議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

参院選挙制度改革-その5(最終回)

2015-07-31 | 憲法
○日本国憲法第42条

国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

○日本国憲法第43条

両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。(以下略)

「参院選挙制度改革-その1~その4」までは、国会ルールの紹介のみでしたが、今回は、少し違う観点から、今般の制度改革を眺めてみたいと思います。

今回の参院選挙制度改革では、一票の格差に焦点が当たった感は否めませんが、本来同時に議論されるべきは、日本国憲法が定める二院制の中で、参議院の将来像をどう考えるか、またその果たす役割であったはずです。

平成12年4月26日、参議院議長の私的諮問機関「参議院の将来像を考える有識者懇談会」は、意見書を参議院議長に提出しています。

この意見書の原則的な考え方は、「良識の府」としての機能を活性化させ、「再考の府」としての機能を明確化させること、個人の活動を中心とした意思形成を重視することで、参議院の在るべき姿を追求することにあります。

また、個人的に着目した点は、衆議院の再議決権(いわゆる60日ルール)は、一定期間、行使できないこととする、としていることです。衆議院に対する抑制と均衡です。

さらには、党議拘束の在り方を見直し、任期が安定していることによる中長期にわたる政策の調査研究等の一層の充実強化を図るとしています。

次に、参院選挙制度改革の議論がなされる際は、二院制の中での参議院の役割と将来像を見つめたうえでの議論がなされることを、議会人のひとりとして望んでいます。

参院選挙制度改革-その4(議決の要否)

2015-07-30 | 国会ルール
○参議院先例録326

一括して議題とした数個の案件のうち、議決した議案と同一事項を内容とする議案について、議決を要しないものとなった旨を宣告した例


平成21年7月、臓器移植法が改正されました。

その際、平成21年7月10日の参議院本会議では、臓器移植法改正案(第164回国会衆第14号)及び子どもの脳死臨調設置法案(参第26号)の両案、さらには、臓器移植法改正案に対する修正案が議題となりました。

次の平成21年7月13日、参議院本会議において、前会に引き続き両案を一括して議題とし、押しボタン式投票をもって採決の結果、まず、臓器移植法改正案の修正案の採決を行った後、臓器移植法改正案の原案は 賛成138、反対82にて可決、成立しました。

よって、臓器移植法改正案が議決された結果、子どもの脳死臨調設置法案は議決を要しないものとなったのです。

今回の公職選挙法の一部を改正する法律案についても、自民+野党4党案、民主+公明党等案が提出されており、どちらが先に採決に付されるのか、また先に採決された方が過半数超となるのか、ならなかった場合は、次に採決される法案が過半数を得ることができるのか、色々と論点はありました。

最終的に、自民+野党4党案が先に採決に付され、過半数を得たために、民主+公明党等案は議決を要しないとして、採決に付されることはありませんでした。

先に採決された自民+野党4党案が可決したため、両案は併存しないからです。

上記2例のような法案に関する採決の順番は、色んな意味で難しいところです・・。

参院選挙制度改革-その3(内閣の意見)

2015-07-28 | 国会ルール
○国会法第57条の3

各議院又は各議院の委員会は、予算総額の増額修正、委員会の提出若しくは議員の発議にかかる予算を伴う法律案又は法律案に対する修正で、予算の増額を伴うもの若しくは予算を伴うこととなるものについては、内閣に対して、意見を述べる機会を与えなければならない。


数は力、数の力」のエントリーで、国会は所属議員数が様々な力の源泉だということを簡単に紹介させていただきました。

その中で、議員立法については、予算を伴う場合とそうでない場合の賛成者の人数に違いがあることに触れました。

○衆50人以上、参20人以上→予算を伴う法律案の発議の賛成者(国会法第56条)、質疑や討論終局動議の賛成者等

○衆20人以上、参10人以上→議案発議や修正動議の賛成者等(国会法第56条)

で、今回議論された公職選挙法の一部を改正する法律案は、自民+野党4党案、民主+公明等案でした。先に採決された自民+野党4党案は、予算を伴う議員立法であったことから、趣旨説明と質疑の後、国会法第57条3の規定(上記)に基づき、内閣から意見の聴取を行いました。

