菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

敬意へたどりつく経緯。 『リスペクト』

2021年12月10日 00時00分17秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1977回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

『リスペクト』

 

 

 

伝説的女性シンガーのアレサ・フランクリンの半生を描く音楽伝記ドラマ。

子どもの頃から圧倒的な才能に恵まれながらも、苦難の連続だった若き日々から30歳前後までに焦点を当て、名曲誕生の秘話の数々を映像化。

 

主演は、『ドリームガールズ』のジェニファー・ハドソン。
共演はフォレスト・ウィテカー、マーロン・ウェイアンズ、メアリー・J・ブライジ。

監督は、舞台演出家として活躍し、本作が長編映画監督デビューとなるリーズル・トミー。

 

 

物語。

50年代アメリカ、アレサ・フランクリンは幼い頃から、有名な説教師で、サム・クックやスモーキー・ロビンソン、ダイナ・ワシントンら多くの著名なミュージシャンやマーティン・ルーサー・キングJrらとも交流がある牧師の父の下、教会やパーティで歌を披露し、天才少女と謳われていた。
彼女は厳しい父の元、生活もコントロールされていた。
彼女に、ある不幸が訪れ、自分を責めつつ、その心と向き合えずに生きていくようになる。

18歳となったアレサにレコード・デビューの話が来る。

原案:カーリー・クーリ、トレイシー・スコット・ウィルソン
脚本:トレイシー・スコット・ウィルソン

 

 

出演。

ジェニファー・ハドソン (アレサ・フランクリン)

フォレスト・ウィテカー (C・L・フランクリン師)
スカイ・ダコタ・ターナー (幼少期のアレサ)

マーロン・ウェイアンズ (テッド・ホワイト)

キンバリー・スコット (ママ・フランクリン/アレサらの母)
オードラ・マクドナルド (バーバラ・フランクリン)
ヘイリー・キルゴア (キャロリン・フランクリン)
セイコン・セングロー (アーマ・フランクリン)
リロイ・マクレーン (セシル・フランクリン)
アウドラ・マクドナルド (バーバラ)

タイタス・バージェス (ジェームズ・クリーヴランド師)
ヘザー・ヘッドリー (クララ・ウォード)

メアリー・J・ブライジ (ダイナ・ワシントン)
ギルバート・グレン・ブラウン (マーティン・ルーサー・キングJr)

マーク・マロン (ジェリー・ウェクスラー)
アルバート・ジョンズ (ケン・カニングハム)
マイク・ワットフォード (リック・ホール)
テイト・ドノヴァン (ジョン・ハモンド)

 

 

スタッフ。

製作:スコット・バーンスタイン、ジョナサン・グリックマン、ハーヴィー・メイソン・Jr、ステイシー・シェア
製作総指揮:ジェニファー・ハドソン、リーズル・トミー、スー・ベイドン=パウエル、アーロン・L・ギルバート、ジェイソン・クロス

撮影:クレイマー・モーゲンソー
プロダクションデザイン:イナ・メイヒュー
編集:アヴリル・ボークス
音楽:クリス・バワーズ

 

 

『リスペクト』を鑑賞。
50年代アメリカ、伝説的女性シンガーのアレサ・フランクリンの半生の約30年を描く音楽伝記ドラマ。
幼い頃から天才だったものの、苦難の連続だった彼女が自分の歌い方を見つけようとあがく迷える子羊の姿を見せる。
なんといっても歌が見せどころで聴かせどころ。
クイーン・オブ・ソウルの若き歌声をジェニファー・ハドソンとスカイ・ダコタ・ターナーが蘇らせる。それ以上にカリスマを見せるのがフォレスト・ウィテカー。短い役もみな存在感を示す役者陣の芝居も見どころ。
歌を聴かせる演出が練られており、音楽伝記の楽しさががっつりある。名曲『リスペクト』の誕生シーンは特に魅せる。小さな敬意をなぜ手離してしまうのか。
有名な牧師の娘でゴスペルをベースにもつので、どうしても宗教的な側面は強く出てくるが、それ以上に女性問題に焦点を当てている。
マーティン・ルーサー・キングJrとも交流があり、彼も出てくるが、黒人差別への糾弾もしっかりあるけど、差別へ通底する意識に目を向けている。
それに絡むキツいシーンも現代的に深慮された演出になっている。
撮影もよく、中でもアップでの2ショットの撮影が決まっていて痺れます。そこに生まれる緊張感よ。
人生の喜びと苦しみ、音楽の喜びと苦しみ、山あり谷あり。
面白いエピソードが多いので、ある部分の描写不足に不満が少々なくはない。
だが、なんといっても人間関係のドラマ、この関係が描けていることがやはりドラマの面白さを一段上げるんだ。
そして、この映画の後で、ドキュメンタリーの『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』を見ると仰け反りますぜ。
ちょっと人類愛に二度寝の後の二度目覚めしちゃうかもよ。
定番のファンが感謝を伝えるシーンがいいのよねー。
その声をどう聞くかの虫作。


