議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

国会の会期(会期と通年国会にならない理由)(再掲)

2024-04-20 | 国会ルール
〇国会法第10条 

常会の会期は、150日間とする。但し、会期中に議員の任期が満限に達する場合には、その満限の日をもつて、会期は終了するものとする。

常会の会期は、なぜ150日間となっているのか、そして、どうして通年国会とならないのかについて紹介したいと思います。

帝国議会の会期は3か月でしたから、それよりも長い会期となっています。その理由は、帝国議会の衆議院国会法案委員会の会議録に残されています。

国会法案委員会は、基本的に逐条審査で行われており、国会法の制定過程やどうしてその文言が使われたのかなど、興味深い議論が数多く交わされています。

昭和21年12月19日 第91回帝国議会 衆議院国会法案委員会

衆議院書記官長(現在の事務総長相当)の逐条説明

「常会の会期は150日間、現在の3か月に比べると、2か月の延長となり、審議の充実を期することができる。政府側の臨時法制調査会では4か月とする案が出ていたが、法規委員会で5か月が適当であるということになった。なお、常会の会期を定める必要があるかどうかという点については相当議論があったが、憲法の中に「会期中」という文字を使用してある点、並びに憲法で臨時会を認めた点等を考え合わせ、かつ議員の便宜という点からも会期を認める方が便宜ではないかとなり、この制度をとることとした。」

                    
     昭和21年12月19日 第91回帝国議会 衆議院国会法案委員会

帝国議会を開設するにあたってはイギリスを始めとする諸外国の制度に倣い、会期制を導入しました。

その理由の中には、通年において国会(議会)が開いていると大臣等が常に国会に呼ばれ、行政効率が著しく悪くなるとの考え方もあったとされています。

実際、国会法を制定するにあたり、衆議院は常置委員会を設置して閉会中も議会における行政監視機能を維持したいとの考えがあったようですが、内閣側やGHQの反対により実現しませんでした。

また、新制度移行時は現在のような複雑多岐に渡る内閣提出法律案は想定していなかったと考えられ、会期制や会期日数についての捉え方も現在とは相違があると思われます。

当時の状況に鑑みると、5か月あれば相応の審議ができると考えられていたのではないでしょうか。

当時は年間でも現在ほど議会の活動日数は多くなかったようですし、書記官長の逐条説明もそのような趣旨を述べているためです。

現在は、会期制が日程闘争の原因と捉え、通年国会制の議論が取り上げられていますが、与野党双方から見て、メリットとデメリットが存在します。

(1)会期終了と同時に廃案にできることのメリット(野党側)
(2)通年制では常に国会で質疑が行われることのデメリット(政府・与党側)
(3)会期の概念があることで逆に法案を審議終了に持ち込める・採決できる

さらに継続審査(閉会中審査)もできることから、結局は現状を変えることができないし、しないのだと考えられます。

もっと言えば、憲法に「会期中」という用語が使用されていること、臨時会の規定があることから、憲法の議論も必要になります。

上記を勘案すれば、通年国会にすればすべて解決、という単純な議論にはならないのではないでしょうか。

国会の休会

2021-12-19 | 国会ルール
〇国会法第15条

国会の休会は、両議院一致の議決を必要とする。

国会の休会中、各議院は、議長において緊急の必要があると認めたとき、又は総議員の4分の1以上の議員から要求があつたときは、他の院の議長と協議の上、会議を開くことができる。前項の場合における会議の日数は、日本国憲法及び法律に定める休会の期間にこれを算入する。各議院は、10日以内においてその院の休会を議決することができる。

国会法第15条に規定される両議院の議決により「休会」となったのは、過去4回だけです。

いずれも今の国会になってから間もない第1回国会から第3回国会までのことです。

[休会した国会の回次・期間と理由]

第1回国会:昭和22年6月4日~昭和22年6月22日
(19日間休会)新内閣の諸準備のため

第1回国会:昭和22年9月1日~昭和22年9月14日
(14日間休会)内閣の議案提出準備のため

第2回国会:昭和22年12月10日~昭和23年1月20日
(40日間休会)年末年始のため

第3回国会:昭和23年10月24日~昭和23年11月7日
(15日間休会)新内閣の諸準備のため

その後は、国会法に基づく正式な議決を経ての国会の休会はありません。

ただ、与野党間の合意での「自然休会」状態になったことはあり、最近の例でいえば、下記の3例が該当します。

平成19(2007)年:第168回国会(臨時会)総理退陣以降表明後
平成23(2011)年:第177回国会(常会)東日本大震災発災後
平成27(2015)年:第189回国会(常会)お盆期間中

