俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

タテマエのルール

2008-10-27 10:35:54 | Weblog
 日本には世界的に見て珍しいタテマエのルールがある。これは当事者にしか分からない奇妙なルールだ。
 私の行きつけの公営プールには「シャンプー禁止・石鹸禁止」という貼紙がある。奇妙なルールだ。殆どの人はこれを無視してシャンプーや石鹸・ボディソープを使用している。従業員はこれを見ても何も言わない。
 考えてみれば当たり前のことだが、シャワーを浴びる際に石鹸やシャンプーを使わないほうが異常だ。
 こんな変なルールが定められたのは銭湯組合からの抗議に基づくらしい。つまり「プールを風呂代わりに使うから銭湯の経営が圧迫される」と抗議されたから矛先をかわすことだけを目的にしてこのルールが定められたらしい。
 歩道の自転車も同じようなものなのだろうか。歩行者の一部が「うるさい」のでとりあえず「歩道では徐行すべし」という規則を定めたものの、一向に取り締まる気配は無い。タテマエのルールが責任逃れに過ぎないのならそんなルールは要らない。正直者が馬鹿を見るだけだ。

高齢者いじめ

2008-10-27 10:24:16 | Weblog
 企業による高齢者虐待は陰湿化して最早「いじめ」に近い状態になっているように思える。
 企業にとって高齢社員をいじめることは合理的な根拠がある。高齢者の給与は、現状での彼らの貢献と比べてアンバランスに高いからだ。彼らを退職させれば企業の収支は確実に好転する。
 現状だけで考えるなら企業の論理は筋が通っている。しかしものごとはそれまでの経緯も含めて考えねばならない。
 現在の高齢社員が若い頃は年功序列制だった。若い頃は安い給与に甘んじても将来の高い給与が約束されていた。若いうちは労働に見合わない安い給与でこき使われても、老後には貢献を上回る賃金を貰うことで生涯賃金はプラスマイナスゼロになる筈だった。
 ところが突然、成果主義が導入された。若い社員の給与が高めに設定され、賃金総額を抑制するために高齢社員が槍玉に挙げられている。「穀潰しの給料泥棒がいるせいで経営が苦しい」と彼らは言う。
 これはまるで詐欺のようなものだ。年金のつもりで積み立てた金が突然減額されるようなものだ。
 企業による理不尽な仕打ちに対して高齢者はサボタージュを使って抵抗しようとする。しかしこれが企業による更なる高齢者いじめを招く。卵が先か鶏が先かのような問題になってしまって泥沼化している。

第三セクター

2008-10-27 10:08:42 | Weblog
 女優のサラ・ベルナールが作家のバーナード・ショーに言った。「私たちが結婚すればあなたの知性と私の美貌を兼ね備えた素晴らしい子が生まれます。」
 ショーは答えた。「私の容貌とあなたの知性を持った子供が生まれたら可哀想だ。」
                 *         *
 かつて第三セクターがもてはやされた時代があった。多分、神戸市による事業が模範とされたと思う。官と民で共同出資して事業を起こせば、官の良さと民の良さの双方が生かされて、官にも民にもできない素晴らしい事業が可能だと考えられた。
 しかし最近では第三セクターの経営破綻が相次いでいる。なぜか?利益優先で儲からない事業からすぐに撤退しようとする民間と、責任逃れを優先し情報隠蔽が大好きな役人の双方の悪さが表に出たからだと思う。
 最近、生協の事業の綻びが目立つ。儲け優先の民間企業と違い、消費者優先の、安全で低価格な商品を販売するという理念は失われ、お役所的な情報隠蔽体質が目立つ。
 冷凍餃子事件でもカップラーメン事件でも生協は消費者の安全よりも責任逃れと情報隠蔽を優先した。情報隠蔽が消費者の被害を拡大する恐れがあるにもかかわらず・・・。
 第三セクターの多くが破綻したように生協の多くが淘汰されることは間違いなかろう。

