日中越境EC雑感

2008年に上海でたおばおに店を作るところから始めて、早もうすぐ10年。余りの変化に驚きの連続

チャイナドリームは終わったのか

2011-05-24 | 中国ビジネス関連
日本史七つの謎 (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社


 中国とは全然関係のない、表題の本を読んでいました。まぁ、実は私は歴史好きで、業務関連以外はこういうのばっか読んでいます。アジアに興味を持ったのも歴史上いろいろ関係しているからでしょうね。

 まぁこの本そのものは、大化の改新の有無、端俳句や和歌が何で日本ではやったんだ、天皇家が続いたのはなんで?織田豊臣徳川が政権をとった理由、薩長が幕府に勝ったのはなんで、太平洋戦争の始まったのはなぜ、高度成長はなんで可能だったの?てなあたりで偉く守備範囲が広く、個人的には面白かった。

 まぁ、そんなのはおいといて、当ブログの中心中国に関連しているなと思ったのが最後の章の日本の高度成長期に関する部分。おおむね日本の高度成長はその背景には戦前の段階で日本の技術力は純先進国の段階にあった。ゼロ戦や、戦艦大和や武蔵を作り、ナイロンを作り、最先端とは言わないまでも世界の上位に位置できるレベルの技術水準を保有していた。

 そして戦後軍事に投資を行うことがなくなり、軍事技術者などがすべて量産型消費材製造業の発展に貢献した。まぁ他にも先進尾国への劣等感からくる努力等いくつかの条件が指摘されています。


 反感を買うのでしょうが、何度かブログでも書いていますが、今後の日本に関しては、軍事に目をつぶっていることから技術力も今までのような世界のトップレベルを維持するのが難しいというのが個人的意見でもあります。まぁこれはアメリカのベンチャー企業へ向かう投資予算にかなり国防予算がつぎ込まれていることも、過去にご紹介したことがありますし、最近誰か有名人のブログにも書いていたような気がします。今回の原発のロボットなどもその証明になるのじゃないのかな。だからといって軍事開発そんなにしろとも思いませんし、アメリカのちゃちゃが入ることは明白ですが。




 まぁ、そんなことはおいといて、この本で知ったことなんですが、伊藤光晴先生の指摘


 昭和34年に下町の町工場の調査をした。女工の月給が千円で機械4万5千円。女工一人当たり7千円の利益が出た。機械が10台あれば7万円になるが、当時伊藤先生の給与は2万円だったから非常に魅力的に思えた。この時代なら、わずかな資金で独立できた。

 3年後の昭和37年、同じ場所で再調査した。女工の給与は2倍の1万5千円に近かった。インフレだけでなく人で不足でこうなった。そうすると女工さん一人で利益は2千円しか出ないから、機械を10台いれてもサラリーマンの2万円。とても収益が出ないので、高度な機械を購入して自動化を図るようになってきた。そうなると今度は資本がないと事業なんてできなくなった。その為に、その当時までは零細企業でものれん分けをして独立した人がたくさんいたが、もう無理でサラリーマンするしかなくなった。


 さて、日本はその後ますます同じ傾向が出て来たんじゃないでしょうか?京セラ、オムロン等がいつごろ操業されたのか知りませんが、おそらく昭和30年代中盤というのが最後のチャンスに近かったのかもしれません。それ以降って、リクルートやユニクロ、IT系等サービス業系ではたくさん大企業が出ていますが、製造業系で昭和37年以降に始まった大企業はそんなに多くはないんじゃないですかね?知らないだけかもしれませんので、その辺はご容赦願います。ITの成長でもてはやされた元IBMや元りくの人に関しても色々厳しい評価が出るようにもなってきましたし。


 で、中国。

 女工が7千円というのは中国なら600元くらいか。沿岸部ではもう何年か前の数字ですね。5年前でも800元くらいかな。で1万5千元というろ1100-1200元くらい。もはや沿岸部では人は雇えないでしょう。田舎でも楽じゃないんじゃないかな。
 