独立機関の委員会出席-その2

2021-02-17 | 国会ルール
〇国会法第72条

委員会は、議長を経由して会計検査院長及び検査官の出席説明を求めることができる。最高裁判所長官又はその指定する代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる。

〇国会法第105条

各議院又は各議院の委員会は、審査又は調査のため必要があるときは、会計検査院に対し、特定の事項について会計検査を行い、その結果を報告するよう求めることができる。

前回は、司法権たる裁判所が委員会に出席する場合の国会法の書きぶりが、国務大臣や会計検査院のそれとは大きく異なることを紹介しました。

〇国71(抜粋)委員会は、国務大臣の出席を求めることができる。
〇国72前段(抜粋)委員会は、会計検査院長の出席を求めることができる。
〇国72後段(抜粋)最高裁長官又は代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる


そこで、今回は会計検査院の項目が独立しているのはなぜか、に着目してその理由を紹介したいと思います。

まず、会計検査院の位置付けについて確認します。

〇会計検査院法第1条:会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する。

会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する一方、会計検査院法第30条において、検査官が国会に出席して説明できることも定めています。

国務大臣等と異なる条文で会計検査院長等の委員会への出席説明を置いた理由は、ひとえに会計検査院が内閣から独立する地位に置かれているためです。

国の財政を処理する権限は行政権たる内閣に属しますが、これを国民の代表機関である国会の統制の下に置かなければならない、という原則は財政民主主義を反映したもので、その財政民主主義の一つとして会計検査院の存在があるのです。     
なお、平成9年の国会法改正により、国会から会計検査院に対して特定事項の検査を要請することが可能となっており、これについては約3年半前のエントリー「会計検査院に対する検査要請」をご覧いただければと思います。

さらに、もう一点。会計検査院検査官については、国会同意人事の所信聴取対象者となっています。

内閣から国会に提示される人事案の中でも、日本銀行総裁や公取委員長など、特に重要な幾つかの人事案についてのみ衆参両院の議院運営委員会で所信を聴取し、質疑することとなっており、会計検査院検査官はこの対象なのです。詳細は、約5年前のエントリー「国会同意人事-その2」をご覧いただければと思います。

独立機関の委員会出席-その1

2021-02-16 | 国会ルール
〇国会法第72条

委員会は、議長を経由して会計検査院長及び検査官の出席説明を求めることができる。
最高裁判所長官又はその指定する代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる。


今回は三権分立の観点から、たとえ話を交えつつ、国会のルールを紹介したいと思います。

とある委員会で参考人質疑にあたり、どなたをお呼びするか話題になりました。ある分野の権威で、与野党ともに〇〇氏の話をうかがいたいとなりました。そこで、最新の役職を確認したところ、大学教授兼最高裁判所判事であることが判明しました。

最高裁は言うまでもなく司法権に属します。三権分立の観点から、国会の委員会にお呼びすることはできるのでしょうか。はて、まったく委員会に呼べないのかといえば、そうではありません。

たとえば、裁判所所管事項についての予算や定員に関しては、その説明を裁判所が行う必要があります。実際、現在開会中の国会には、「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案」(閣15号)が2月2日、国会に提出されています。

よって、司法権に関する事項であっても立法の対象となるために、国会法は、最高裁判所に対して委員会に出席説明することができることとしているのです。

ただ、国務大臣や会計検査院長とその書きぶりは全く異なります。

〇国71(抜粋)委員会は、国務大臣の出席を求めることができる。
〇国72前段(抜粋)委員会は、会計検査院長の出席を求めることができる。
〇国72後段(抜粋)最高裁長官又は代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる

国務大臣や会計検査院長は、国会の側に出席を求める権限がある形になっている一方、司法権たる最高裁に関しては国会の側に出席を求める権限がある形をとっていません。

つまり、最高裁に関しては国会の側に出席説明を求める権限はなく、委員会が出席説明の要求を行ったとしても、それによって最高裁側に法的な出席説明の義務が生じるわけではないということなのです。

