議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

国会の会期(会期と通年国会にならない理由)(再掲)

2024-04-20 | 国会ルール
〇国会法第10条 

常会の会期は、150日間とする。但し、会期中に議員の任期が満限に達する場合には、その満限の日をもつて、会期は終了するものとする。

常会の会期は、なぜ150日間となっているのか、そして、どうして通年国会とならないのかについて紹介したいと思います。

帝国議会の会期は3か月でしたから、それよりも長い会期となっています。その理由は、帝国議会の衆議院国会法案委員会の会議録に残されています。

国会法案委員会は、基本的に逐条審査で行われており、国会法の制定過程やどうしてその文言が使われたのかなど、興味深い議論が数多く交わされています。

昭和21年12月19日 第91回帝国議会 衆議院国会法案委員会

衆議院書記官長(現在の事務総長相当)の逐条説明

「常会の会期は150日間、現在の3か月に比べると、2か月の延長となり、審議の充実を期することができる。政府側の臨時法制調査会では4か月とする案が出ていたが、法規委員会で5か月が適当であるということになった。なお、常会の会期を定める必要があるかどうかという点については相当議論があったが、憲法の中に「会期中」という文字を使用してある点、並びに憲法で臨時会を認めた点等を考え合わせ、かつ議員の便宜という点からも会期を認める方が便宜ではないかとなり、この制度をとることとした。」

                    
     昭和21年12月19日 第91回帝国議会 衆議院国会法案委員会

帝国議会を開設するにあたってはイギリスを始めとする諸外国の制度に倣い、会期制を導入しました。

その理由の中には、通年において国会(議会)が開いていると大臣等が常に国会に呼ばれ、行政効率が著しく悪くなるとの考え方もあったとされています。

実際、国会法を制定するにあたり、衆議院は常置委員会を設置して閉会中も議会における行政監視機能を維持したいとの考えがあったようですが、内閣側やGHQの反対により実現しませんでした。

また、新制度移行時は現在のような複雑多岐に渡る内閣提出法律案は想定していなかったと考えられ、会期制や会期日数についての捉え方も現在とは相違があると思われます。

当時の状況に鑑みると、5か月あれば相応の審議ができると考えられていたのではないでしょうか。

当時は年間でも現在ほど議会の活動日数は多くなかったようですし、書記官長の逐条説明もそのような趣旨を述べているためです。

現在は、会期制が日程闘争の原因と捉え、通年国会制の議論が取り上げられていますが、与野党双方から見て、メリットとデメリットが存在します。

(1)会期終了と同時に廃案にできることのメリット(野党側)
(2)通年制では常に国会で質疑が行われることのデメリット(政府・与党側)
(3)会期の概念があることで逆に法案を審議終了に持ち込める・採決できる

さらに継続審査(閉会中審査)もできることから、結局は現状を変えることができないし、しないのだと考えられます。

もっと言えば、憲法に「会期中」という用語が使用されていること、臨時会の規定があることから、憲法の議論も必要になります。

上記を勘案すれば、通年国会にすればすべて解決、という単純な議論にはならないのではないでしょうか。

お願い

2023-11-06 | ひとこと
議会雑感ブログの記事についてのお願いです。

国会法や両院議院規則、先例、過去の例などは事実の紹介ですからともかく、例えば束ね法案などが一例ですが、物の見方や考え方、このブログに記述した内容について、論文等で参照・引用される際には、直接引用/間接引用にかかわらず、出典をお書きくださいますよう、どうかよろしくお願いいたします。

2015(平成27)年2月に細々と備忘録ではじめた当ブログですが、普段、あまり紹介されることのない国会運営のちょっとしたルールを法規先例に基づき紹介することで、一人でも政治に興味や関心を持っていただけるようにすることが目的でもありました。

最近は、ほとんど更新できておらず反省しきりですが、この間、ごくたまにコメント欄を開放し、筆者のみコメント閲覧ができる形にしてコメントを拝読させていただいておりますが、励みになるコメントばかりでした。

誠にありがとうございます。
(今回は、何年かぶりにコメント欄を開放いたしましたが、コメントは筆者限りで拝読し、公開することはございません。)

