議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

国会審議活性化法と国家基本政策委員会-その2

2017-06-29 | 国会雑学
平成29年6月18日に閉会した第193回国会は、国家基本政策委員会に関しても、前例のない国会となりました。

平成11年に制定された国会審議活性化法に基づき、国家基本政策委員会が設置されて以降、常会で1回も国家基本政策委員会で党首討論が開かれなかった初例となってしまったからです。

なお、国家基本政策が開会され、党首討論が行われた直近の例は、昨年の第192臨時会、平成28年12月7日です。

第1回の国家基本政策委員会は、第147回国会の平成12年2月23日に行われ、自民・民主の党首討論を皮切りに、同国会では実に6回もの国家基本政策委員会(党首討論)が行われました。

国会ごとの開催回数は、制度導入の第147回国会の6回が最多で、平成13年の第151回国会、平成15年の第156回国会では5回と続き、国家基本政策委員会の設置当初は回数も多かったのですが、最近は1国会1~2回とその開催すら難しくなっています。

そして、ついに第193回国会は、国家基本政策委員会が1回も開かれることなく閉会し、制度創設後、ただの1度も党首討論が行われない初めての常会となってしまったのです。

第193回国会は、政府参考人制度が目指した趣旨に反して法案審査中における特定政府職員の包括議決をし、さらには国家基本政策委員会も1回も開かれず、国会審議活性化法の理念と逆行する形となってしまった国会だったといえるのかもしれません。

(参考)
国会審議活性化法と国家基本政策委員会-その1
国会審議活性化法と政府参考人制度-その1
国会審議活性化法と政府参考人制度-その2

国会審議活性化法と政府参考人制度-その2

2017-06-25 | 国会ルール
平成29年6月18日に閉会した第193回国会では、政府参考人に関し、前例のないことが行われた国会となりました。

これは、衆参法務委員会で起こりました。

第193回国会において、衆参法務委員会は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(以下、組織犯罪処罰法改正案)の審査中、法務省刑事局長を政府参考人として、出席を求めることを多数決で議決したのです。

既に紹介した政府委員制度と異なり、政府参考人制度は、国会審議活性化法成立後、副大臣・大臣政務官を創設し、行政府の議員を増やすことで立法府における議員同士のやり取りを基本としました。

ただし、細目的・技術的事項について説明を聴く必要があるときに限り、政府職員を政府参考人として出席を求めることにしたのです。

だからこそ、政府職員は質疑者要求に基づき、理事会で協議を行い、必要と認めた場合には、委員会で議決し、その出席を求めることになっているのです。

よって、第193回国会において衆参法務委員会が、反対会派がある中で、出席を求める政府職員を特定し(今回の場合、法務省刑事局長)、法案の審査中、包括して政府参考人として出席を求める議決を行ったような例は、これまで前例がなかったのです。

衆参ともに、組織犯罪処罰法改正案の審査中、質疑者の要求に関わらず、法務省刑事局長は、法務委員会にずっと出席し続けました。

所管の法務大臣に先んじて、挙手し、政府職員である法務省刑事局長が答弁に立つ場面が頻繁に繰り返されました。

このように、特定の政府職員を法案審査中、包括して政府参考人として出席させる趣旨の議決を行い、出席させ続けることは、行政府側の都合で政府職員を立法府の委員会に出席させることを可能とすることにも繋がります。

これは、行政府の都合で一方的に政府職員を出席させていた、かつての政府委員制度と何ら変わりはないことになります。

立法府たる国会は、何のために平成11年に国会審議活性化法を成立させ、政府参考人制度を導入したのでしょうか。

今回の衆参法務委員会における政府参考人の包括議決は、特定の政府職員を、行政府の意を汲んで委員会に出席させることを可能にするという意味で、国会審議活性化法や政府参考人制度の趣旨に反するものであり、立法府の対応として問題であると指摘せざるを得ない、そして、二度と繰り返してはならない残念な例と言えるでしょう。

国会審議活性化法と政府参考人制度-その1

第193回国会閉会

2017-06-22 | ひとこと
平成29年6月18日、第193回国会は150日間の会期を終え、閉会しました。

議会人として、思うところ、感じるところ、数多くの出来事があった150日間でもありました。

先週はブログの更新が叶いませんでしたが、この間、非常に多くのアクセスをいただいており、「中間報告」について前もって掲載しておくべきだったと、今更ながら思っているところです。

書きかけの記事もありますし、更新頻度に自信はありませんが、議会人としての矜持を持って、少しずつ更新していこうと思います。

ところで、今、色んな思いを抱えています。

永田町や国会周辺は、ある意味において社会から閉ざされた空間であり、特殊な空間であるといって差し支えないでしょう。

その中で働く事務局職員も秘書も議員も、その閉ざされた空間で働いているという自覚を常に持つべきだと考えます。学校を卒業して、最初の就職先が国会事務局や秘書であれば、もしかしたら理解し難い感覚かもしれません。

もちろん、国会は憲法に規定されているとおり、国権の最高機関であり、唯一の立法機関です。尊い仕事を担っていることに相違ありません。

ただ、ある意味において永田町や国会周辺は、社会から閉ざされた空間であり、特殊な空間なのです。

私は、その閉ざされた空間の中で、上ばかり見て働く人にはなりたくないし、保身や出世だけ考える人にもなりたくない、人を陥れる人にもなりたくない、議会人としての矜持を常に持っていたい、そして永田町や国会周辺以外を常に見ていたい、強くそう思います。

