俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その46

2011年04月19日 00時45分13秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 横なぎの風がどう、と吹いて、我に返る。どれほど立ちつくしていたのだろうか。
 ひと筋の飛行機雲がゆっくりと伸びて、青い空を両断してゆく。
 つい昨日の夜、寝床の中で感じていた星の鼓動は、いまは遠い昔の夢のように思えた。魂が時空を自由に旅していた感覚も、はっきりとは思い出せなかった。代わりに、現実が胸にずしりと重かった。
 別れ際、ペッピーの発した言葉がよみがえる。
 ――闘うというのも、楽ではないな。だがそれでも、飛ばねばなるまい。
 そうだ。飛び続けていれば。
 飛び続けていればいずれ、父親にめぐり合うこともできる。最もありそうにないその思いだけが、胸の中に確かな感触として残っている。
 ポケットを探ると、携帯端末で時刻を確認した。
 フォックスはもう一度だけ、今しがた歩いてきた田舎道、その向こうに変わらず建っている小さな家をじっと見つめ、記憶の奥底に焼き付けた。
 そうして振り返ると、小石を蹴って走り出す。
 フロートシャトルの発車時刻が迫っている。
 ゆかねばならなかった。

 それから。
 パペトゥーンの農場をあとにしたフォックス・マクラウドが、フロートシャトルの停車場に向かって走り始めてから。彼らの運命も、突如として変転の時を迎え、今に至るまで疾駆しつづけているのだ。
 フォックスはコーネリアに戻ると、すぐさま遊撃隊『スターフォックス』の活動継続を申請した。チームの行く末が定まるまで凍結の扱いとされていた母艦グレートフォックスも、無事にチームへの帰属を認可された。数か月ぶりに日光の入ったブリッジで、チームリーダーとなったフォックスが最初に対面したクルーは、航宙士ロボット・ナウスであった。


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