同音異義語

2008-10-24 15:42:32 | Weblog
 新聞を読みながらテレビのニュースを聞き流していたら「大分県の教育委員会に関するお食事券」と聞いて驚いた。商品券以外にお食事券も使われたのかと思った。
 勿論私の誤解で「お食事券」ではなく「汚職事件」だった。
 日本語は子音・母音の種類が少ないために同音異義語が多い。そのためにパソコンではしばしば誤変換が起こる。
 昔からこんな言葉遊びがある。
 裏庭には2羽庭には2羽鶏がいる・・・ウラニワニワニワニワニワニワニワトリガイル
 李も桃も桃・・・スモモモモモモモモ
 九級救急救命士・・・キュウキュウキュウキュウキュウメイシ
 貴社の記者は汽車で帰社した・・・キシャノキシャハキシャデキシャシタ
 最近こんな例を見つけた。
 伸身新月面宙返り・・・シンシンシンゲツメンチュウガエリ
 私用使用しよう・・・シヨウシヨウシヨウ
 日本語が漢字抜きのかな書きやローマ字でなくて良かったとつくづく思う。

昇華

2008-10-24 15:30:14 | Weblog
 フロイトの理論は私にとっては非常に有益な思想で、随分、精神衛生上で救われたと思っている。
 しかし「昇華」という考えだけは頂けない。
 フロイトによれば性欲は「リビドー」として精神エネルギーとなり、抑圧されれば神経症を招き、うまく使えば芸術などの創造力へと昇華されるとされている。
 「リビドー」という概念を使うならその本質を「性欲」とする必要は全く無い。むしろ人間にはリビドーという正体不明の精神エネルギーがあり、それが性欲や創造力や破壊欲に姿を変えると考えたほうが余程自然だ。
 フロイトの時代は性が抑圧されていたためにフロイト自身がその反動で過剰反応してしまったように思える。本能が壊れた動物である人間の性欲は決して強力ではない。それどころか幻想によって補強しないと種族の存続すら難しいほど乏しいとさえ思える。

反資本主義

2008-10-24 15:20:47 | Weblog
 共産主義が崩壊したために資本主義だけが唯一の経済体制となってしまった。しかし資本主義は困った制度だ。言わば「儲かるなら何をしても良い」とか「判断基準は儲かるかどうか」という迷惑な考え方だ。
 確かに儲け優先の考え方は分かり易い。しかし分かり易いということは決して正しいということではない。
 敗戦直後の日本は経済成長を最優先して無茶苦茶をやった。それは公害などの環境破壊として社会問題化した。
 現在、環境保護という考えは資本主義に対する1つのアンチテーゼとして役立っている。儲けるために何をやっても良い訳ではなく環境破壊をしてはならないということが資本主義の暴走に対する歯止めとなっている。
 古くは資本家による搾取が問題になった。労働者は過酷な労働と低賃金によって虐げられていたが、ある程度、是正された。
 昨今、食の安全が騒がれている。これが個々の事件や輸入品批判などの一過性の問題に留まらず、環境問題や労働問題のように、資本主義の暴走に対する歯止めとなる思想にまで成長してもらいたいものだ。

日本最古の景気対策

2008-10-24 15:08:12 | Weblog
 古事記によると、仁徳天皇は食事時になっても民の竈から煙が上がっていないのを見て3年間徴税を見送ったとされている。そのため天皇の住居は雨漏りがしても修理できなかった。3年後に民の竈が賑わっているのを確認してから徴税を復活させたそうだ。
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 社会保険庁に代表されるように官の仕事は無駄が多い。無駄が多いだけではなく様々な癒着もある。税は元々権力者が贅沢するために徴収されたものだ。その後イロイロと見直されて権力者の「生活費」以外に公共事業や防災などにも使われている。しかしこれはサブプライムローンと同様ミソクソ混合の状態だ。徴収された税金はしばしば無駄遣いされる。公務員による非合法な官官接待や私的流用もある。税金の内どれだけが無駄遣いされているのか分からないが、総額が減れば無駄遣いも減ることは間違いない。官が使う金は1割や2割ではなく一挙に半額ぐらいにしてしまえば良いと思っている。思い切り減らしてからどうしても必要なものだけ復活させれば良かろう。
 官の支出が減れば現状並みの収入は必要ないから減税が可能になる。しかし平等に減税する必要は無い。無差別な定額減税など愚策だ。ただの選挙対策だ。給与所得者だけを対象にすればサラリーマンにとってはかなりの減税となるだろう。
 もともと所得税は「クロヨン」と揶揄されるように非常に不公平だ。不公平税制の犠牲者を優遇することは決して不公平なことではない。

