AERAdot 2020.6.28
内田樹(うちだ・たつる)/ 1950年、東京都生まれ。神戸女学院大学名誉教授。神戸市内で武道と哲学のための私塾「凱風館」を主宰。主著に『ためらいの倫理学』『ローカリズム宣言』など。
新型コロナウイルスの感染拡大から、いままでの価値観が変わりつつある。思想家・内田樹さんは、地方移住の流れが加速すると見る。
* * *
コロナ・パンデミックは「火急の事情でもない限り、人口稠密(ちゅうみつ)都市に住むことに必然性はない」という見方を日本社会に広げました。
きっかけとなったのが、リモートワーク(在宅勤務)です。パソコンを使えば、仕事や会議ができる。通勤で疲労する必要がない。在宅勤務を通じて、都心部に住んでいた何十万もの人々がそのことに気がつきました。それなら高い家賃を払って東京に住み続ける意味がない。オフィスにたまに顔を出して、あとは自宅で仕事ができるなら、家賃が安くて環境のよいところに住むほうがいい。そんな発想に至った人も多いと思います。
都市部ではすでに多くの企業が倒産や廃業に追い込まれました。まず職を失うのは非正規雇用の労働者です。収入を失い、再雇用も見通しが立たないという人が生活費のかさむ都市から、職を求めて地方に移住するという動きも出てくるでしょう。
都市から地方への移住志向は今に始まった現象ではありません。2011年に東日本大震災が起きた後、多くの人たちが東京から西へ避難しました。それ以後も地方移住の流れは続いてきましたが、今回のコロナ禍でそれが加速すると思います。
僕は神戸市内で「凱風館」という私塾を主宰しているんですが、ここ数年で門下生から5人が帰農したり、地方に職を求めたりしてゆきました。理論的指導者や運動体がいたわけではありません。自然発生的で同時多発的な流れでした。
地方移住を志向する人々が増えたのは資本主義経済の終焉(しゅうえん)が近づいていることを人々が感じているからだと思います。
資本主義は右肩上がりの成長を前提としていますが、実体経済には人間の身体というリミッターがあります。衣食住の需要には限度がある。一度に着られる服は1着だけだし、1日に食べられる食事も3食が限度ですし、家を何軒も持っても使い道がない。カネでモノを買う限り経済活動には限界がある。だから、資本主義は「カネでカネを買う」活動に軸足を移した。
コロナ禍で人々は「ほんとうに必要なもの」が何かということ、「ほんとうに必要なもの」がカネで買うことができないこともあるという事実に気づいたと思います。
感染症はこれからも繰り返し到来します。そして、そのつど都市住民は感染リスクにさらされ、雇用が失われる。都市でなければできない職業に就く人以外は、しだいに地方離散シナリオを選択する人がこれから増えてゆくだろうと思います。
※週刊朝日 2020年7月3日号
それに、最近では「地震」が氣になるところです。
今夜のサラダ
下の方にチラ見できるのはチマサンチェ、スベリヒユ、ピーマン、スイスチャド(ゆでたもの)、アスパラ(ゆでたもの)、パクチー、イチゴすべてうちの畑産。
いつの間にかバラの花が咲いていました。
畑の作物
大玉トマト、ルネッサンス。
乙女スイカ
食用ホーズキ
スベリヒユ