俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

少数派

2015-10-19 10:28:54 | Weblog
 シリア情勢は訳が分からない。アサド政権と西欧的な民主化勢力とIS(イスラミックステート)、更にクルド人。これだけで四竦みだ。これにアルカイダやスンニ派が絡み、米国主導の有志連合やロシアまで参戦して、最早、世界戦争の縮図のようだ。これでは国民は堪らない。もし中国で共産党による独裁体制が崩壊した時にはこれと同様の災厄が13億人民に及ぶと考えればその惨状は想像を絶する。
 シリアのことが分からないのは日本のマスコミ各社が自社の社員を派遣していないことも一因だろう。人命尊重という理念からすればこれは当然のことではあるが実は裏がある。雇用関係の無いフリージャーナリストを利用しているからだ。一切契約関係の無い彼らが死んでもマスコミ各社は責任を問われない。しかしフリージャーナリストは少しでも良い記事を書きたいから「自らの意思で」危険地域へと赴く。私は彼らを「使い捨てライター」と名付けた。
 シリアなどの中東がこんな酷いことになった原因はアメリカがフセイン政権を倒したからだ。「フセイン政権は大量破壊兵器を持っている」という嘘に基づいて打倒したものの、その後のシーア派を中心とする政府は統治能力を欠いているようだ。フセイン政権の残党がISの中心になっているとも言われている。
 民主的に選ばれた筈の政府がなぜ統治できないのか。逆説的な言い方だが、多数派による政府だからではないだろうか。国民の6割を占めるシーア派は「シーア派のシーア派によるシーア派のための政治」を行おうとする。これではシーア派以外の少数派が不満を持つのは当然だ。これは多数決に基づく民主主義の暗黒面の露呈だろう。
 フセイン政権は僅か2割に過ぎないスンニ派が中心になっていた。少数派による政権だからこそ勝手なことはできず、シーア派やクルド人の意向も採り入れていたのではないだろうか。再び変な言い方をするが、権力者が少数派だったからこそ妥協に基づく公正な政治が可能だったのではないだろうか。かつてのイラクでの政治力学については欧米の情報偏重の日本にいてはさっぱり理解できない。
 翻って日本を見れば、自民党が変な方向に向かっている。元来自民党は多様な意見を包含できる懐の深い政党だったのだがその長所を失いつつある。一強だからこそ「正義は我にあり」と思い上がっているのではないだろうか。数こそ正義という暴挙を許さないためには、これまた無茶苦茶な理屈で民主主義に反するとは思うが、少数派に権力を握らせたほうが却って良いのではないかとさえ考えてしまう。

アサヒ

2015-10-19 09:51:01 | Weblog
 横浜市の欠陥マンション事件は旭化成建材の社員による意図的とも思える手抜き工事が原因だったらしい。当初は加害者と思われた三井不動産も実は被害者だったようだ。
 旭化成建材によるデータ偽装を朝日新聞は非難できるのだろうか。旭化成建材は今後マンションの立て直しなどによって莫大な損失を蒙り経営難に陥るだろう。これは避けられないことだ。
 その一方で朝日新聞はどのような形で捏造記事の責任を取っただろうか。読者離れが進んだことだけで責任が果たされたとは到底考えられない。旭化成建材が今後の営業活動が困難になるだけではなく不良マンションの全責任を負うように、朝日新聞には世界中に広めた誤った情報の総てを訂正する義務があるのではないだろうか。それが企業としての責任だろう。
 罪は「従軍慰安婦の強制連行」だけではない。ユネスコが世界記憶遺産に「南京大虐殺」を登録したことについても朝日新聞には重大な責任がある。
 「南京大虐殺」は東京裁判で作り出された虚構だ。しかし政府はサンフランシスコ平和条約において東京裁判を承認させられており、「南京大虐殺」を公然と否定できない立場だ。東京裁判を否定すればサンフランシスコ平和条約を否定することになってしまう。
 日本にできることは1つしか無い。政府ではなく民間人が「南京大虐殺」の嘘を暴くことだ。しかし朝日新聞はそうしなかった。それどころか中国に迎合して「南京大虐殺」の存在を肯定する記事を書き続けた。少なくとも疑問を挟む記事を読んだ覚えが無い。朝日新聞のこんな姿勢が学者を萎縮させて自由な言論が阻害された。
 私は日本軍が悪事を働かなかったなどとは考えない。民間人犠牲者が1万人に及ぶと言われる重慶爆撃は、特殊な事情があったとは言え、日本史に残る汚点だ。アメリカは東京裁判において当初はこれを戦争犯罪として裁こうとした。ところがすぐに重大な問題に気付いた。1万人が殺された重慶爆撃を戦争犯罪にすれば、広島・長崎への原爆投下は勿論、東京大空襲なども戦争犯罪であることを認めざるを得なくなる。だから約1万人が犠牲になったという事実が確認できる重慶爆撃を不問にして、通常の戦闘があった南京で大虐殺があったという虚構をでっち上げた。重慶で20万人が殺されたということにはできない。約1万人が殺されたという証拠があるからだ。南京であれば20万人が殺されたという証拠など無くても20万人が殺されなかったという証拠も無い。事実無根だからこそどちらの証拠も無い。これはUFOや雪男の存在証明と同じような話であり、全くの虚構であればこそ証明も反証も困難だ。
 重慶爆撃が記憶遺産に登録されても文句は言わない。しかし「南京大虐殺」は違う。学者やマスコミが事実を暴かなかったことによって定着させてしまった偽りの歴史だ。朝日新聞社はこの歴史の捏造についても大きな責任がある。旭化成建材が欠陥マンションの責任を負うように、朝日新聞社には全資産と全労力を費やして偽りの歴史を改める責任があると私は考える。