司法権の独立を、国会法が配慮している証左ではないでしょうか。

委員会への国務大臣の出席

2021-02-12 | 国会ルール
〇国会法第71条

委員会は、議長を経由して内閣総理大臣その他の国務大臣並びに内閣官房副長官、副大臣及び大臣政務官並びに政府特別補佐人の出席を求めることができる。

〇参議院委員会先例録246

内閣総理大臣その他の国務大臣並びに内閣官房副長官、副大臣及び大臣政務官並びに政府特別補佐人の出席要求は、成規の手続を省略して、委員長から直接これを行うのを例とするが、成規の手続により、議長を経由してこれを行った次のような例もある。

各委員会に出席する国務大臣については、それぞれの委員会の所管を踏まえ、各委員会で協議され、決定されています。

なお、各委員会での協議とは、実際には理事会でのそれを指します。

委員会への国務大臣の出席については、国会法第71条で「委員会は、議長を経由して内閣総理大臣その他の国務大臣(中略)の出席を求めることができる」と規定されていますが、実際は、参議院委員会先例録246にあるとおり、「出席要求は、成規の手続を省略して、委員長から直接これを行うのを例とする」運用がとられています。

では、委員会に出席する国務大臣を変更する場合はどうするのでしょうか。これまでは、〇〇委員会に出席していた国務大臣が、△△委員会に出席することになる場合のことです。

これについては、まず、〇〇委員会理事会で協議し、調えば、変更先の△△委員会理事会で協議して、その手続は終了します。

つまり、出席大臣の委員会の変更については、当該委員会が自律的に決めることなのです。

最近の傾向として、これまで例のなかった参考人質疑が議院運営委員会で行われたり、緊急事態宣言の国会報告の場として議院運営委員会が使われたり、と何でもかんでも議院運営委員会で裁けばよい、との風潮があるような気がしてなりません。

仮に、出席大臣の件にしても、当該委員会の理事会で協議が調わなかったため、やむを得ず、議運理事会で方向性を確認したい、ということであればまだしも、当該理事会でそもそも何ら協議も行われていない段階で、議運理事会で委員会の出席大臣変更の方向性を確認しようとすることは筋違いです。

各委員会の所管事項と所管大臣は「表裏一体」の関係にあるかもしれませんが、それを言うなら、規則に定める各委員会の所管事項を協議すべきではないでしょうか。

国会の会期(会期と通年国会にならない理由)

2018-12-11 | 国会ルール
〇国会法第10条 

常会の会期は、150日間とする。但し、会期中に議員の任期が満限に達する場合には、その満限の日をもつて、会期は終了するものとする。

常会の会期は、なぜ150日間となっているのか、そして、なぜ通年国会とならないのか、について紹介したいと思います。

帝国議会は3か月でしたから、それよりも長い会期となっています。その理由は、帝国議会の衆議院国会法案委員会の会議録に残されています。

余談ですが、国会法案委員会は、基本的に逐条審査で行われており、国会法の制定過程やなぜその文言が使われたのかなど、興味深い議論が数多く交わされています。

昭和21年12月19日 第91回帝国議会 衆議院国会法案委員会

衆議院書記官長(現在の事務総長相当)の逐条説明

「常会の会期は150日間、現在の3か月に比べると、2か月の延長となり、審議の充実を期することができる。政府側の臨時法制調査会では4か月とする案が出ていたが、法規委員会で5か月が適当であるということになった。なお、常会の会期を定める必要があるかどうかという点については相当議論があったが、憲法の中に「会期中」という文字を使用してある点、並びに憲法で臨時会を認めた点等を考え合わせ、かつ議員の便宜という点からも会期を認める方が便宜ではないかとなり、この制度をとることとした。」

                    
     昭和21年12月19日 第91回帝国議会 衆議院国会法案委員会

帝国議会を開設するにあたっては、イギリスを始めとする諸外国の制度に倣い、会期制を導入しました。

その理由の中には、通年において国会(議会)が開いていると大臣等が常に国会に呼ばれ、行政効率が著しく悪くなるとの考え方もあったとされています。

実際、国会法を制定するにあたり、衆議院は常置委員会を設置して閉会中も議会における行政監視機能を維持したいとの考えがあったようですが、内閣側やGHQの反対により実現しませんでした。

