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イスラミック・ブルー

スペイン、エジプト、イラン、トルコ、チュニジアへ、イスラミックな旅へ。
スペイン/地中海レストランガイド

深い瞳にのまれる

2009-05-23 23:49:42 | エジプト編

 砂漠の奥の奥、アレキサンダー大王がご神託を受けた地。
 クレオパトラが泳いだという泉は深い緑の底がくっきりと良く見える。
 シーワ…
 そこはもう、エジプトとは思えない。
 つい30年ぐらいまで、エジプト政府が厳しく戸籍調査をするまで、自分の誕生日もうろ覚えの人がたくさんいた。
 エジプトの果て、シーワ・オアシス。
 ベトウィンの人々の瞳は、シーワの泉のごとく深い。
 吸い込まれるような、濁りのない美しい瞳。
 まっすぐな瞳に飲まれそうになり、見上げた空は、また美しい。
 
 あの瞳を思い出すと、頭が真っ白になって、
 また「還りたい」という、純粋な欲望が湧いてくる。夢遊病にかかったかのごとく、ほかの事が締め出されてしまう。
 砂漠の空は高い。
 泉は底の底まで見える。
 ベトウィンの、静かだが、情熱的な言葉と瞳を思い出してクラクラする。
 
 シーワは遠い。
 近いカイロに還りたい。
 日本も陽射しが鋭くなってきた…

 

 

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サハラに恋して、薔薇をみる

2009-05-07 23:10:24 | エジプト編

 サン・テグジュベリは、「ナイルを越えた」と、思っていた。
 
 砂漠に不時着し、あてどなく彷徨う。
 長い長い時間。
 巨大な砂時計の上から下へとすべり落ちて、それっきり。
 砂時計をひっくり返してくれる人はおらず、
 枯れ草が時たま目の端をかすめ、今はもう水脈が遠のいてしまったことを教える。
 音のない…
 いや、人の声、人工的な音のない世界は、人を狂わせる。
 聞こえない声を聞き、見えないものが見えてくる。

 「夕日に照らされて金色に光る砂とのあいだに、なんとも形容しがたい絆が永遠に結ばれる…」

 
サン・テグジュベリは、砂漠の恐怖に飲まれず、恋をした…
 彷徨った3日間…
 ベトウィンに救われるまでの間に、彼は狐に出会い、王子さまと薔薇を見た…
 

  サン・テグジュベリの不時着したリビア砂漠で、私は夕日を見ながら、
 薔薇の匂いを感じる。
 数時間後、私の寝息を確かめに狐がやってくる。
 寝たフリを決め込んで、起きていようと頑張るが、
 まるで、クリスマス・イヴの子どものように、睡魔に見舞われる。
 そして、翌朝、足跡を見つけるのだ。
 朝日はまだ昇らない。
 朝焼けの、淡いピンク色の世界、静寂の中、
 どこからともなく、一枚の花びらが舞ってくるような幻覚を見たような気がし、
 狐が帰ってくるように、もう一度目を瞑る。

 

 

※写真はエジプト、リビア砂漠の夕日。不時着したポイントに近い。
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自分の人生は、自分で演出する。

2009-04-27 22:01:14 | エジプト編

 かの、ロンメル将軍の言葉。

 エジプトで活躍した軍人と言えば、
 誰しも思い浮かべるのは、「アラビアのロレンス」
 しかし、北アフリカ戦線の英雄、ロンメル将軍の魂は、エジプトにあると狐は言う。
 『星の王子さま』の狐と同じフェネックを飼っていたのか…
 「砂漠の狐」の異名は、彼の飼っていた狐からつけられたという。
 敵国の人々からも、智将として尊敬され、
 「ロンメルは神ではなく、人である」と言った英国。
 
エジプト人もしかり。
 アレキサンドリアからリビアへ向かって、地中海沿いにひた走る。
 海の色が、青から碧へと変化し、
 きらきらとした、まばゆい光を惜しげもなく、砂浜に投げかける。
 マルサマトルーフ。
 その地に、ロンメルが作戦室として使った洞窟が、博物館になって残っている。
 彼の息子が遺品を寄贈し、展示されているという。
 私はなぜかいつもこの洞窟に近づけない。
 地中海の碧を欲しいままに、波の音が耳の奥まで響く、
 宝箱のような地に、ロンメルは私を近づけない。
 見えない指先が、指し示す。
 白い砂浜の向うの砂砂漠を。
 地中海の涙のような、深き碧の泉がある、シーワ・オアシスへ…
 地中海を背に、青い空を上に、
 狐が待つ砂漠へと。