国会運営のルールから派生して、幾つかのテーマを何回か続けて紹介したこともありますが、それが筆者自身の気づきやこだわりとなって取り組んでいることも多くあります。

筆者自身もブログに書いた問題意識を基にして何かの形にしたいと考えておりますので、当ブログを参照・引用された場合は出典をお書きくださいますよう、よろしくお願いいたします。

議会雑感ブログ筆者 拝

及び法案と法律表記順

2023-06-12 | 国会雑学
改めて「束ね法案」シリーズを書く前に、「及び法案」についてちょっとした雑学を紹介したいと思います。

筆者が「束ね法案」と定義しているのは、本則において三以上の法律を改正等しようとする法律案のことであって、ハネ改正等は含みません。

では、二の法律を改正等しようとする場合はどうでしょうか。二の法律を改正等しようとする法律案は、それぞれの法律名が明示されていますので、形式上は束ねであっても筆者は「束ね法案」に分類していません。

なお、税法等において、束ねざるを得ない法律案が存在するため、筆者は「束ね法案」のすべてを否定しているわけではありません。

安易な束ね法案を筆者が問題視するのは、主に以下の理由からです。

〇国会審議の形骸化を招来すること
〇国会議員の表決権を侵害すること
〇どの法律がどのように改正されるか等が国民に分かりづらくなること
〇適切な情報公開とならないこと


さらには、昭和38年の閣議決定「内閣提出法律案の整理について」において法律案を束ねて国会に提出する場合の唯一の例示が「付託される常任委員会が同一であること」とされながら、ごく最近成立した法律の中に、3府省(3常任委員会)にまたがる閣法が存在したために、連合審査会を複数回開会することによって、所管大臣にようやく質疑ができたという事象が発生してしまいました。

そこで、筆者がいう「及び法案」とは何かということですが、二の法律改正のことで、「〇〇法及び△△法の一部を改正する法律案」のような形態の法律案を指します。

ここで、二の法律における「〇〇法及び△△法」の順番は、どちらが先でどちらが後になるという点について考えたいと思います。

改正のタイミングにおいて、「〇〇法及び△△法の一部改正案」であることもあれば、「△△法及び〇〇法の一部改正案」であることがあります。

現在開会している第211回国会(常会)において、ちょうどその例がありますので、具体的にお示ししたいと思います。

「中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案」(閣法番号第55号)ですが、前回改正は、平成27年(2015)年の第189回国会(常会)です。

その際は、「株式会社商工組合中央金庫法及び中小企業信用保険法の一部を改正する法律案」でした。

前回改正時と今回、同じ法律の改正案でありながら、法律の順序が逆転しています。ほかに、この順番がときどき逆転する閣法の例として、「電波法及び放送法の一部を改正する法律案」、「放送法及び電波法の一部を改正する法律案」などがあります。

では、なぜ平成27(2015)年改正と令和5(2023)年改正で法律の順序が逆なのでしょうか。

二の法律を改正する場合、法律番号順にするのが一般的ですが、中心的な改正内容がある場合には、その法律を先にするとされているからです。

今次常会(第211回国会)に提出されている「中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案」のそれぞれの法律番号は、以下のとおりです。

〇中小企業信用保険法(昭和25年法律第264号)
〇株式会社商工組合中央金庫法(平成19年法律第74号)


前者の法律番号が古いということになりますが、前回は商工中金法の法律名が先でしたので、メインの改正内容が商工中金法にあったことになります。

具体的には、それまで商工中金は完全民営化される方針でしたが、リーマン・ショックや東日本大震災等により、期限を定めずに完全民営化を先送りするなどの大きな方針転換を含む法改正を含んでいました。

よって、前回改正時は商工中金法が先でしたが、今次改正は同程度の改正内容と判断されたため、その場合は法律番号順とする慣習に従ったものです。

ただし、明記されたルールとして存在しているわけではなさそうです。慣習法としてやっていると考えられますが、条例の場合は下記のようなこととされていますので、法律もそうなんでしょうね、ということぐらいです(この点は後で付記するかもしれません)。