これは、予算編成権を有する内閣に、財政上の意見を述べさせることで、賛否の参考にしようとする制度です。

また、予算を伴う議員立法の場合は、法律施行に関し、必要とする経費を明らかにした文書を添付しなければなりませんが、総額を明らかにすればよく、その財源まで明示する必要はありません。

○衆議院規則第28条

議員が法律案その他の議案を発議するときは、その案を具え理由を附し、成規の賛成者と連署して、これを議長に提出しなければならない。この場合において、予算を伴う法律案については、その法律施行に関し必要とする経費を明らかにした文書を添えなければならない。(以下略)

○参議院規則第24条

議案を発議する議員は、その案を具え、理由を附し、所定の賛成者と共に連署して、これを議長に提出しなければならない。予算を伴う法律案については、なお、その法律施行に要する経費を明らかにした文書を添えなければならない。(以下略)

参院選挙制度改革-その2(本会議での少数会派質疑)

2015-07-27 | 国会雑学
7月24日の参議院本会議では、参院選挙制度改革を目的とし、自民+野党4党提出の公選法改正案と、民主+公明等提出の公選法改正案が議題となりました。

これらは議員立法ですので、趣旨説明も答弁も参議院議員が行うのですが、質疑について、普段と異なる光景が見られました。

通常の本会議では、登壇する権利のない所属議員5~10人の会派が質疑に立った点です。

これは、本会議での質疑に関するルールが関係しています。

まず、参議院本会議で質疑の権利は、「院内交渉会派」に与えられています。

参議院では、所属議員10人以上の会派が「院内交渉会派」と呼ばれ、議院の運営についての協議に参加できる資格、つまり議院運営委員会に委員を出せる最小限の単位となっており、参議院において所属議員10人以上であることは、重要な意味を持つのです。

結局、国会内は、数の力で決まることが多いのですよね。

よって、本会議での質疑は、「院内交渉会派」に与えられているのですが、通常国会での政府4演説と、決算概要報告に対する質疑については、所属議員5名以上の会派にも割り当てられています。

その他では、新政権発足時や総理問責に対する緊急質問、国民年金法や社会保障と税の一体改革関連法でも事例はあります。

というわけで、これまで所属議員10人未満の会派の本会議質疑は、昭和30年の第22回国会以降、38回あり、今回が39回目でした!

毎回、「先例としないとして」、と約束しているようなのですが、数多い事例になってしまうと、どうなんでしょうねぇ。

特に、今回は、当該少数会派の質疑が時間を超過したり、質問とは全く関係ない相当冗長な答弁をしたりしたようですしね・・。

参院選挙制度改革-その1(委員会審査省略要求)

2015-07-26 | 国会ルール
○衆議院規則第111条

委員会の審査を省略しようとする案件については、発議者又は提出者は、発議又は提出と同時に、書面でその旨を議長に要求しなければならない。(以下略)

○参議院規則第26条

発議者又は提出者が発議又は提出した議案について委員会の審査の省略を要求しようとするときは、その議案の発議、提出又は送付と同時に書面でその旨を議長に申し出なければならない。

前項の要求があつたときは、議長は、これを議院に諮らなければならない。

今年の7月25日は、来年改選を迎える参議院議員の任期満了1年前です。

7月24日、参議院本会議において、公職選挙法の一部を改正する法律案の趣旨説明・質疑・討論・採決が行われました。
採決の結果、先に採決された自民+野党4党提出の公選法改正案が過半数超となり可決、同日、衆議院に送付されました。

いわゆる一票の格差に関し、司法権から違憲状態であると指摘され続け、立法権として来年までに抜本改革を図ることを目的とし、議論が続けられてきました。

7月24日の本会議では、自民+野党4党提出の公選法改正案と、民主+公明等提出の公選法改正案が議題となりましたが、ぞれぞれに委員会審査省略要求が付されていました。

よって、参議院規則に基づき、参議院本会議で議長が委員会審査省略要求の件について諮った結果、多数をもって、委員会審査の省略が決定しました。

その後、それぞれの法案提出者から趣旨説明がなされ、質疑に入りましたが、次回は本会議における少数会派の質疑について触れてみたいと思います。

特別委員会とは(続々編)

