議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

議院規則と先例

2020-07-26 | 憲法
○日本国憲法第58条第2項

両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。 

憲法第58条第2項は、議院規則を定めています。

議院規則とは、議院の会議その他の手続及び内部の規律に関して各議院の議決によって定められる法規範のことです。

衆議院には衆議院規則が、参議院には参議院規則が存在し、議院自身が国会外の機関や他の議院の干渉を受けることなく、議院内部に関する事項について規定し、議院自律権の重要な内容を定めているのです。

憲法上、各議院の内部事項は議院規則で規定するよう定められていますが、実際には、国会法が憲法との間に介在する形をとっています。そのため、議院規則は国会法の施行細則を定めたような様相を呈しており、各議院の内部組織の改編を行う場合にも、国会法の改正が必要となっています。

例えば、昭和61年に参議院独自の機関である調査会の制度が創設されましたが、この場合にも国会法及び参議院規則の一部改正を行いました。ただ、直近の平成30年参議院改革協議会報告書に基づく行政監視機能強化に関しては、国会法の改正はせず、参議院規則の一部改正にとどまっています。

国会法の改正は、衆参両院の本会議を通過させないといけませんから、双方の院に関係しない場合、特に国会法の改正は大変です。参議院の調査会制度創設のときがそうだったように。

なお、議院規則は議院の内部事項を対象とする法規範であるため、その制定・改正については公布が必要とされていません。しかし、各議院の活動は単に議院内部にとどまるものではなく、国民や内閣など外部との関わりを持つことも例外的なことではありません。そのため、議院規則の改正等については、法律の公布と同様に官報に掲載され、国民に周知されるよう取り扱われています。

これに対し、先例とは、議事関係法規に規定のない事項、その解釈に関する事項その他議院の運営に関する事項についての前例であり、議院の運営につき議事関係法規とともに拠りどころとなっているものです。

国会は、憲法、国会法及び衆参議院規則などの議事関係法規に従って運営されていますが、これらの法規だけであらゆる事態に対応することは不可能です。

例えば、憲法第67条第1項において、内閣総理大臣の指名は他のすべての案件に先立って行うよう定められています。ただし、実際の議事運営においては、議員の議席指定や正副議長の選挙など議院の構成のように、内閣総理大臣の指名に先立って進めるべきものもあり、これら議事日程の編成については先例に書き込まれています。

このように、法規の内容では足りないところを補充しながら円滑な議事運営を図るため拠りどころとなるのが先例であり、議会の先人が積み重ねたものである以上、その存在は重いのです。

○日本国憲法第67条第1項

内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。 

国会回数の内訳-その3

2020-07-25 | 国会雑学
先月、6月17日、第201回国会は延長されることなく150日間の会期を終え、国会は閉会しました。

議会雑感ブログを始めたばかりの時期に「通常国会の召集時期と回数」で昭和22年5月20日、初めて召集された国会を「第1回国会」と呼び、以降は、常会・臨時会・特別会を問わず、会期ごとに順次回数を追って第〇回国会と呼ばれていることを紹介しました。

既に200回以上を数えた国会ですが、その内訳はどうだったのかについて、改めて紹介したいと思います。

〇常会  70回
〇臨時会 106回
〇特別会 25回

これまでの国会の中で臨時会の回数が最多ということもあり、今回は、臨時会で会期が長かったものについて、幾つか紹介したいと思います。

[臨時会で会期が長かった例]

163日間:昭和63年 第113臨時会
135日間:平成5年 第128臨時会
128日間:平成19年 第168臨時会
106日間:昭和50年 第76臨時会


第202回国会は臨時会のはずですが、それが半日で終わったり、特別会か常会になったりしやしないかどうなんだか、ちょっと気になっています。

筆者としては、令和2年7月豪雨や新型コロナウイルス感染拡大状況がありながら、内閣が主体的に臨時会の召集を決定しないのであれば、立法府は憲法第53条後段の規定に基づき、臨時会の召集要求をすべきではないかと思います。

国会回数の内訳」 平成27(2015)年12月25日
国会回数の内訳-その2」 平成29(2017)年11月1日

参議院改革協議会等の設置と主な実績

2020-07-21 | 国会雑学
我が国の国会は、衆議院と参議院で成り立っています。

憲法上の規定により、衆議院には幾つかの点で優越がありますし、衆議院で独自性や存在意義が問われることはありませんが、参議院においてはその独自性や存在意義が問われる時代もありました。

今は、衆参問わず立法府の存在意義が問われかねない状態にあると考えていますが、よりそれが問われるのは、どうしても参議院になるのではないでしょうか。

参議院は昭和52年以来、議長の下に参議院改革協議会を設置し、各会派合意の下で様々な改革を行ってきました。例えば、衆議院にはない「押しボタン式投票の導入」や「決算の参議院」などは最も分かりやすい例かもしれません。

そこで、今回はこれまで設置された参議院改革協議会と主な実績について紹介します。

最下部のリンクは、参議院改革の結果設置された行政監視委員会と調査会について過去に書いたものです。

参議院における「行政監視機能の強化」については、直近の参議院改革協議会報告書に依るものですので、改めて書きたいと思います。




決算の提出時期」 平成28年2月1日

参議院の行政監視委員会-その1」 令和元年5月20日
参議院の行政監視委員会-その2」 令和元年5月24日
参議院の行政監視委員会-その3」 令和元年6月14日

参議院における調査会-その1」 平成28年9月27日
参議院における調査会-その2」 平成28年9月28日
参議院における調査会-その3」 平成28年9月29日
参議院における調査会-その4」 平成28年10月13日
参議院における調査会-その5」 平成28年10月14日
参議院における調査会-その6」 平成28年10月15日
参議院における調査会-その7」 平成28年10月17日

議会雑感ブログ再開と国会の1年

2020-07-20 | 国会雑学
平成27(2015)年2月8日に始めた議会雑感ブログ。

当初は筆者自身の備忘録と勉強を兼ねたものでしたが、国会のルール等を紹介することで、一人でも国会や政治に興味を持っていただければとの思いで続けたところ、多くの方に激励をいただき、心から感謝しています。

更新頻度は少なくなっても細々と続けましたが、令和元(2019)年7月、筆者にとってひとつの節目を迎えたことや国会の現状を見るにつけ、更新できない状態が1年以上続きました。

ただ、いつまでも憂いてばかりじゃいられない。少しずつでも更新しよう、と思うにいたりました。

議会雑感ブログで書いたこと、書いていないことを含め、論文にしたい材料が幾つかあります。

書いて残すことによって、後世の国会運営に少しでも役立ったり、教訓になったりするのであれば、今の時間を活かして書きたいとも思っています(が、何に向かって書けばよいかのモチベーションがわきません)。

とにかく今は、議会雑感ブログを少しずつ再開することにします。

先日、国会のルール等について話して欲しいと後輩の皆さんから依頼があり、国会ルール等について1時間ほどお話しさせていただきました。

今回は、そのとき最初の項目で使った資料(国会の1年)を紹介して再開といたします。

なかなか更新できないかもしれませんが、閉鎖することなく、細々とでも続けてまいります。今後ともよろしくお願いいたします。