議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

衆参のちょっとした違い(閉会中審査・継続審査-その2)

2016-06-28 | 国会ルール
○参議院先例録134

委員会及び調査会が閉会中もなお審査又は調査を行うには、議院の議決を要する

常任委員会、特別委員会及び調査会から、特定の案件について閉会中もなお審査又は調査を行うため、継続審査又は継続調査の要求書が提出されたときは、議長は、まずその取扱いについて議院運営委員会理事会に諮った後、議院の会議においてこれを議決する。


前回「衆参のちょっとした違い(閉会中審査・継続審査-その1)」でも触れましたが、議案の継続審査は、委員会からの要求を待って議院が議決するというのが原則であることを紹介しました。

しかし、衆議院においては、国会法第47条第2項の

「各議院の議決で特に付託された案件については、閉会中もなお、これを審査することができる」

を文理解釈し、委員会からの申出がない場合であっても、議院の議決により委員会に閉会中審査を行わせることができるとしています。

実際、衆議院先例集には、閉会中審査は委員会の申出に基づいて付託されるのが例としつつ、

委員会の申出がない場合等においても、議長は議院運営委員会の決定に基づき議院に諮り、議院の議決で閉会中審査案件とて付託されたことがある」

との記述があります。

衆議院規則は、参議院規則第53条と同種の規定がなく、議院が、委員会の申出がない議案について、閉会中審査を行わせる議決をすることがあり、これを院議継続と呼んでいます。

もちろん、参議院に院議継続の例はありません。

衆議院における院議継続の最近の例は、第172回国会、平成21年9月18日の議院運営委員会です。

この時期は、政権交代直後で、院の構成が確定していなかったことが院議継続をとることとなった要因のひとつでした。

衆参のちょっとした違い(閉会中審査・継続審査-その1)

2016-06-26 | 国会ルール
○参議院規則第53条

委員会が、閉会中もなお特定の案件の審査又は調査を継続しようとするときは、理由を附して文書で議長に要求しなければならない。

前項の要求があつたときは、議長は、これを議院に諮らなければならない。

上記は、閉会中審査の手続きにかかる参院議院規則です。他方、衆院議院規則には、同種の規定が存在しません。

なぜなら、閉会中審査の手続きが、衆参で大きく異なる部分があるためです。

今回の衆参のちょっとした違いは、閉会中審査に関して紹介したいと思います。

これまで、「会期不継続の原則-その1」や「会期不継続の原則(の例外)-その2」において、会期中に議決に至らなかった案件は、本来、後会に継続しないこと、例外として、議院の議決により特に付託された案件を閉会中も審査することができることを紹介しました。

なお、閉会中に案件を継続して審査することを、衆議院では閉会中審査といい、参議院では継続審査と呼んでいます。

閉会中審査・継続審査の原則は、委員会から理由を附して文書で議長に要求し、議長はこれを議院に諮り、議院の議決によりその案件が付託されるという流れです。

参議院には原則以外の方法はありませんが、衆議院では議院運営委員会の申出により、議院の議決でその案件が付託されることもあり、これが衆参で大きく異なる点です。

詳しくは、次回紹介したいと思います。

衆参のちょっとした違い-国会事務局の定員

2016-06-24 | 雑感
第189回国会、平成27年4月17日の委員会や本会議で、衆議院、参議院事務局職員定員の件が諮られ、それぞれ定員が変更されました。

この際、衆議院では議院運営委員会のみで決定し、参議院は議院運営委員会で諮った後、本会議でも諮られました。

衆議院と参議院の本当にちょっとした違いですが、個人的に気になるのは、参議院本会議の本件に関する以下のくだりです。

[平成27年4月17日 参議院本会議]

○参院議長
この際、参議院事務局職員定員規程の一部改正に関する件についてお諮りいたします。議長は、本件につきまして議院運営委員会に諮りましたところ、議席に配付いたしました参議院事務局職員定員規程の一部を改正する規程案のとおりとする旨の決定がございました。

これでは、参議院会議録を読んでも内容がさっぱり分かりません。もちろん、前段の議院運営委員会の会議録を読めば分かりますが、「議席に配布いたしましたとおり」という文言を会議録に残すのはどうかな、というのが従来からの疑問点ではあります。

