で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2135回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『七人樂隊』
香港映画界の7人の巨匠が描いた、香港の70年間についての物語を描いたオムニバス映画。
『PTU』、『エレクション』のジョニー・トー監督が香港を代表する映画監督7人に呼び掛け、製作したオムニバス作品。(ジョニー・トーの会社ミルキーウェイが製作)
計7編の内容。
1、『稽古』
監督・共同脚本: サモ・ハン 共同脚本:オウ・キンイー
60年代と2020年代。少年サモ・ハン(キンポー=洪金宝)の修業時代の師匠と生徒たちのジュブナイル。
2、『校長先生』
監督: アン・ホイ 脚本:ラウ・シウワ
あらすじ:50年代と60年代。ある素敵な女性の先生と生徒たちのことを校長先生が思い出すドラマ。
3、『別れの夜』
監督: パトリック・タム 脚本:メルヴィン・ラック
あらすじ:70年代。高校生男子が初恋の彼女から1週間逃げ続けた理由が明かされるラブストーリー。
4、『回帰』
監督: ユエン・ウーピン、脚本:オウ・キンイー
あらすじ:80年代。カンフーマニア爺の家に孫娘が試験のために泊まりに来るアクションコメディ。
5、『ぼろ儲け』
監督・共同脚本: ジョニー・トー 共同脚本:オウ・キンイー、ヤウ・ナイホイ
あらすじ:90~2000年代。香港の株式投資に翻弄される3人組のコメディ。
6、『道に迷う』 監督・脚本: リンゴ・ラム
あらすじ:2010年代。ある家族が香港を思うドラマ。
7、『深い会話』
監督・共同脚本: ツイ・ハーク 共同脚本:ロイ・ゼトーRoy Szeto
あらすじ:2020年代。ある精神病患者が自分はツイ・ハークだと名乗り始めるコメディ。
出演。
『稽古』
ティミー・ハン
『校長先生』
フランシス・ン
『別れの夜』
ジェニファー・ユー
『回帰』
ユン・ワー
『ぼろ儲け』
ン・ウィンシー
トニー・ウー
『道に迷う』
ミミ・クン
サイモン・ヤム
『深い会話』
チョン・ダッミン
ラム・シュー
ローレンス・ラウ
ツイ・ハーク
『七人樂隊』を鑑賞。
1950~2010年、香港の7人の作家が描く香港についてのオムニバス映画。
香港映画界の綺羅星のごとき七の巨匠がまるで七人の侍のように名を連ねている。サモ・ハン、ツイ・ハーク、リンゴ・ラム、アン・ホイ、ユエン・ウーピン、パトリック・タム、ジョニー・トー。発起人はジョニー・トー。
香港愛が爆発している。
銃撃戦はない(それはリアルな香港が映し出されているからだろう)けど、カンフーに芸能、香港味コメディ、しっとりラブストーリー、青春もの、人情もの、大人のドラマと盛沢山。
だって、英語題は、『SEPTET: THE STORY OF HONG KONG』で、『七重奏:香港物語』だから。
おいらの好みは、『回帰』、『校長先生』、『深い会話』、『ぼろ儲け』。
『稽古』も短編ならではだし、『道に迷う』も渋いし、『別れの夜』の色使いと青春の苦みは余韻を残す。
でも、『回帰』の能天気さに、香港映画界のパワーだった明るさにいかに力をもらったか。ユエン・ウーイピが職人的に自分の持ち味をさらりと出してるところにも、香港映画人を感じる。アン・リ―の『推手』を思い出した。
アン・ホイの『校長先生』の深みも相当だけどね。
あれ、全部好きじゃん。
オムニバス映画でも史上まれに見るほどの抜群の出来で、三分の一良ければ合格点のオムニバスにおいて、ほぼ全作良い。これは、『それでも生きる子供たちへ』などしか思いだえない。そうそうあるものではない。それは、中国との関係が強く影響しているのだろう。政治的な攻撃ではなく、娯楽ドラマで語る粋。予算がそうはないのを感じる分、腕が光る。これぞ香港映画人の腕力。
鬼籍に入ったリンゴ・ラムにさりげなく追悼してる辺りにも涙。
紹興酒と飲茶をつまみながら、一晩たっぷり話し合いたい香作。
おまけ。
原題は、『七人樂隊』。
英語題は、『SEPTET: THE STORY OF HONG KONG』。
『七重奏(七人楽団):香港の物語』。
各話の英語題。
1、『Exercise』
2、『Headmaster』
3、『Tender is the Night』
4、『Homecoming』
5、『Bonanza』
6、『Astray』
7、『Conversation in Depth』
2021年の作品。
製作国:香港
上映時間:111分
映倫:PG12
配給:武蔵野エンタテインメント
ジョニー・トーの構想は、七人の監督が香港の1940~2000年代を、それぞれ50年代、70年代など分担して描くというものだった。
くじ引きで担当年代を決めたという。
ツイ・ハークは一応「近未来」らしいが、本人が出ているし、香港映画人の話をしているので、2020年代とした。
サモ・ハンは50年代担当だというのだが、1952年生まれで、演じている彼は8才以下には見えないので、おいらは60年代とした。
あえて35mmフィルムでの撮影を行い、過ぎ去りし“フィルムの時代”への敬意を表明している。