○日本国憲法第41条(国会の地位・立法権)
国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。
「国会=唯一の立法機関」で紹介しましたが、憲法第41条は、国会が立法権を独占すること、国会による立法以外の立法は、原則として認められないということ、国会の立法権は完結的なものであって、他の機関がこれに関与することはない、ということを定めています。
よって、行政権による立法は、法律を執行するための命令(執行命令)と法律の具体的委任に基づく命令(委任命令)に限られています。
○執行命令(実施命令):法律の規定を執行するために必要な細則を定める命令
○委任命令:法律が立法権を行政機関に委任したことにより定められる命令
最近、法案の条文に「政省令委任事項が多い」等の議論が繰り返されていますが、これは今に始まったことではありません。
従前より、立法府側からの指摘事項として多くあり、筆者自身、何年も幾度も警鐘を鳴らし続けてきました。
例えば、法律に規定した内容があまりに少なく、ほとんどの事項を政省令に委任した結果、法律に規定した内容を越えることとなり、結果として法改正が必要になったという嘘みたいな本当の話もあるくらいです。
それでは、政省令に委任する条文の書きぶりについて、具体例を交えて紹介します。
〇信託業法第89条
「この法律に定めるもののほか、この法律の規定による免許、登録、認可、承認及び指定に関する申請の手続、書類の提出の手続、記載事項及び保存期間その他この法律を実施するため必要な事項は、内閣府令で定める。」
〇労働安全衛生法第115条の2
「この法律に定めるもののほか、この法律の規定の実施に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。」
前者は、内閣府令で定めるべき事項を細かく規定しています。
ここまで詳細に規定するものは近年ではまれですが、それでも、例えば今年の常会で成立した国際観光旅客税法第23条は、
「この法律に定めるもののほか、この法律の規定による書類の記載事項又は提出の手続その他この法律を実施するため必要な事項は、財務省令で定める。」
としており、書類の記載事項や提出の手続が具体的に明示されています。
このように、執行命令(実施命令)の定立には個別法による授権は必要ないとされていても、実際にはどのような事項を執行命令(実施命令)で定めることとするのかを具体的に明示した規定が法律には設けられてきました。
このことは、法律による行政の原理の趣旨に鑑みても適当ですし、ある意味では、我が国の法律の圧倒的多数を内閣提出法律案が占める中でも維持されてきた行政府の矜持でもあると思っています。
ところが、近年、さきに述べたような書類の記載事項といった具体的な事項には一切触れることなく、
「この法律に定めるもののほか、この法律を実施するために必要な事項は○○省令で定める」
などとする包括委任規定を置く法律案が増加しているところであり、この傾向には立法府に身を置く議会人の一人としては非常に危惧を抱いています。法律による行政の原理から、こうした傾向には疑義があると言わざるを得ません。
次回以降、包括委任規定を置く法律案が今年の常会でどの程度提出されていたのか、そして包括委任規定を置く法律案にどのような問題点があるのか、について紹介したいと思います。
国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。
「国会=唯一の立法機関」で紹介しましたが、憲法第41条は、国会が立法権を独占すること、国会による立法以外の立法は、原則として認められないということ、国会の立法権は完結的なものであって、他の機関がこれに関与することはない、ということを定めています。
よって、行政権による立法は、法律を執行するための命令(執行命令)と法律の具体的委任に基づく命令(委任命令)に限られています。
○執行命令(実施命令):法律の規定を執行するために必要な細則を定める命令
○委任命令:法律が立法権を行政機関に委任したことにより定められる命令
最近、法案の条文に「政省令委任事項が多い」等の議論が繰り返されていますが、これは今に始まったことではありません。
従前より、立法府側からの指摘事項として多くあり、筆者自身、何年も幾度も警鐘を鳴らし続けてきました。
例えば、法律に規定した内容があまりに少なく、ほとんどの事項を政省令に委任した結果、法律に規定した内容を越えることとなり、結果として法改正が必要になったという嘘みたいな本当の話もあるくらいです。
それでは、政省令に委任する条文の書きぶりについて、具体例を交えて紹介します。
〇信託業法第89条
「この法律に定めるもののほか、この法律の規定による免許、登録、認可、承認及び指定に関する申請の手続、書類の提出の手続、記載事項及び保存期間その他この法律を実施するため必要な事項は、内閣府令で定める。」
〇労働安全衛生法第115条の2
「この法律に定めるもののほか、この法律の規定の実施に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。」
前者は、内閣府令で定めるべき事項を細かく規定しています。
ここまで詳細に規定するものは近年ではまれですが、それでも、例えば今年の常会で成立した国際観光旅客税法第23条は、
「この法律に定めるもののほか、この法律の規定による書類の記載事項又は提出の手続その他この法律を実施するため必要な事項は、財務省令で定める。」
としており、書類の記載事項や提出の手続が具体的に明示されています。
このように、執行命令(実施命令)の定立には個別法による授権は必要ないとされていても、実際にはどのような事項を執行命令(実施命令)で定めることとするのかを具体的に明示した規定が法律には設けられてきました。
このことは、法律による行政の原理の趣旨に鑑みても適当ですし、ある意味では、我が国の法律の圧倒的多数を内閣提出法律案が占める中でも維持されてきた行政府の矜持でもあると思っています。
ところが、近年、さきに述べたような書類の記載事項といった具体的な事項には一切触れることなく、
「この法律に定めるもののほか、この法律を実施するために必要な事項は○○省令で定める」
などとする包括委任規定を置く法律案が増加しているところであり、この傾向には立法府に身を置く議会人の一人としては非常に危惧を抱いています。法律による行政の原理から、こうした傾向には疑義があると言わざるを得ません。
次回以降、包括委任規定を置く法律案が今年の常会でどの程度提出されていたのか、そして包括委任規定を置く法律案にどのような問題点があるのか、について紹介したいと思います。