で、平成27年4月17日に決定された現行の衆参の国会事務局職員定数は、衆議院事務局:1,615人、参議院事務局:1,212人です。

衆議院のWebページを見ると、「職員数は、約1,650人です。」となっており、これまた個人的に気になる点です。

人事異動を行うにあたっては、異動に馴染まない部署を除した人員で行う必要があるとは承知していますが、色々難しいですね。

「議会雑感」開設500日

2016-06-22 | ひとこと
第24回参議院通常選挙が公示となる平成28年6月22日、偶然にも「議会雑感」開設500日目と重なりました。
                     
思いつきで始めたブログですが、継続的にご覧いただいている方もいらっしゃって、本当に嬉しい限りです。ありがとうございます。

最近は、更新が滞りがちになり反省しきりですが、政治を少しでも身近に感じていただき、政治に少しでも関心を持っていただけるきっかけになればとの思いで、細々とであっても、まだしばらく続けていくつもりです。

また、個別の政策の是非には触れないこと、匿名であること、という従来からのスタンスは、これらについても、まだしばらく続けていくつもりです。

個別の政策論ではなく、国会運営のルール等の紹介を通じて、政治への距離感を縮めていただけるのであれば、これほど嬉しいことはありません。

今後ともよろしくお願い致します。
            

予算委員会における質疑の範囲

2016-06-16 | 国会雑学
○貴族院委員会先例録123

予算委員会に於ける質疑の範囲に関する例

委員会に於ける質疑の範囲は、貴族院規則第16条の規定に依り、付託事件外に渉ることを得ざるも、予算委員会における質疑に関しては、第22回議会以降、必ずしも予算案の款項に限定せられず、廣く国務各般に亙り質疑を為すを例とす。而して細部に亙る問題に関しては、其の発言を分科会に譲るを例とす。

※上記平仮名部分は本来すべてカナ表記ですが、ご覧いただきやすいよう平仮名に置き換えています。


第24回参議院通常選挙とこれに伴う院の構成が終わった後、今年こそ秋に臨時会が召集されると思いますが、その際、予算委員会が開かれることになります。

全閣僚出席の際はTV中継も入りますし、言うまでもなく、予算委員会は注目される委員会です。

「予算委員会は、予算のことを審議すべきじゃないのか」というご質問をいただくことがありますが、これに関しては、「予算委員会と政治スキャンダル」でも紹介させていただきました。

予算委員会の所管はその名のとおり、予算であり、国のあらゆる収支支出が定められ、あらゆる事項に及ぶものです。よって、その審査にも事項的な制限はないのです。

というわけで、スキャンダルが取り上げられることも多いのですが、では、予算委員会で何でも取り上げるようになったのはいつからなのでしょうか。

古くは、帝国議会にまで遡ります。

第22回帝国議会以降、必ずしも予算案に限定せず、国務全般に渡って質疑を行うことを例としたのです。実に、明治39年、1906年のことです。

もちろん、今の参議院委員会先例録に掲載されていることではありませんが、ちょっとした国会雑学でした。

参院議員半数の任期満了に伴う謝辞-その2

2016-06-14 | 国会雑学
参院議員半数の任期満了に伴う謝辞-その1」では、議員の半数が任期満了を迎える会期末の本会議では、議長が挨拶を述べ、任期満了となる議員を代表して年長議員が謝辞を述べる例となっていることを紹介しました。

この根拠は、参議院先例録552にあり、昭和31年5月24日の議院運営委員会理事会の決定にあります。

第24回国会昭和31年5月24日、議院運営委員会理事会は、謝辞は任期満了となる議員中の年長者が行うほか、他に条件を付けないこととしたのです。

しかしながら、実はそうでなかった例、つまり先例に従わなかった例が、これまで数例存在します。

第114回国会 平成元年6月22日
第159回国会 平成16年6月16日
第166回国会 平成19年7月5日

これらの共通項は、それぞれの本会議において、任期満了となる議員を代表して年長議員ではなく、元議長が謝辞を述べていることです。

任期満了議員のうち、元議長が年長議員であれば先例どおりとなりますが、少なくとも上記3例においては、元議長は年長議員ではありませんでした。

これは、第24回国会昭和31年5月24日、議院運営委員会理事会の決定事項に反します。なぜなら、謝辞は任期満了となる議員中の年長者が行うほか、他に条件を付けないこととしたためです。

上記3例は、先例に反して元議長が謝辞を述べましたが、このときの年長議員は、すべて野党議員でした。議院運営委員会に理事を出せない小会派や無所属の議員だったのかもしれません。

上記3例の元議長は、言わずもがな、第一会派の与党議員です。

第一会派であれば議院運営委員会に理事を出していますし、元議長が任期満了で勇退する際、最後に謝辞を述べる機会を与えたい、と与党の議運理事が主張すれば、それを数の少ない野党側が声高に否定することも難しかったことでしょう。

