない」と苦言を呈した。

[東京新聞]H氏「沖縄の2紙つぶさないといけない」-自民勉強会、報道批判続出-

首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合を党本部で開いた。安全保障関連法案に対する国民の理解が広がらない現状を踏まえ、報道機関を批判する意見が噴出した。

講師として招いた作家のH氏に助言を求める場面も目立った。出席者によると、H氏は集団的自衛権の行使容認に賛成の立場を表明し、政府対応を「国民に対するアピールが下手だ。気持ちにいかに訴えるかが大事だ」と指摘した。

沖縄県の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対し、H氏は「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張した。

出席議員からは、安保法案を批判する報道に関し「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けて欲しい」との声が上がった。

H氏は2月末までNHK経営委員会委員だった。懇話会は青年局長が代表で、首相側近の官房副長官や党総裁特別補佐も参加した。

国会の寝起き

2015-06-26 | 国会雑学
先日、「議案の付託-その3」で、「吊るしをおろす」とか「吊るされたまま」といった用語の説明をした際に、与党理事の打合せを「与理懇(よりこん)」といったり、野党理事の打合せを「野理懇(やりこん)」といったりする国会用語があることに触れました。

他にも、官僚が書いた文章をそのまま閣僚等が読み上げる議案の趣旨説明のことを「お経読み」というなど、国会内でしか通用しない用語はたくさんあるのですが、今回は、延長国会の動きに関連する、国会の寝起きについて紹介したいと思います。

昨日より通常国会最大の95日間の延長国会に突入していますが、これを決める際、野党は反発しました。そして、国会は少しの間に留まりましたが、すべての審議が止まりました。つまり、国会が「寝て」しまったのです。

延長の申入れから衆議院本会議の延長議決までが行われたのは、6月22日(月)の夕刻から夜にかけてです。

6月23日(火)は、参議院常任委員会の定例日でもあり、本来の会期末である6月24日(水)を睨んで、多くの委員会がセットされていましたが、与党の一方的な大幅延長議決により、野党は反発し、これらの委員会は開会されるに至りませんでした。

6月24日(水)も同様、衆参ともにどの委員会も本会議も開会されませんでした。これを国会では、国会が「寝る」といいます。

本会議や委員会が開かれていても、「眠っている」議員の存在は否定できませんので、国会内で初めて「国会が寝る」と聞いたときは、???と思ったものです。
            
            [写真と今回の内容説明は、関係ありません]
国会が「寝る」=不正常ですから、これに対するのは、「起きる」になります。

今回、国会が「寝た」のは2日間だけで、これは与野党国対委員長会談で解消され、昨日から「起き」上がりました。

昨日、6月25日(木)の衆議院農林水産委員会から国会は「起き」はじめ、参議院は6月29日(月)の決算委員会から「起きる」見込みです。

どうでもいいですが、国会で初めて「国対」と聞いたときは、「国体」としか思い浮かばなかったですねえ。

数は力、数の力

2015-06-25 | 国会雑学
通常国会として、最大の延長国会が、今日、6月25日からスタートします。

国会法第10条に定める会期150日の半分を優に超える95日間の大幅延長が、果たしてどうだったのか、いずれ歴史が証明してくれるのではないかと考えています。

さて、その延長を決めたのも、そして、様々議論を呼ぶ法案がどんな形であれ、採決されていくのも、最後は数の力です。表現は難しいのですが、最終的に、議員数が力なのです。

国会は、議員数によって多くの事項が決定します。

少しだけ具体的事項を挙げてみます。

○衆100人以上、参50人以上

→憲法改正原案の発議者の賛成者(国会法第68条の2)、憲法改正原案の修正動議の賛成者(国会法第68条の4)

○衆50人以上、参20人以上

→予算を伴う法律案の発議の賛成者(国会法第56条)、質疑や討論終局動議の賛成者等

○参・所属議員15人以上→常任委員長の割り当て

○衆20人以上、参10人以上→議案発議や修正動議の賛成者等(国会法第56条)


他には、先日のブログで触れましたが、議会における「過半数」、「絶対安定多数」、「3分の2」の意味は、下記のとおりです。
          
「過半数」:法律が可決できる数
「絶対安定多数」:全ての常任委員長ポストと常任委員の過半数を占めることのできる数
「3分の2」:参議院で否決、もしくはみなし否決された議案を衆議院で再可決することができ、憲法改正発議ができる数

