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スターフォックスの一ファンのブログ

「遊び」の本質を追求した人

2015年08月22日 20時00分09秒 | おすすめの本
 スプラトゥーンの『ガチヤグラ』と『ガチホコバトル』は、サッカーとかラグビーに似ているな。
 ボールを取り合うかわりにヤグラやガチホコを取り合い、相手ゴールを目指す。なかなかゴールが決まらない分、決まった時の爽快感がはね上がる。

 なぜこんなことを考えたかと言うと、『任天堂ノスタルジー 横井軍平とその時代 』(角川新書)という本を読んだからです。

 横井軍平さんについては、ウルトラハンドやワイルドガンマン、ゲーム&ウォッチやゲームボーイの開発者と知ってはいたが、いまひとつどんな人なのか感覚がつかめていなかった。
 しかしこれを読んで、私の想像以上に、彼の目指したもの、考えていたことが任天堂に根付いているのだ、ということがわかった。

 いくつか気になった部分を抜粋してみる。

・横井は、なんとか電子玩具と伝統的な遊びを結びつけ、子供たちの遊びを本来の姿に戻したいと考えていた。(第5章)
・ゲームボーイがここまで世界中に広がったのは、単にゲーム&ウォッチのマルチソフト化というだけでなく、横井なりの新しい感覚が付け加えられ、そこがヒットの導火線となったのだ。そして、それは横井が理想とする「遊びの感覚」に近いものだった。通信対戦である。(第5章)
・そうすると、テレビゲームは、色をつけたら新しさが出るんではないかという動きになってきた。でも、これは作る側からいったら、落ちこぼれなんですね。アイディアをひねり出すんじゃなくて、安易な方へと流れている。そうなると、任天堂のようなゲームの本質を作る会社ではなくて、いずれ画面作り、CG作りが得意なところがのしてくるだろうと。そうしたら、任天堂の立場はなくなってしまうんですね。(第5章)
・ファミコンからスーパーファミコンへ移るときに、「こんな難しいゲームはもうついていけない」という人がずいぶん出た。新しいゲームを遊ぶ人は投入する金額が大きいですから、一見売り上げはいいようですけど、ゲーム人口という面では減少しているわけです。NINTENDO64でも同じことが起こる。(最終章)

 任天堂のファンならば反応せざるを得ない言葉ばかりだと思う。
 「電子玩具と伝統的な遊びを結びつける」という思想は、Wii、Wii Uの根底にあるものじゃないだろうか。
 先日亡くなられた、岩田社長の言葉とも通じるものがある。「ゲーム人口の拡大」「新しい遊びの提案」。
 そして、任天堂を「ゲームの本質を作る会社」だと言い切っている。

 横井軍平さんはゲーム、娯楽を創り出す会社として、押さえるべき本質を理解していた人だった。
 だから時が経っても、世代が交代しても、その思想は任天堂に受け継がれてゆく。

 『スプラトゥーン』は、横井さんが考えていた「電子玩具と伝統的な遊びの融合」そのものに思える。
 このゲームを遊んでいる感覚は、子供のころ学校の昼休みに、自転車置き場とか校舎裏とかでボール鬼(ボールをぶつけられると鬼になり、今度は他の誰かにボールをぶつける鬼ごっこの一種だ)を遊んでいたときの感覚にそっくりなんだよ。
 これを横井さんが見たらいったいどう思うか、どうコメントするか。
 知りたいけど横井さんは1997年、事故で亡くなられてもうこの世にいない。

 横井軍平。任天堂を語るならば外すことのできない人です。前述の本はおすすめなので、任天堂ファンの皆様はぜひご一読を。