俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その25

2010年02月18日 00時35分38秒 | 小説『ファルコとの出会い』

「おそろしく長い数秒間だった。今でも噴き上げる炎の色と形を、はっきりと思い浮かべられるんだ。考える暇もなく、左右の砲台から集中砲火が襲ってきた」
「腹の底から突き上げるような恐怖がこみ上げてきた。目の前が暗くなり、歯の根が合わなくなった。おそろしかった……ただ命が惜しかった」
「そして逃げた。谷へ下りて、燃える機体の中からジェームズを救い出し、ともに脱出する……とても無理なことに思えた。とても無理だ、逃げるしかないと……自分に言い聞かせたんだ。自分が崇拝する男を残して、ワシは逃げた」
「逃げれば逃げるほど、それまでの自分が音を立てて壊れていくのがわかった。ジェームズが、まさか……。」
「ワシは、ジェームズの死地を救うつもりでいながら、心のどこかでは、そんな日が本当に来るのかと疑っていたんだ。ジェームズは完璧だった。そしてその隣にはワシがいた。ジェームズ・マクラウドとペッピー・ヘアがチームを組んでいるんだ。死地など訪れようはずがない、と」
「任務が終わると、ジェームズとよく酒を飲んでいたよ。お互い死を覚悟している戦闘機乗りだが、今回の任務も死ななくて済んだなと笑いあった。もちろん、ワシかジェームズのどちらかが死ぬ日が、いつか来るかもしれない。それは一年後かもしれないし、明日かもしれない。だがその日の訪れを、永遠に先延ばししながら、引退のときを迎えられるのではないかと……ワシもジェームズも老いぼれちまって戦闘機乗りを引退したあとに、けっきょくどんな任務でも死ぬことはなかったなと、笑いあいながら酒が飲めるんじゃないかと……心の一部では思っていたんだ。なんと、なんと甘かったことか」
「それから、ピグマだ。やつがスターフォックスに加わる前から、アンドルフとつながりがあったことは知っていた。だが翼を並べたチームのリーダーを、なんのためらいもなく撃ち落せるとは……ワシはやつの心が理解できない。やつを含めた三人で仕事をしていた頃、ワシがやつに感じていた信頼感、絆のようなものは、一体なんだったんだ? やつだって、ワシやジェームズを信頼していなければ、自分の隣を任せることなどできなかったはずだ。その信頼をも、やつは裏切った。自分で自分を裏切ったら、あとに何が残る? たとえ金が手に入ったとて、自分を失くしてしまったらなんの意味があるんだ? わからない。考えれば考えるほど、底なしの暗闇へと堕ちていくような気がするんじゃ……」

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