衆議院の定数は475で、現在、欠員1ですが、定数に占める3分の2は、317議席。現在与党は、325議席ですから、ひらたく言えば、何でも出来てしまう数を持っているのです。

企業の場合、競合他社が存在した方が、競争原理が働き、お客様に対してより良いサービスや商品を安価に提供しようと努力します。

議会を同じように例えることはできませんが、ある程度のバランスは、やっぱり必要なのではないでしょうか。ただ、今の議会構成は、選挙の結果、でもあるんですよね。

国会の延長-その4

2015-06-24 | 憲法
○日本国憲法第59条4項

参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。


第189回国会は、会期を95日間延長し、9月27日までとすることが衆議院本会議で議決され、明日から延長国会です。

これにより、常会における戦後最大の延長幅となりましたが、なぜ、これだけの延長幅を政府・与党が提案したのでしょうか。

昨日の新聞やニュース等で、随分「60日ルール」について報じられましたので、ご存知の方も多いと思いますが、今回は「国会の延長-その○」シリーズなので、書いておきたいと思います。

大幅延長最大の理由は、今後の我が国の在り方を大きく転換することになるであろう束ね法案の成立を期すためであると考えられます。

日本国憲法第59条4項の規定により、参議院に送付され、60日間を経過した法案は、衆議院において、参議院が否決したとみなす、いわゆる「みなし否決」ができることとなっています。

つまり、今後、上記の束ね法案がどのような形であれ、衆議院で採決されるとします。衆議院で採決されれば、当該法案は参議院に送付されます。

ひたらく表現すれば、7月27日までのいずれかの段階で、衆議院本会議で当該法案を採決しさえすれば、参議院での審議を通じて、問題点や論点が明らかになるなどして、仮に審議が滞る結果になったとしても、60日が経てば、衆議院で与党3分の2超の議席を使って再議決すればよいことを意味します。

野党勢力が衆議院に比して大きい参議院が充実審議を求め続け、採決を拒み続けることが仮にできたとしても、日本国憲法第59条4項の規定により、衆議院で採決されてから60日間が経過した時点で、衆議院は参議院が当該法案を否決したものとみなし、再可決することが可能となります。

よって、今回の会期延長幅は、いわゆる「みなし否決」までもを見据えた形で決めた側面があることは否定できないといえるでしょう。立法府に身を置く議会人のひとりとしては、色んな意味で辛いですね。

ちなみに、「みなし否決」は砂防法の審議等で国会が大混乱した、昭和27年・第13回常会での1法案と2法案一括、平成20年・第169回常会「ガソリン国会」の税制関連の国税2法案・地方税3法案、平成25年・第183回常会での衆議院小選挙区改正の公職選挙法以外にはありません。

国会の延長-その3

2015-06-23 | 国会雑学
6月22日夕刻、政府・与党は衆参両院議長に対し、9月27日までの95日間にも及ぶ会期の大幅延長の申入れを行い、同日夜の衆議院本会議で議決されました。

国会法が、昭和32年・第28回国会で改正されるまで、何度でも会期の延長をすることができましたが、同法改正により、常会は1回、臨時会と特別会は2回までとなりました。

今回の延長により、今国会である第189回国会の会期は、245日間にも及ぶことになります。

国会法第10条で定める常会の会期が150日間であることを考えると、いかに大幅な延長であるかが見てとれます。

これまで、「国会の延長-その1」ではこれまで延長幅が大きかった国会を、「国会の延長-その2」では実際の延長手続きを紹介しましたが、まさかこれだけ大幅延長になるとは・・・。

そこで、国会の種類や国会召集時期を問わず、過去にどのような例があったのかを見てみます。

[国会延長幅が大きかった国会]
(歴代、常会・特別会等の区別問わず)

歴代最大:昭和47年 第71回特別会  280日間
2番目: 平成27年 第189回国会  245日間(常会では歴代最大)
3番目: 昭和56年 第96回国会   244日間


次回は、なぜ、政府・与党がここまでの大幅延長としたのか、について日本国憲法第59条の規定から考えてみたいと思います。

国会の延長-その2

2015-06-22 | 国会ルール
○国会法第13条

前2条の場合において、両議院の議決が一致しないとき、又は参議院が議決しないときは、衆議院の議決したところによる。

今国会の会期が、大幅延長であることが現実のものとなりましたので、「国会の延長-その1」に続き、今回は、国会が会期延長をする際の手続きについて紹介します。

まず、官邸と与党が相談して、会期幅を決めます。

1.与党から両院の議長に会期延長の申入れがなされます。(通常は与党幹事長名で会期延長の申入れ)