「二つ以上の条例を改正する場合の改正対象条例の配置は、公布(条例番号)の順に(公布の時期が早いものから第1条に)するのが一般であるが、中心的な改正対象条例がある場合には、その条例を第1条とすることが多い。」
石毛正純『法制執務詳解新版Ⅲ』(ぎょうせい、令和2年)4頁。


(参考)
束ね法案と一括審議-その1」平成27年5月16日
束ね法案と一括審議-その2」平成27年5月17日
束ね法案と一括審議-その3」平成27年5月25日
束ね法案と一括審議-その4」平成27年7月17日
束ね法案と審議時間」平成27年7月18日
第190回国会における束ね法案-その1」平成28年2月7日
束ね法案と一括審議-番外編」平成30年1月19日

永年在職議員表彰の件

2023-02-26 | 国会雑学
〇参議院先例録553

永年在職議員は、院議をもって表彰する

国会議員として在職期間25年に達した本院議員、又は24年に達した後任期満了等により本院議員を退職し再び国会議員とならない者は、永年在職議員として院議をもって表彰する。

令和5(2023)年2月8日の参議院本会議では、永年在職議員表彰が行われました。

参議院の永年在職議員表彰には、在職25年表彰、在職24年表彰、功労議員表彰があります。

〇在職25年表彰:
現に議席を有し、かつ国会議員として在職期間25年に達した議員
〇在職24年表彰:
国会議員として在職期間24年に達した後、任期満了等により議員を退職して、再び国会議員にならない者
〇功労議員表彰:
在職期間15年で退職した者

上記のうち、本会議で表彰されるのは、在職25年と在職24年ですが、本人が本会議で謝辞を述べることができるのは、現に議席を有している在職25年表彰のみです。

在職25年の永年在職議員表彰は、議長が表彰文を朗読した後、議員が祝辞を述べる例となっており、慣例で第一会派の議員会長が祝辞を述べることとなっています。なお、その後、表彰された議員が謝辞を述べます。

なお、同日の参議院本会議で同時に表彰された人数と回数は以下のとおりです。

5議員:1回(昭和47年/第68回国会)
4議員:2回(昭和56年/第94回国会、令和5年/第211回国会)
3議員:5回(令和2年/第201回国会ほか)

近年は、衆院議員から参院議員に転じた議員の永年在職表彰を参議院側で行うことが多かったのですが、4名が同時に表彰された今回は4議員とも一貫して参院議員として在職25年に達せられたものです。

会議公開原則と傍聴人数

2022-12-18 | 憲法
〇日本国憲法第57条

両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない(以下略)。

憲法第57条は、会議の公開を定めており、会議の公開は近代議会制の大原則です。

衆参両院は、本会議や委員会の傍聴を行っています。新型コロナウイルス感染症により一定程度の制約はあるものの、傍聴していただけるようさまざまな取り組みをしています。

2022(令和4)年12月10日に第210回国会(臨時会)は閉会したところですが、では、これまでどの程度の方が傍聴に来られているのか、参議院本会議を例に紹介したいと思います。

第201回国会(常会)は、2020(令和2)年1月20日召集でコロナ禍に突入したため、それ以前の第200回国会(臨時会)2019(令和元)年10月時点で見てみることとします。

[本会議1日当たりの傍聴人数(参院本会議の例)]

第1回国会(昭和22年)~第100回国会(昭和58年)36年間:平均214名/日
第101国会(昭和58年)~第199回国会(令和元年)36年間:平均48名/日

第1回国会から第100回国会、第101回国会から第199回国会を比較すると、1日あたりの傍聴人数は5分の1と大幅に減少しています。

ただ、民主党政権誕生時の第173回国会(臨時会)平成21年10月26日~12月4日においては、平均121名と大幅に増加しましたが、その後はやはり減少しています。

国民主権の現行憲法下において会議の公開原則は担保されているものの、国民から政治への期待や関心が薄れている現状をこういった数字からも突き付けられているような気がしてなりません。

(ただし、インターネット審議中継が上記後半期間において開始されましたので、それを分析する必要はもちろんあると思います)

〇参考
衆議院:本会議・委員会の傍聴案内
参議院:本会議・委員会の傍聴案内(下部までスクロール要)

