金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

氷樹3

2009-02-14 13:00:36 | 鋼の錬金術師
マスタングは時々部下である[氷樹]を呼び出した。すると何故かいつもエドも付いてくる。普段は呼んでも文句ばかりでなかなか来ないエドが当たり前のように付いてくる。
仲良くしっかりと手をつないで。
普通なら、15歳を越した兄弟が手を握って歩くのは・・・あまり美しい構図ではないだろうが、この『兄弟』は絵になった。中央軍の女性たちは彼らを見るのを楽しみにしている。しかし、マスタングはそれを見るたび額の縦皺を深くした。
「仲がいいことだな」
マスタングはたっぷりのいやみをまぶす。
マスタングの視線はまっすぐエドに向かう。
だが、すばやく立ち位置を変えたフレッチャーが正面から視線を受け止める。
「はい、だって僕エドワードにいさまが大好きですから」
気のせいかピンクのハートが執務室に飛び交っている。
無意識にマスタングの手に力がこもる。万年筆のペン先がじわじわ広がっていく。
「「「「「あ」」」」」
5人の声が重なる。
第1秘書が書類を救う。
第2秘書が万年筆を取り上げる。
「いけません。あなたの手が汚れてしまいます」
第2秘書のペンだこだらけの手をフレッチャーは優しく包む。インクの付いた彼女の手に少年の指がゆっくり円を描く。わずかな蒼い光の後、新品に戻った万年筆と白魚の手の秘書嬢がいた。
(金属系と生体系の錬成を同時にか)
「器用なものだな」
「小物直しと美容で生活していましたから」
フレッチャーはにっこり微笑む。
邪気の無い笑みなのだが、なぜかマスタングはまたざらざらした触感を感じる。
(何故だ?)
頭が良くて素直で礼儀正しい、先輩のエルリックに懐いている、軍の中でのフレッチャーの評価は良い。フレッチャーに疑念を抱いているのはマスタングただ一人。それも証拠は無い。

証拠も無くフレッチャーへの疑念を口にすれば「長い事手元で可愛がっていたエルリックをとられたようでさびしいんじゃありませんか」
そんなふうに言われるだけだとわかっている。
だからマスタングは表向きフレッチャーの調査を打ち切った。

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