2.両院の議長は、会期延長について議院運営委員会理事会での協議を命じます。

3.衆参で議院運営委員会理事会が開かれ、会期延長について申入れがあったことが報告されます。

4.衆議院議長が常任委員長会議を開会して、常任委員長より会期延長についての意見を聞きます。

5.衆議院で議院運営委員会が開会、常任委員長会議の結果が報告された後、延長協議は、衆議院から参議院へ移ります。

6.参議院議長は、衆議院議長からの協議を受けて会期延長について議院運営委員会理事会での協議を命じます。

7.参議院で議院運営委員会理事会(2回目)が開かれます。

8.参議院議長が、常任委員長懇談会を開会して、常任委員長等より会期延長についての意見を聞きます。

9.参議院で議院運営委員会理事会(3回目)が開会、常任委員長懇談会の結果が報告された後、結果について、参議院から衆議院に報告されます。

10.衆議院本会議で会期延長の賛否について議決が行われます。

会期延長は、国会法第13条の規定により、衆議院の優越が存在します。

よって、参議院では、会期延長について原則、本会議を開会していません。
参議院本会議で、議題を「会期延長の件」として、会期延長を議決したのは、平成10年10月7日の第143回臨時国会以来ありません。

○国会法第10条

常会の会期は、150日間とする。(以下略)

常会の会期、150日間の6割を超える95日間もの会期延長ってどうなのさ、と個人的には強く思います。

委員長の配分-その2

2015-06-21 | 雑感
いやはや、会期末が近いとはいえ、更新が滞ってしまい、反省です。

さて、今回は、間が少し空いてしまいましたが、「委員長の配分-その1」の続きです。

委員長の権限については、国会法と議院規則を、委員長の配分については、先例録を引用しながらそれぞれ紹介してきましたが、今回は、前回の最後に書いた、野党委員長が存在する意味について、思うところを少しだけ書いてみたいと思います。

まず、前回も紹介しましたが、衆参の常任委員長の所属政党の割合です。

衆議院の常任委員長は、17の常任委員会のうち、自民13、公明2、民主1、維新1
参議院の常任委員長は、17の常任委員会のうち、自民10、公明2、民主5


衆議院では、17ある常任委員会のうち、野党委員長は、民主1、維新1の2人に過ぎませんが、参議院では、同じく17ある常任委員会のうち、野党委員長は、民主で5人います。

参議院で維新出身の常任委員長がゼロなのは、前回のブログで紹介した、常任委員長の割り当て条件である会派所属議員15人以上、という要件を満たしていないためです。

では、次に、17ある常任委員会のうち、省庁に対置して設置されている11の常任委員会に絞って委員長の所属政党を見てみます。
              

衆議院では、すべて与党で占められていますが、参議院は、内閣・経産・国交が民主出身の委員長となっています。

そのうち、機会を見つけて議会における「過半数」、「絶対安定多数」、「3分の2」の意味を紹介したいと思っていますが、議会として、緊張感ある運営に繋がるのは、野党委員長が存在する方ではないかと考えています。

先日、衆議院厚生労働委員会で、開会や採決を巡って混乱があったことは、ご存知の方も多いと思います。

もし仮に、当該委員長が野党出身であれば、与野党筆頭理事間の協議がまとまらないため、開会はしないはずです。

もちろん、現在の衆議院の構成を見れば、与党が3分の2超の議席を持っていますから、上記の常任委員長ポストが与党で占められるのは数の力からすれば、当然です。

翻って、参議院においては、内閣・経産・国交の委員長ポストが民主に割り当てられています。

昨年の第187臨時国会において、内閣総理大臣が衆議院解散を表明した後、審議が続いていたどの常任委員会においても、次世代の党を除き、すべての野党が審議に出席しない状況となりました。

審議が続いていた常任委員会のうち、与党出身委員長の委員会は、与党と次世代の出席だけで審議を続けましたが、野党出身委員長の委員会は、与野党で合意が整わない以上、開会できない状態となりました。

国会運営全体を考えたとき、政府・与党がより慎重になるのは、省庁対置の常任委員会委員長のすべてが与党だけで占められている衆議院ではなく、野党委員長が存在する参議院であることに相違ありません。