また、新制度移行時は現在のような複雑多岐に渡る内閣提出法律案は想定していなかったと考えられ、会期制や会期日数についての捉え方も現在とは相違があると思われます。

当時の状況に鑑みると、5か月あれば相応の審議ができると考えられていたのではないでしょうか。

当時は年間でも現在ほど議会の活動日数は多くなかったようですし、書記官長の逐条説明もそのような趣旨を述べているためです。

現在は、会期制が日程闘争の原因と捉え、通年国会制の議論が取り上げられていますが、与野党双方から見て、メリットとデメリットが存在します。

(1)会期終了と同時に廃案にできることのメリット(野党側)
(2)通年制では常に国会で質疑が行われることのデメリット(政府・与党側)
(3)会期の概念があることで逆に法案を審議終了に持ち込める・採決できる

さらに継続審査(閉会中審査)もできることから、結局は現状を変えることができないし、しないのだと考えられます。

もっと言えば、憲法に「会期中」という用語が使用されていること、臨時会の規定があることから、憲法の議論も必要になります。

上記を勘案すれば、通年国会にすればすべて解決、という単純な議論にはならないのではないでしょうか。

委員の異動

2018-10-22 | 国会ルール
〇参議院委員会先例録12

同一議員の委員の変更は、1日1回限りとする

同一議員の委員の変更は、1日1回限りとする。この場合において、第一種、第二種及び国会法第42条第3項の規定により兼務する第一種の常任委員並びに特別委員の変更については、それぞれ別個に取り扱う。

委員の変更については、委員長から委員会に報告するのを例とする。


国会の会議録(ちなみに、衆議院は委員会議録、参議院は委員会議録です)の冒頭に、「委員の異動」として、「辞任」と「補欠選任」が並んでいる箇所をご覧になることがあるかと思います。

今回は、委員の異動、いわゆる委員の差し替えについて、一般に公開されている参議院委員会先例録を元に紹介したいと思います。

例えば、ある程度の規模の会派であれば一年に一度とか会期の前に、所属議員の委員会配置を変更することがあります。

それぞれの議員は、これら配置に基いて、次の配置換えまで軸足を置いて活動する委員会が定まることになります。

ただ、例えば別の委員会で得意分野を活かして質疑に立つときなどは、配置された委員会から異動する必要があります。

その際、委員の異動(いわゆる差し替え)を行う必要があるのですが、そこはルールが定められています。

委員の異動は、1日1回限りと定められていますので、例えば前日に質疑に立つ別の委員会に異動しておく、翌日、質疑が終わったら元の委員会に戻す、というような異動方法が考えられます。

もちろん、質疑当日に別の委員会に異動した場合は、当日は元の委員に戻ることはできません。

また、どうしてもその日は都合が悪くて・・という場合も「差し替え」という形で委員の異動が行われるケースも存在します。

よって、このような形で会派内で委員の異動が繰り返されると、「辞任」と「補欠選任」が入り乱れることにもなるのです。

なお、参議院の場合は常任第一種と第二種という考え方があり、これは区別して考える例になっています。

このテーマから派生する内容で委員会のルールを色々と紹介できそうなのですが、機会を見て書きたいと思います。

一事不再議の原則と同一議案の提出例

2018-07-27 | 国会ルール
○国会法第56条の4

各議院は、他の議院から送付又は提出された議案と同一の議案を審議することができない。


国会法第56条の4はこれまでも紹介したとおり、一事不再議の原則を規定しています。

では、実際どのような場合が考えられるのでしょうか。

そして、なぜこの原則が存在するのでしょうか。

たとえば、衆議院で審査中の議案(法律案)があるとします。

これと全く同一の議案を参議院で発議すると、衆議院から当該議案が万が一送付された場合、一事不再議の原則に抵触することになります。

衆議院から当該議案が送付された場合、参議院提出の議案の審査ができなくなるため、衆参で同一文言の議案の提出を避けてきたのが、議会の先人の知恵です。

ちなみに、参議院においてこの規定が適用されるのは、衆議院から議案が送付された後であり、衆議院段階で当該議案が議決されるまでの間に参議院で同一の議案を提出し、議案を審議しても法規には違反しません。

