戦争への道 勝手に決めるな 「安保3文書」改定閣議決定に反対
総がかり行動実行委が緊急行動
「しんぶん赤旗」2022年12月16日
岸田政権が憲法違反の「敵基地攻撃能力」保有などを盛り込んだ「安保3文書」を改定する閣議決定を狙うもとで、総がかり行動実行委員会などは15日夜、衆院第2議員会館前で緊急行動を実施しました。野党の代表とともに、集まった800人(主催者発表)が、「戦争へ向かう道を、閣議決定で勝手に決めるな」と怒りの声をあげました。
4歳と1歳の子どもを連れて、神奈川県大磯町から参加した内海彰子さん(39)は、「『お母さんは戦争へ向かう政治に反対したよ』と言えるように来ました。武力で命を守ることはできません」と語りました。
主催者あいさつで菱山南帆子さんは、「国会の議論すらなく、何でも閣議決定だけで進める政治は許せない」と強調しました。
日本共産党の小池晃書記局長、立憲民主党の大河原雅子衆院議員、社民党の福島瑞穂参院議員、沖縄の風の伊波洋一参院議員があいさつ。小池氏は、「安保3文書」改定について「国会での議論もなく、選挙で信を問うことなく、戦後の安全保障政策の根幹を変えることを閣議決定するなど、断じて認められない」と強調。憲法違反であり、暮らしを破壊する道だとして、「市民と野党の共闘を新しいステージに発展させ、敵基地攻撃、大軍拡と暮らし破壊を許さない共闘にするために力をつくす」と表明し、「たたかいを広げに広げ、国会を包囲するたたかいにしていこう」と呼びかけました。
市民連合の中野晃一さん(上智大学教授)は、「『反撃能力』というが、どう見ても先制攻撃だ。反対の大きな声をあげ続けよう」とスピーチしました。
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「戦争ではなく平和の準備を」安保関連3文書改定、憲法学者らが対案公表
2022年12月16日
政府が16日に閣議決定する方針である外交・防衛の指針「国家安全保障戦略」など安全保障関連3文書に関し、憲法学者らによる「平和構想提言会議」は15日、3文書に現行憲法では認められないような内容が盛り込まれているとして、対案と位置付ける提言「戦争ではなく平和の準備を—”抑止力”で戦争は防げない—」を公表した。政府が進める敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費の大幅増を批判し、憲法9条に基づく専守防衛の堅持や、外交交渉で緊張緩和を実現する重要性を訴えている。 (柚木まり)
◆政府・与党の考え方「極めて短絡的で危険」
提言では、3文書改定は日本の安保政策の大転換となり、「日本が自ら戦争をする国家に変わる」と指摘。改憲が必要になるほどの重大な政策転換であるにもかかわらず、「国会の徹底的審議もないままに憲法の実質が勝手に上書きされようとしている」と懸念を示した。
その上で、政府・与党の議論の中心にある「軍事力の増強が抑止力を強め、平和を担保する」という考え方を「極めて短絡的で危険」と問題視。防衛力強化がかえって周辺国との軍拡競争を招いて戦争のリスクを高めると警鐘を鳴らし、今こそ憲法9条が定める平和主義の原則に立ち返るべきだと強調する。
◆「国民的な議論もなく勝手に決めていいわけがない」
今後、取り組むべき具体策として、朝鮮半島の非核化に向けた外交交渉の再開や中国を「脅威」と認定しないことなど、アジア諸国との対話の強化を提唱。専守防衛の堅持も明記し、米国製巡航ミサイル「トマホーク」など敵基地攻撃能力の保有につながる兵器の購入や開発の中止を求めた。
憲法や国際政治、軍縮の専門家、市民団体代表ら有志の15人でつくる同会議は15日、国会内で記者会見した。共同座長の学習院大の青井未帆教授(憲法学)はオンラインで参加し、「憲法9条があるのに、なぜ先制的な反撃が可能になるのか。議論が圧倒的に足りない」と幅広い議論を呼びかけた。
上智大の中野晃一教授(政治学)は敵基地攻撃能力の保有に関して「国民的な議論もなく勝手に決めていいわけがない。認めないとはっきり言っていく必要がある」と訴えた。
平和構想提言「戦争ではなく平和の準備を―”抑止力”で戦争は防げない―」の要旨は次の通り。
(1)いま何が起きているのか
安全保障関連3文書改定は、日本の安全保障政策を根本的に変更し、自ら戦争をする国家に変貌する。国民投票を通じて憲法を明文的に変えなければ許されないほどの重大な変更だ。憲法の実質が勝手に上書きされようとしている。