 思うんです。ひしひしと。


 チャイナドリームって言葉は何年か前にありました。中国で企業しろなんて本も何年か前に出ました。僕は2000年当時に中国にきたいと思っていたんですが実際に住みだしたのは2004年です。


 遅すぎた。2000年に来ればまだまだ稼げたと思う。1995年ならぼろもうけできたかもしれない。


 今は?まぁ食えている。もっと発展したいと思っているしある程度はいけるとしんじてもいる。チャンスは日本より多いとも思う。


 でも、この日本の高度成長の時代の数字は考えさせられます。そうなんです、気軽に独立し気軽に稼げる時代という意味で、上海や中国の大都市はもうすぎちゃっているのではないか。田舎に行けば良いと言われるし、確かに大都市より良い面もあるが既に中国国内のあらゆる業界で競合の大手が存在しており、いつかどこかで競合の参入に直面するしその時期は早い可能性がある。地方都市でも1100元くらいだとワーカーは雇えるでしょうが質はかなり低そうな気がしますし。呉さんが書いていたけど地方都市の人件費も急激に上昇していくようですし、単に今後数年のチャンスかと。


 それに不動産関連のバブルは日本のバブル時代なんてものじゃない。行き過ぎちゃって調整のつけようがない。


 確かに中国は市場としては大きいし、そういう意味ではまだまだ魅力的です。


 でも、もし独立を考えあぶく銭をつかみたいなら、それはおそらく中国じゃない。ネット分野などに関しては外資全てがこけているのが実態で日本じゃ新しい業態だけど中国じゃメーカと変わらない歴史がある。アメリカとの結びつきは日本より遥かに多いし強い。タイムマシン経営なんて日本経由じゃ遅すぎる。


 この数字。女工の給与が7千円以下の国。ベトナムは知りませんが、ラオス、カンボジア、モンゴル、北朝鮮。そういう国の方がはるかに容易にお金を稼げるのではないだろうか。


 というかできるでしょうね。政情だけは要注意ですが、結局ユニクロもそうですが大企業はコストの安いところに生産拠点を移し、それに伴い経済の成長が始まりますから。そういう意味でベトナムは手がつきすぎてもう遅すぎるようですが。まぁ居住環境は良くないでしょう。でもだから機会が大きいんじゃないかな。


 でもこういう事情は中国人自体が認識しているはず。いまだに独立する人はたくさんいますし、タオバオなんかそういう人の巣窟みたいなところがありますが、あと3-5年もしたら、今の若い中国人を見る限り大企業でそこそこの給与を獲得できるなら、一生勤めようという日本人的意識が高まるのじゃないかな。人事的には楽になるということですね。まぁ欧米系に関しては既に1千万円プレイヤーなんて山ほどいますし、独立してもそう簡単にそこまで稼げないので、結構定着しちゃうんじゃないかな?まぁ転職はするでしょうけど。

 学歴格差が日本より遥かに大きいので、学歴低い子はタオバオにせよなんにせよ独立する傾向は減らないでしょうが、まぁ外資系企業は実力うんぬん以前に高学歴者の中で人材選別するからあまり影響はないですよね。

 にしても。。もう少し早く読んどくべきでした、というか日本の高度成長とその流れはもっとしっかり学ぶべきでした。韓国や台湾とは若干異なるんですよね。彼らは自らの努力もしていますがいまだに日本人のエンジニアを雇用します。中国企業も最近そういうニーズが増えています。日本ほど技術蓄積がたまっていないので、そうせざるをえないのでしょう。他のアジアの国全てが似たような道をたどるのじゃないかな。インドは欧米文化圏に近いので違うかもしれませんが。


 資本力の乏しい企業の海外進出や、個人で海外独立を目指す人は、この辺勉強したほうが良いのじゃないかなと思った次第です。私は勉強不足でした。この国にきたのが、本当に遅すぎたと思っています。タオバオもそうですね、健闘しているつもりですがトップクラスとは3-4年の歴史の差があり、追いつかない。。悔しいんですが。。時間は金だと思います。


 大企業なら、確実に中国なんですけどね。リスクは否定しませんが、市場はやはり大きいし、あとは投下資本や投入する人材を含めた本気度の問題だけだと思いますから。
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