ただ、先ほど指摘したとおり、同一文言の議案を衆参両院で発議し、衆議院から当該議案が参議院に送付された場合、一事不再議の原則に抵触しますので、このような議案の提出というのは避けられてきましたし、ほとんど例がないのは当然のことなのです。

では、実際のところ過去の例はどうなのでしょうか。

以下のとおりですが、議案名は伏せています。

昭和56年5月 第94回国会
平成14年12月 第155臨時会
平成30年6月 第196回国会

(参考)
一事不再議の原則」平成28年7月4日
一事不再議の原則と衆議院の優越」平成30年7月25日

会期不継続の原則(の例外)-その4

2018-07-24 | 国会ルール
3年ほど前、国会法を引用して、会期不継続の原則とその例外とは何かについて紹介しました。

継続審査(閉会中審査)の手続きは、衆議院と参議院で異なっています。

衆議院では、議院運営委員会で吊るされたままでも継続にすることができますが、参議院では委員会付託したもののみ継続することができます。

平成30年7月22日に閉会した第196回国会で参議院では、「水道法の一部を改正する法律案(閣法第48号)(衆議院送付)」が、内閣提出法律案で継続審査となりました。

反対会派もある中でしたが本法案は厚生労働委員会に付託され、厚生労働委員会と本会議で採決され、多数をもって参議院で継続審査となりました。

本法案は、衆議院は通過しているものの、参議院でその会期内に審議が終わらなかったという状態です。

参議院に送付された法案が参議院で継続審査になった場合、次国会、参議院で審議のうえ、衆議院に送付する必要があります。そして、衆議院でも本会議の採決が必要となります。

というわけで、このような場合、衆議院の厚生労働委員会で質疑終局にとどめて、敢えて参議院に送付しないで衆議院で継続にする、という選択肢が往々にして考えられるだけに、今回、個人的には色々不可解です。

第196回国会における参議院先議法案「医療法及び医師法の一部を改正する法律案(閣法第60号)」の審査を後回しにしてまで、衆議院で水道法改正案の審査をしているので、余計にそう思ってしまうのかもしれません。

参議院先議法案の意味合いから考えれば、当初会期内におさめるべく衆議院で審議されて然るべきですし、会期延長になったとしても、別の閣法審議より優先されるべきだと個人的には考えるからです。

で、ここからは余談です。

参議院先議法案が、参議院で審議のうえ、衆議院で継続となった場合も同様ですが、この場合成立した法案は、今までに15法案しかありません。

(参考)
会期不継続の原則-その1」平成27年5月12日
会期不継続の原則(の例外)-その2」平成27年5月13日
会期不継続の原則(の例外)-その3」平成27年8月11日
衆参のちょっとした違い(閉会中審査・継続審査-その1)」平成28年6月26日
衆参のちょっとした違い(閉会中審査・継続審査-その2)」平成28年6月28日

常会の長期延長

2018-06-25 | 国会ルール
○国会法第12条

国会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。

会期の延長は、常会にあつては1回、特別会及び臨時会にあつては2回を超えてはならない。


当初会期6月20日から32日間の延長となった第196回国会は、7月22日に必ず閉会することとなります。

昭和32年召集の第28回国会で、国会の延長は常会で1回、臨時会と特別会は2回と国会法が改正されているからです。逆に言えば、当該国会法が改正されるまでは何度でも延長できました。

これまで、国会法第12条については幾度か紹介してきましたが、改めて常会の延長事例について紹介したいと思います。最長は、3年前の常会で95日間のダントツ長期間延長となった第189回国会です。

[国会延長幅が大きかった国会]
(常会のみ)

平成27年 第189回国会 95日間
昭和56年 第96回国会  94日間
昭和26年 第13回国会  85日間
平成24年 第180回国会 79日間
平成23年 第177回国会 70日間
平成11年 第145回国会 57日間

ちなみに、昭和26年の第13回国会は、5度にわたる延長を行った珍しい例ですが、現在の国会法ではあり得ません。

[第13回国会の5回延長事例]

1回目:昭和27年5月6日  6月6日まで30日間延長議決
2回目:昭和27年6月6日  6月20日まで14日間延長議決
3回目:昭和27年6月20日  衆参ともに混乱。参議院会議録では、議場騒然
4回目:昭和27年6月30日  7月10日まで10日間延長議決
5回目:昭和27年7月30日  7月31日まで1日間延長議決

