議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

議院証言法と証人喚問-その2

2017-03-23 | 国会雑学
議院証言法と証人喚問-その1」では、日本国憲法と議院規則との関わり、ならびに議院証言法について紹介しましたので、今回は実際の証人喚問の流れについて概観します。

平成29年3月23日は、10時から参議院予算委員会、14時50分から衆議院予算委員会で証人喚問が行われます。

衆参で最大の相違点は、委員長や各会派から尋問が行われる前に、証人からの証言陳述があるか否か、という点です。

これらの点にも着目しながら、国会関係者ならずとも多くの方が関心を寄せる証人喚問を見守りたいと思います。

○平成29年3月23日(証人喚問当日)

10時00分開会
[参議院予算委員会]


1.人定質問(委員長)
2.宣誓及び証言に関する注意事項説明等(委員長)
3.宣誓(証人)※総員起立
4.宣誓書に署名捺印(証人)

5.証人の発言(10分)

6.委員長尋問(8分)
7.各会派尋問
(自35分、民28分、公15分、共10分、維8分、希5分、無5分)

―証言聴取の終了―
8.証人退室
12時15分散会見込み
     
14時50分開会
[衆議院予算委員会]

1.人定質問(委員長)
2.宣誓及び証言に関する注意事項説明等(委員長)
3.宣誓(証人)※総員起立
4.宣誓書に署名捺印(証人)

5.委員長尋問(10分)
6.各会派尋問
(自35分、公25分、民38分、共12分、維10分)

―証言聴取の終了―
7.証人退室
17時00分散会見込み

(罰則)
正当の理由がなくて宣誓又は証言を拒んだとき、虚偽の陳述をしたときは刑罰に処せられる(議証法4、6、7条)。

なお、本エントリーは、平成29年3月23日0時30分現在のものです。

議院証言法と証人喚問-その1

2017-03-22 | 憲法
○日本国憲法第62条

両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

○衆議院規則第53条

委員会は、議長を経由して審査又は調査のため、証人の出頭を求めることができる。

○参議院規則第182条

(前項略)委員会において証人の出頭を求めることを議決したときは、議長を経て、その出頭を求めなければならない。


各委員会において、案件を審査又は調査する場合、当事者等に出頭を求め、事実の陳述を聴くことが重要な手段となることがあります。

よって、衆参議院規則は、法案その他の議案を審査したり、一般的な国政に関する調査をしたりする場合に証人喚問を行うことができると定めているのです。

証人の出頭要求、あるいはその現在場所における証言要求は、委員会であればその議決に基づき、議長を経由して行うことになります。

なお、証人の発言は、その証言を求められた範囲を超えてはならないこととされています。

また、国政に関して調査権を行使するための強制的手段として、証人の出頭、証言及び記録の提出の要求について定めているのが議院証言法、正確にいえば「議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律」です。

そこで、議院証言法では具体的に何を定めているのか、主たる内容を見てみます。

まず、議院から要求があるときは、何人も原則として証人として出頭し、宣誓のうえ、証言しなければならず、また書類の提出をしなければならないとされています。

そして、証人に出頭要求するときは、原則として、出頭・証言すべき日の5日前までに通知することとなっており、平成29年3月23日の衆参予算委員会での証人喚問の決定は、3月17日に行われたのです。

その際、具体的に記載された証言を求める事項及び正当な理由がなくて出頭しないときは刑罰に処せられる旨を併せて通知しています。

証人喚問当日は、証人に対し、宣誓前に宣誓証言拒絶権及び正当な理由がなくて宣誓又は証言を拒んだり、虚偽の陳述をしたりしたときは刑罰に処せられる旨を告げなければなりません。

なお、宣誓した証人が虚偽の陳述をすれば、3月以上10年以下の懲役に処せられる規定も設けられています。

今回は、議院証言法の一部のみ紹介しましたが、この度の予算委員会における証人喚問は、野党側がずっと求め続けていた参考人招致を与党が受け入れないまま、一足飛びに強制力と罰則規定を有する「証人喚問」となった感が否めません。