2015-07-23 | 国会ルール
○参議院規則第74条

各常任委員会の委員の数及びその所管は、次のとおりとする。
(以下略、※規則には、各委員会名と人数が明記されています)

○参議院委員会先例録6

常任委員の数は、10人ないし45人とする

各常任委員会の委員の数は、参議院規則において、内閣、法務、文教科学、農林水産、環境及び国家基本政策の6委員会は20人、外交防衛及び経済産業の両委員会は21人、総務、財政金融、厚生労働、国土交通及び議院運営の5委員会は25人、決算及び行政監視の両委員会は30人、予算委員会は45人、懲罰委員会は10人と定められている。

(注)内閣、総務、法務、外交防衛、財政金融、文教科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、環境の各委員を第一種委員といい、国家基本政策、予算、決算、行政監視、議院運営、懲罰の各委員を第二種委員という。第一種委員の総数は242人(議員の定数)となるよう定められている。


結局、参議院において安保法案を審議するための特別委員会の規模は、45人とすることで、7月22日中に与野党が合意しました。

そこで、今回は、参議院における委員会の規模について見てみたいと思います。

参議院の委員会構成で最大は、予算委員会規模の45人委員会です。

予算委員会を除く過去の45人委員会は、平成15年の第156回常会で設置された「武力攻撃事態への対処に関する特別委員会」以来、過去10回の事例があります。

なお、45人委員会の場合、現在の参議院の会派構成での委員の割り当ては、下記のとおりです。

自民党 21、公明党 4、民主党 11、維新の党 2、日本共産党 2、元気 1、次世代 1、無所属クラブ 1、社民党 1、生活 1

という割り当てなのですが、少数会派のうち、現在2人会派の改革だけが委員を出せません。
よって、自民党が委員割り当て1を改革に譲った結果(与党応援スタイルですしね)、下記のとおりとなりました。

自民党 20、公明党 4、民主党 11、維新の党 2、日本共産党 2、元気 1、次世代 1、無所属クラブ 1、社民党 1、生活 1、改革 1

なお、理事の割り当ては、下記のとおりです。

自民党 5、公明党 1、民主党 2、維新の党 0.5、日本共産党 0.5

維新の党 0.5、日本共産党 0.5というわけで、維新の党と日本共産党の理事は抽選によって、どちらかの会派に割り当てとなります。

[7/24追記]
結局、残る理事枠1は、維新の党の割り当てとなりました。

特別委員会とは(続編)

2015-07-22 | 国会ルール
○参議院委員会先例録28

特別委員会の理事は、議院運営委員会理事会において定めた理事の数及び各会派に対する割当てに基づき、委員会において選任するのを例とする

特別委員会の理事は、あらかじめ議院運営委員会理事会において定めた理事の数及び各会派に対する割当てに基づき、委員会において選任するのを例とする。議院運営委員会理事会の決定に当たっては、理事の数は、常任委員会の例に準じ、原則として委員数5人につき1人の割合で定め、各会派に対する割当ては、所属議員10人以上の会派に対して、その所属議員数を考慮して定めるのを例とする。


7月22日午前9時時点で、その規模は合意できていませんが、安保法案が参議院に送付されたことから、参議院でも衆議院同様、特別委員会の設置に向けて、与野党間で協議がなされています。

特別委員会は、本会議で設置目的や委員数、名称を明示して議決決定します。

委員は、特別委員会設置当日の各会派の議員数の比率で割り当てられ、各会派が委員名を申し出て議長が指名します。

なお、会派に属さない議員には割り当てがありません。特別委員長は、本会議で設置が決定した後の委員会で委員により互選で決定します。

また、特別委員会の理事は常任委員会と同様、委員5名に1名の割合で、所属議員10人以上の会派へ割り当てることとなっています。

例えば、現在与党が提案している35人規模の特別委員会を設置するとなると、委員の割り当ては下記のとおりです。

自民党 17、公明党 3、民主党 8、維新の党 2、日本共産党 2

なお、理事の割り当ては、下記のとおりです。

自民党 4、民主党 2、公明党 1

参考までに、衆議院の特別委員会の委員割り当ては、下記のとおりです。

自民党 28、公明党 4、民主党 7、維新の党 4、日本共産党 2

みなし否決の方法

2015-07-21 | 国会ルール
○日本国憲法第59条4項

参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

現在開会中の第189回国会(常会)が大幅延長すると決まった際、「国会の延長-その1~4」まで連載(?)し、「国会の延長-その4」において、いわゆる60日ルール、みなし否決についての紹介をさせていただきました。

