のらくろ上等兵 (1969年)
ある程度年配の方しか知らないと思うけど、のらくろ。 先日実家に帰った時に子供の頃かったのが7冊あり、息子が興味を示したので持ち帰ったうえに、かけていた3冊に続編5冊をアマゾンで買って眺めてみた。戦後書かれた続編の単行本が糞高いのですが。 僕が持っていたのは昭和44年刊なので、小学校の4-5年の頃に見たのかな?何がきっかけでこの漫画を読みだしたのかは記憶がないのですが、当時はて気に入ったので実家に残っている唯一の漫画だった。その頃の値段で680円していますので安くはない。小遣いをはたいて買っていたんだと思います。おっちょこちょいでかわいいキャラのの野良犬が軍隊でどんどん出世していく成功談ですね。
全10巻のうち、7巻くらいまでは結構純粋に子供向けの内容で,サルや河童、カエルとの戦いはあるけど、まぁかわいいかなという感じ。昔の言葉使いなので読みにくいけど、別に息子が見てもいいんじゃないのかな。8-9巻は原本の発売時期が昭和12年以降なので、明らかに日中戦争を背景にしている。 クマ(ロシアだろうな)にそそのかされた豚の国(中国)が羊の国(満州)を遅い、そこに犬が羊の保護から豚と戦ってかつという。古いなりにギャグが一杯で、トンカツ将軍って蒋介石の事なのかなと思いながら見ていたけど。豚京城とか3つ落とすけどそのあとのちょうちん行列とか南京陥落あたりでこうだったんだろうね。 戦後編は昭和33年から56年ころまで続いていたんだ。サルとの戦争で合意して軍隊は解散、色々転職しながら最後に結婚するまで。確かに子供の頃丸という雑誌で見たことはある。でも自分が生きてきた軍隊が無くなり、色々な職業に就くけれど失敗ばかりでなかなかうまくいかない。連隊長や中隊長は社長や議員になってそこそこの社会的地位を得ている。元部下が経団連の理事になったり、プロレスのスターになっている。のらくろ自体は無事に喫茶店のオ-ナ-になり、好きな雌犬と無事結婚するというところで大団円になるんですが、これも元軍人の戦後の苦労を表しているのでしょうね。作者の田河先生もいろいろ思う事がありながら書かれたのじゃないでしょうか、決して楽しい話とは言えないです。
中国がらみの仕事をしていますと、どうしても旧日中戦争や太平洋戦争に関する話題が出てきます。日本が過去中国や韓国で何をしてきたのか、悪い事ばかりだったのか、それともよいこともしたのか。まぁよく見えないことも多いのが実態だと思います。こののらくろが少年画報に掲載されたのは昭和6年から16年。満州事変の起きた年から、太平洋戦争が始まる直前まで。子供向けの漫画ですので、どこまで政治的意図があったのかは疑問ですし、内容的に軍隊、特に帝国陸軍をほめたたえるような内容でありながら軍部からは反感を受けていたという。今なら十分に愛国教育とか軍事教育っていうカテゴリーに入っちゃうと思うのですけど。
日中戦争開始後になると、やたら節約、ぜいたくは敵だ、お金は軍備に充てようとか、兵隊さんへ慰問袋を送ろうとか、後方支援色が強くなっている。既に日本は経済的に厳しい状態だったことがうかがわれる。一方で、動物に戯画されている他国に、アメリカとかイギリスは見当たらない。あくまでも本当の敵はクマ=ロシアというところが見えて、日清以来の日本の仮想敵国はロシアだったのにと思わされます。台湾が出てこないのに、朝鮮が同じ犬というのが少し興味深いところです。多分に二等国民扱いをしていたのだろうと思いますが。当時はアジアに対しては日本が保護しないと全部欧米の植民地にされてしまう、そういう意志が強かったのでしょうね。まぁ実態としてもそうだったと思いますが。 最後の刊はのらくろが満州に行って鉱山開発をするんだけど、これまた若い子は大陸に行かなきゃって結構あおっている。で、豚、羊,ヤギ(モンゴルかな)、なんと朝鮮は同じ犬で完全な同胞として位置づけられている。5族協和をこういう風に描いていたんだね。その後の悲劇を考えると、こののらくろを見て満州に行った子がいたとしたら。。
