【俺は好きなんだよ】第1729回
『ディヴォーション:マイ・ベスト・ウィングマン』(2022)
原題は、『Devotion』。
『献身』。
製作国:アメリカ
上映時間:100分
公開情報:Netflixで配信
スタッフ。
監督:JD・ディラード
原作:アダム・マコス
脚本:ジェイク・クレイン、ジョナサン・スチュワート
撮影:エリク・メッサーシュミット
編集:ビリー・フォックス
音楽:チャンダ・ダンシー
出演。
ジョナサン・メジャース (ジェシー・ブラウン)
グレン・パウエル (トム・ハドナー)
クリスティーナ・ジャクソン
ダレン・カガソフ
ジョー・ジョナス
スペンサー・ネヴィル
ニック・ハーグローヴ
ブーン・プラット
サッド・ラッキンビル
物語。
1950年代。
アメリカ海軍で唯一の黒人パイロットであるジェシー・ブラウンは、優れた飛行技術を有したベテランだったが、プレッシャーもひとり抱えながら飛んでいた。
そこへ白人のトム・ハドナーというパイロットが転属してくる。
同時期、アメリカは朝鮮戦争が激化したことで、その戦地に戦闘機の部隊を送り込む。
難度の高いミッションに、ブラウンとハドナーは任務を遂行するために空を駆ける。
朝鮮戦争期の白人と黒人パイロットの男の友情戦場ドラマ。
監督は、『インフィニット』(2016)、『Sweetheart』(2019)のJ・D・ディラード。
彼の父も海軍のパイロットで、アクロバット飛行隊「ブルーエンジェルス」に選出された2人目の黒人パイロットだそう。
撮影は、『Mank マンク』でアカデミー撮影賞に輝いたエリック・メッサーシュミット。
最新技術での飛行シーン、航空戦が素晴らしい。
『トップガン マーヴェリック』とはまた違った趣。
1カットでの不時着カットは息を飲みます。
ネットにあった今作の時代背景。
1930年代後半までアメリカの軍隊はほぼ完全に白人で構成されていた。
しかし、第二次世界大戦が勃発すると陸軍は方針を修正、黒人部隊を採用することに。
それでも黒人の部隊は白人部隊とは隔離され、扱いは平等ではなかった。
そんな中、1941年にはアフリカ系アメリカ人の戦闘機部隊を編成されるなど、軍内部では黒人の活躍は徐々に増していった。
1945年4月、フリーマン・フィールドにてアフリカ系アメリカ人の部隊が不平等に不満の声をあげ、抗議し、それが活動へ展開。
これによって100名以上が逮捕される大事件となった。
このフリーマン・フィールドの反乱が転機となり、アメリカ各地で黒人の軍人が続々と抗議を表明し、人種的な差別の撤廃を求め始めた。
1948年7月26日、ハリー・S・トルーマン大統領は<大統領令9981>を発令。アメリカ軍における「人種、肌の色、宗教、または出身国に基づく差別」を廃止すると宣言。当時の陸軍長官であったケネス・クレイボーン・ロイヤルは黒人差別の立場を続けていたため、1949年に退陣を余儀なくされた。
この1948年以降のアメリカ軍では黒人の扱いが良い方向へ動いた。
差別自他がなくなったわけではないが。
今作は、その状況のすぐ後の話。
ややネタバレ。
好みのセリフ。
「ここ(海)に来て、僕に手を振って、たった8000キロ先にいるから。振り返すよ」「あなたの居場所は空でもあるけど、私たちのそばでもあるのよ」「ああ」
「これまで歴史どれだけの戦争があったんだろうな。でも、どんな英雄も武器も歴史の教科書に埋もれちまう。戦争なんてその程度のものだ。人生の真の戦いは、人に頼られる存在になることだ。一瞬では決まらない。生涯かけて人に尽くさないとな。だから、戦争に自分の価値を決めさせるな」
「一番大事なことは?」「無事の帰還です」「成功したな」
「ウィングマンでいてくれ。救命胴衣だけ投げ込むな、水に飛び込んでくれ」