モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

蛇紋岩マジックへのいざない・後編(2022年7月6日、早池峰山)

2022年07月29日 | 早池峰山

(本頁は「蛇紋岩マジックへのいざない・前編」の続きである。)

ここで言う『蛇紋岩マジック』とは、私モウズイカの勝手な造語だ。
橄欖岩(蛇紋岩)という特殊な地質により、
他の山には全く無いか、或いはほとんど見られない植物から成る花風景
を表現したつもりだ。

6月下旬から7月にかけての早池峰山では、
前編で取り上げたハヤチネウスユキソウの他には
ミヤマオダマキとミヤマアズマギクがよく目立っていた。
前者は東北の他の山では少なく、八甲田山や蔵王の一部で見かける程度だ。
ミヤマアズマギクは東北では早池峰山だけだろうか。この種類は蛇紋岩と相性がいいのか、
他の蛇紋岩の山でもよく見かける(白馬岳の一部など)。
アポイ岳ではアポイアズマギク、至仏山ではジョウシュウアズマギクと種が分化している。

ハヤチネウスユキソウとミヤマオダマキ



ミヤマオダマキ



ミヤマオダマキ。バックの黄色はキバナノコマノツメ。
 

                                  ミヤマオダマキの白花タイプ。右の複葉はナンブトウウチソウ。

ミヤマアズマギク



ミヤマアズマギク

 
                                     ハヤチネウスユキソウとミヤマオダマキ

早池峰山固有種を幾つか追加。

ミヤマヤマブキショウマは地味だが、早池峰山の固有種だ。
今回、下の方では花が古くなっていたが、山頂部には新鮮な株が有った。

ミヤマヤマブキショウマ
 
                                             ヒメコザクラ

ヒメコザクラは六月中に終わる花だが、今回は山頂部に一株だけ咲き残っていた。

ナンブトラノオ(ハヤチネウスユキソウと一緒)。
 



ナンブトラノオも早池峰山の固有種。
疎らにしか生えないが、秋まで咲いている。

今回は下界では晴れていたのに
登り始めたら、ガスが出て来て、遠くの景色はもちろん、近場もあまりよく見えなかった。

五合目御金蔵あたりから上の景色と花を少し報告する。

御金蔵の上、龍ヶ馬場付近から、上の方を望む。



今年六月、五合目御金蔵のすぐ下あたりで登山者が熊に襲われたとか。
樹木も笹も無い開けた場所なのでちょっと信じられない話だ。
こういう場所でも、ガスのかかっている時は要注意だ。



咲き出したばかりのチシマフウロ。



この山には他の山で一般的なハクサンフウロがほとんど見られず、

北地由来のチシマフウロばかり目に付く。
御金蔵の上から、この花と地味なサマニヨモギ(まだほとんど蕾)が急に多くなった。

チシマゼキショウとホソバイワベンケイ古花



ミヤマシオガマはこの山では森林限界から山頂まで広く生育しているが、
今回、下の方では全て咲き終わっていた。

ただし山頂部で少し咲き残りがあり、すぐ近くでヨツバシオガマが咲いていたのには驚いた。

ミヤマシオガマ



キバナノコマノツメ



この花とミヤマキンバイ、イワウメ、ナンブイヌナズナはほとんど咲き終わっていた。

今回の早池峰山で私は熊には遭遇しなかったが、前編で報告したように鹿に遭遇している。
あともう一匹、天狗の滑り岩の手前で山を駆け上ろうとしていたのは巨大な猪。
かと思ったが、こちらは岩だった。

イノシシみたいな岩



天狗の滑り岩の鉄梯子

 



このあとちょっと登れば剣ヶ峰分岐、その先は緩やかな稜線歩きになる。

御田植場に続く木道と山頂



剣ヶ峰分岐から先は緩やかな稜線となり、御田植場と呼ばれる湿原も広がっている。

不思議なのはこの辺りに生える植物の種類だ。
今回、咲いていたのは、ハクサンチドリやヨツバシオガマ、イワカガミ、カラマツソウ、コバイケイソウ、
あと終わりかけだが、チングルマ、ミツバオウレンなど。
これから咲く予定なのは、ミヤマカラマツやタカネアオヤギソウなど。
これらの植物は東北の他の山では、いずれもありふれた花で、割と低い処から見られるものばかりだが、
今まで歩いて来た南側、岩だらけの斜面では一切見なかった。
早池峰山では標高1900mと高く、平らな処で初めて出て来る。
この現象を私は勝手に『御田植場の不思議』と呼んでいる。
何故そうなのかよくわからないが、
もしかしたら早池峰山のこの辺りの稜線の地質は蛇紋岩が途切れているかもしれない。

蛇紋岩の呪縛、マジックが切れたため、他の山でも普通の植物がワッと現れているのか。
北斜面にはアオモリトドマツなどの針葉樹も復活していたし、北地に多いウコンウツギも咲いていた。

ハクサンチドリ
 

                                            ヨツバシオガマ


ウコンウツギ



ナンブソモソモ
 

                                           タカネクロスゲ


ナンブソモソモは長い間、早池峰山固有種と思われていた。

御田植場に多く、稲に似ている?ので、この花を供えて豊作を祈願したとか。


以上。


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