議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

内閣不信任決議案とは-その1

2016-05-31 | 憲法
○日本国憲法第69条

内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

○衆議院規則第28条の3

議員が内閣の信任又は不信任に関する動議若しくは決議案を発議するときは、その案を具え理由を附し、50人以上の賛成者と連署して、これを議長に提出しなければならない。

内閣に対する不信任決議権は、衆議院のみに認められた権能です。

国会制度の下、衆議院において、4度不信任決議案を可決しています。

なお、平成28年6月1日までに衆議院での不信任決議案提出は53件です。

可決されたのは、昭和23年12月23日、昭和28年3月14日、昭和55年5月16日、平成5年6月18日です。前者2回は、吉田内閣(第2次、第4次)に対するもの、3回目は大平内閣に対するもの、4回目は宮沢内閣に対するものです。

1回目は少数与党であったため、2回目と3回目は、内閣総理大臣の支持基盤が弱く、与党内に大量の棄権者を出したたため、4回目は、与党の大量の議員が賛成に回ったためです。

内閣不信任決議案を発議するには、案を具え理由を附して、50人以上の賛成者と連署して、議長に提出します。

なお、内閣信任決議案が提出されたこともあります。

平たく表現すれば、内閣不信任決議案に対するもので、発議手続きは、内閣不信任決議案と同様です。

最近の例として、参議院で福田内閣総理大臣問責決議案が可決された翌日、衆議院において内閣信任決議案が可決されています。

衆議院において内閣不信任決議案を可決した場合、日本国憲法第69条の規定により、内閣は、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければなりません。

上記で紹介した不信任決議可決4回とも、衆議院は解散されています。

国会事務局-その3

2016-05-30 | 国会ルール
○国会法第16条  

各議院の役員は、左の通りとする。一 議長 二 副議長 三 仮議長 四 常任委員長 五 事務総長

○国会法第27条

事務総長は、各議院において国会議員以外の者からこれを選挙する。

先日、「国会事務局-その2」で「強い中立」と「弱い中立」について紹介し、国会事務局は「強い中立」を貫くべきとした、昭和32年11月1日の参議院事務総長就任挨拶を紹介しました。

今回は、衆議院事務総長の辞職願の扱いを巡り、議運委員会で議長、議運委員長、各党委員から強い慰留をされてなお、辞職した衆議院事務総長を紹介します。

各会派の中間を辿ろうとする「弱い中立」ではなく、法規・先例に基づく議会運営に尽力し「強い中立」を貫いた事務総長だったからこそ、与野党双方からその辞職を惜しむ声が上がったことは言うまでもありません。

長くなりますが、当該会議録を引用します。

[衆議院議院運営委員会(昭和35年7月22日)]

○衆院議長 

本日、多年衆議院の運営に功労のありました事務総長鈴木隆夫君より辞職願が提出されました。簡単でありまするから、全文を朗読してみます。

辞職願
私儀、かねてより一身上の都合により辞職したい念願でございましたので、何とぞ特別の御詮議をもって御許可下さるようお願い申します。昭和35年7月22日 衆議院事務総長 鈴木隆夫

これをいかに取り計らうべきか、御協議をお願いいたします。

○議運委員長 

ただいま議長から御報告のありました鈴木事務総長辞任の件の取り扱いについて御協議を願います。

○柳田委員 

事務総長鈴木隆夫君が、長年国会の事務職員として議会運営のために尽瘁されたことは、われわれ野党もこれを多とするものであります。しかし、今回一身上の御都合でおやめになる。実は昨年そういうようなお申し出がありましたときには、健康上の御理由もありましたので、われわれ御慰留申し上げたわけでありますが、今回承りますと、議長、副議長の方でも再三慰留されたそうでありますが、非常に辞意もかたいようでありますし、まことに情においても忍びないものがありますが、この際、人間の出処進退というものは、やはり御本人が一番深く期し、深く考えておられることと思いますので、しいてわれわれが御意思に逆らうこともどうかと思いますから、まことに鈴木君に対してはわれわれも惜しむものでありますけれども、やむを得ざるものとして認めたいと思います。

○菅家委員 

ただいま議長からの御報告の鈴木事務総長の辞任の件でありますが、同君は、御承知の通り、多年この国会において事務総長として、あるいは国会の役員として非常に功労の多かった人でございます。

