横なぎの風がどう、と吹いて、我に返る。どれほど立ちつくしていたのだろうか。
ひと筋の飛行機雲がゆっくりと伸びて、青い空を両断してゆく。
つい昨日の夜、寝床の中で感じていた星の鼓動は、いまは遠い昔の夢のように思えた。魂が時空を自由に旅していた感覚も、はっきりとは思い出せなかった。代わりに、現実が胸にずしりと重かった。
別れ際、ペッピーの発した言葉がよみがえる。
――闘うというのも、楽ではないな。だがそれでも、飛ばねばなるまい。
そうだ。飛び続けていれば。
飛び続けていればいずれ、父親にめぐり合うこともできる。最もありそうにないその思いだけが、胸の中に確かな感触として残っている。
ポケットを探ると、携帯端末で時刻を確認した。
フォックスはもう一度だけ、今しがた歩いてきた田舎道、その向こうに変わらず建っている小さな家をじっと見つめ、記憶の奥底に焼き付けた。
そうして振り返ると、小石を蹴って走り出す。
フロートシャトルの発車時刻が迫っている。
ゆかねばならなかった。
それから。
パペトゥーンの農場をあとにしたフォックス・マクラウドが、フロートシャトルの停車場に向かって走り始めてから。彼らの運命も、突如として変転の時を迎え、今に至るまで疾駆しつづけているのだ。
フォックスはコーネリアに戻ると、すぐさま遊撃隊『スターフォックス』の活動継続を申請した。チームの行く末が定まるまで凍結の扱いとされていた母艦グレートフォックスも、無事にチームへの帰属を認可された。数か月ぶりに日光の入ったブリッジで、チームリーダーとなったフォックスが最初に対面したクルーは、航宙士ロボット・ナウスであった。