何か問題が起こったとき、当該委員会のみの混乱で収束すれば、政府・与党から見れば問題が少ないのかもしれませんが、これが国会全体に及んだとき、野党出身委員長の委員会は開会できない状態になり、法案審議が滞ることに繋がるからです。

いずれにしても、最後は数の力なのですが、いくら数の力といっても、適度なバランスがあった方が、緊張感ある議会運営になるのではないかなぁ、と思う今日この頃です。

国会の延長-その1

2015-06-18 | 国会ルール
○国会法第12条

国会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。

会期の延長は、常会にあつては1回、特別会及び臨時会にあつては2回を超えてはならない。


来週、6月24日が会期末の第189回国会ですが、ニュース等を見ると、国会大幅延長へ、と報じられることが多くなっています。

会期末が近いので、個人的には何かとてんやわんやなのですが、国会延長報道が多いので、これにちなんで(?)会期延長幅が大きかった国会を紹介したいと思います。

実際の延長手続きはどうなっているのか、については、別途、具体的に紹介します。

国会法第12条の規定にあるとおり、常会は1回、特別会と臨時会は2回、国会の会期を延長することができます。常会は1回しか延長ができませんので、政府・与党としては、様々なことを勘案しながら延長幅を決めていくことになります。

今回は難しい話はさておいて、延長幅が大きかった3国会を紹介します。

[国会延長幅が大きかった国会]
(国会召集が1月になった平成4年・第123回常会以降)

最大 :平成24年 第180回国会 79日間 野田内閣 社会保障と税一体改革
2番目:平成23年 第177回国会 70日間 菅・野田内閣 東日本大震災
3番目:平成11年 第145回国会 57日間 小渕内閣 産業再生法


参考までに、これまでの常会で最大の延長は、昭和56年 第96回国会の94日間です。

さて、今国会は延長になるのでしょうか?延長になるのであれば、延長幅はどうなるのでしょうか?国会関係者であれば、色んな意味で気になるところです。

衆参のちょっとした違い(総理入り委員会質疑の風景)

2015-06-17 | 国会雑学
前回に続いて、国会役員である常任委員長の配分についての続きにしようかとも思いましたが、今回は、国会法にも議院規則にもない、衆参のちょっとした違いを紹介したいと思います。

6月16日(火)は、衆議院本会議の定例日でもあり、参議院の常任委員会の定例日でもあることから、多くの委員会等が開会されました。

さらにいえば、会期末(6月24日)を来週に控えていることから、質疑が終局した委員会で次々と採決が行われています。

先日のブログで、重要広範議案について説明した際、重要広範議案に指定された法案は、本会議の趣旨説明・質疑の際の総理入りはもちろん、委員会質疑の際にも内閣総理大臣に出席を求め、質疑を行うことが慣例になっていることを紹介しました。

そこで、本題です。

重要広範議案に指定されている法案で、総理入り質疑の委員会が直近で行われたのは、以下の2委員会です。

6月12日(金)衆議院厚生労働委員会:労働者派遣法等の一部を改正する法律案
6月16日(火)参議院経済産業委員会:電気事業法等の一部を改正する等の法律案

まず、以下の2枚をご覧ください。衆参両院のインターネット中継画面よりキャプチャしたものです。
               
                 6月12日 衆議院厚生労働委員会
               
                 6月16日 参議院経済産業委員会

総理入り質疑の際は、普段は委員会室内にはいない衛視(国会内の警備にあたる職員)が委員会室内に立つことになります。

次に、以下の2枚をご覧ください。
               
                 6月12日衆厚労委(左は総理の両足です)
               
                 6月16日参経産委(答弁しているのが総理です)

水色で囲んでいるのが、それぞれの衛視ですが、衆参で服装が異なることにお気づきでしょうか?