はっきり言えば、国会運営の生き字引のような、得がたき存在でありまして、でき得べくんば長くとどまってもらって――国会正常化の問題、その他議事規則、国会法、それらについてこれから検討が行なわれるという時期でありますから、とどまってもらいたいということは、おそらく全議員の一致した考え方だろうと思う。しかし、同君はしばしば一身上の都合により辞意を漏らされておる。

この上これを引きとめるということは、同君の功労に対して報いる道でないと考えますので、まことに惜しい一人でありますが、やはり同君の辞意を認めてやることが、この段階において適当だと思いますので、これを承認することにいたしたいと思います。

○池田(禎)委員 

昨年の国会の混乱のときに、事務総長が辞表を提出されたときには、3党の全会一致の決定として慰留をし、本人も非常に感激をいたしまして辞表を撤回いたしました。今回の辞表については、牢固たる決意であるし、委員長初め、正副議長初め皆さんの、翻意を促された誠意もついにいれられず、どうしてもこの際辞任をいたしたいという決意につきまして、私どもはもはや言うべき言葉がありません。

先ほどの理事会において、自由民主党の長谷川峻君から、日本では初めての列国議会同盟会議が本年の9月に行なわれるのであるから、せめてそれまで職にとどまって、この国際的な行事というものに最後を飾ってもらいたいという、情理かね備わる発言がありましたけれども、やはりそれをも事務総長は、それは新しい後任者が行なうことであって、私のすべき任務でないという、非常にかたい決意でありました。

私もこの決意を伺って、もはや申すべき言葉がありません。国会の役員であることは事実でありますが、鈴木君そのものは事務職員であることは、ごうまつも変わりありません。ただ、その出処進退がまことにあっぱれなことは、私は人間として高くその人を評価し、かつ、30年国会に籍を置き、その人が去っていくときの感慨というものはひとしおなものがあろう、私はこういうことを感じ、この際は、いたずらに彼の功績に執着して引きとめるのみが最善の策ではなかろう、やはりそのりっぱな態度を生かして、進んで辞表を受理すべきである、こういうことを私は理事会において申し上げました。

さらに、理事会における各党の要請であった、列国議会同盟会議において、鈴木君の長い間の経験をどういうふうに生かすか、あるいは本年秋に行なわれる議会制度70周年記念式典の行事とか、そういうものについて、多年の功労者に対して何らかの形をもって報いるためにも、その力をかりるということにしたらどうか、こういう理事会の申し合わせにつきまして、一言この際これを私は申し述べて、これはいかなる形において行なわれるか、正副議長から出されるか、あるいは議院運営委員長からそういうことをお諮りになるか、その順序、方法等につきましてはよくわきまえておりませんけれども、こういう方法をもってその人の力をぜひとも将来の国会運営においてもおかりする、こういうことを一つこの際私は申し上げて、皆さんの御同意を得たいと思うのであります。

○議運委員長 

各党からそれぞれ御意見がございましたが、ただいま池田君から御発言のあった通り、私も議院運営委員長といたしまして、辞意を漏らされた点につきまして、翻意するようにということをしばしば鈴木事務総長に申し上げましたが、その御意思がかたいようでございます。

同時に、それなれば、日本で初めての列国議会同盟会議及び今秋における議会制度70周年記念、この2つの行事だけでも済まして辞任されることにしたらどうかという気持も私から申し上げましたところが、御本人は、そういう行事こそ新しい事務総長に譲るべきだというようなりっぱな御精神でありまして、私どもほんとうに感激したような次第でございます。従いまして、各党の御意見にありました通り、この際鈴木事務総長の辞任を許可することとして、本日の本会議においてこれを決定することにしたいと思いますが、御異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議運委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。

   (中略)

○鈴木前事務総長 

一言ごあいさつ申し上げます。このたび一身上の都合によりまして辞職いたしたい旨願い出ましたとろ、皆様方のお許しを得まして、ここに退任いたすことに相なりました。思えば、約29年余にわたりまして私はこの国会にはぐくまれたわけでございます。いわば人生上におけるわが生家でもあり、また、人間完成への神聖なる修練場とも考えております。

今その住みなれた生家を去るにあたりまして、万感こもごも起こりまして、とうてい言葉には言い尽くせないのでございますが、ただ浮かんで参りますことは、歴代の正副議長並びに歴代の委員長様方はもちろんでございますけれども、特に当委員会の皆様方にあたたかい御指導と御厚情をいただきましたその温情が、どうしても忘れられないのであります。

