金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

素足

2012-02-06 00:40:22 | APH
素足2

 どうしてこんなことになってしまったのかしら。
はぁ、と心だけでつぶやく。すると、聞こえているはずもないのに、赤い瞳が見上げてくる。
どくん。ただ、見上げられているだけなのになぜか違う人のように見える。いつも見慣れているのは、射るような強い瞳。そして私だけに見せる顔、孫のように甘ったれてくる瞳。そのどちらでも無い。うるんでいるように見えるのはきっと彼が酔っているから。私を見上げているからではないの。そうよね。みんな酔っているの。だからこんなことになっているだけ。

 右足の小指をこする熱い指の感覚。右足を持ち上げているのは太陽に国、スペイン。
 左足の薬指をくすぐる少し冷たい指。左足を持ち上げるのは、かっての軍国。

冷たい感触が小指の爪をくすぐる。爪、伸びていなかったかしら。桜は思う。前に切ったのは7日前。足のつめは伸びるのが遅いけど、さすがに少し伸びていた。そのほんの少しの爪を男の手が丁寧に洗う。男にしては柔らかい感触の指がいくども爪の表面をすべる。こするほど強くなく、でも存在を忘れさせない圧感で。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 
桜は呼吸を止めて数字を数えた。
少しでも落ち着くために。そうしないとうっかり声を出してしまいそうだ。
それから気がつく。数えている数字のリズムが冷たい手の男が爪にふれるのと同じタイミングであることに。
 熱い冷たい波打っている。いくつもの感覚を足の爪が伝える。
自分たちは国の化身である身だから、いま触れられている部分は私のどこなのかしら。私の始まった淤能碁呂島(おのごろじま)は滴り落ちて産まれたから
 数字を数えなくなってから桜の思考は乱れた。

 
 
 

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