議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

参議院における調査会-その3

2016-09-29 | 国会ルール
○参議院委員会先例録323

調査会長は、調査会においてその委員が互選する
調査会長の互選は、調査会設置の当日に行うのを例とする

調査会長は、調査会においてその委員が互選する。調査会長の互選は、調査会設置の当日に行うのを例とする。


調査会は、参議院独自の機関で、参議院議員の任期が6年であることに注目し、長期的な政策課題を扱うために設置されています。

よって、その時々の大きな政治課題となる特別委員会とその意味合いは大きく異なります。

つまり、特別委員会を設置する場合は、本会議で特別委員会の設置の議決は行ったものの、その日に委員名簿が提出されないとか、特別委員長の互選のための特別委員会が開会できないとか、ということがその時の政治状況で起こり得ます。

ですが、調査会は参議院議員の任期が6年であることに着目し、長期的な政策課題を扱うために設置されますので、設置されると決まった以上、与野党の対立は基本的に起こりません。

ただし、この度、調査会長の互選が、調査会設置の当日に行われませんでした。

国会が混乱しているわけではありません。

今回は、参議院規則第80条の2「調査会は、参議院議員の通常選挙の後最初に召集される国会において設置するものとする。」を外れ、参議院委員会先例録323「調査会長の互選は、調査会設置の当日に行うのを例とする」というのも外れた本当に珍しい例であるといえます。

○平成28年 第24回参議院通常選挙後に設置された調査会の例

・参議院通常選挙の後、最初に召集された国会 : 第191臨時会
・調査会が設置された国会 :第192臨時会(平成28年9月26日)
・調査会長が互選された日 :第192臨時会(平成28年9月29日)


            

参議院における調査会-その2

2016-09-28 | 国会雑学
○参議院規則第80条の2

調査会は、参議院議員の通常選挙の後最初に召集される国会において設置するものとする。


調査会は、3年ごとに参議院にのみ設置されます。

設置される調査会の名称、調査事項及び委員数は、原則として、通常選挙後最初に召集される国会において、議院の議決、つまり本会議で定められることとなっています。

調査会制度が確立して以降、参議院通常選挙後、最初に召集される国会で設置される例がほとんどでした。

しかしながら、近年、そうではない例が比較的多く出現しています。今回は、その例を紹介したいと思います。

○参議院通常選挙後、最初に召集される国会で調査会が設置されなかった例

平成16年 : 第20回参院選後
平成19年 : 第21回参院選後
平成22年 : 第22回参院選後
平成28年 : 第24回参院選後

○上記において、調査会設置の議決がなされた日

平成16年 : 10月12日 第161臨時会(召集日)
平成19年 : 10月5日 第168臨時会
平成22年 : 11月12日 第176臨時会
平成28年 : 9月26日  第192臨時会(召集日)


参議院通常選挙後、最初に召集される国会で調査会が設置されなかった要因として、平成16年の常会最後は、年金問題に端を発して混乱しましたし、その後の平成19年、平成22年は第一会派がそれぞれ別ですが、いずれにしても「ねじれ国会」に至る過程が関係しています。

参議院における調査会-その1

2016-09-27 | 国会ルール
○国会法第54条の2

参議院は、国政の基本的事項に関し、長期的かつ総合的な調査を行うため、調査会を設けることができる。

調査会は、参議院議員の半数の任期満了の日まで存続する。
調査会の名称、調査事項及び委員の数は、参議院の議決でこれを定める。


調査会は、参議院にのみ存在する参議院独自の機関です。

その理由は、参議院に解散がなく、議員の任期が6年であることから、長期的かつ総合的な調査を行うことが可能だからです。

○参議院規則第80条の2

調査会は、参議院議員の通常選挙の後最初に召集される国会において設置するものとする。

設置される調査会の名称、調査事項及び委員数は、原則として、通常選挙後最初に召集される国会において、議院の議決により定められることとなっています。

設置された調査会は、議員の半数の任期満了の日までの3年間存続し、調査を行います。

1年以上前のエントリーでは簡単に紹介しましたが、今回は再掲も含めて、シリーズもので順次紹介していきたいと思います。

なぜなら、今年、平成28年7月10日に第24回参議院通常選挙が執行されたため、3年ごとに巡ってくる調査会の見直しの時期に該当したからです。

第192臨時会召集

2016-09-26 | 国会雑学
第192臨時会は、平成28年9月26日に召集されました。

平成28年7月10日執行の第24回参議院通常選挙後、8月1日から3日間のみの第191臨時会以来、本格的な国会論戦が始まる国会がようやくスタートしたことになります。

会期は、11月30日までの66日間ですが、臨時会は国会法第12条の規定により、二回まで延長することが可能です。

参議院与党の幹部が、臨時会の召集閣議の前から延長の可能性に言及していることを勘案すると、延長もあるのかもしれません。

それはさておき、今回は、当初会期として最も長く設定された臨時会を見てみたいと思います。

○当初会期が長かった臨時会の例

90日間 :平成5年 第128臨時会 政治改革国会
81日間 :平成18年 第165臨時会 教育基本法国会
80日間 :昭和61年 第107臨時会 国鉄民営化国会
     平成元年 第116臨時会 消費税廃止論国会

あれから1年

2016-09-19 | ひとこと
早いもので、あれから1年が経ちました。ちょうど1年前のエントリーです。
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平成27年9月19日、2時18分。

