モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

蛇紋岩マジックへのいざない・前編(2022年7月6日、早池峰山)

2022年07月28日 | 早池峰山

変わった表題だが、要は蛇紋岩で出来たお山、早池峰山に登って、
珍しい花風景を見て来たというだけの話。

早池峰山山頂部のハヤチネウスユキソウやミヤマオダマキの花風景



早池峰山に行くのは久しぶり(2年ぶり)なので、今回(7月6日)はじっくりアプローチから始めようと思う。

秋田市からは遠いので、午前1時半に自宅を出発した。
国道13号線から46号線を東進、盛岡ICから東北自動車道を南下・・・
国道396号線を走り、早池峰山の玄関口、旧・大迫町へ。
夜明けの直前、早池峰ダムに到着した。


早池峰ダムサイトから早池峰山方面を望む。



天気は県境(仙岩峠)付近では小雨、岩手県に入ってからしばらく霧雨の中を走っていたが、

ダム湖に着いたら晴れ上がり、奥に早池峰山らしき山が見えた。
岳集落から細い舗装道路に入るが、いきなりカモシカに遭遇、
今回の車の終点、河原坊駐車場に着いたらちょうど5時だった。
今回は秋田市から、途中休憩も入れ、3時間半もかかった。
隣県だけどここは遠い。

登山靴を履こうとしたら、グラッと揺れを感じた。震度は4くらいか。
ラジオをつけたら、秋田市自宅は震源から遠く、大丈夫のようだったので、予定通り、登山することにした。

河原坊駐車場。バックの山は中岳(1679m)。
 



登山口の小田越までは自動車道(県道25号線)を歩かなければならない。

いつも40分くらいかかっているが、今回もそうだった。
この日は朝陽の差し込み(光芒)が奇麗だった。
カーブを曲がると、目の前にパッと薬師岳が見えるようになる。

小田越えの手前から薬師岳を望む。



その時、後を振り返ったら、早池峰山が聳えていた。

今日はこの後、ガスに包まれたので、下界から見る早池峰山はこの時が最初で最後だった。
その後すぐ霧に包まれた小田越登山口に到着。
登山道は初め木道で、アオモリトドマツの針葉樹林の中を歩む。

小田越の手前、振り返ると早池峰山。
 

                                           登山道は初め木道


この樹林内で、下山時、日本鹿に遭遇した。

可愛い顔をしているが、これのおかげで貴重な高山植物が食われ、その被害が顕在化していると聞く。
この鹿、人慣れしているのかなかなか逃げなかった。

下山時遭遇した日本鹿



早池峰山では来るたびに何がしかの獣に出会う。
5年前は河原坊手前の道路で親子熊三頭だった。
その後はカモシカや日本鹿、今回は日本鹿の姿を初めてカメラに収めた。
6月には見通しの良い5合目付近で登山者が熊に襲われたそうだ。
この話は後でまたぶり返すが、たいへんショックだった。

針葉樹林帯を( (´π`;)ワタシの脚で)一時間弱、歩いたら、突然、高木が途切れ、
岩だらけの開けた場所に出た。ここは御門口と言い、一合目だとのこと。

御門口・一合目(下山時撮影)



河原坊から舗装道路をテクテク歩いて来た身としては、
既に三合目くらいの気分、疲労度なのだが、

おおやけが定めた一合目なのでそれ以上、盾突くつもりはない。
このあたりでいきなり(高木の)森林限界となる。
標高は小泉武英氏の著作「地生態学からみた日本の植生」によると、1396mとのこと。
森林限界(気候的には約2100mとされる)が早池峰山で異常に低いのは、
多くの植物にとって生育に有害な成分を含む橄欖岩(蛇紋岩)が露出し、
この付近でその欠片が堆積しているせいだ。
この辺りで見た低木を列記してみる。

ハクサンシャクナゲ



コメツガ
 

                                             キンロバイ

キンロバイは咲き出したばかりだったが、東北の山では非常に少なく、私はここでしか見たことが無い。

表題の「蛇紋岩マジック」の第一号だ。

マルバシモツケ



橄欖岩(蛇紋岩)の名前が出たので少しだけ。

御門口・一合目から上の早池峰山登山道は土の道ではなく、岩の上か岩の砕けた礫地ばかり歩く。
この道、登りはまだいいのだが、下りや雨のあとにはよく滑る。
岩の表面の色は多くが黄褐色だが、中には青黒く艶のあるものや、白っぽい筋のあるものも混じっている。
色の違いはあるが、ツルツル滑りやすい点は変わりない。

