金属中毒

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プロポーズ小作戦53

2009-04-27 23:07:12 | コードギアス
プロポーズ小作戦53
ようやく扉が開いた。
『星刻』と呼びかけようとしてスザクは彼らしくもなく止まる。ゼロとしては彼を黎大司馬と呼ぶべきじゃないか。
ナナリーにだって皇帝と呼びかけるのだから。
その隙を見逃す星刻ではない。瞬時、スザクが跳んだ。後方にではない。上へ。攻撃態勢で。
殺気に無意識に反応した。星刻が意図的に発した殺気。本気でない事はスザクにはわかる。星刻が本気なら、殺気を見せるようなことはしない。
それでもスザクの身体は反応した。軍人としての反射。戦場で生きている者の反射。
星刻の黒い瞳が輝く。
武器こそ手にしていないが、スザクほどのレベルではむしろ素手の方が危険だ。武器があれば一応はそれを使うと言う前提で対処できる。しかし丸腰では、拳か蹴りかの判断さえ付かない。
それは星刻も同じ事である。
星刻は薄く笑う。楽しいと単純に思う。強い相手と戦える。
自分が他人より強いと気が付いたときから、自分と同じほど強い相手と戦えるのは快楽だと知った。
知の面でのゼロ。そして武のスザク。
しかし、違う。
ここにいるのはスザクではない。
『ゼロ』だ。

すっと殺気が消えた。
「ゼロ、あなたもここに整備においででしたか」
完璧な礼儀。
世界を守る英雄に対する、大国の支配者の礼儀。
スザクが廊下に降りたとき、すでに星刻は儀礼的な言葉だけを残して立ち去っていた。

かわされた。スザクは思った。
抜き身の刀で切りかけながら、星刻は去った。まるで、今のスザクとは戦いたくないとでもいうように。

(俺はゼロだから。もうからっぽだから)
廊下にはいつまでも誰も来ない。自分の隣にはもう誰も来ない。

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