今後の我が国の在り方を大きく転換することになるであろう安保法案が、参議院本会議で可決、成立しました。

我が国は、大きな転換点を迎えたことになります。

今、この瞬間、立法府に身を置く議会人のひとりとして、日本国憲法における三権分立を考えたとき、様々な思いが去来してなりません。

ただ、このブログは、今のところ匿名であり、個別の政策の是非に触れないこととしています。

参議院特別委員会や本会議で起こった安保法案採決をめぐる様々な動きについて、国会法や議院規則、先例等から紹介することが、政治に少しでも関心を持っていただける一助になるのであれば、との思いで書き続けます。
            
             安保法案成立の瞬間。拍手の与党席と「憲法違反」コールの野党席
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この1年間は敢えてほとんど触れませんでしたが、安保法採決に至るまでの間、国会ルール上、不思議なことが幾つも起こっています。

1年が経過したから、というわけではありませんが、これらについて、機会を捉えてこれから少しずつ紹介したいと思います。

昨年書いた不思議なことの一例です。→「委員派遣(地方公聴会)と派遣委員の報告

先例では、委員派遣を行ったときは、委員会において、派遣委員が派遣の結果について口頭報告を行うこととされています。

昨年の安保法は、衆議院の審議では派遣報告が行われたにも関わらず、参議院の審議では派遣報告が行われないまま、採決に至ってしまったのです。

過去に、このような例は一例もありません。

臨時会の延長回数

2016-09-10 | 国会ルール
○国会法第12条

国会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。

会期の延長は、常会にあつては1回、特別会及び臨時会にあつては2回を超えてはならない。


平成28年9月9日、全国紙のうち1紙に掲載された記事を紹介したいと思います。なお、個人名等は伏せて引用します。

『まだ開会前ですが・・・臨時国会延長「あり得る」』

与党の参院国会対策委員長は8日、所属する派閥の会合で、26日召集の臨時国会の会期について、「11月30日を(会期末の)節目と考えているが、延長も十分あり得る」と述べた。与党幹部が開会前から会期延長に言及するのは異例で、同氏は会合後、ただちに発言を撤回した。

秋の臨時国会では、2016年度第2次補正予算案や環太平洋経済連携協定(TPP)承認案・関連法案などの重要法案が審議される。政府・与党内には、審議の進展次第では会期延長が必要だとの見方もある。

だが、会期延長の有無や幅は、与党が法案の審議や採決日程を巡る野党との駆け引きの末、会期末直前に判断するのが通例だ。臨時国会の会期は2回まで延長できる。

記事の最後に、「臨時国会の会期は、2回まで延長できる」とありますが、その根拠は国会法第12条にあります。このルールを改めて紹介したいがために、上記記事を引用しました。

なお、国会法第12条をはじめとする国会の延長についてのルールは、昨年も紹介していますので、もしよろしければご覧下さい。

国会の延長-その1」 国会法第12条など
国会の延長-その2」 国会延長の手続き
国会の延長-その3」 延長幅が大きかった過去の国会
国会の延長-その4」 平成27年常会が95日間もの延長になった理由

国会役員の辞任

2016-09-09 | 国会ルール
○国会法第30条

役員は、議院の許可を得て辞任することができる。但し、閉会中は、議長において役員の辞任を許可することができる。


平成28年9月1日、参議院の常任委員長1名が議長宛に辞任願を提出し、即日受理されました。

これは、国会法第30条に基づくものであり、9月1日現在は閉会中であるため、議長において役員の辞任が許可されたのです。

国会役員については、これまで何度かこのブログで紹介したことがあります。

国会役員とは
現在の院の構成における問題点-その1

上記以外にも取り上げていますが、今回改めて紹介したいのは、常任委員長は国会役員であり、閉会中は議長において役員の辞任が許可されますが、特別委員長はそうではなく、委員会が辞任を許可することになっていますので、閉会中の場合は委員会を開かない限り、辞任したくともできません。

昨年は、臨時会が召集されなかったばかりに、特別委員長でありながら、副大臣も兼ねるという歪な事態が発生していました。

それはさておき、今回の常任委員長の辞任は、党の役職上との関連でやむを得ない辞任と考えますが、常任委員長の空白は好ましい事態ではありません。また、当該常任委員会は、現状、与党理事が1名のみで、あとは全員野党理事ですので、今の議会構成からすれば、興味深い状態と言えます。

もちろん、次の臨時会が召集されればすぐに解消される状態ですが、閉会中に理事会だけで新たに理事を選任できる衆議院の当該常任委員会と大きく異なる点です。


通称の使用

2016-09-02 | 国会ルール
○参議院先例録98

議員の氏名は、原則として本名を用いる

議員の氏名は、本名を用いることとするが、議長の許可により、その任期中、本名に代えて通称を使用することができる。なお、婚姻により氏を改めた議員が引き続き婚姻前の氏を通称として使用することを議長が許可したことがある。


議員の氏名は原則として本名を用いますが、議長の許可があれば、通称の使用が認められています。

7月10日執行の第24回参議院通常選挙を経て、新たに通称使用が許可された議員もいます。

読み方が一般的ではなく困難な氏名ならいざ知らず、画数が多いから、という理由でいたずらに苗字をひらがなにして通称使用許可を出してくるのは個人的にいかがなものかと思います。

もちろん、選挙時は、姓名のいずれかを漢字からひらがなにして、画数を少なくして投票用紙に名前を書いてもらいやすくするため、選管に通称使用を届ける候補者が多くいますし、そのようにしている議員を多く知っています。

ただし、国会に議席を預かって院内で活動するときは、原則、本名を用いるべきではないでしょうか。