俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

組織の力

2016-07-29 09:44:58 | Weblog
 個人は情けないほど無力だ。個人にできることは余りにも少ない。労働者は組織の一員となることによって個人の能力以上の仕事を遂行する。毎年、組織に2000万円の利益をもたらしている労働者が1000万円の賃金しか貰っていなくてもそれは搾取ではない。組織がバックボーンになっているから大きな仕事ができる訳であり一人でできることなど限られている。大きな組織には資金も人材も人脈も情報も備わっているからその力に頼っているだけだ。己の能力を過信して独立した人は大抵失敗する。運良く成功した人にだけ脚光が当てられるが失敗した人のほうが圧倒的に多い。
 個人の能力の差は余り大きくない。それに比べれば収入の差は大きい。しかしこれは差別ではない。微妙な差が大きな格差に繋がり得る。100mを10秒で走ればヒーローになれるが12秒で走っても誰も注目しない。たった2秒の違いが市場では雲泥の差になり得る。
 格差は運によっても大きく左右される。創業期のソフトバンクやユニクロに入社した人はそれなりに苦労しただろうが今ではいい思いをしているだろうし、絶頂期にダイエーやシャープに入社した人は辛酸を嘗めさせられている。個人の力ではどうしようもない。
 人は組織を背景にして権力を握る。「寄らば大樹の蔭」となるのは当然のことだ。公務員が人気の職業であるのはその仕事が魅力的だからではなく、潰れる可能性が低い大樹だからだ。しかしこんな大樹の蔭に入った人は堕落する。働かない人に囲まれていれば勤労意欲は減退する。共産主義の理想とは逆に、労働者は楽を好むものであり、甘やかされた子供と同様に、良過ぎる労働条件も人を駄目にする。
 医師や弁護士などは自力に頼っているようだがそうではない。彼らは国家権力によって特権が認められているに過ぎないから、資格が剥奪されれば忽ち路頭に迷うことになる。
 群居動物である人間は良き羊であることによって成功する。一匹狼は排除される。成功するために最も必要な能力はコミュニケーション力だろう。
 群居動物は適切な役割を分担することによって潜在能力まで発揮できるが、個性を磨くことは十中八九失敗する。個性が有益であり得るのはあくまでそれが組織内で役立つ範囲に限られ、個性を伸ばして変人扱いされるよりは話の分かる人であるべきだ。組織内での役割を早く把握して役割に徹するべきだろう。間違った役割を選べば失敗することになる。