金属中毒

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三大騎士団2

2012-08-11 03:47:45 | 読書暦 音聴歴
最後の日に一緒にいたんじゃない。そんな風に考えたあなたはロマンチストであろう。それは事実だ。ただし、何をもって最後の日とするかにもよるが。一応、アッコン陥落の日1291年を最後の日として見る。するとロマンチストの目には愛とロマンにあふれた映像が、妄想ともいうが見えてきたりする。


200年間同じ聖地を守護しながら、ただの1度もともに手を取り合ったことの無い騎士たちが、今失われゆこうとしているわれらの聖地を、その瞬間を1秒でも食い止めるため共に闘う。

迫り来る炎。敵が撃ってくる火炎弾。その直撃を受け燃える騎士。叫びすら炎にかき消され倒れようとする騎士。それをどうすることもできず、ただ見ているだけの仲間。そこに飛び込んでくる赤い影。燃え続ける騎士を抱きとめる赤字に白い変形十字の騎士。パレスチナではなじみのその十字の本当の主。ヨハネ騎士団の化身。人と交わるときの名を団と同じくヨハネという。
燃えうつる炎。肉の焼けるにおい。化身といえど人と同じ肉体しか持たない。傷つけば痛みは人と同じだけ感じる。死体はまだぶすぶす音を立てて熱を発している。ヨハネの赤い衣が黒く炭化する。

「ヨハネ、手を離せ。もう死んでる」
低い声。その声が自分の兄弟、数少ない同胞の声であるのにヨハネは数秒かかってやっと気がついた。考えて見れば200年近く同じ土地にいるのにこの弟(誰も兄弟とは認めてくれないが)の声を聞くのはいったい何度目か。
弟の名を呼ぼうとしてその声に答えようとして、ヨハネは声を止めた。この弟の名をどう呼べばよいのか。自分はこの200年間一度も名を呼んだことがない。
「ユーグでいい」
その戸惑いにいつからなのかじぶんよりずっと視点の高い弟は低い声でぼそりと告げる。

ユーグとはテンプル騎士団をつくった最初の総長の名。この弟は生涯自分のためだけの己を表す名を持たなかったのだ。







ちなみにこの日ドイツ騎士団は何をしていたか。当時の現地の記録にはあまり残っていない。
もちろん個々の騎士も騎士団も全力で戦い死んでいったのだが、それはあくまでもアッコンの支部の話で、当時すでにドイツ騎士団は東ヨーロッパ、具体的にはプロイセンと呼ばれる土地を植民するのに主な力を注いでいた。
 APH的表現ではギルはすでにパレスチナを離れ、プロイセンにいた。これを命令したのがあのシチリア王フリードリヒ2世である。ギルの親父様と同じ名なのは何の偶然か。
史実ではこのアッコンの防衛戦のニュースを聞いたドイツ騎士団の総長がローマを経てアッコンに向かい、ヨハネ騎士団とドイツ騎士団の合併を行おうとしたが、結局成功しなかった。歴史にもしもは禁物だが、もし、ラテン・ドイツ連合軍ができていたらエルサレムの歴史はどうなっていたのだろう。

誰か書いてくれないかなぁ。読みたいなぁ。とつぶやいてみる。