もちろん、今の時期はクールビズで国会内でも、委員会では上着を着用しなくとも良い時期となっており、衛視も同様です。

よって、衆議院の衛視は上着を着用していません。一方で、参議院は上着を着用するにとどまらず、両手には白手袋まで着用しているのです。

もちろん、総理入り委員会質疑の時だけですけどね。

参議院は、かつて貴族院でしたので、その名残でしょうか・・。
今回は、国会法や議院規則とは関係のない、衆参のちょっとした違いの紹介でした。

委員長の配分-その1

2015-06-16 | 国会ルール
○参議院委員会先例録13

委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持するとともに委員会を代表する

○参議院先例録77

常任委員長は、一定数以上の議員が所属する会派に、その所属議員数に比例して配分するのを例とする

全常任委員長を選挙するときには、議員定数を常任委員長数で除して得た数以上の議員が所属する会派に、その所属議員数に比例して常任委員長を配分するのを例とする。

前回、委員長の権限を一部紹介させていただきましたので、今回も委員長関連にしたいと思います。

前回のブログで、衆議院規則第66条に「委員長は委員会を代表する」旨の規定があり、参議院規則にはないことを紹介しました。

事実、参議院規則にはないのですが、参議院委員会先例録には、同様の記述(上記)があり、委員長は委員会を代表することを先例によって示しています。衆議院規則には明記されているものですし、個人的には、参議院規則に書くべき事項だと思うんですけどねぇ・・。

それはさておき、委員長の配分について、衆参のちょっとした違いを紹介したいと思います。

常任委員長の配分は、参議院は一定数以上の議員が所属する会派に、その所属議員数に比例して配分する例(上記)となっています。

一方、衆議院にはそのような先例はなく、必ずしも所属議員数に比例させることなく配分されています。

ただ、今の衆議院の委員長構成を見ると、それっぽい感じの配分になっています。

参議院先例は、議員定数を常任委員長数で除して得た数以上の議員が所属する会派、とあり、これに従い、参議院定数(242)を常任委員長数(17)で計算すると、14.2・・・となりますので、15人以上の会派に委員長ポストが割り当てられることとなります。

衆議院の常任委員長は、17の常任委員会のうち、自民13、公明2、民主1、維新1
参議院の常任委員長は、17の常任委員会のうち、自民10、公明2、民主5

           
           
衆参で、野党常任委員長の割合が大きく異なっています。気が向けば、次回、このことの意味を少し書いてみたいと思います。

委員長の権限

2015-06-15 | 国会ルール
○国会法第48条

委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持する。

○衆議院規則第66条

委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持し、委員会を代表する。


現在開会中の第189回国会の会期は、6月24日までです。(会期は150日間)

先週、6月12日(金)の衆議院は、厚生労働委員会を中心に普段とは違う光景が国会内で展開されることとなりました。

そういえば、改めていつか紹介します、と事前告知だけして、未だ紹介することのなかった国会ルールをそろそろ紹介したいと思います。

先鋭的な与野党対決法案の場合、委員長席の周りになぜ議員が集まるのか、ということです。

衆議院、参議院ともに、総務委員会や経産委員会等の常任委員会では各省庁に対応する所管の法案が審議されることになりますが、これらは各委員会の委員長が委員会を開会し、質疑を行い、そして質疑が終局した後、表決(採決)に付されます。

国会法では、委員長が委員会の議事を整理すると定め、衆議院規則では、委員長は委員会を代表する、と定めています。

ここで衆参のちょっとした違いを紹介すると、衆議院規則にある、委員長は委員会を代表するという内容は、参議院規則にはありません(が実質は一緒です)。

委員会を代表する委員長が、委員会の議事を整理するため、委員長が「これより○○委員会を開会いたします」と宣言しない限り、委員会が開会されることはありません。

また、委員長が「これにて質疑は終局したものと認めます」と宣言しない限り、その法案に対する質疑は終わったことになりません。

そんなこんなで、数の少ない野党は、委員長に開会させない、質疑を終局させない、という思いで、委員長席に詰め寄って、精一杯の抗議を行うのです。
                                           6月12日衆議院厚生労働委員会
ただ、どんなに抗議したとしても、最後は「数の力」です。与党と野党の議席差は、歴然としています。また、世論の支持、という側面から見ても難しい行動になります。せめて、法案に対する世論喚起に繋がればいいのですけどね・・。

議会雑感何とか5か月目に

2015-06-13 | ひとこと
やはり、というか何というか、更新が滞りがちになっています。

ただ、どうにかこうにか、本ブログは、先日、5か月目に入ることができました。
本当にありがとうございます。

さて、通常国会の会期末が近付いてきました。
会期末の6月24日が近付くにつれ、色々な動きが出てくることになると思います。

国会や議会のルールを最初から一つひとつ記していきたいとも考えているのですが、しばらくは国会の日々の動きを見ながら、これに関連する国会・議会のルールの紹介等をしたいと思っています。