第210回国会内閣提出法律案の行方

2022-10-23 | 国会雑学
第210回国会(臨時会)は、10月3日に召集されましたが、通常であれば10月11日の週に予定される予算委員会は開会されず、日程が想定より遅れている状況です。

結果として、予定より1週間遅れの衆参予算委は2日間ずつの基本的・総括質疑を終え、衆参の各常任委員会において所信的挨拶聴取を行ったり、行う日程が決まったりしています。

召集日からすでに3週間が経過しようとする中、所信的挨拶に対する質疑を終えたら、ようやく内閣提出法律案の趣旨説明・質疑に入ることとなります。

10月も最終週を迎えていますが、今臨時会における内閣提出議案の状況はどうなのか、概観してみたいと思います。

今臨時会における内閣提出議案については、召集前の9月29日の衆参議院運営委員会理事会にて、内閣官房副長官から以下のとおり説明があったとされています。

提出予定:法律案18件、条約1件
検討中:法律案4件

では、10月23日現在、どの程度の内閣提出議案(法律案/条約)が国会に提出されているのでしょうか。

第210回国会での提出案件:14件
第210回国会での提出条約:1件

次に、どの程度の閣法が閣議決定されているのか確認してみます。

第210回国会での法律案:17件
第210回国会での国会承認案件:1件

というわけで、閣議では法律案が17件決定されている一方で、国会に提出されている法律案は14件にとどまっています(10月23日現在)。

つまり、閣議決定はされながら、国会に未提出の法律案が3件存在することを意味しています。

閣議決定された閣法が国会に提出されれば、衆参両院のWebサイトに議案名等の情報が掲載されますので、召集日以降の定例閣議の案件と突合しさえすれば、どの法律案が国会に未提出なのかは一目瞭然です。

国会に未提出の3件のうち2件は、参議院先議になるかもしれないと一部で囁かれている2法律案ですが、衆議院にも参議院にも提出されておらず、閣議決定のみの状態に留め置かれています。

これら2件について、あえて議案名(法律名)は表記しませんが、憲法第53条の規定による臨時会召集要求が8月18日に出されながら召集日が10月に入ってから、かつ会期は69日間となっており、会期が短いため、法律案の成立に支障をきたしてはならないから参議院先議、というのであれば少し理解に苦しむ側面があります。

であるならば、臨時会を早期召集すれば良かったのでしょうし、会期も政府与党として十分な期間を設定すれば良かったのです。

臨時会における参議院先議案件の例はそれほど多いわけでもなく、参議院先議は常会において総予算成立後、衆議院での法案審議が本格化する期間に、参議院においてじっくり審議するためにという考え方もあるのです。

(臨時会における直近の参議院先議案件については、筆者ブログ「参議院先議案件(2016年10月19日)」を参照ください。)

十分な会期が確保されなかった臨時会において、議案(法律案)を確実に成立させるための参議院先議という考え方に筆者は立っていません。

しかも、参議院先議になるかもしれないと一部で囁かれているうちの1本は、一部野党が既に反対を表明しており、大きく賛否が分かれる閣法を参議院先議とすることもこれまでの例からしてもあまり馴染むことではありません。

当該法律案が閣議決定に至るまでの間、これに携わった方の胸中を思うと何とも言えませんが、今臨時会は召集日の設定をはじめ、国会運営全体がちぐはぐでいろいろと心配になっています。

国政における女性議員の比率

2022-08-24 | 国会雑学
2022(令和4)年7月に執行された第26回参議院議員通常選挙の結果、参議院における女性議員比率は過去最高となる25.8%となったものの、衆議院においては1割にも満たず、国際的にも大きく後れをとっています。

たとえば、2022(令和4)年7月に、世界経済フォーラム(WEF)が公表した2022年版「ジェンダー・ギャップ指数」の国別順位によれば、日本は146か国中、116位であり、G7においても、東南アジアを含むアジア太平洋地域の中でも最下位となっています。

この指数は、政治、経済、教育、健康の4分野を分析し、算出されたものですが、日本は政治分野と経済分野で順位を落とす状況を招いています。とくに政治分野は139位で格差が大きく、指数は前年と同じです。