会期延長の手続き(再掲)

2018-06-20 | 国会ルール
○国会法第13条

前2条の場合において、両議院の議決が一致しないとき、又は参議院が議決しないときは、衆議院の議決したところによる。


今朝、第196回国会の会期が、延長の方向であることが現実のものとなりましたので、国会が会期延長をする際の手続きについて、改めて紹介します。

まず、官邸と与党が相談して、会期幅を決めます。

1.与党から両院の議長に会期延長の申入れがなされます。(通常は与党幹事長名で会期延長の申入れ)

2.両院の議長は、会期延長について議院運営委員会理事会での協議を命じます。

3.衆参で議院運営委員会理事会が開かれ、会期延長について申入れがあったことが報告されます。

4.衆議院議長が常任委員長会議を開会して、常任委員長より会期延長についての意見を聞きます。

5.衆議院で議院運営委員会が開会、常任委員長会議の結果が報告された後、延長協議は、衆議院から参議院へ移ります。

6.参議院議長は、衆議院議長からの協議を受けて会期延長について議院運営委員会理事会での協議を命じます。

7.参議院で議院運営委員会理事会(2回目)が開かれます。

8.参議院議長が、常任委員長懇談会を開会して、常任委員長等より会期延長についての意見を聞きます。

9.参議院で議院運営委員会理事会(3回目)が開会、常任委員長懇談会の結果が報告された後、結果について、参議院から衆議院に報告されます。

10.衆議院本会議で会期延長の賛否について議決が行われます。

会期延長は、国会法第13条の規定により、衆議院の優越が存在します。

よって、参議院では、会期延長について原則、本会議を開会していません。
参議院本会議で、議題を「会期延長の件」として、会期延長を議決したのは、平成10年10月7日の第143回臨時国会以来ありません。

議院証言法と証人喚問-その2(再掲)

2018-03-27 | 国会ルール
議院証言法と証人喚問-その1(再掲)」では、日本国憲法と議院規則との関わり、ならびに議院証言法について紹介しましたので、今回は実際の証人喚問の流れについて紹介します。

平成30年3月27日は、9時30分から参議院予算委員会、14時から衆議院予算委員会で証人喚問が行われます。

国会関係者ならずとも多くの方が関心を寄せる証人喚問を見守りたいと思います。

○平成30年3月27日(証人喚問当日)

9時30分開会
[参議院予算委員会]

1.人定質問(委員長)
2.宣誓及び証言に関する注意事項説明等(委員長)
3.宣誓(証人)※総員起立
4.宣誓書に署名捺印(証人)

5.委員長尋問(8分)
6.各会派尋問
(自30分、民27分、公15分、共12分、維10分、希会6分、立憲6分、無ク5分)

―証言聴取の終了―
7.証人退室
11時40分散会見込み
     
14時開会
[衆議院予算委員会]


1.人定質問(委員長)
2.宣誓及び証言に関する注意事項説明等(委員長)
3.宣誓(証人)※総員起立
4.宣誓書に署名捺印(証人)

5.委員長尋問(10分)
6.各会派尋問
(自35分、公25分、立憲22分、希望21分、無会6分、共6分、維5分)

―証言聴取の終了―
7.証人退室
16時10分散会見込み

(罰則)
正当の理由がなくて宣誓又は証言を拒んだとき、虚偽の陳述をしたときは刑罰に処せられる(議証法4、6、7条)。

なお、本エントリーは、平成30年3月27日0時30分現在のものです。

政府4演説に対する質疑

2018-01-25 | 国会ルール
○参議院先例録302

国務大臣の演説に対する質疑は、演説の翌々日以降に行うのを例とする

国務大臣の演説に対する質疑は、当初演説の翌日以降にこれを行うのを例としたが、第41回国会以降は演説の翌々日以降(常会及び総予算を審議する特別会については演説後3日目から)に行うのを例とする。

なお、質疑の日数は、常会及び総予算を審議する特別会においては2日間、臨時会及び特別会においては1日又は2日間とするのを例とする。


1月24日(水)の衆議院本会議から、政府4演説に対する代表質問が始まりました。

政府4演説の聴取は、1月22日(月)の衆参本会議で聴取していますので、1日空けた格好になっています。

また、政府4演説の場合、衆参両院で3日間行われることになっています。

1日目:衆議院(午後)
2日目:参議院(午前)、衆議院(午後)
3日目:参議院(午前、午後)