橄欖岩(蛇紋岩)
 



橄欖岩(蛇紋岩)



この岩原に生える植物は東北の他の山とはかなり違っている。
一合目の上あたりでは、以前、6月29日に来た時(こちら)は、
ミヤマオダマキやミヤマシオガマなど鮮やかな花でイッパイだったが、

今回はどうしたことかそういった花がさっぱり無かった。

もしかして鹿に食われて無くなったのか。
偶々これら奇麗な花は終わったけど、次の花の準備が間に合わなかったものと、今回は解釈した。
岩の間で咲き出していたのは、地味なホソバツメクサ、カトウハコベなど。
どちらも東北では早池峰山でしか見られない珍しい花で、カトウハコベは蛇紋岩植物とも言われる。

ホソバツメクサ



カトウハコベ



登る途中、見えた景色。

南側に薬師岳。



南西側、北上盆地の眺め。



早池峰山の花で最も有名で人気のあるのはハヤチネウスユキソウだろう。

小田越からの登山道沿いでは、三合目付近から、多く目に付くようになった。
日本海側の高山帯(月山、朝日、鳥海山など)に生えるミヤマウスユキソウと較べると、
頭花のサイズも草丈も明らかに大きい。

その割に葉の数が少ないので、ただのウスユキソウに較べると、高貴な印象だ。
私はまだ見たことがないが、ヨーロッパアルプスの名花、エーデルワイスによく似ているそうだ。
岩の上に咲く様は、『高嶺の花』そのものだと思う。
山頂部に行くと、後述のミヤマオダマキやミヤマアズマギクがまだ咲き残っていて、仲良く一緒に咲いていた。
このような花シーンは世界でも早池峰山でしか見られないと思う。
これが「蛇紋岩マジック」の第二号だ。

ハヤチネウスユキソウ



ハヤチネウスユキソウ
 

                                       ハヤチネウスユキソウとミヤマオダマキ


ハヤチネウスユキソウとミヤマアズマギク



後編」へ続く。


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« いにしえの表庭(2017年6,7月) | トップ | 蛇紋岩マジックへのいざない... »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
とても興味深いです (shu)
2022-07-28 07:47:38
おはようございます。
早池峰山への登山、お疲れさまでした。
蛇紋岩質の植生の特徴が早くも現れましたね。
今年に入って谷川岳、至仏山と笠ヶ岳という、いずれも蛇紋岩質の山を歩きましたので、とても興味深いです。
早池峰山は40年余り前に一度登っただけです。当時は植物にそれほど興味がなく、ハヤチネウスユキソウだけを覚えています。
いずれ時間を取って秋田駒ヶ岳と共に、もう一度歩きたい山です。
続編を楽しみにしています。
どうぞ、お気をつけて登山をお続けくださいませ。
返信する
shuさんへ。 (モウズイカ)
2022-07-28 08:52:43
早速のコメントありがとうございました。
貴「谷川岳、至仏山、笠ヶ岳」レポート、興味深く拝見させて頂きました。
橄欖岩(蛇紋岩)の山ってそうでない山と植物の種類がガラリと変わり、
何か異世界の山に迷い込んだような気分になります。
近くの秋田駒と併せて登ると、その違いや特異性が更に際立って感じられると思います。
なお後編は明日にでもアップする予定です。
引き続きよろしくお願い致します。
返信する
Unknown (ミルク)
2022-07-28 18:18:32
こんにちは。
素晴らしい写真を、見せていただきながら 
忘れかけていたことを 思い出しながら楽しませていただきました。
ここには、2度行ったんですが 舗装道路が1番きつかったきがします(;^_^A
後編も、楽しみに見せていただきます~(^^♪
返信する
ミルクさんへ。 (モウズイカ)
2022-07-28 18:48:44
コメントありがとうございます。
ここは一昨年行ってスピード違反で青切符切られた苦い思い出ありますが、
今回はその方面にも気を使い、行ってまいりました。
花は鹿さんの影響なのか、昔よりも少なめの印象でしたが、愉しかったですよ。
返信する

コメントを投稿

早池峰山」カテゴリの最新記事