インフォームド・コンセント

2008-10-13 10:31:23 | Weblog
 昨今、外科医に対してインフォームド・コンセントが義務付けられているが、内科医のインフォームド・コンセントこそ必要なのではないだろうか。
 しつこく書くが薬は毒物だ。デメリットよりもメリットのほうが大きいから薬として認められているだけで本質は毒物だ。
 毒物を処方するならその危険性を告知する義務がある。なぜ内科医は処方責任が問われないのだろうか。
 私は現在の外科医・小児科医・産婦人科医に対する責任追及は「行き過ぎ」だと思っている。マスコミは無責任なマッチポンプだ。医療事故を騒ぎ立てて、それが招いた産婦人科医などの不足を今度は「医療崩壊」と騒ぐ。医療崩壊を招いた張本人だという自覚は全く無い。
 一方、患者を薬漬けにして儲ける内科医の責任は驚くほど軽い。悪いのはメーカーと厚生労働省だけとされている。
 内科医は患者に対して薬のリスクを説明する責任がある。「煙草をやめろ」と言うよりも、その何百倍も危険な薬に依存することをやめるように患者に説明すべきだ。
 患者を薬漬けにすることで儲けが増える医療・保険制度に問題がある。薬漬けにされて健康を損なった被害者が告訴するしかないのだろうか?こういう問題こそマスコミが健全に機能して貰いたいものだ。製薬メーカーの圧力があるのならせめてNHKだけでも行動を起こして欲しいものだ。

潜在的犯罪者

2008-10-13 10:17:02 | Weblog
 凶悪な犯罪が起こるたびにマスコミは「なぜこんな犯罪が起こるのか?」と問う。私は全く逆に「なぜこの犯罪は日常的に起こらずに済んでいるのか?」と考えてしまう。人間は自分で思っている以上に犯罪傾向を持っている。
 「もし人間が一睨みで人を殺せるなら町は死体で溢れるだろう」と言ったのは多分ゲーテだったと思うが、充分な抑止力が働かないなら人はすぐに犯罪者になってしまう。
 ドストエフスキーの「悪霊」のスタヴローギンは陵辱した少女が自殺しようとしていることに気付きながら見殺しにしたことに対して「これは殺人と同じだ」と悩んだ。このテーマはドストエフスキーがしつこく書いており「カラマーゾフの兄弟」のイワンも、父が殺されるかも知れないと思いながら放置したことから「自分こそ本当の犯人だ」と主張する。他に初期の作品の「主婦」でも同じテーマが語られる。
 もし誰かを憎んでその人が交通事故に会ったことを大喜びするなら、彼は潜在的犯罪者だ。
 自分では手を下さずに他人の不幸を願う者と、自分で手を下して犯罪者として処罰される者との差は意外なほど小さいように思われる。
 伊藤博文を暗殺した安重根は韓国では今でも英雄扱いされているらしい。世論があと押しをしてくれるなら罪悪感を持たずに犯罪者になる。

枝里子のパズル

2008-10-13 10:03:01 | Weblog
 人間の脳は正解のある設問を好む。正解が無いか正解らしきものが多数存在する設問を好まない。この性質は試験制度を通じて補強される。たとえ低レベルであろうとも唯一の答が見つかるほうが脳にとっては快適なようだ。そのため難しい問題は考えたがらず易しい問題だけに取り組もうとする。その結果、重要だが難しい問題は放置されてしまう。
 こんな悪い癖が付かないようにかどうかよく分からないが私はパズルを愛好している。パズルは決して重要なテーマを扱う訳ではない。しかし偏見に捕らわれないことや発想の転換をもたらす非常に高度な知恵の遊びだと思っている。
 私が一番好きなパズルを紹介する。
 ある所に嘘つき村と正直村がある。嘘つき村の住民は常に嘘をつき、正直村の人は常に正直だ。Y字路の左右にこの2つの村がある。たまたまどちらかの村の住人が片側から歩いて来た。このどちらの村の住人か分からない人にたった1つの短い質問をして正直村へ行きたい。何と質問すれば良いか?
 実はこのパズルはタレントの楠田枝里子さんに教わった。彼女が東京理科大学の学生で、まだアナウンサーになる前のことだ。このパズルは10年ぐらい前まではパズルの本に取り上げられることは全く無かったから多分、東京理科大の学者か学生が作ったものだろう。
 私がこのパズルを解いたので彼女は「解いた人は初めて」と言って驚いた。その後私も多くの人にこのパズルを出したが誰も解けなかった。
 あなたは解けただろうか?答を見る前にもう1度よく考えて欲しい。
 答は「あなたの村はどっちですか?」だ。
 余りにもシンプルな答に誰もが驚くだろう。脳を活性化するためには簡単な知的作業をするよりは、推理小説やパズルなどの高度な知的作業のほうが有効だと私は思っている。