というわけで、1月25日(木)は2日目にあたりますので、午前が参議院、午後が衆議院ということになります。

質疑順序は、基本的に大会派順ですが、最大会派が与党である時は、最初の質疑者に限り、野党の最大会派の所属議員とする例がほとんどです。

今回は、野党の最大会派が衆参で異なっている状態で、下記の質疑順でした。

1月24日(1日目)衆院 1.立憲民主党代表、2.自民党幹事長
1月25日(2日目)参院 1.民進党代表、2.自民党参院幹事長

なお、政府4演説及びその質疑が行われる本会議には全ての大臣が出席し、議場の大臣席(ひな壇)に着席します。

国会の開会式

2017-11-26 | 国会ルール
○国会法第8条

国会の開会式は、会期の始めにこれを行う。


明治憲法下では帝国議会の開院式を経て国会が開会されていましたが、現行憲法下では開会式は儀礼的なものになっています。

なぜ現行憲法下で開会式は儀礼的なものになったのでしょうか。

それは、明治憲法下においては、帝国議会の召集と開会は区別され、召集のみならず、開会から衆議院の解散に至るまで天皇の大権とされていたからです。

よって、帝国議会は召集されただけでは活動能力を取得できず、開院式における天皇の開会の勅語によって活動能力を取得したのです。

現行憲法下においては、召集によって集会した以上、院の構成など会議体として活動し得る条件を満たしてさえいれば、すぐに活動を開始できることから、法律的観点に立てば開会式を行う必要はありません。

ただ、国会法が制定される際、国会は国権の最高機関である以上、儀式として開会式を行う必要があるとの考えの下、開会式の項目は残ったのです。

開会式は、召集日の当日に行うことがほとんどですが、会期最終日に開会式を行った例が3例あります。いずれも特別会で会期は3日間です。

平成12年 第148特別会
平成24年 第182特別会
平成26年 第188特別会

そして、衆議院の解散により開会式を行うに至らなかった例は5例あります。

昭和27年 第14回国会
昭和41年 第54回国会
昭和61年 第105回国会
平成8年 第137回国会
平成29年 第194回国会

なお、国会の閉会にあたっての儀式は特に行われません。帝国議会では、勅命により衆議院、貴族院両院議員が会同して閉会式を挙行すべきものと定められていました。

各派協議会

2017-11-08 | 国会ルール
平成29年11月1日に召集された第195回特別会は、第48回衆議院総選挙を経た特別会です。

参議院は院の構成に変化がありませんから、国会召集のための協議は、従来どおり議院運営委員会理事会で行われましたが、衆議院は、総選挙後の特別会が召集されるまで、議長・副議長はもちろん、議院運営委員長も議院運営委員も存在しません。

このため、議院運営委員会に代わるものとして、総選挙後初めて開かれる国会の召集日前に、事務総長が各会派の代表議員の参集を求め、「各派協議会」が開かれています。

「各派協議会」は、法規上の機関ではなく、衆議院先例上の機関であるため、議院運営委員会が構成されれば、以後は開かれることはありません(衆議院先例集142)。

[各派協議会の構成]

1.出席要請
総選挙後、事務総長は総選挙で2議席以上を得た政党に対し、その代表者に「各派協議会」への出席を要請します。また、無所属議員で会派を結成し届け出た場合にも出席を要請します。

2.議事の主宰者
「各派協議会」の座長は、かつて事務総長が務めていましたが、昭和42年総選挙後の第55回特別会において、前議運委員長が座長に選出されてからは、これに倣う例が多くなっています。

3.公報への記載

「各派協議会」は、法規上の機関ではありませんが、総選挙後初めて開かれる国会の召集詔書発出後に発行される衆議院公報には、会議の予告がなされ、議事経過についてはすべて公報に記載されます(衆議院先例集468)。

第195回特別会召集日の衆議院本会議で、議長・副議長の選挙、議席の指定を経て、議院運営委員と議院運営委員長が選任・選挙されましたので、今度各派協議会が開会するのは、次回の総選挙後、ということになります。