しかしながら、先例は先例であり、ちょっとしたことであっても、尊重されてしかるべき理由がある議会の先人の知恵の積み重ねです。

最近の傾向として、三権の長である議長を経験しても、さらにもう一期、議員として任期を重ねる例も増えてきています。これまでは、議長を経験すれば、その任期をもって勇退される議員が多かったように思いますが、最近は必ずしもそうではありません。

だからこそ、元議長が最後に謝辞を主張するようであれば、これからも先例は崩されていくでしょうし、年長議員でない元議長が謝辞を述べるのであれば、先例を変更するのが筋でしょう。

平成28年6月1日に閉会した第190回国会では、任期満了となる議員のうち、年長議員ではない、野党の元議長がいました。

9年前と12年前は、年長議員ではなく、元議長が謝辞を述べていたこともあり、今回はどうなることかと見守っていましたが、先例を遵守すべきという考えのもと、今国会は9年ぶりに議長挨拶と議員謝辞が行えたと同時に、先例どおり、年長議員による謝辞となりました。これは、実に15年ぶりのことでした。

今回は、年長議員の所属会派に関わらず、先例が守られたということです。

参院議員半数の任期満了に伴う謝辞-その1

2016-06-13 | 国会ルール
○参議院先例録552

議員の半数の任期満了に当たっては、議長が挨拶を述べ、議員から謝辞を述べるのを例とする

議員の半数の任期満了に当たっては、議長は、その会期の最終の会議終了に際して挨拶を述べ、任期満了となる議員を代表して年長議員が謝辞を述べるのを例とする。

(注)
第15回国会閉会後の参議院緊急集会昭和28年3月20日の議院運営委員会において、任期満了となる議員のうち、次の通常選挙に立候補しない年長議員が謝辞を述べる旨を決定した。

第24回国会昭和31年5月24日の議院運営委員会理事会において、謝辞は任期満了となる議員中の年長者が行うほか、他に条件を付けないこととした。

平成28年6月1日、第190回国会は会期末を迎えました。今期は参議院議員の半数が任期を迎え、7月には第24回参議院通常選挙が執行されます。

今国会では先例に基づき、実に9年ぶりに議長が挨拶し、議員から謝辞が述べられました。

参議院議員半数の任期満了に伴い、その会期の最終の会議終了に際して挨拶が行われた直近の例は、9年前の第166回国会平成19年7月5日まで遡るのです。

つまり、第22回参院選前の平成22年の会期終了日、第23回参院選前の平成25年の会期終了日は、半数の議員が任期満了となるにも関わらず、議長の挨拶も、議員の謝辞も行えるような状況にはなかったことを意味しています。

この間、何があったのかといえば、いわゆる「ねじれ国会」でした。

平成19年の第21回参院選において、野党が第一会派となり、衆参で与党と野党の多数が異なるねじれ現象が誕生したのです。そして、その後、当該野党が政権交代を果たしました。

しかし、平成22年の第22回参院選においても、野党が第一会派となり、再びねじれ現象が誕生し、参議院においては難しい運営を強いられる状態が長く続くこととなったのです。

よって、平成22年と平成25年の会期終了日は、混乱の末、議長の挨拶も議員の謝辞も行えませんでした。

ただ、平成25年の第23回参院選において、ねじれ現象は解消され、また今国会においては、与野党が激しく対立するであろう内閣提出法律案は、第24回参院選後の審議とすることを行政府が選択したため、会期末に大きく混乱することはありませんでした。

今回、9年ぶりに挨拶や謝辞が行えた所以ですが、次回は、先例に沿っていなかった挨拶の例を紹介したいと思います。

国会事務局-その4

2016-06-10 | 国会ルール
○国会法第43条

常任委員会には、専門の知識を有する職員(これを専門員という)及び調査員を置くことができる。


国会事務局-その1」では、議会制民主主義が所与のものではないこと、数えきれないほどの多くの先人がその実現を目指して奔走した結果、勝ち取ってきたものであることを紹介するとともに、国会事務局は、その議会制民主主義を支えることを使命としていることを紹介しました。

同時に、国会事務局は、運営面から本会議・委員会をサポートする会議運営部門、内容面からサポートする調査部門、院の活動を多角的にサポートする総務部門の3部門で成り立っていることも併せて紹介しました。

今回は、調査部門、特に国会法第43条に規定されている専門員について触れたいと思います。

調査部門のうち、常任委員会調査室の室長=専門員は、専門の知識を有する職員がその職責にあたり、委員会の会議録にも事務局側の出席者として、「常任委員会専門員○○○○君」として記録が残ります。