ちなみに、先週、強行採決された安保法案は、衆議院を通過したのが7月16日ですから、60日ルールを使うとなれば、9月14日以降、これを行使することができます。

ただ、60日ルールを使い、みなし否決を行使するということは、参議院の議論を無視し、参議院の存在意義そのものを否定することに繋がりかねませんから、行うべきでないというのが、議会人たる私のスタンスです。

でも、そういうルールがある以上、みなし否決が、どのようになされるのか説明したいと思います・・。

みなし否決ができるのは、衆議院の可決した法案を、参議院が受け取った日を含めて60日間を経過した61日目からです。

参議院で審議中であっても、衆議院に「否決したものとみなすべしとの動議」が提出されます。

衆議院本会議で前記動議を可決して、参議院に対して「みなし否決した旨」を通知し、衆議院は参議院から返付議案を受領します。

その後に「直ちに再議決すべしとの動議」を提出し、可決後、返付案(議案)に対して、衆議院本会議で出席議員の3分の2以上の賛成で、「再議決」が完了します。

ただ、再議決を行った場合、参議院の役割はどうなるのでしょう。

参議院は、憲法上認められた二院制の下において、良識の府・再考の府として国民の負託にこたえるために存在していると考えています。参議院の審議を軽視し、数の力で衆議院が再議決することは、参議院の存在意義にまで及ぶ議会制民主主義の問題であると思っています。

安保法案の採決方法(衆院)

2015-07-20 | 国会ルール
○日本国憲法第57条

(前項略)出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

○衆議院規則第152条

議長が必要と認めたとき、又は出席議員の5分の1以上の要求があつたときは、記名投票で表決を採る。


通常の表決(採決)方法として、衆議院は起立採決、参議院は押しボタン採決が採られています。また、以前紹介した、無名投票に対し、記名投票があります。

7月16日、衆議院本会議で安保法案の採決が行われましたが、起立採決でした。

参議院の場合は、出欠も押しボタンでの採決も記録に残る形となっていますが、衆議院の場合は、記名投票にしない限り、出欠も採決も、議員個人の行動としては記録に残りません。

よって、予算や大型法案の場合は、賛成する議員は白票を、反対する議員は青票を持って檀上で投票する、つまり記名投票で記録に残すのです。

が、今回は「起立多数」と記されるのみで、議員一人ひとりの投票行動は記録に残りません。

採決前に退席を決めていた野党各党が、記名投票を求めなかったからです。

もちろん、これには野党の考え方もあったものと思われます。なぜなら、充実審議を求める野党各党からすれば、安保法案は1法案あたりに換算すると10時間しか議論されておらず、論点も山積している中、質疑の終局も採決も認められない立場でしょう。

この立場に立てば、採決に加わるということは、質疑の終局を認め、採決という行動を認めることに繋がるため、採決の直前の退席を選んだものと考えられます。

しかしながら、我が国の在り方を大きく転換することになるであろうこの法案については、議員一人ひとりの投票行動を後世に明確に残すべきではなかったのかと、個人的には強く思います。

現実的なことを指摘すれば、衆議院の議席に占める野党の割合からすれば、どう見ても巨大与党に届くわけはなく、どこかの時点で与党が採決に踏み切るのは自明の理だからです。

数の少ない野党といえど、出席議員の5分の1に届く議席は有しているため、本会議で記名投票を求めることができます。与党を含め、議員一人ひとりの投票行動を議事録に掲載し、後世への記録として欲しかったな、と思うのです。

7月16、17日の社説・論説の見出し

2015-07-19 | ひとこと
○全国紙

日本経済新聞 : 合意形成力の低下示した採決
読売新聞 : 日本の平和確保に重要な前進
朝日新聞 : 戦後の歩み 覆す暴挙
毎日新聞 : 国民は納得していない
産経新聞 : 日本の守り向上へ前進だ

