俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その7

2008年03月02日 17時30分34秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 低速で飛ぶフォックスのアーウィンから、真正面から猛然と突っ込んでくるファルコの機体が見える。プラズマエンジンの振動波で海面を荒立てながら進む姿は、まるで海を一文字に切りさく刃のようだ。
「フォックス! 突っ込んでくるよ、ど、どうするの?」
 狼狽したスリッピーの声と映像が、アーウィンのモニタ上に小さく浮かんだ。
 ファルコの機体は、海面すれすれを飛んでいる。このままでいれば、フォックスの真下をくぐり抜けられることになる。
「慌てるなよスリッピー、作戦通りだ。すれ違い様に叩き込んでやる」
 フォックスは手早く計器類をチェックすると、いくつかのボタンを操作した。空中でアーウィンの可変翼が可動し、機が鋭い流線型のフォルムになる。
 加速しつつ、ファルコ機に合わせるように高度を落としてゆく。そのまま、フォックスは一気に突き進んだ。

(マジかよ)
 正面から向かってくるアーウィンを見て、ファルコは冷や汗を垂らした。
(何のつもりだ。このままいけば……)
 正面衝突、こっぱみじんだ。考えている余裕は無い。
「ウッ!」
 機体が触れ合うほどに接近する数秒前、ファルコは桿を左に切った。瞬間、アーウィンは右に軌道を逸らしている。ローリングによるエネルギー・フィールドが機体を覆っているが、ファルコに見えるはずもない。
 ファルコの息は荒く、その顔からは血の気が引いている。
(何だってんだ。命知らずにも程があるぜ。雇われ兵士のやることか?)
 それ以上、思考を続ける暇はなかった。空砲のような渇いた破裂音が二発、ファルコの耳に入り、彼の頭をかき乱した。
(何だ、なにをしやがった?)
 あわててレーダーを確認する。すれ違った機体は、徐々にスピードを落としながら弧を描いて離れてゆく。機体に損傷を受けたようにも思えない。
(とにかく、ヤツから離れるしか、ないな)
 ファルコは緩みかかっていた両手を、ふたたび操縦桿にかけ直すと握り締めた。
 しかし、おかしい。先刻ほどにはスピードが上がらないのだ。
(これか!)
 ファルコは愕然とした。相手はどうやら、自分から翼をむしり取る気でいるらしい。

「ファルコとの出会い」その6

2008年03月02日 13時31分11秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 無線信号の受信を示すランプが幾度か点滅し、点ったままになった。ファルコは無言のまま、回線接続のスイッチを入れた。……こちらからの送信は切断したまま。

「……るか? こちらは、遊撃隊『スターフォックス』。ファルコ・ランバルディ、聞こえるか?」

 耳障りな雑音のあと、青年のものらしき声が耳に入ってきた。
 スターフォックス。遊撃隊。ファルコは素早く頭を働かせた。
 コーネリア軍じゃない。なるほど、やつらはベノムにかかりきりで、俺なんかには手が回らない。すると、コーネリア軍に使われている雇われ兵士か。
 俺の身元も、この機体の情報も割れているな。にもかかわらず、通信を求めてきたってことは……少なくとも、出会い頭に撃墜する腹じゃあ、ねぇな。

「……聞こえているはずだ。コーネリア軍からの要請により、おまえを捕らえる。回線を開いてくれ。おとなしく投降してくれれば、悪いようにはしない」

 悪いようにはしない、だと? よく言うぜ。
 俺を捕らえたら、軍隊に引き渡し……あとはおまえらの与り知るところじゃねえだろうがよ。
 ファルコは桿を握り締めた。機体は急加速し、海面にさざ波の軌跡を描きながら、一直線に低空を滑ってゆく。
 スピーカーから聞こえる声の調子が、すこし張り詰めた。

「……よせ、抵抗すれば立場が悪くなるだけだ。それに、俺たちはおまえを逃がすつもりはない。海面にフロートを出す、着水してくれ」

 うるせぇよ。
 ファルコはそう呟いてから、回線を完全に切断した。もちろんその呟きも、向こうには聞こえていない。