私は、議会の先人が築いた法規・先例に則り、国民のため、議会制民主主義の発展のために力を尽くします。

国会審議活性化法と政府参考人制度-その1

2017-06-08 | 国会ルール
○衆議院規則第45条の3

委員会は、前条の規定にかかわらず、行政に関する細目的又は技術的事項について審査又は調査を行う場合において、必要があると認めるときは、政府参考人の出頭を求め、その説明を聴く。

○参議院規則第42条の3

委員会は、前条の規定にかかわらず、行政に関する細目的又は技術的事項について審査又は調査を行う場合において、必要があると認めるときは、政府参考人の出席を求め、その説明を聴く。(以下略)


平成11年に制定された国会審議活性化法は、中央省庁の再編・改革と時を同じくしながら、以下のことを規定しました。

1.国家基本政策委員会の設置
2.政府委員制度の廃止
3.政務次官の増員と副大臣・大臣政務官への移行
4.政府特別補佐人の本会議・委員会への出席

国家基本政策委員会については、前回、改めて紹介しましたので、政府委員制度の廃止について、その意義を含め紹介します。

明治憲法下では、政府委員に選任された官吏は、議院に出席し、発言する権限が与えられていました。

つまり、明治憲法下の帝国議会時代は、行政府の都合で、政府委員を一方的に国会に出席させ、発言できる権限を政府委員に与えていたのです。

日本国憲法では、政府側にあって議院に出席し、発言できる者を「内閣総理大臣その他の国務大臣」と規定し、政府委員の文言は削除されましたが、国会法制定時には、政府委員の規定が残されていたため、政府委員制度は法的には新国会に引き継がれました。

政府委員制度では、本省局長級以上の職員、局次長級職員等の官職にある者等が任命されていましたが、委員会等において、大臣に代わって政府委員の答弁が常態化していました。

さらには、課長級の職員も説明員として発言が許されていたのです。

よって、国会審議活性化法等により、委員会における対政府質疑に関しては、政策決定の権限及び責任を有する大臣等の政治家が答弁することを原則としたのです。

また、これに対応すべく副大臣・大臣政務官制度を導入し、行政府側の議員を増員したのです。

ただ、行政の細目的・技術的事項については、委員会が政府参考人の出席を求め、説明を行わせることができるという規定が、衆参議院規則に新設されたことにより、従前より限定的ではあるものの、政府職員による答弁は、結局、残ることとなったのです。

しかしながら、本来は議員同士のやり取りで立法に責任を持つという立法府の立場から、政府参考人を立法府の委員会に呼んで細目的・技術的事項について発言させるときは、委員会前の理事会で協議し、委員会冒頭、「政府参考人の出頭(出席)要求に関する件」として全会一致でこれを議決したうえで、政府参考人の発言を認めることにしたのです。

つまり、政府参考人の答弁はあくまで細目的・技術的事項に限ること、政府参考人制度では委員会の全会一致の議決があって初めて国会で発言を認めること、等の政府参考人制度が導入された本来の趣旨からすれば、今の立法府は、程遠い姿となってはいないでしょうか。

国会審議活性化法と国家基本政策委員会-その1

2017-06-07 | 国会ルール
国会の審議を活性化させるため、平成11年に「国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律」、いわゆる国会審議活性化法が成立しました。

その際に誕生した、国家基本政策委員会政府参考人制度政府特別補佐人制度については既に紹介していますが、今回、改めて紹介していきたいと思います。

まずは国家基本政策委員会(党首討論)の現状から見ていきます。

党首討論が日本の国会で導入されたのは、平成12年の第147回国会からです。国会審議活性化法による国会法の一部改正に基づき、衆参両院に国家基本政策委員会が設置されました。

最近、ほどんど開かれなくなっていますが、この運営は衆議院と参議院が交代で担当しており、次回は、衆議院が運営を担う番です。

国家基本政策委員会の開催回数がこれまでで最も多かったのは、以下のとおりです。

常会:平成12年 第147回国会 6回
臨時会:平成16年 第161臨時会 3回

上記の第161臨時会は会期53日間の国会で3回の開催ですから、なかなかの頻度であったといえると思います。

最近は、常会・臨時会ともに1回の開催ばかりですが、常会で1度も開催されなかったことは、これまで一度もありません。

前回の国家基本政策委員会(党首討論)は、昨年12月7日に参議院で行われたのが最後であり、現在開会中の第193回国会では未だ開かれていません(平成29年6月6日現在)。会期末は、6月18日です。

(参考)
国家基本政策委員会(党首討論)」平成27年5月20日
政府参考人とは」平成27年5月29日
政府特別補佐人とは」平成27年5月30日

国会同意人事-その4

2017-06-04 | 国会雑学
国会同意人事は両院の本会議で議決した後、発令されます。

本会議の定例日は、衆議院が火・木・金、参議院が月・水・金であるため、議決が同一日でないことは多数ありますが、通常は衆議院、参議院の順で採決が行われています。

また、両院の議決日が大きくずれないように色々配慮しています。

ただ、第193回国会における2回目の同意人事採決については、参議院、衆議院の順で議決が行われました。
参議院が5月24日の本会議、衆議院が5月26日の本会議、という具合です。

というわけで、今回は、参議院が衆議院より先に同意人事を議決した例と、その間が5日以上空いた例を見てみます。

[衆議院より先に参議院が同意人事案件を議決した例]

42回:昭和30年の第24回国会以降

[参議院が5日以上前に議決した例(平成以降)]

6日前:平成23年第177回国会
5日前:平成4年第123回国会

(参考)
国会同意人事-その1」平成27年2月25日
国会同意人事-その2」平成28年1月20日
国会同意人事-その3」平成28年4月20日