○ブロック紙、地方紙

北海道新聞 : 民意置き去りにした暴走

東奥日報 : 国民世論無視した強行だ
デーリー東北 : 立憲主義踏みにじる強行
岩手日報 : 民意を踏みにじる強行
秋田魁新報 : 参院でこそ議論尽くせ
山形新聞 : 平和国家の重大な転機
福島民報 : 理解得られていない

茨城新聞 : 国民無視の強行だ
下野新聞 : 国民を無視した強行だ
上毛新聞 : 国民の声聴く姿勢を

神奈川新聞 : 「9条改憲」に反対する
山梨日日新聞 : 分からず、深まらず…愚行だ
信濃毎日新聞 : 憲法にも民意にも反する
新潟日報 : 平和守る法とは言えない

北日本新聞 : 「数の力」による暴挙だ
北国・富山新聞 : 理解得るには時間かかる
福井新聞 : おごる巨大与党、民意無視

静岡新聞 : 憲法違反の疑念拭えず
岐阜新聞 : 国民を差し置いた強行だ
中日・東京新聞 : 「違憲」立法は許さない

京都新聞 : 「違憲」法案の撤回を求める
神戸新聞 : 「再考の府」で徹底審議を

日本海新聞 : 国民無視の強行だ
山陰中央新報 : 国民の声に耳を傾けよ
山陽新聞 : 健全な民主主義には遠い
中国新聞 : 徹底審議し禍根残すな

徳島新聞 : 暴挙は断じて許せない
愛媛新聞 : 「理解進まぬ」中の暴挙許せない
高知新聞 : 批判の声を上げ続けよう

西日本新聞 : 「違憲立法」は許されない
佐賀新聞 : 国民無視の強行だ
長崎新聞 : 原則破る暴挙に抗議する
熊本日日新聞 : 無理を通す数の力の傲り
大分合同新聞 : 審判に堪えうる責任果たせ
宮崎日日新聞 : 国民の声は聞こえているか
南日本新聞 : 国民の声に耳ふさぐ政権に抗議する

沖縄タイムス : 憲法を破壊する暴挙だ
琉球新報 : 国民の危機感無視するな

束ね法案と審議時間

2015-07-18 | 国会雑学
7月15日、衆議院特別委員会で強行採決された安保法案の審議時間は、116時間30分でした。

ちなみに、この時間数の中には、野党が欠席して、質疑を行わなかった分、いわゆる「空回し」を含んでいます。

このブログで、幾度も取り上げたとおり、安保法案=「束ね法案」であり、既存の法律10本を1本に束ねた法案と、新法1本です。外形上は2法案ですが、実質は11本の法案を審議したのと同一です。

そこで、審議時間の側面から、なぜ与野党間の対立が激しくなっているのか、を見てみます。

まず、これまでの安保関連法での審議時間数を見てみたいと思います。
すべて衆議院委員会での審議時間です。

平成4年 (1992年)国連平和維持活動(PKO)協力法 87時間41分
平成11年(1999年)周辺事態法           94時間11分
平成13年(2001年)テロ対策特別措置法  33時間15分
平成15年(2003年)武力攻撃事態法など有事関連3法  92時間1分
平成15年(2003年)イラク復興支援特別措置法  43時間43分

今回の安保法案はどうなのか・・。
衆議院特別委員会での審議時間は、116時間30分であり、一見すると長いようにも見えますが、審議すべき法案数は、11にも及んでいます。1法案あたり、どの程度審議されたのかを計算すると、約10時間にしかなりません。

もちろん、単純に計算できない側面はありますが、我が国の在り方を大きく転換することになるであろう法案であることは、誰しも見解の一致するところだと思います。

また、与野党間で何か合意を見たのであればいざしらず、採決は、与党のみの強行採決でした。

幾つもの法案が束ねられたことにより、1法案あたりの審議時間は、これだけの重い法案であるにも関わらず、たったの10時間。充実審議を求める野党からすれば、審議時間は足りないと主張するはずであり、与野党間で激しく対立するひとつの要因であると指摘できると思います。