私は不徳浅才の者でありますが、今日まで事務総長の職責を果たし得たのは、皆様方のあたたかい心の底からの御支援があったからと考えおります。ほんとうに御無理を申し上げたり、御迷惑をおかけしたり、全く御期待に反することのみでございまして、皆様方のあたたかい御厚情の万一にも報いることなく退職いたしますことは、私としてもまことに残念に考えております。しかし、今回の私の辞任につきましては、最後の最後まで皆様にわがままを申し上げ、それにもかかわらず、あたたかい御温情によりまして、どうやら円満裏に退任することができましたことを深く感謝いたすとともに、日ごろの私の在職中のふなれないろいろの点について深くおわびを申し上げる次第でございます。今後ともどうぞよろしく御指導をお願いいたします。(拍手)

○議運委員長 

この際、皆様のお許しを得まして、本委員会を代表して、鈴木前事務総長に一言ごあいさつを申し上げたいと思います。お許しを願います。

鈴木さんは、このたび事務総長の職をお去りになることになりました。顧みますると、お話がございましたように、約30年の長きにわたりまして本院に奉職せられておりました。ただいまお話のように、これが人生生活の大部分であったと申されまする考えは、私ども深く同感をいたす次第で、そのお心をくむ次第でございます。

鈴木さんが、事務総長として、その豊かな学識と円満なる人格、加うるに強い信念をもって国会運営の事務的責任者として軟掌せられまして、国会運営につきましてよりよき慣行の樹立に挺身せられました御苦心につきましては、心から敬意を表し、功績をたたえるものでございます。ことに最近における国会の運営状況、そのまっただ中におきましていろいろと苦心のあったことをお察しいたしまして、今去られるについての御心情は、拝察するに余りあることと思います。

近く行なわれる列国議会同盟会議あるいは議会制度70周年記念を目の前にして今去られることは、まことに惜しいのでありまして、いましばらくと考えるのでありますが、あなたの決心の容易ならざることを知りまして、ただ惜しんでお送りする次第であります。

どうか今後とも自重加餐の上、御健康に留意せられまして、ますます御発展あらんことを念願いたしまして、一同を代表して、重ねて長年にわたるあなたの功績に対しまして深甚なる敬意を表する次第でございます。(拍手)

決算の警告議決にかかる先例

2016-05-27 | 国会ルール
○参議院先例録361

議院の会議において決算につき警告の議決をしたときは、内閣総理大臣が所信を表明するのを例とする

議院の会議において決算につき内閣に対し警告の議決をしたときは、内閣総理大臣が所信を表明するのを例とする。

(注)第141回国会閉会後平成10年1月8日の議院運営委員会理事会において、参議院制度改革検討会の答申に基づき、本会議において決算につき内閣に対し警告の議決をしたときは、内閣総理大臣に所信を述べさせる旨の決定があった。


平成28年5月25日の参議院本会議では、平成26年度決算の議決が行われました。委員長報告・討論が行われた後、平成26年度決算については是認する一方、内閣に対する警告も議決されました。

平成26年度決算に対する警告の議決が行われましたので、先例に基づき内閣総理大臣が所信を表明したのです。

半年ほど前、「決議案にかかる先例」では、参議院先例録362「議院の会議において決議案が可決されたときは、国務大臣が所信を表明するのを例とする」ことを紹介させていただきましたが、この先例では、「ただし、国務大臣以外の者が所信を表明したことがある。」とされており、例外が存在しています。

決算に対する警告の議決の際は、必ず内閣総理大臣が所信を表明しています。決算重視の参議院において、警告決議がそれだけ重いということの証左です。

衆議院の解散と参議院の緊急集会-その2

2016-05-26 | 国会ルール
○参議院先例録490

緊急集会の会議を開くに当たり、議長は、内閣総理大臣から集会を求められた旨を告げる

緊急集会を求められたときは、その第一日の会議を開くに際し、議長は、内閣総理大臣から参議院の緊急集会を求められた旨を告げた後、開会を宣告する。

通常の参議院本会議は、議長が議長席に着き、ギャベルを叩いた後「これより会議を開きます」と宣告した後、開会します。

参議院の緊急集会が開会された、60年以上前の緊急集会時の参議院会議録を見てみると、「これより会議を開きます」の前に、「去る28日、内閣総理大臣から、衆議院の解散に伴い、中央選挙管理会の委員の任命について緊急の必要があるため、本日参議院の緊急集会を求められました。」となっています。

