春、菫の花が咲き始めると、私はむしょうにマドリードが恋しくなる。
プエルタ・デ・ソルからプラド方面に向かうサン・ジェロニモ通りをまっすぐいくと、プラサ・デ・カナレハスに出る。上品な木枠のショーウィンドウは天井まで上品なヴァイオレット・カラーで埋め尽くされている。そしてほのかに香る菫の香り。創業90年になる菫キャンディの専門店、ラ・ヴィオレータ。
菫キャンディは、マドリードのおみやげ物屋さんでいくらでも売っている。でも、かわいい入れ物と、お店の雰囲気を思い出すと、ついつい足を運んでしまう。
マドリード近郊の山に咲く菫から作られるキャンディ。量り売りのほか、かわいい菫の絵のついた陶器の籠やボンボン入れにはいっているものから、造花の菫がついた袋入りのものまで、用途に合わせたさまざまなラッピングも素晴らしい。
ヨーロッパ系のキャンディが大好きな人にはもってこいのお土産となるが、日本のキャンディしか受け付けない人にはお勧めしない。う~ん。買って見たいけど、考えてしまう…そんな方には、ピルケースに5粒はいったものがお手ごろ。
菫をかたどったキャンディを眺めているだけでも、春の到来を感じて顔がほころんでしまう。まさに、マドリードの春の味。
菫キャンディ一筋だったが、先だってたずねたらお茶も売っていた。