○衆議院委員会における長時間審議の例

1.昭和35年(1960年) 日米安全保障条約改定 136時間13分
2.平成24年(2012年) 社会保障・税一体改革関連法 129時間8分
3.昭和46年(1971年) 沖縄返還関連法  127時間14分
4.平成6年(1994年)  政治改革関連法  121時間38分
5.平成17年(2005年) 郵政民営化関連法  120時間32分

社会保障・税一体改革関連法が長時間審議を行った直近の例ですが、これは民自公の3党合意で審議しましたから、今回のケースとは色々異なります。個人的に、色んな思いが交錯する法律ですね・・。

束ね法案と一括審議-その4

2015-07-17 | 雑感
2か月ほど前に、いわゆる束ね法案に対する問題意識を3回にわたって、思うところを書き綴りました。

束ね法案と一括審議-その1
束ね法案と一括審議-その2
束ね法案と一括審議-その3

また、幾つもの法案を1本に束ねて立法府に提出することの問題点については、他のエントリーでも事あるごとに、議会人のひとりとして取り上げてきたつもりです。

束ね法案に対する問題意識を書き綴る契機となったのは、5月15日、我が国の在り方を大きく転換することになるであろう重い法案が立法府である国会に束ねて提出されたからです。

このブログを継続的にご覧いただいている方は既にお気づきのことと思いますが、今回の法案について、法案名そのものを明示したことは一度もありません。強いて言えば、この法案を審議する特別委員会の名称を一度取り上げたのみです。

ただ、与野党間でなぜこれほど対立するのか、を分かりやすくするために、これからは必要に応じて「安保法案」と表現することとします。前回、世論調査を引用した際に、調査項目の中にも出ていましたしね。

で、今回の本題です。

この安保法案は、衆議院特別委員会で7月15日に強行採決され、委員会で可決しました。

特別委員会の委員長は、与党委員長ですが、与党出身であるにも関わらず、委員会での法案採決後、以下のように発言しています。
7月16日の各紙報道の該当部分のみ、書き出してみます。

[日本経済新聞] 10法案一括化を反省

衆院平和安全法制特別委員会の委員長は15日の法案可決後、国会内で記者団に「もっと丁寧にすべきだとの批判もあった。分かりやすくするためにも法律を10本束ねたのはいかがなものか」と語った。

[読売新聞]

安保関連法案はまた、自衛隊法など改正10法案を一括した「平和安全法整備法案」と、「国際平和支援法案」の2本で構成される。一つのテーマが複数の法案に関係することも多いため、与野党から「議論が拡散する原因になっている」との指摘が出ている。

15日の採決後、委員長は、国会内で記者団に「もう少し分かりやすくすべきだ。10本の法案を束ねたのはいかがなものか」と語った。

[朝日新聞] 一括審議 拡散した議論

採決を強行した委員長ですら、審議を振り返って「法律10本(の改正案)を束ねたのはいかがなものか」と政府に苦言を呈したほどだ。

[毎日新聞] 「10本一括はいかがか」

採決の立役者となった委員長も、平和安全法制整備法案として既存の10法を一括して改正しようとしていることについて「政府として10本をまとめたこと自体はいかがかなというふうに思う。もっと丁寧にやれという批判もあるので」と記者団に語った。

[東京新聞] 「10本ひとまとめ いかがなものか」委員長が政府案に疑義

安全保障関連法案に関する衆院特別委員会の委員長(自民)は15日、法案採決後に「政府として(法案を)10本束ねたのは、いかがなものかと思っている」と記者団に述べた。法案審議の円滑な進行が求められる与党選出の委員長が政府提出法案に疑義を唱えるのは異例。

次回は、審議時間という側面から見てみたいと思います。

NHK世論調査(7月13日公表分)

2015-07-16 | 雑感
今回は、直近のNHK世論調査の概要を見てみたいと思います。

下記5点について、事実を書き留め、その後、NHK世論調査の結果を紹介した理由を記します。

1.内閣支持率 
支持する 41%(-7)、支持しない 43%(+9)

2.安保法整備の評価
大いに評価する 8%、ある程度評価する 24%、あまり評価しない 31%、まったく評価しない 30%

3.安保法制今国会での成立
賛成 18%(0)、反対 44%(+7)、どちらともいえない 32%(-5)