先例で、会議を開く前に、内閣総理大臣から参議院の緊急集会を求められた旨を告げた後、開会を宣告する例になっているからです。

開会前の発言が、会議録に残るのは不思議な感じがしてなりませんが、議院規則に規定があるのです。

○参議院規則第83条

議事開始の時刻に至つたときは、議長は、議長席に着き、諸般の事項を報告した後、会議を開く旨を宣告する。(以下略)

これは、「諸般の報告」と呼ばれるもので、第1回国会の昭和22年6月3日の本会議まで行われていましたが、同年6月28日の本会議で「諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略したします」と議長が宣告して以来、報告は省略し、会議録に掲載することとなっています(参議院先例録383)。

なお、この開会前の「諸般の報告は朗読を省略する」旨の議長の発言は、第66回国会の昭和46年7月24日の本会議を最後に行われなくなり、現在に至っています。

衆議院の解散と参議院の緊急集会-その1

2016-05-25 | 憲法
○日本国憲法第54条

(前項略)

衆議院が解散されたときは、参議院は同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

憲法第54条は、衆議院が解散されたときは、参議院も同時に閉会することを定めています。

ただし、内閣が緊急に必要があると認めたときは、参議院の緊急集会が開会されます。今回は、これまでに参議院の緊急集会が行われた例を見てみたいと思います。

[参議院の緊急集会が開会された例]

○昭和27年8月31日(第14回国会閉会後の参議院緊急集会)
中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名

○昭和28年3月18日~20日(第15回国会閉会後の参議院緊急集会)
昭和28年度一般会計等の暫定予算
国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律
国立学校設置法の一部を改正する法律
不正競争防止法の一部を改正する法律
期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律案


憲法第54条の規定により緊急集会で採られた措置は、選挙後の国会で召集10日以内に衆議院の同意を得られなければ、その効力を失うことになっています。

なお、第1回国会、昭和22年8月15日の参議院本会議において、4条からなる「参議院緊急集会規則」が議決されましたが、第22回国会、昭和30年3月18日の参議院本会議において、国会法及び参議院規則の改正に伴い、参議院緊急集会規則は不要となり廃止されています。

国会事務局-その2

2016-05-23 | 雑感
「議会制民主主義」をつくり上げるために、議会の先人がどのように奔走したのか、書籍を通じて改めてその歴史を辿る中で、多くの気づきや発見に恵まれています。

と同時に、衆議院、参議院ともに国会事務局の果たす役割の大きさについて過去の歴史から認識を深めているところですが、「国会事務局-その1」とは異なり、議会の先人の足跡を辿ってみたいと思います。

今回は、昭和32年11月の参議院事務総長就任挨拶の一端を引用することで、「強い中立」と「弱い中立」について紹介します。

[参議院事務総長就任挨拶(昭和32年11月1日)]

(前略)

由来議院事務の仕事は縁の下の力もちだと言われております。芝居の奈落で舞台を廻す仕事になぞらえた先輩もおります。まことにその通りであります。

桧舞台で主役を演ずるべき職分ではないのであります。私どもは良くこれを理解して参議院が十全の機能を果たし得るよう、また全国民を代表する議員が十分の活動をなし得るよう誠実に脇役の仕事を励むべきであります。

(中略)

また事務局は中立公正でなければならないといわれております。これはまことにその通りであります。いやしくも一党一派に偏するが如きことは断じて戒めねばなりません。ただ私は柔弱なる中立、弱い中立を排し、毅然たる中立、強い中立を旨とするものであります。

何をもって弱い中立といい、何をもって強い中立というか、甲乙両党の鼻息をうかがい、各々主張するところをはかって、常にその中間を辿ろうとするのは弱い中立であります。

こういうことで行動しても一貫した筋が通らず、また同じ事柄に対処する処置が時によって二、三になります。これは取るべき態度ではありません。

常に憲法、国会法、規則等の規定する処に従い、その精神に則って行動するのが真の中立であり強い中立であると信じます。もちろん私どもとしましては政治の動向に注意を怠るべきではなく、十分配慮が必要ではありますが、大筋の考え方としては右に述べた如くでありたいと思います。