立法府に身を置く議会人のひとりとして、思うこと、考えることが多くある今日この頃です・・。
            

議案の付託-その3

2015-06-10 | 国会雑学
現在、予算・補正予算を除くほとんど全ての議案について、発議、提出された時点で、いずれかの会派から議院の会議(本会議)での趣旨説明聴取の要求がなされています。

そして、要求の付いた議案は、議院運営委員会がその取扱いを決定するまで、委員会に付託されずにそのままの状態で置かれています。

委員会に付託されない限り、法案の実質審査に入ることができない状態が続くことから、議院の会議(本会議)趣旨説明聴取の要求は、「吊るし」(議案の吊るし)と呼ばれています。

よって、要求している会派が議院の会議(本会議)での趣旨説明聴取要求を取り下げない限り、議案は、「吊るされている」状態が続くことになります。

趣旨説明要求議案を取り下げる等して、委員会付託することに合意されたことを「吊るしをおろす」といいます。

議案が「吊るされている」状態、つまり、いずれかの会派が議院の会議(本会議)で趣旨説明聴取要求をしたままの状態で、この取扱いについて合意が得られない場合、どうなるのでしょうか。

この場合、議院運営委員会で、議院の会議(本会議)における趣旨説明を聴取せず、委員会に付託することの動議が出されます。その動議を採決することにより、多数をもって議院の会議(本会議)を省略して、直接委員会に付託します。

残り会期等の関係から、議院の会議(本会議)の趣旨説明聴取から審議入りしては間に合わず、与党がどうしても成立させたいと考えている対決法案の場合や、一の会派がどうしても議院の会議(本会議)での趣旨説明聴取からの審議を求めて譲らない場合など、委員会に付託するための採決が議院運営委員会で行われます。

この辺の用語を使った国会内の会話に、最初の頃は、随分戸惑ったものです。

「今度の法案、吊るしがおりた?」
「○○党が本会議質疑を要求していて、まだ吊るされたままだよ」
「××党は吊るしをおろしてくれているんだけどねー」という具合です。

他にも、議案の趣旨説明のことを「お経読み」、与党理事の打合せを「与理懇(よりこん)」、野党理事の打合せを「野理懇(やりこん)」などなど、何だかビックリするような用語が国会内で飛び交っています・・。

議案の付託-その2

2015-06-09 | 国会ルール
○国会法第56条の2

各議院に発議又は提出された議案につき、議院運営委員会が特にその必要を認めた場合は、議院の会議において、その議案の趣旨の説明を聴取することができる。

議案が発議、提出等されたとき、議長は、これを適当な委員会に即時付託し、委員会の審査を経て議院の会議に付するのが原則ですが、今回は、即時付託の例外について説明したいと思います。

主に3つの例外がありますが、前者2つの例外は簡単に、最後の1つの例外をこの場では重点的に説明します。

即時付託の例外-1
本審査議案であっても、特に緊急を要するものは、発議者又は提出者の要求に基づき、議院(本会議)の議決により、委員会の審査を省略できるもの。

即時付託の例外-2
委員会提出法案を付託せず、直接、議院の会議(本会議)に上程するもの。

即時付託の例外-3
本会議における趣旨説明要求のある議案であるもの。

国会法上、議員全般の関心に関わる重要な議案であって、会派から要求があり、議院運営委員会が議決により必要と認めたものについては、議院の会議(本会議)において、提出者等からその趣旨の説明を聴取し、これに対する質疑ができると定められています(上記国会法)。

ひたらく表現すると、国会に提出された議案の全てが即時委員会に付託されるわけではなく、重要議案に関しては、議院の会議(本会議)で趣旨説明を聴取し、その質疑が行われた後、委員会での実質審議が開始されることになるのです。

なお、議院の会議(本会議)で趣旨説明聴取・質疑が行われる議案の中でも、総理の出席を求める議案が、先日このブログでも紹介した「重要広範議案」です。

ただ、議院の会議(本会議)で趣旨説明聴取・質疑をすべき議案が、与野党間において、毎回合致するわけではありません。

というわけで、与野党間でこれらの議案が合致しない場合、「議案が吊るされたまま」とか、「吊るしがおりない」とか、「やっと吊るしがおりた」という用語が国会内で飛び交うことになるのですが、次回は、「議案の吊るし」とは何ぞや、ということについて紹介したいと思います。