で、ロードショーでは、どうでしょう？ 第２１７８回。
「なんか最近面白い映画観た？」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『パーフェクト・ドライバー 成功確率100％の女』
ワケあり荷物を運ぶ特送の凄腕ドライバーがやばい奴に追われるクライム・アクション。
主演は、『パラサイト 半地下の家族』のパク・ソダム。
共演は、『パラサイト 半地下の家族』のチョン・ヒョンジュン、『ベイビー・ブローカー』のソン・セビョク。
監督は、『キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち』のパク・デミン。
物語。
現代パラレル韓国、若き女性チャン・ウナは、闇社会のどんな荷物も高額で運ぶ特殊配送、通称＜特送＞の100％の成功率を誇る凄腕ドライバー。
孤独かつ、運転は危険でも身の安全第一がモットーなのは、彼女の過去が影響していた。
新たな依頼は、野球賭博が発覚したブローカーのキム・ドゥシクを港への運搬。運ぶ荷物の符牒はスマホに送られてきた男の顔写真のみ。
だが、待り合わせ場所に時間を少し過ぎて現れたのは、非情な敵に追われ、離ればなれになった父親ドゥシクから300億ウォン入った貸し金庫の鍵を託された10才にも満たない息子ソウォンだけ。
少年の背後には、武器を持った男たちが見える。
このドア、開けるか、開けざるか。
脚本：パク・テミン、キム・ボンソ、パク・トンヒ
出演。
パク・ソダム （チャン・ウナ）
チョン・ヒョンジュン （キム・ソウォン／息子）
ヨン・ウジン （キム・ドゥシク／父）
ソン・セビョク （チョ・ギョンピル／黒幕）
ホ・ドンウォン （サンフン／相棒）
キム・ウィソン （ペク・カンチョル／社長）
ハン・ヒョンミン （アシフ）
ヨム・ヘラン （ハン・ミヨン／課長）
オ・リュン （ウ室長）
チョ・ヒボン （キム氏）
ペク・トギョム （ヨンギル）
クォン・ヒョッポム （オグァン）
キム・イェウン （チソン）
ユン・デヨル （ソン代表）
パク・シヌン （キム氏の部下）
チョン・ソッコ （エンボル男）
チェ・ドンムン （イム・ギバン）
スタッフ。
製作：キム・ボンソ、ソク・トンジュン、ソル・ジョンウク
助監督：ソン・ホジェ
撮影：ホン・ジェシク
照明：キム・ジェグン（ピットハギ）
美術：イ・テフン (DIVE STUDIO)
武術：チェ・ソンギョム、チェ・ドンホン
編集：キム・ソンミン
音楽：ファン・サンジュン (リディントン）
『パーフェクト・ドライバー 成功確率100％の女』を鑑賞。
現代パラレル韓国、孤独な凄腕特送ドライバーが危険な荷を運ぶアクション。
女性版『トランスポーター』×『ドライブ』（なので『ザ・ドライバー』とも言えるが）に、ちょっと『ベイビー・ドライバー』を追加。子ども運びのネタは『トランスポーター２』ですね。コンセプトは似てるけど、軸ネタは凝ってる辺りが今の韓国映画アレンジの強み。これがなかなかうまく行かないのよね。
女性にしたののと、脱北者にしたのが効いてます。つまり自分が逃げて運ばれてきたという過去がそのハードボイルドさに納得を加えてるのよね。運転手の手に刻まれた北を指すタトゥーがピリッと効いてます。ハンドルさばきの手の画面にもキャラがつくしね。
細かい子供の行動の描写がこのジャンルの研究があって、愛おしくなります。レオン』、『グロリア』、『マイ・ボディガード』は研究してるね。
韓国カーチェイスの見どころは、アジアな町づくりの狭さ。これはジャッキーたち香港映画界の継承。フランスが舞台の『トランスポーター』でもやってましたけどね。（あれはアクションも香港寄りだった）
監督は、『キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち』のパク・デミンなので、しかけの手数の多さは、引き続き。どこかにユーモアも残す非情なトーンも。
主演は『パラサイト 半地下の家族』のパク・ソダムで。憂いを含んだ得体のしれない顔つきがいいのよね。運ぶ荷である子供のチョン・ヒョンジュンとは『パラサイト 半地下の家族』でも共演していたけど、この子がまた巧い。いやったらしい敵には『ベイビー・ブローカー』のソン・セビョク。社長役のキム・ウィソン筆頭に、男たちの弱さとまっすぐさが可愛いとさえ言えるレベルになってる。もはや韓国映画の演技陣のその厚さはこのレベルが当然なんだから、恐れ入る。チームの良さが３つのグループにわたテイルにも味。
邦題『パーフェクト・ドライバー 成功確率100％の女』は、あえてB級盛り盛り。そこは煽りに過ぎない。内容としては、この印象よりも、もうちょっとハードよりです。原題は『特送』で劇中で主人公がやるサービスの呼び名。
カーチェイスは大きくは３回。水浸しの中での走り新しいチャレンジもあります。
『ベイビー・ドライバー』や『ドライブ』の洗練がない分、泥臭さが命のやり取りを感じさせていい。
格闘戦に銃撃戦もあり、しかも女性ならではのバトルはアメリカのある英語から引用しつつも、細身ならではの面白さも醸し出している、このいい方向のつけ足しのセンスがいい。
こういうクセの強くない感じの韓国映画でグローバルな方向で見やすいです。
語りが、けっこう巧みで、意外と頭をぼぅーっとさせて見れない辺りに、つくり手の意地を感じる。脳のアクセルを踏ませるのよね。
ダメージ描写も好みです。
血の色に痛みを走らせる鍵作。
おまけ。
原題は、『특송』。
『特送』。
英語題は、『Special Delivery』。
『特別配送』。
2022年の作品。
製作国：韓国
上映時間：109分
映倫：G
配給：カルチュア・パブリッシャーズ
パク・テミンの第一作目の『影の殺人』は、評価もちゃんとされているし、そこそこヒットしているし、ファン・ジョンミン主演で邦題もあるのに、日本では配信もソフト発売もされてないのよね。近代の探偵ものらしい。美術がかなり高評価。
見たいなぁ。
パク・ソダムは、『パラサイト 半地下の家族』（2019）の後でオファーが相次いだが、ある映画の撮影中に甲状腺咽頭がんが見つかり、闘病により休養中だった。
今作は、復帰作の一本。
『毒戦 BELIEVER』のイ・ヘヨンの新作『Phantom（幽霊）』が2023年に公開待機中。
ネタバレ。
最後に写真で出てきた次に運ぶのは、『朝鮮魔術師』、『キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち』の主演のユ・スンホ。スター俳優ですね。
ウナが助かった理由は、鍵穴に突っ込むナイフがキーホルダーについていたこと。キーホルダーを見せるところが３回（忘れていくところ、キーホルダーを加える、鍵開けを教わるところ）あるので、そこがしかけになってる。
相手の親指を切って、脱出したってとこなんでしょう。
この映画では、鍵がシンボル（ライトモチーフというには使い方が一辺倒）になっていて、車のキー、車のドアロック、ヤクザの金庫、貸金庫の鍵、ホテルの鍵、ウナの部屋の鍵、修理工場の隠し金庫の鍵。
一応、心の鍵的なものを例えようとしている節もあるが、そこは薄かったか。