政府・与党は「抑止力を高める」とするが、実際には戦争のリスクを高める。北朝鮮の核ミサイル開発、中国の軍備増強や海洋進出は重大な問題だが、日本の対応策が軍備増強や攻撃態勢強化ばかりなら、平和的解決は遠のく一方だ。
今日の軍事的緊張がエスカレートすれば、戦争は現実となる。東アジアにおける戦争は世界の経済、食料、環境に壊滅的な影響をもたらす。軍事的な「勝利」の想定に意味はない。
米中対立の中で、「日米同盟強化」一辺倒の姿勢をとり、米国との軍事協力関係の強化に突き進んでいくことは極めて危険。その失敗は、世界大戦となるリスクと背中合わせだからだ。
(2)「国家安全保障戦略」改定のどこが問題なのか
敵基地攻撃能力の保有について、政府・与党は「専守防衛の考え方の下」で進めると強弁するが、専守防衛の肝は、隣国に届く武器を持たないことで他国への脅威とならないようにすること。この大原則が根本から覆されようとしている。相手国にミサイルを撃ち込めば、当然、日本は報復攻撃を受ける。その先はミサイルの撃ち合いの戦争だ。
首相は、防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)の2%程度に増額するよう指示した。実現すれば、世界第3位の軍事費大国となる。増額論の前に、その透明性と説明責任の確立こそ急務だ。
防衛装備移転3原則の運用指針を改定し、殺傷能力のある大型武器の輸出も検討されている。日本製の武器によって他国の人々が殺傷されることが現実となる。紛争当事国に肩入れすることは、日本が紛争の予防や解決の仲介者となるための国際的信用を失わせる。
政府は米国による核の使用・威嚇政策を支える側に回っている。核兵器禁止条約にも背を向けたままだ。
(3)考え方をどう転換すべきなのか
軍事力中心主義や「抑止力」至上主義は、極めて短絡的で危険だ。抑止力は、武力による威嚇に限りなく近い概念。安保論議の中心に据えられている状況は憂慮すべきだ。持続可能な安保のため、抑止力の限界を認識し「抑止力神話」から脱却しなければならない。
民主主義や人権、法の支配といった基本的価値は妥協すべきではない。平和もまた基本的人権で、紛争を平和的に解決することは国際法の要請だ。民主主義のためだと称して、戦争の準備に突き進むべきではない。米国への過度な軍事的依存を正し、アジア外交と多国間主義を強化すべきだ。平和は一国で作れない。中国との緊張緩和と関係改善、朝鮮半島との関係の安定化は、日本の社会・経済をより豊かにする。
(4)平和のために何をすべきか―今後の課題
・朝鮮半島の平和と非核化に向けた外交交渉を再開させる
・元徴用工問題について、過去の被害を踏まえた解決策を探る
・中国への「敵視」政策を停止する
・日中の首脳レベル相互訪問の早期再開に合意する
・日中間の安全保障対話を進める
・「攻撃的兵器の不保持」の原則を明確化・厳格化する
・トマホークを含め「敵基地攻撃能力」を構成し得るあらゆる兵器の購入や開発を中止する
・辺野古新基地建設と南西諸島への自衛隊基地建設を中止する
・核兵器の先制不使用を米国をはじめ核保有国に働きかける
・核兵器禁止条約への署名、批准。まずは同条約締約国会議にオブザーバー参加する
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岸田首相の政治の師、自民・古賀誠元幹事長が嘆いた…「敵基地攻撃能力保有は専守防衛を完全に逸脱する」
「東京新聞」2022年12月16日
岸田政権が安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」など3文書改定を閣議決定するのを前に、岸田文雄首相が会長を務める自民党派閥「宏池会」前会長の古賀誠元幹事長(82)が本紙のインタビューに応じた。文書に盛り込まれる敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有に懸念を示し「完全に専守防衛を逸脱してしまう」と主張。師弟関係にあった首相には「少なくとも国民にきちんと説明しなければならない」と注文した。(坂田奈央)
◆憲法9条も脅かされるのではないか