願わくは皆さんの御賛同を得て事務局を挙げて、真の中立公正を堅持したいと思います。

平成28年5月16日衆予算委での出来事

2016-05-18 | 雑感
本ブログを継続的にご覧いただいている方にとって、筆者が立法府に身を置く議会人として、どれだけ誇りを持っているのか、また行政権(行政府)と立法権(立法府)の関係など、「日本国憲法における三権分立」をはじめとし、何度も言及してきたことはご存知の方が多いと思います。

平成28年5月17日、参議院本会議で熊本地震に対応するための平成28年度補正予算は全会一致で可決・成立しました。

これに先立ち、衆議院、参議院の予算委員会で内閣総理大臣以下、全閣僚出席の下、一日ずつの審議が行われました。

まず、衆議院の審議からチェックしようと思い、衆議院インターネット審議中継(ビデオライブラリ)を見ていて、愕然としました。

平成28年5月16日衆議院予算委員会での出来事です。もちろん、5月18日現在、会議録は発行されていませんので、筆者が審議中継を見て、文字起こししたものですので、正確ではないかもしれません。気になる方は、下記時間帯のビデオライブラリをご覧ください。

○平成28年5月16日衆議院予算委員会(2時間16分34秒~2時間16分44秒)

内閣総理大臣
「委員は、議会の運営ということについて少し勉強していただいた方が良いと思います。議会についてはですね、私は立法府、立法府の長であります。

              
立法府に身を置く議会人としては、様々な意味で、甚大なショックを受けています。

国務大臣の国会への出席義務

2016-05-17 | 憲法
○日本国憲法第63条

内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁または説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

○参議院規則第38条

委員長は、委員会の開会の日時を定める。委員の3分の1以上から要求があつたときは、委員長は、委員会を開かなければならない。(以下略)


先日のエントリー「開会中における国務大臣の海外出張」では、開会中の国務大臣の海外出張が、なぜ議院運営委員会理事会の了解事項なのか、ということについて、憲法第63条の規定を引用して紹介しました。

つまり、憲法第63条の規定に基づけば、内閣総理大臣その他の国務大臣は、答弁のため出席を求められたときは、何時でも議院への出席が必要とされるため、海外出張に関しては、議院運営委員会理事会の事前了解を得ることとなっているのです。

今回は、本件に関する非常に珍しい事例を紹介したいと思います。

平成25年6月24日、平成25年6月25日の参議院予算委員会での出来事です。

現在の院の構成は、衆議院・参議院ともに与党が過半数の議席を有しています。ただし、参議院においては、平成25年7月の参議院通常選挙までは、いわゆる与野党ねじれの状況が続いていました。

当時の参議院予算委員長は、参議院規則第38条の委員会開会要求書が従前から出されている状況と、会期末が近づいている状況に鑑み、委員会を開会しました。しかしながら、与党は委員会に出席せず、さらには、憲法第63条の規定があるにも関わらず、国務大臣も出席しなかったという例です。

これは与野党ねじれの状況下での出来事ですから、今、このような事態が発生することはないでしょう。

ただ、当時の予算委員長は、手続きに瑕疵なく委員会を開会したのですから、与党はともかく、国務大臣は出席するのが、憲法第63条が要請する義務であったはずです。

こんなところにも、行政権と立法権の立場の違いが現れているような気がしてなりません。私は、議会人であることに誇りを持っています。

終盤国会

2016-05-16 | ひとこと
「議会雑感」をご覧いただいている皆さま、本当にありがとうございます。

更新が滞り気味で、開会中にこれだけ長期間更新できなかったのは、初めてで、反省しきりです。

更新できないと何となく編集画面にもアクセスし辛くなって、普段ほどは見なかったのですが、それでも毎日多くの方にご覧いただいていたようで、感激しています。

書きたいことや紹介したいことはたくさんありますので、タイミングを見て、少しずつでも書いていこうと思っています。

そういえば、最近、読んだ国会運営の本には、考えさせられることがたくさん書いてありました。法規・先例は、やっぱり大事ですね。

終盤国会に突入しました。内閣提出法案も過去最少なのに、それすらも多く積み残す状況で、個人的には消化不良の国会になりそうです。

GW中の国会審議-その2

2016-05-05 | 国会ルール
○参議院委員会先例録42

委員会は、日曜日その他の休日には開かないのを例とする

委員会は、日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律に定める休日及び12月29日から翌年の1月3日までの日には開かないのを例とするが、会期終了期日の切迫その他審査又は調査の急を要する場合には、これらの日においても委員会を開いた例がある。