次回は、実際の証人喚問の流れを概観したいと思います。

参考人とは

2017-03-21 | 国会ルール
○衆議院規則第85条の2

委員会は、審査又は調査のため必要があるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる。(以下略)

○参議院規則第186条

委員会は、審査又は調査のため、参考人の意見を聴くことができる。委員会が参考人の出席を求めるには、議長を経なければならない。

委員会(参議院の調査会含む)は、議案等の審査又は調査事件の調査のため、学識経験者、利害関係者等を参考人として招致し、その意見を聴取し質疑ができることを議院規則で定めています。

ここで、衆参のちょっとした違いを紹介すると、衆議院には、衆議院規則第257条において、議院の会議(本会議)への参考人招致に関する規定もありますが、実際には適用されたことはありません。参議院には、議院の会議(本会議)への参考人招致の規定は、そもそも設けられていません。

また、政府参考人制度の規則と同様、衆参で用語に違いがあります。

衆議院では、参考人の「出頭」、参議院では「出席」となっています。

参考人とは、議案等の審査案件又は調査事件について、自己の意見を述べる者であり、参考人となり得る特別な制限は設けられていません。外国人でも、未成年者でも、参考人になることができるのです。

よって、現在大きな話題となっている案件において、野党は参考人招致を求め続けていたのです。

なお、委員会が参考人を招致するときは、参議院の場合、委員会において、参考人の氏名、意見を求める事項及び出席を求める日時を決定し、又は参考人の人選について委員長に一任する旨の議決を行います。

○参議院委員会先例録272

参考人の出席を求めるには、参考人出席要求書を議長に提出する


という先例に基づき、この議決があったときは、委員長から議長に対し、これらを記載した「参考人出席要求書」を提出し、議長が文書により出席を求める例となっています。

第193回国会における重要広範議案

2017-03-13 | 国会雑学
重要広範議案」については、本会議場の議席図(議席表)に次いでアクセスの多いエントリーですが、今回は、第193回国会における重要広範議案を紹介したいと思います。

第193回国会における「重要広範議案」は、平成29年3月2日の衆議院議院運営委員会理事会で決定しました。

[第193回国会 重要広範議案]

1.所得税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第6号)

2.組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(仮称)(提出検討中)

3.地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第15号)

4.物品役務相互提供協定

・日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(第192回国会条約第2号)

・日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第1号)

・日本国の自衛隊とグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第2号)

総予算の審査時間

2017-03-01 | 国会雑学
平成29年2月28日、参議院予算委員会では平成29年度総予算の実質的審査が始まりました。

質疑時間のカウントが、参議院独特の「片道方式」ということもあり、当初予定と少し違う進行になっています。

参議院は、憲法上の規定により、送付されてから30日で自然成立するという宿命がありますので、審査期間より質疑内容をいかにして充実させていくか、が大きな課題のひとつではありますが、外形上、予算委員会における総予算の審査時間はどの程度か、見てみたいと思います。

〇衆議院で総予算の審査時間が長かった年(平成以降)

平成9年 123時間47分
平成7年 105時間
平成3年 103時間42分
平成10年 103時間30分

〇衆議院で総予算の審査時間が短かった年(平成以降)

平成元年 24時間3分
平成19年 66時間30分
平成22年 69時間10分

参議院は、上述のとおり総予算の審査日程に制約がある中ですが、審査時間が長かった年とそうでなかった年を見てみたいと思います。

〇参議院で総予算の審査時間が長かった年(平成以降)

平成11年度 90時間28分
平成24年度 80時間27分

〇参議院で総予算の審査時間が短かった年(平成以降)

平成元年度 34時間39分
平成20年度 46時間48分
平成23年度 47時間28分

参議院における平成29年度総予算の審査時間は、個人的に非常に気になるところです。