古賀氏は、ロシアによるウクライナ侵攻や台湾有事の懸念、北朝鮮の核開発など安全保障環境の変化は認めつつ「それで、なぜ敵基地攻撃能力を持つミサイル(保有)につながるのか。抑止力になるのか」と疑問視。「保有すれば実質的に専守防衛という基本がなくなり、憲法9条も脅かされるのではないか」と警鐘を鳴らした。
「日本の安全保障は政治や経済、国防、外交といったありとあらゆる力を結集し、軍事大国への道を避けるのが基本だった」と強調。「軍国主義につながらない他の分野でやれることが多くあるはずで、冷静な議論が必要だ。例えば安全保障で一番大事なのは人口を増やすこと。子どもが増えることが一番の抑止力になる」と訴えた。
宏池会は戦後の「軽武装・経済重視」の道筋を築いた吉田茂元首相を源流に、池田勇人元首相が創設。党内ではハト派色が強く「保守リベラル」と呼ばれ、衆院議員だった首相の祖父と父も所属した。古賀氏は2012年まで会長を6年務め、首相を指導。後継の会長に首相を推して退任した後も、名誉会長として長く後押ししてきた。
◆戦争がいかに愚かか、体験しているからこそ、平和言い続ける
古賀氏は幼少時、太平洋戦争でフィリピンに出征した父を失った経験から「戦争につながること」に一貫して異を唱える。敵基地攻撃能力の保有に懸念を示すとともに「あの戦争がいかに愚かだったかを語り伝えていきたい」と話す。古賀氏との一問一答は以下の通り。
―日本が敵基地攻撃能力を保有することになる。
「これは(戦後の安全保障政策の)大きな転換だ。安全保障を取り巻く環境が大きく変わり、何とかしなければならないと考える国会議員の気持ちは理解できる。しかし(3文書の改定が)抑止力になるかどうかは別問題。敵基地攻撃能力を持てば、完全に専守防衛を逸脱してしまうのではないか。抑止力よりも不安のほうが大きくなるのではないかと懸念している」
―財源問題が注目されているが、それまでの議論は十分だったか。
「平和憲法がある以上、敵基地攻撃能力のある兵器を保有するなら、専守防衛のあり方、例えば攻撃対象をどうするのかといった説明責任を(政治家が)国民にしっかり果たさなければならない。財源問題は大事なことだが、その前の(防衛力強化の)議論が拙速過ぎではないか」
―岸田政権をどうみる。
「安倍政権のツケと言うのは変だが、大変な時にかじ取りをさせられていると思う。懸念を払拭するよう、どういう手順、議論で今に至ったのか真実を語ってもらいたい」
―国会議員に戦争を知る世代がほぼいなくなり、安保政策のかじ取りを不安視する声もある。
「戦争がいかに愚かで、いかに多くの人たちが苦しみ、血と涙を流したか、ということを僕は体で知っている。体験しているからこそ、自分の考える平和を言い続けていきたいし、国政に携わるすべての人に語り伝えていきたい。これからが本番だ」
こが・まこと 1940年、福岡県生まれ。80年衆院選で初当選し、通算10期。運輸相、自民党国対委員長、幹事長などを歴任し、2012年に議員を引退した。政治信条の柱に「平和」を据え、日本遺族会会長も務めた。03年、イラクに自衛隊を派遣するためのイラク復興支援特措法案の衆院採決では退席した。
今夕閣議決定される予定である。今年の漢字「戦」が現実味を帯びてきた。ウクライナの話ではない。
ニュースを見れば、腹の立つことばかりです!
これでは、81年前と変わらないではないですか!
国会軽視はずっと続いています!
安倍さんの時には、強行採決を何回したでしょうか!?
菅、岸田は何の反省もなく、安倍の路線を引き継ぐのでしょうか?
「命と暮らしを守るために軍事力を持つ」って、おかしいと思わないのですね!
情けない人ばかりが政権をとって、この先の日本は真っ暗になりかねません!
もう、自公政治は終わりにしないと、ほんとに命が危ないです!
できうることは全部やって、政治を庶民の手に取り戻しましょう!
「この道はいつか来た道」わたしも、実際には知らない「道」ですがいろいろ聞かされてきました。古賀さんのような自民党古参の奮起を期待したいですね。「戦争」に反対するすべての勢力の結集が望まれます。
なんでもかんでも、政権・与党がいいように国を操られるようにした元安倍氏の功罪は、許されたモノではありません。
国会は、なんのためにあるのか?
民意とは、無視するためにあるのか?
丁寧な説明?聞き飽きました。
その中で、いったいどれだけの方が、私達にわかりやすく丁寧かつ、「なるほど!」と、納得させられるような話など、一切出てこない!!
もう、いい加減にしろ!と、言いたいです。
(・・;)