ちなみに、特別委員会調査室の室長の場合は、会議録に事務局側出席者として掲載されますが、「特別調査室長○○○○君」であり、専門員としての表記はありません。

専門員は、立法府たる国会の機能を高めるため、国会法上も明確に位置づけられており、その人事は議院運営委員会で扱われてきましたが、今は議院運営委員会理事会(秘密会)で扱われるのみです。

衆議院において議院運営委員会で「事務局の人事承認の件」として最後に扱われたのが、昭和57年12月24日。参議院においては、「常任委員会専門員任用の件」として、昭和58年12月26日が最後となっており、会議録で専門員人事の記録を辿れるのは衆参通じて昭和58年までです。

国会法上、その職責を明記されている国会職員は、「事務総長」と「専門員」のみです。

事務総長は、院の会議、つまり本会議で選任されますから、もちろん会議録に記録が残ります。事務総長と同様、国会法に明記されている専門員の人事も、会議録に記録が残る議院運営委員会で扱うべきではないでしょうか。

追記:国会職員として、調査員として、矜持と誇りを持って長年ご活躍された、とある専門員の方のご冥福を心からお祈りしています。

国会のシンボル議事堂中央塔-その1

2016-06-08 | 国会雑学
平成15年9月3日夕刻、激しい雷雨が都心を襲い、国会議事堂の尖塔にも落雷し、その一部が破損しました。衝撃的な映像でしたので、記憶にある方も多いのではないでしょうか。

さて、その議事堂中央塔ですが、衆議院・参議院の中間地点に位置する国会のシンボルともいえる建造物です。

そこで、今回は、落雷に際し議事堂中央塔の補修に要した経費と、議事堂中央塔が衆参どちらの所管なのかについて紹介したいと思います。

まず、落雷による破損の修復等に要した費用は、合計で約5,400万円です。その内訳は、石材の修復に約3,500万円。避雷施設の補修、増強に約1,900万円となっています。

衆参の経費の負担としては、議事堂中央塔部分については、施設管理が参議院となっている関係で、修繕経費については、すべて参議院側の負担となりました。

修繕経費については、予備費の使用も検討されましたが、議事堂中央塔は国会のシンボルたる施設でもあり、早急に修復を行う必要があるとの判断から、予備費の使用のために必要な手続きを待つことなく、既定経費のやりくりで対応しています。

というわけで、議事堂中央塔部分は、参議院所管です。

では、なぜ参議院の所管なのでしょうか。

国会議事堂は、昭和11年に竣工しました。昭和11年10月20日、建築を担当した大蔵省営繕管財局より、当時の貴族院及び衆議院が引き渡しを受けたという記録は残っています。

ただ、その際、貴族院への国有財産目録の写しには、塔屋の8階及び展望階との記述がありますが、その他の管理区分については記録が残っていないのです。

こうした経緯もあり、参議院の発足に伴い新たに整理した参議院の国有財産台帳では、2階の中央車寄せ、中央広間、大臣室等、3階の御休所、皇族室等及び5階以上の中央塔部分は参議院側の管理となりました。

一部では都市伝説と言われることもある8階以上の議事堂中央塔部分について、いつか紹介したいと思います。
           

内閣不信任決議案とは-その2

2016-06-04 | 国会雑学
内閣不信任決議案とは-その1」では、日本国憲法第69条の規定を引用して、内閣不信任決議案について紹介しましたが、今回は、その扱いについて学説上の紹介をしたいと思います。

内閣不信任決議案が出た場合の考え方です。

内閣の存在は、国政にとって1日も欠くことのできないものです。

その内閣を内閣総理大臣の指名を通じてつくるのが国会の責任ですから、その内閣の存立に関わる問題=内閣不信任決議案が提出された場合は、一刻も早く解決しない限り、国政の停滞を避けることができないとされています。

すなわち、内閣が提出した法律案等を審議する国会で、その内閣に対して不信任決議案が提出された場合は、全ての内閣提出法律案も国会で審議できない状態になる、との解釈です。

第190回国会の最終盤である、平成28年5月31日(火)13時1分、衆議院に内閣不信任決議案が提出されました。

火曜日は、参議院の常任委員会の定例日です。

会期末前日ですが、衆議院から送付されてきた法案審査を終えるべく、内閣・法務・農水・国交の4常任委員会が開会し、法案等の審査を行っていましたが、内閣不信任決議案が提出される前に、すべての委員会採決は終わっていましたので、審議中断という事態には至りませんでした。

内閣不信任決議案は、別の院であっても委員会審査を中断せざるを得ないような重いものです。