 

おまけ。

原題は、『RESPECT』。
『尊敬』。

『Respect』はアレサのヒット曲のタイトルで、オーティス・レディングのカヴァー曲。

 

2021年の作品。

 

製作国:アメリカ
上映時間:146分

 

配給:ギャガ  映倫:G

 

 

 

アレサ・フランクリンは、ソウル・ミュージック歌手の中でも、サム・クックと共に一際ゴスペル・フィーリングの強い歌唱を持ち味としており、その圧倒的な歌声で、“クイーン・オブ・ソウル”あるいは“レディ・ソウル”の異名を持つ。
1960年代後半の作品群が特に有名で、オーティス・レディングと共にサザン・ソウルの隆盛に寄与した。(wikiより)

 

 

 

 

 

ややネタバレ。

ドキュメンタリーの『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』を見ると、アレサの圧倒的歌声にやられますぜ。
C・L・フランクリンも出てきて、その有名人ぶりとカリスマ性が見られます。
もし、まだなら、今作を見てから、『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』を見るのをオススメ。
『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』は長らく技術的問題で上映できる状態ではなかったが、最新技術で修復され、2018年に公開された。
なので、今作の製作と同時期に上映されたので、今作の再現シーンはそっくりになっている。

ジェニファー・ハドソンの歌声も素晴らしいのだが、『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』でのアレサの歌声は神がかっており、多くの人が1フレーズで鳥肌がすわぁーと立つのを感じられるはず。
すでにアルバムではその歌声を聴くことはできるのですが。

 

 

 

 

 

ネタバレ。

アレサ・フランクリンは、白人歌手の歌のカヴァーも多いが、彼女が歌うと立派に“ソウルの名曲”となる。“単に男女の恋愛を描いた曲でも、アレサが歌うとまるで人類愛を歌っているように聞こえる”といった評価を受けている。
それこそ、ゴスペル的な解釈で歌っているからか。

その評価から、『天使にラブソングを…』を思い出す。
あれは、ゴスペルをソウルにするところか、ポップソングをゴスペル化するしね。

 

母のバーバラ・シガーズ・フランクリンも優れたゴスペル歌手で、父の教会で歌っていた。
劇中でも、別居しているが、母が父の教会で歌っているシーンがある。

 

字幕では、悪魔(デーモン)を虫として、ルビで「デーモン」と出している。
日本語では、体内の悪いことをするのも虫なのだが、悪い虫は悪い性的関係者の意味もある。
今作は宗教的な話なので、虫よりも悪魔とした方がいい気はするのだが、「デーモン」がいろいろ同じように意味の多い言葉なのか。

 

レイプ描写の上品さが現代的でよい。

 

現代的な女性問題をベースにしている。
少女時代にレイプされ、州法で、人工中絶を禁止していたため、出産をして、結婚も父もいない子を産み、しかもそれを祖母に預け、一度は捨てている。
その子供との描写の弱さがこの映画の弱さだと思う。アレサが母との関係で救われるので、3つの親子関係でかなり重層的になったはずだ。長いから実際は撮ったけど削ったのかもしれない。妹との関係をとったのかもしれない。
だが、妹との描写はやや弱い。

なにより、アレサが自分のせいではないのに、自分を許せないこと、自分を許す方法を見つけるまでがこの物語の軸になっている。

 

アレサ・フランクリンの本物の歌唱が往年にも関わらず、ジェニファー・ハドソンとは違う次元で響いているのだから、圧巻。
これに、この負け戦に芝居としての歌唱で挑んだ彼女に拍手を贈りたい。

 

 

 

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