 自分の人生は、自分で演出する。

 私の演出にこれ以上のロケーションがあるだろうか?
 エジプトが私を呼ぶ理由は、そんなところにあるのかもしれない。
 

 

 

 

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遠い記憶を呼び覚ます…

2009-04-21 22:53:10 | エジプト編

遠い記憶を呼び覚ます…
オルサさんのブログで罠にはまった私。
彼女の投げかける、言葉相づちを打ち、
時に、記憶のツボを薔薇の棘で一突きされる。

過日、薔薇の方に呼び戻されて、日の暮れるマグレブから、
日いずる日本へとまた戻ってきた私。
そして、「君の心はエジプトへ戻っている」と言われ、
オルサさんから投げかけられた「遠い記憶を呼び覚ます」に考える。

エジプトに、私の心を揺さぶるものはまだないけれど、
もし、あるとすれば…
それは青い、青い空と、碧い碧い海と泉。
エジプトが私を呼び寄せるのは、ナイル川ではなく、
リビア砂漠の奥。

私の意志とは無関係に、
来る年も、来る年も、青い空が私を手招きする。

砂漠で、ひとり、思う。
サン・テグジュベリの『星の王子さま』
この砂漠で、
自分だけの一輪の薔薇を、
私の薔薇を、いつの日か、
この砂の中から見つけられる日が来るかも知れないと…

遠い記憶を呼び覚まし、
秘め事は、薔薇の下。
そして、我が一族に伝わる家訓により、
内緒話は、人が近寄れない、青い空の下で。
今はただ、埋もれた薔薇を探し、砂嵐が舞う空の晴れ間を待つ。


遠い記憶の鍵の向こうに、密やかな未来…


薔薇の方の素敵な薔薇を、お家で楽しめるご本が出ました!こちら
『New Roses 2009』(産經新聞メディックス )

 

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私のブルーモスク

2009-04-07 23:47:20 | エジプト編

  私が唯一エジプトで、何かを感るところがるとすれば、
 それは、イスラミックカイロにある、ブルーモスク。
 丸ごと世界遺産に指定されている街。
 ここの空気はいつも埃っぽく、
 崩れ落ちそうな、日干し煉瓦と、マシュラベーヤの細かい木の格子。
 そのほこりが、まるで煙のごとく、街全体を包んで、消えてしまうのではないかと錯覚する。
 そんな煙に巻かれて、いつも通り過ぎてしまう、ひっそりとしたモスク。
 世界の三大ブルーモスクの中で、一番小さくて、一番ひなびていて、
 一番訪れる人が少ない…
 もっとも知られていない、ブルーモスク。

                 

 

           

  その昔、トルコから赴任してきた総督が、
  故国、イスタンブールのブルーモスク恋しさに、
  イズニックから取り寄せたブルーのタイルでモスクを飾り立てた。
  総督、イブラヒーム・アガは、今もここに眠っている。
  街と共に朽ち、消えてしまいそうな、
  青いタイルは、どこかへ持ち去られ、壊れ、
  残っているタイルも、歴史のカーテンをまとい、青かったことを忘れさせる。

  近年、ここにもやっと修復の手が差し伸べられ、
  タイルは青さを取り戻しつつある。

  私がここで何かを感じるのは、
  イブラヒームの、切なる想いに共鳴するからだろうか…

 

 

 

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ピラッミドなるもの

2009-04-02 23:43:43 | エジプト編

 そういえば、
 エジプトには、ピラミッドなるものがあったのでした。
 近頃は、お客さんが行かなければ、自ら行くこともない。
 今回は、アテンドしていたお客さんがメリディアン・ピラミッドにお泊り。
 ピラミッド・ビューのすばらしい部屋へご案内して、お姿拝見。

 近頃良く受ける質問。
 「ピラミッドって、ツルツルなの?」
 近くで見ると階段状です。出来た当時は磨かれた、きれいな化粧石で覆われていました。
 現在は、頂上部分と、底辺に少し残っているだけです。
 残りの石はと言えば、崩落したり、剥がされたりして、後の時代の人々が、
 モスクや家を建てるのに持ち去ってしまったようです。
 古いモスクの、ひんやりとした空気の中で、
 ヒエログリフの刻まれた柱などを見かけると、
 この敷石も、ピラミッドから剥がされたものかしら?と、そっと、手を当ててみるのです。

 そう、ここで、はるかな時を超え、私に語りかける何かが聞こえてきそうなものです…!
 摩訶不思議、エジプトで、私の心を揺さぶる声は聞こえません。
 聞こえてくるのは、今。
 「今すぐに、帰っておいで!」という、エジプト人の肉声。

 これもまた真なり…

 

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