俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

脱税

2016-07-04 09:55:49 | Weblog
 イギリスが離脱することが決定的になったからEUは混乱に陥っているが、かつてのギリシャの財政危機による騒動も大変だった。ギリシャの財政危機を招いたのは歳入不足でありその主因は脱税だ。国は税収に依存するから脱税が横行すれば財政難に陥る。企業の業績不振の大半が売上高の低迷であるように、収入不足は致命傷になる。
 イタリアの財政危機も歳入不足が主因だ。イタリアの場合、その要因は2つあり、組織的犯罪と個人の脱税だ。イタリアには巨大な地下経済がある。それを牛耳っているのはマフィアなどの犯罪組織だ。日本にも暴力団などの非合法組織があり彼らの収入源は殆んどが非課税収入だ。麻薬類の取引や売買春、あるいは違法ギャンブルなどは非合法だからこそ課税できない。
 イタリアとギリシャに共通する個人の脱税の多くは、日本の消費税に当たる付加価値税の脱税だ。これらの国では、課税取引か非課税取引かを消費者が選ぶことができるらしい。つまり「レシート不要」と言うだけで非課税取引になり割安で買い物ができるとまで言われている。勿論これは非合法だが食い止めることは難しい。
 ヨーロッパの付加価値税はインボイス(伝票)方式を採用している。だからレジスターを通せば証拠が残るから課税取引になり、レジ通さない分を非課税取引に回す。仮に税率が20%であれば脱税で浮いた20%を10%ずつ山分けできる。1万円の買い物であれば消費者も小売店も千円ずつ得をするということだ。
 ギリシャの場合、公務員制度にも問題がある。常勤の公務員以外に、首長などが変わる度にその親族などが新たに採用され、この特殊な公務員は簡単には辞めないから増える一方になる。労働者の1/4が公務員という異常な社会はこうして作られた。
 これらは遠いヨーロッパの特殊な話では済まない。今後消費税の税率が高まるに連れて、消費税の脱税のメリットも大きくなる。だから犯罪の規模も大きく広範になるだろう。
 日本には既に益税という仕組みがある。非課税業者が、消費者から徴収した消費税を国に納めないことが公認されている。消費者は課税業者と非課税業者を区別できないから全く自覚しないまま彼らの益税に協力している。
 今後、税率が高くなるに連れて脱税のメリットはますます大きくなる。最近、金の密輸が増えているそうだ。100万円の金塊を密輸すれば8万円を脱税できるからだ。消費税の税率が高くなるほどこんな密輸も増えて脱税の規模も大きくなるだろう。
 私は消費税を悪税と考えている。累進性が無く万人に等しく課税するからだ。消費税が富裕層を不当に優遇するだけでなく、モラルハザードをも招くならこんな酷い税制は無かろう。こんな悪税への依存が高まって雁字搦めになるまでに、医療費を筆頭とする歳出の見直しに取り組んでおかないととんでもないことになってしまうだろう。