4.安保法制に関する議論
尽くされた 8%、尽くされていない 56%、どちらともいえない 28%

5.「安保法案は憲法違反ではない」との説明
大いに納得できる 4%、ある程度納得できる 20%、あまり納得できない 37%、まったく納得できない 29%

世論調査は、様々な媒体によって行われています。今回、NHK世論調査の結果を紹介した理由は、1年半ほど前、世論調査に携わった経験のある方から聞いた話が印象に残っていたからです。

世論調査自体に様々な議論があることは、もちろん承知しています。しかし、ひとつの側面として紹介したいと思います。

まず、世論調査を行うにあたり、最初に媒体名が名乗られます。

人それぞれ、様々な考えをお持ちですから、例えば、「○○新聞です」と名乗った時点で、調査に協力する人、しない人に分かれることがあるそうです。NHKの場合、表現は難しいのですが、調査に協力して下さる方の層が、結果、万遍なく平均的になるそうで、NHKの世論調査が最も民意を反映している可能性が高いのではないか、との話でした。

もちろん、私自身、世論調査の仕事をしたことがありませんから、これが正しいのかどうか、判断する術はありません。しかし、論としては成り立ち得るものですので、紹介させていただきました。

法案に対して法的安定性に関する疑義を含めた形で国民各層の理解が進んだこと、これこそが与野党が激しく対立する背景のひとつであると指摘できるのではないでしょうか。

強行採決

2015-07-15 | 国会雑学
平成27年7月15日、12時25分頃、衆議院特別委員会で「強行採決」が行われました。

「強行採決」とは、与野党が激しく対立する法案について、与党側が法案の採決を強行することです。

強行採決に至る場合、委員会室や議場内において、与党側と強行採決を阻止する野党側が激しくぶつかり、大混乱に陥ることも多くあります。

少数側である野党は、強行採決を阻止するために、委員会室前や議場の入り口前に座り込むなど物理的に抵抗することもありますが、今回は、採決阻止のために委員長席の周りに集まって、採決に対する抗議を行いましたが、多勢に無勢。

与党の数の力をもって、与党のみの出席で採決され、与党のみの賛成で委員会で可決され、委員会は委員長の宣言により散会しました。
          
昭和35年5月19日、第34回国会において、新安保条約の強行採決による衆議院内の混乱に際しては、国会内に警察官をして議事堂内の警察を行わせた直近の事例となっています。

次回以降、個別の政策の是非に触れない範囲で、なぜこれほどまでに与野党対立が激しくなっているのかについて、幾つかの側面から見ていきたいと思います。

議事中のルール

2015-07-12 | 国会ルール
○衆議院規則第215条

議事中は参考のためにするものを除いては新聞紙及び書籍等を閲読してはならない。

○参議院規則第211条

何人も、参考のためにするものの外は、議事中、新聞紙或は書籍の類を閲読してはならない。

7月9日、参議院厚生労働委員会で与党議員の携帯電話の着信音が鳴り響き、これを注意した野党議員と口論となって、委員会が紛糾する場面がありました。

結果、当該与党議員は、厚生労働委員長から「携帯電話の使用は厳に慎むように」と口頭で注意を受けるとともに、国会対策委員長間でも問題となりました。

議院規則が制定された頃は、携帯電話なんて全く存在しない時代でしたから、議院規則に携帯電話使用可否に係る文言はありませんが、委員会中に着信音を鳴り響かせるのは、どう考えてもアウト!です。

そもそも、原則、持ち込んではならないこととなっていますしね(ただ、鞄やポケットに入っていたら、それは分かりません・・ということで)。

これとはちょっと異なりますが、両院の議院規則は、議事中は、新聞紙や書籍を読むのもダメ!と明確に定めています(上記)。

というわけで、新聞そのものではなく、新聞をコピーして、参考資料として持ち込み、読んでいる議員が多いのかもしれません。ただ、議事の参考ではないと思われる書籍を堂々と読んでいる人が、いるような気がしないでもない今日この頃。

携帯やスマホが普及した今、ルールをどう定め、どう守るかは、改めて議論した方がいいのかもしれませんね。

最後に、もう、わざわざ書く必要がないと思われるルールをひとつ。

○衆議院規則第214条 議場において喫煙してはならない。
○参議院規則第210条 議場においては、喫煙を禁ずる。