でまぁ、この漫画昭和16年の秋に軍部の指導で終わっているんだよね。今の感覚だとどう見たって戦争あおっている面もあり(言葉としては、平和を愛し戦争はすべきではないというところがでてくるが)、かなり軍国主義教育的な色彩が見られるんだけど。それですら甘いという時代に入ってしまったのか。
戦前の日本がどういう国だったか、当時の子供漫画を見ても色々と見えるところがあります。 |
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昨日NHKで、AIは脅威か好機かという趣旨の番組をやっていた。深夜だったので再放送かもしれない。
将棋で佐藤名人がボナンザに敗れたことがメインに取り上げられ、その中でも開発者が人工知能がどういうロジックでこういう手を指すのかが解らなくなったという発言があり、それを意識したのだろうか、他にも人事評価をAIが行うのだがその判断基準が示されないので理由がわからないという形で報道されている。
正直自分の頭では理解できないことで、いきなり結論を出されたら普通の人間は戸惑ってしまうし、そこに大きな不満や不安が発生するのではないかと思う。AIが神に近い存在になってしまうかもっていう不安と、AIにより人間の能力がもっと伸びる好機ととらえるかでその印象、運用、開発なども大きく異なってくるだろう。
個人的には年齢を重ね、色々な人と交渉事をしていて見ると、国民性や所属組織、個人の社会的背景などまで見てみると、人間の思考法には一定のパタ-ンがあるだろうとはうすうす気が付いてくる。だから、今でいうビッグデ-タを上手く分析すれば、AIが出してくる結論に従う方が効率的な面が多いだろう。ただ、その類型化できないパターンをどうやって拾えるのか等はとても気になるけど。
昨日の番組の中で一番興味深かったのは、韓国の事例。歴代大統領が汚職やらなんやらで逮捕されたり自殺したり、ろくなことが起きていないことから政治にAIを活用しようというプロジェクトが動いているそうだ。まぁ、一つの国だけでAIを運用できたとしてそれがどこまで有効に機能するかは疑問な点でもあるが、昨今の加計や森友問題、そして安倍政権になる前の民主党政権のあまりのひどさを顧みると、まず日本の同じ取り組みをしてほしいと思う。
昨日ザクッとウィキの歴代内閣という項目から拾ってみたのだが、日本の明治以来の内閣の平均年数と内閣総理大臣の在位平均年数。第二次内閣とか第三次内閣とかが発生するので、内閣そのものより内閣総理大臣の方が長くなる。
内閣平均寿命 内閣総理大臣平均寿命
明治 1.71 3.43
大正 1.36 1.88
昭和戦前 1.11 1.33
昭和戦後 1.55 3.00
平成 1.17 1.69
どなたかが調べられた他国の状況は以下の通り。日本は2011年より後だと野田さんと安倍さんの2名追加か。
※まず1989年から2011年までの各国歴代首脳の人数。
日本 17人
フランス 3人
アメリカ合衆国 5人
イギリス 5人
ロシア 4人
ドイツ 6人
イタリア 4人
カナダ 5人
いかがだろうか?平成に入ってから自民党55年体制が崩れたこともあり、政治的な混乱が続き、首相がころころ変わるという印象は強い。実際にも内閣は平均1.17年。総理大臣は小泉さんと安倍さんが平均を上げているけど、それでも2年にも満たないというこの事実。そしてこの表を作るまで認識していなかったが、短命政権が多いのは戦前の軍部介入による混乱の時期だけではない。大正時代も2年以下。比較的安定しているような印象の強い明治、昭和の戦後ですら4年は無い。なんと短い事だろう?