GW中の国会審議-その1」のエントリーで、平成23年は、5月1日(日)に参議院予算委員会等の各委員会が開会され、東日本大震災に対応するための財源確保等のための審査が行われた年だったことを紹介しました。

委員会は、日曜日その他の休日には開かないのを例としていますが、平成23年は東日本大震災に対応するため、大型連休中はもちろん、日曜日にも審議が行われた年でした。

これは、まさに審査又は調査の急を要する場合だったからこそ、日曜日にも委員会を開いて立法府たる国会として対処した例です。

今年は、5月2日(月)に参議院本会議は開会されましたが、5月6日(金)は衆参ともに国会日程は予定されていません。

ただ、5月9日(月)の国会日程を考慮すると、参議院決算委員会を構成する全会派の質疑通告が出揃うまで、省庁等は待機でしょうね。なぜなら、5月9日(月)は参議院決算委員会の准総括質疑だからです。

昨年の今頃、「決算の審査」で、参議院決算委員会は、省庁別審査が行われることを紹介しましたが、今年は省庁別審査をすべて終えており、残すは准総括質疑と総括質疑のみとなっています。

准総括質疑と総括質疑は、省庁別審査と異なり、全ての大臣等が質疑対象になりますので、質疑通告が出揃うまで省庁等の緊張感は解けないことになるのです。

GW中の国会審議-その1

2016-05-03 | 国会雑学
平成28年5月2日(月)は、参議院本会議や参議院決算委員会、参議院災害対策特別委員会が開会されました。

衆議院の国会日程は、何もありませんでした・・。

というわけで、4月29日から5月5日までのゴールデンウィーク中、過去に参議院本会議がどの程度行われたことがあるのか、見てみたいと思います。

[4月29日から5月5日に参議院本会議が行われた例]

平成28年5月2日
平成23年5月2日
平成10年4月30日
昭和52年5月2日
昭和37年5月4日
昭和34年5月2日、昭和34年5月1日
昭和25年5月2日、昭和25年5月1日
昭和23年5月1日

最近の例では、平成23年、第177回国会で5月2日(月)の参議院本会議ですが、これは東日本大震災発生の年で、平成23年度補正予算と議了案件5件での開会でした。

ちなみに、平成23年は、5月1日(日)にも参議院予算委員会等の各委員会が開会され、東日本大震災に対応するための財源確保等のための審査が行われた年でもありました。

このエントリーを書いているのは、憲法記念日です。よろしければ、昨年同日のエントリー「日本国憲法における三権分立」をご覧いただけると幸いです。

開会中における国務大臣の海外出張

2016-05-02 | 憲法
○日本国憲法第63条

内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁または説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

○国会法第71条

委員会は、議長を経由して内閣総理大臣その他の国務大臣並びに内閣官房副長官、副大臣及び大臣政務官並びに政府特別補佐人の出席を求めることができる。


憲法第63条、国会法第71条の規定に基づき、開会中の国務大臣の海外出張に関しては、衆参の議院運営委員会理事会が了解した後、出張となるのが基本です。よって、衆参議院運営委員会理事会に、内閣官房副長官が出席・説明し、了承を求めることになります。

今年の大型連休中は、下記の国務大臣が外遊を予定しています。

内閣総理大臣:5月1日(日)~7日(土)
法務大臣:5月3日(火)~5日(木)
外務大臣:4月29日(金)~5月6日(金)
副総理兼財務大臣:5月1日(日)~7日(土)
文部科学大臣:5月3日(火)~7日(土)
経済産業大臣:5月3日(火)~6日(金)
拉致問題・一億総活躍相:5月1日(日)~8日(日)
地方創生相:5月5日(木)~8日(日)

必要だと思われるものもあれば、疑問符が付くようなものもあるのかもしれませんが、いずれにせよ、これだけの国務大臣が日本を不在にするのは紛れもない事実です。

なお、閉会中の国務大臣の海外出張については、いずれの場合も議院運営委員会理事会の了承を得る必要はありません。