2022(令和4)年8月の改造内閣においても閣僚のうち、女性は2人。

女性参政権が認められた現行憲法施行後初となった昭和22年の第1回参議院議員通常選挙では10名の女性議員が誕生しました。

平成28年の第24回参議院通常選挙と令和元年の第25回参議院通常選挙ではいずれも28名、令和4年の第26回参議院通常選挙では過去最多となる35名の女性議員が当選し、参議院全体では64名の女性議員となりました。

ただ、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律(平成30年法律第28号)の目的と基本原則に照らせば、参議院においても女性議員比率が25.8%にとどまっていることは、女性就業者の割合が約45%(令和4年7月公表労働力調査)である現状と比較しても低いと言わざるを得ません。

昭和35年の内閣で初めて誕生した女性閣僚ですが、令和4年の改造内閣においても女性はたった2人。

結局、我が国においてはそういうことなんでしょう、いろいろと。

(参考)
〇労働力調査 (基本集計)2022年(令和4年)6月分
(令和4年7月29日総務省統計局)
就業者数は6,759万人。
男性は3,717万人で3万人の減少。女性は3,041万人。23万人の増加。

参議院議員通常選挙後の臨時会

2022-08-16 | 国会雑学
参議院議員通常選挙は、参議院議員は半数改選のため3年ごとに執行されます。

2022(令和4)年7月は、第26回参議院議員通常選挙が執行され、8月3日に召集された第209回国会(臨時会)において参議院は議長・副議長選挙を行うなど、新たな院の構成を確定させました。

その会期は、8月3日から8月5日までの3日間でした。

参議院通常選挙後に召集される臨時会は、参議院の院の構成を確定するのが主目的ではありますが、それではこれまでの参議院通常選挙後の会期はどうだったのでしょうか。

今回は、平成以降に執行された参議院通常選挙後の臨時会の会期について紹介したいと思います。

〇参議院通常選挙後の臨時会(平成以降)

※左から選挙回次、国会回次、召集日、会期日数

15回 第115回国会 1989(平成元)8/7 6日
16回 第124回国会 1992(平成4)8/7 5日
17回 第133回国会 1995(平成7)8/3 5日
18回 第143回国会 1998(平成10)7/30 79日(延長含む)
19回 第152回国会 2001(平成13)8/7 4日
20回 第160回国会 2004(平成16)7/30 8日
21回 第167回国会 2007(平成19)8/7 4日
22回 第175回国会 2010(平成22)7/30 8日
23回 第184回国会 2013(平成25)8/2 6日
24回 第191回国会 2016(平成28)8/1 3日
25回 第199回国会 2019(令和元)8/1 5日
26回 第209回国会 2022(令和4)8/3 3日

第18回通常選挙後の第143回国会(平成10年)の会期は、なんと79日間でした。当初会期は70日間でしたが、9日間延長され79日間の会期となっています。

その第18回通常選挙後の第143回国会(平成10年)おける主な審議内容は、以下のとおりです。

総理指名、所信演説・代表質問、平成10年度第2次補正予算、金融再生関連法案、金融機能早期健全化緊急措置法案、日本国有鉄道清算事業団債務等処理法案等

次に、上記の続いて通常選挙後の臨時会で会期が長い(といってもそれほど長くはないのですが)のは、第160回国会(平成16年)と第175回国会(平成22年)の8日間でした。

では、8日間で何が審議されたのか、こちらも主なものを見てみたいと思います。

第20回通常選挙後の第160回国会における主な審議内容は、以下のとおりです。

本会議報告・質疑(第30回主要国首脳会議出席)(衆参)、厚生労働大臣不信任決議案(衆)、改正国民年金法廃止法等4法案(衆否決)、財金委、厚労委、農水委、経産委、災対特委、イラク・事態特委、拉致特委で国政調査(参)

第22回通常選挙後の第175回国会においても予算委が衆参で開会されるなど、通常選挙後の臨時会においても実質的な審議が行われた例はあります。

個人的には思うところ多々の第209回国会(臨時会)でした。

はてさて、3年後に予定される第27回通常選挙後の臨時会の会期や参議院を取り巻く政治風景はどうなっているのでしょうか。

議長辞任の理由(参議院)