他国の状況については私が調べたわけではなく、ググった時に見つけた方のを記載しているが、平成元年から22年の間の先進国歴代首脳で最も変わったドイツで平均3年以上。まぁそれ以外も4年以上。政治的混乱の目立つ韓国も大統領制なので同じようなものではないだろうか?中国は実質人気年なのでまぁ3人。いずれにせよ政治の首脳がこれだけころころ変わっているようでは、日本の将来を考えるとかその具体的施策の実行なんてとても期待できない。まぁ現状はそうなのだけど、明治の初めや、戦後の比較的長い政権が続いた時代を除き、日本人は移ろいやすいのか、政治力学ですぐにぶれてしまうのか。その背景には世論というメディアのあおりもあるのではないだろうか。いずれにせよ健全とはとても思えない。
日本が様々な面で行き詰っていることは、多くの日本人が認識しているように思える。一方で今今の痛みからは目をそらし、結果的に現状維持の選択をしているのが、今の国の政治であり、行政であり、多くの民間企業、そして個人の生き方の様に思う。久しぶりに日本に帰り、地方都市、大阪、東京とそれぞれ短期間ではあるが住んでみると、実に日本は快適な面の多い国だと思う反面、これは将来厳しいと思わざるを得ない。高齢化社会の到来や、少子化問題、それに付随する労働者不足や移民受け入れの課題。こんなものは少なくとも20年前には見えていた課題だが、この20年間国や行政は何の手も打ってこなかったし、今も有効な手を打っているとは思えない。いや、それどころか有効な議論が行われているとも思えない。
一方で、加計問題などを見ても、安倍政権による不透明な対応についての非難の声はあるものの、その問題の起因が良くわからないで、目先の事実に対する非難で終わってしまっていることが多い。いや、これはなんでもそうで、東芝やタカタといった企業に関してもやはり表層的な問題指摘、対応で終わっている気がする。
なんでそうなっちゃうのか。まぁそこには日本的なリ-ダ-選出システムとか様々な問題が絡んでいると思う。国民のレベルが低い。メディアの質が悪すぎる。いずれもその通りだと思うのだけど、だからと言ってそのままでいいという事は無いだろう。
で今後どう日本の将来を良くしていけるのかって事に関しては、現状では全く期待ゼロ、という人は僕意外にも多いのじゃないだろうか?本来なら自民一党から2党政治にというべきだし、確かにそういう議論があったことから民主党が政権をとったけど、あの酷さはさすがに今でも忘れられないみたい。またとんでもないのを党首に選んだので民主が民進に名前を変えてももう終わった政党という評価しかできまい。
で、思うのだけど。。。政治、それが内閣の運営なのか、もしくは内閣府にその機能を持つかではあるが、AIをいれたらどうだろう。そして行政。超大手クラスの大企業の経営。いずこも経営企画的な部門を抱えて入るのだが、政策提言や事業企画・計画という名前を持ちながら、ただの数字集めで終わっちゃっている事例が多いのではないかと思う。そして人間の政治力により結論はゆがめられてしまう事が多いように思う。本来リスクを分析し、リスクをマネジしながら利益獲得を目指す金融分野では、特にマーケットがらみではもう既にAIがジャッジして、人間はその重りをしているのに近い状態になっている。政治や行政には携わったことがないが、大企業の経営も本来は事業リスクをとって利益の獲得を目指すのが本誌であり、それは国家の大系とかって世界も同じだろう(利益を国民の福祉と安全と読み替えるのかもしれないが)。
そう考えると、この短期政権が当たり前になっている日本では、政治や行政もAIをさっさと導入し、そこで出てくる結論はメディアが国民に開示し、政治的意思決定は現政権に委任するけどチェック機能を国民が持てる形にしたらどうだろう?
今の日本に関して言えば、国家が担うべき数少ない責任のうちの一つ、防衛をアメリカに依存しているのだから、全部依存してもいいんじゃない?
人間がハンドルできない、という事で怖い面もあるけど、どうも日本に関して言えばそっちの方が良いのじゃないだろうか