俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

住民投票

2015-10-05 10:45:39 | Weblog
 昨日(4日)愛知県小牧市で市立図書館の指定管理者をCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)とすることの是非を問う住民投票があり、案の定、否決された。一部の住民による「市民の声を聞け」という要求に応えたものだが、こんな住民投票の乱発にはうんざりする。そして市議会議員の無責任さに呆れる。私ならツタヤ図書館の是非よりも議員全員に対するリコールに参加したいところだ。
 議員の立場としては、住民が決めたいと言っているのだから決めさせてやれば良い、ということだろうが、そんな投げやりな姿勢で良いのだろうか。これが議会制民主主義の否定であり、議員に対する不信任の表明であることに全く気付いていないようだ。
 ツタヤ図書館に長所も短所もあることは佐賀県武雄市の例があるからよく分かる。それを実際に調査して総合的に判断することが議員や市役所職員の役割だ。それを市民に丸投げするような働かない担当者など要らない。
 公共図書館の貸し出し数は年間約7億冊らしい。国民一人当たり7冊ほど借りているという計算になるが、利用者は全国平均で38%、つまり1/3の人しか利用していないということだ。そんな状況で住民投票をすれば利用していない62%の人の意向が反映される。私がいきなり「案の定、否決された」と書いたのはこの住民投票が「現在の図書館建設計画」に対する賛否を問うからだ。多数派を占める図書館不要論者の意向が反映されるからどんな図書館の案でも否決されるだろう。もし将来、公営図書館の案が住民投票に掛かってもやはり否決される。民意は「図書館など不要」だからだ。多数決は不合理な制度だ。もし「外国人の居住禁止」という住民投票があれば多くの自治体で可決されるだろう。
 中学生の時こんな経験をした。私が3年生の時になぜか突然、生徒全員のクラブ活動への参加が奨励された。私は軽い気持ちで音楽鑑賞部を選んだらいきなり部長に選ばれてしまった。
 元々30人くらいの部員数だったが突然100人以上の新入部員を迎えることになりその場で部長を選ぶことになった。なぜか私は下級生にも人気があったために新入部員でありながら部長に選ばれてしまった。選ばれたから仕方がない、部長としての方針を出さねばならない。私はクラシック偏重を脱して幅広い音楽を楽しもうと提案して多数を占める新入部員を大喜びさせた。
 それからが大変だった。私は当時「不良の音楽」と位置付けられていたビートルズの大ファンであり当然その公約を果たさねばならない。当時は未だ「レット・イット・ビー」は勿論のこと「ヘイ・ジュード」も「サムシング」も存在しない。クラシックファンの巣窟である音楽鑑賞部でビートルズの曲が流されたのは多分、日本で最初だったと思うが、「イエスタデイ」だけは辛うじて従来の部員にも受け入れられたが他の曲は酷評された。なお私の主な支持層だった新入部員は大半が幽霊部員になった。
 こんな個人的な体験を書いたのは多数決が不合理であることの実例を示すためだ。新入部員を加えずに生え抜きの部員だけで投票していれば私のような変な部長が選ばれることなど絶対に無かっただろう。図書館の運営についても、利用者と将来利用する意思のある人だけで決めるほうが良かろう。無関心の人まで加えれば民主主義ではなく衆愚主義になってしまう。

税金

2015-10-05 09:52:42 | Weblog
 〔寓話〕通常価格がどちらも1,000円の食品と家庭用品を買いたい消費者がいる。片方の店では食品が1,000円で家庭用品が950円、もう一方の店では食品が950円で家庭用品は1,000円だ。どちらかの店にしか行けないのであればどちらの店を選ぶべきか?〔答〕どちらを選んでも一緒。
 店側の事情は違う。一般に家庭用品の利益率は食品よりも高い。だから家庭用品を高く、食品を安く売ったほうが店としては儲けが多い。しかしそんなことは消費者にとっては関係の無いことだ。合計で安く買えればそれで良い。
 軽減税率の議論はこの寓話に似ている。何が軽減されるかよりも重要なことは自分の買い物が幾ら軽減されるかということだ。今だけではなく生涯の買い物においてどれだけ税金の負担が少なくなるかが大切な基準だ。
 預貯金でも事情は同じだ。自分が預けた金がどう使われようと構わない。要は、どれだけの金利を確実に得られるかに関心は向けられる。
 消費税は最も貧しい人にまで課税する悪税だ。消費税の欠陥は逆進性ではなく「平等性」だ。同様に、平等な税制である人頭税も悪税と言われている。しかし誰もが公益を享受しているのだから全員が負担することは決して誤ってはいない。平等に負担させるから悪税だ。課税は平等であってはならず、生活に余裕のある人から多く徴収すべきだ。平等な税制を不平等にすることこそ好ましい。
 酒税も煙草税も不平等な税制だ。愛好者のみに極端に多くを負担させる。酒も煙草も嗜まない人は、こんな税金が幾ら高くなっても構わない。文句を言うのは愛好者だけだ。酒税と比べて煙草税が安易に増税されているのは喫煙者が少なくなったからだ。喫煙者がもっと多ければ増税にもっと慎重になるだろう。
 ドイツにはユニークな税制がある。売春が合法化された時に、一日当り6ユーロのセックス税が売春婦に課された。この税金を何と40万人が納めて合法的に売春を行っているそうだ。日本にも風俗税やパチンコ税があっても良いと思う。この2業種はレジャー産業に分類される。当然、生活に不可欠なものではない。しかもどちらも法人税の脱税が多いことで知られている。法人による脱税の一部を利用者に負担させても構わないだろう。
 他に飲酒乗車税を提案したい。酔った人が電車を利用することに課税する。1回当り100円程度でも良かろう。これは他の乗客や駅員にとって迷惑な酔っ払いに対するペナルティであり、これを地方在住者が飲酒後にタクシーで帰ることに対する補助金とする目的税としたい。都会で酒を飲んでも電車で帰れるが地方であれば自家用車を運転できないから、タクシーや運転代行を依頼することによる出費が発生する。飲酒時には経済的不利益を蒙る地方在住者を支援するための税制だ。
 私の本音としては電車を利用できるという特権に対して電車税があっても良いと思っている。電車は安全で便利な交通手段でありこれを日常的に利用できる都市居住者は、街中にムービングウォークがあるような生活ができる。