2022-04-12 | 国会雑学
最近、衆議院議長の発言を報道で見ることが増えていますが、現在の衆議院議長は男性、参議院議長は女性が務めています。

令和4年4月12日現在、参議院議長の山東昭子議長は、参院議長としては第32代、23人目の議長で、女性議長としては扇千景議長に次いで2人目です。

参議院の場合、ほとんどの議長は、「任期満了」か「参議院通常選挙後」の辞任で交代しています。

では、「任期満了」か「参議院通常選挙後」の辞任以外による辞任のケースとは、どのようなケースかを紹介したいと思います。

それ以外では、逝去による辞任が2人、その他の辞任が5人の7人のケースがあり、以下のとおりです。

〇逝去による辞任:2人(初代 松平恒雄議長、第28代 西岡武夫議長)
〇その他の辞任:5人

1.通常選挙後の議長不在期間の回避(第4代 河井彌八議長)
2.健康上の理由(第16代 藤田正明議長)
3.知事選挙立候補(第18代 土屋義彦議長)
4.与野党混乱の責任(第22代 斎藤十朗議長)
5.政治資金問題による責任(第24代 井上裕議長)

にしても、かつてご自身が筆頭発議者となって立法府に提出した議員立法(平成28年成立)の趣旨を根底から覆すような発言は一議員あっても驚きを禁じ得ませんが、さらに責任を伴う立場でそれを繰り返すのは控えめに言ってもどうかと思います。
 

予算の自然成立

2022-03-21 | 憲法
〇日本国憲法第60条

2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

〇日本国憲法第86条

内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

憲法第60条第2項は、憲法第86条に定める議決を経ずに予算を成立させる予算の自然成立を規定しています。

予算の自然成立については、2パターンあります。

〇両院協議会を開いても意見が一致しないとき
〇参議院が衆議院送付案を30日以内に議決しないとき

今回は、後者の参議院が衆議院から送付された案を30日以内に議決しない場合について概観します。

これまで、参議院が議決せず予算が自然成立した例は、昭和29年度予算、平成元年度予算の2例あります。

それぞれに混乱する要因はあったにせよ、参議院が議決権を行使しなかったことは二院制の意義を没却させるものであり、避けなければならない事態です。

よって、平成元年度予算の例を最後に参議院が30日以内に予算を議決しなかった例はありません。

ここで、30日以内とは、いつが起点でいつまでなのか、ということについて令和4年の例をもとに考えてみたいと思います。

令和4年度総予算3案は、令和4年2月22日に衆議院本会議で可決され、同日参議院に送付されました。

憲法第60条第2項に「参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後」とあるため、とある参議院元議長が受領を拒んだり遅らせようとしたりしたこともありましたが、衆議院が送付した日から起算されることになります。

令和4年度予算の場合は、令和4年2月22日が起算日となり、そこから30日目が令和4年3月23日です。

参議院に31日目がない以上、参議院が令和4年度総予算3案を議決するための本会議を3月22日にセットすること自体は自然成立を避けつつ、期日直前まで審査を尽くした(ようにみえる)という点において理にかなっているといえます。

令和4年度総予算3案は3月22日に成立することになりますが、仮に予算案採決のための本会議が3月23日にセットされ、なおかつ混乱した場合、気になるのが30日目の最後の時刻です。

3月23日午後12時(30日目)なのか、それとも3月24日午前0時(31日目)なのか。

過去には参議院送付後31日目を自然成立の日と解釈していたこともありましたが、必ずしも解釈が明確でなかったこともあり、昭和60年に30日目に自然成立とすることの見解が確立されました。

常会が1月に召集され、常会の会期が150日と定められている以上、ほぼあり得ない想定ですが、参議院送付後30日目が仮に会期末とすれば、後者の午前0時説をとった場合、会期内に議決ができないことからやはり30日目の自然成立となるのです。

最後に、平成元年度予算自然成立時の読売新聞社説の抜粋です。予算案は議決を含め、その賛否はとても重いものです。
「予算審議と予算の議決権は、国会の最も重要な役割のひとつだ。政府が行おうとしている政策のすべてが、予算案に凝縮されている。」