議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

国会の会期(会期と通年国会にならない理由)(再掲)

2024-04-20 | 国会ルール
〇国会法第10条 

常会の会期は、150日間とする。但し、会期中に議員の任期が満限に達する場合には、その満限の日をもつて、会期は終了するものとする。

常会の会期は、なぜ150日間となっているのか、そして、どうして通年国会とならないのかについて紹介したいと思います。

帝国議会の会期は3か月でしたから、それよりも長い会期となっています。その理由は、帝国議会の衆議院国会法案委員会の会議録に残されています。

国会法案委員会は、基本的に逐条審査で行われており、国会法の制定過程やどうしてその文言が使われたのかなど、興味深い議論が数多く交わされています。

昭和21年12月19日 第91回帝国議会 衆議院国会法案委員会

衆議院書記官長(現在の事務総長相当)の逐条説明

「常会の会期は150日間、現在の3か月に比べると、2か月の延長となり、審議の充実を期することができる。政府側の臨時法制調査会では4か月とする案が出ていたが、法規委員会で5か月が適当であるということになった。なお、常会の会期を定める必要があるかどうかという点については相当議論があったが、憲法の中に「会期中」という文字を使用してある点、並びに憲法で臨時会を認めた点等を考え合わせ、かつ議員の便宜という点からも会期を認める方が便宜ではないかとなり、この制度をとることとした。」

                    
     昭和21年12月19日 第91回帝国議会 衆議院国会法案委員会

帝国議会を開設するにあたってはイギリスを始めとする諸外国の制度に倣い、会期制を導入しました。

その理由の中には、通年において国会(議会)が開いていると大臣等が常に国会に呼ばれ、行政効率が著しく悪くなるとの考え方もあったとされています。

実際、国会法を制定するにあたり、衆議院は常置委員会を設置して閉会中も議会における行政監視機能を維持したいとの考えがあったようですが、内閣側やGHQの反対により実現しませんでした。

また、新制度移行時は現在のような複雑多岐に渡る内閣提出法律案は想定していなかったと考えられ、会期制や会期日数についての捉え方も現在とは相違があると思われます。

当時の状況に鑑みると、5か月あれば相応の審議ができると考えられていたのではないでしょうか。

当時は年間でも現在ほど議会の活動日数は多くなかったようですし、書記官長の逐条説明もそのような趣旨を述べているためです。

現在は、会期制が日程闘争の原因と捉え、通年国会制の議論が取り上げられていますが、与野党双方から見て、メリットとデメリットが存在します。

(1)会期終了と同時に廃案にできることのメリット(野党側)
(2)通年制では常に国会で質疑が行われることのデメリット(政府・与党側)
(3)会期の概念があることで逆に法案を審議終了に持ち込める・採決できる

さらに継続審査(閉会中審査)もできることから、結局は現状を変えることができないし、しないのだと考えられます。

もっと言えば、憲法に「会期中」という用語が使用されていること、臨時会の規定があることから、憲法の議論も必要になります。

上記を勘案すれば、通年国会にすればすべて解決、という単純な議論にはならないのではないでしょうか。