俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

国益

2016-10-24 09:54:02 | Weblog
 フィリピンのドゥテルテ大統領がこれまでの国策を大転換して中国に急接近しつつある。Pax Americana(アメリカ主導による世界平和)を目論むアメリカとしてはこれは看過できない大問題だ。スプラトリー(南沙)諸島の領有権を巡って係争中のフィリピンは中国と闘うための最前線国でありもしフィリピンが懐柔されてしまえば今後の国際秩序がどうなるかさっぱり分からなくなる。
 「フィリピンのトランプ」とも呼ばれるドゥテルテ大統領は何をするか分からない危険人物と目されているだけに、巨大な危険国家の中国との接近は恐ろしい。これは中国にとって建国以来の危機とさえ思われる。
 中国にとって・・・この言葉は鎮痛剤によって呆けているから書いた誤植ではない。1日の内、数時間しか充分には働かない私の脳味噌が生みだした奇妙な未来予想だ。米中を含む殆んどの国の首脳がドゥテルテ大統領を過小評価しているのではないだろうか。上品とは言えない風貌、訛りの強い英語、力ずくであり野蛮とさえ思えるこれまでの政策、数々の失言、これらから受ける印象はポピュリズムに乗っかって当選しただけの「与(くみ)し易い二流の政治家」だろう。少々賄賂を掴ませてハニートラップでも仕掛ければイチコロではないかと思い込みそうだ。
 しかし最近時々ドゥテルテ大統領に田中角栄元首相のイメージが重なる。田中氏は低学歴であることを進んで広言していた。高学歴者が集まる国会議員の中で低学年=庶民性を強調していた。学制が違うので田中氏の学歴をどう評価すれば良いのかよく分からないが、一級建築士の資格を持っていたのだからたとえ低学歴であったとしても低学力ではなかったと思える。更に織田信長のイメージも重なる。信長は「尾張の大うつけ」と酷評されたために一部の側近を失ったりしたが周辺諸国に油断をさせることによって大きな利益も得た。
 幾ら親日家のドゥテルテ大統領でもこんな日本史までは知らないだろう。しかしもっと参考にすべき日本史がある。戦後補償においてまだ貧しかった日本は精一杯の誠意を見せたと思う。ドイツとの差が論じられることがあるが、人的にも金銭的にも充分な誠意ある対応をしたと思う。しかしその努力によって日本が得た評価は惨いものだ。勿論そんな評価をするのは一部の国に過ぎないが、「日本はユスリ・タカリに弱く、少し因縁を付ければ簡単に利用できる金蔓であり世界最高品質のキャッシュディスペンサーだ」というとんでもない評価だ。これは決して当該国が卑劣だったと言いたい訳ではない。内政であれば敵対する政党が失敗をすればそれを徹底的に攻撃すべきだ。それができなければ政治家失格だろう。国際政治であればもっと情け容赦無く攻撃せねばならない。たとえ相手国民から憎悪されようとも国益の拡大を図ることこそ政治家の仕事だ。
 ドゥテルテ大統領を甘く見て簡単に懐柔できると思っていたら大どんでん返しが待っているかも知れない。南シナ海で利権を争っている各国が揃って国際裁判を起こせば大変なことになる。狙いは領土ではなく中国による大盤振る舞いだ。中国は敗戦後の日本のようにまるで寄生虫のような国々の食い物にされかねない。意外なことだが中国にとっての外国とは皇帝の徳を慕って集う蛮族を意味した。4000年を誇る中国史には驚くべき特異性がある。それは対等の外交を知らないということだ。約4000年間は朝貢貿易しか知らなかったしこの70年間については恫喝外交しか知らない。未だ嘗て対等の外交関係を持ったことが無いから、一旦弱みに付け込まれると歯止めが利かなくなってしまいかねない。大量の寄生虫を生かすために生きる惨めな巨木が中国の未来になってしまうのではないだろうか?

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