で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2189回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『FALL/フォール』
2人の女性クライマーが、地上600メートルのテレビ塔の頂上で立ち往生するサバイバル・スリラー。
主演は、『アナベル 死霊人形の誕生』、『シャザム』のグレイス・キャロライン・カリーとドラマシリーズ『マーベル ランナウェイズ』のヴァージニア・ガードナー。
共演は、ジェフリー・ディーン・モーガン。
鉄塔のモデルは、実際にある高さ625mで、サクラメント・ジョイント・ベンチャー・タワー。
製作陣は、『海底47m』シリーズのチーム。
監督は、『ザ・トーナメント』、『ファイナル・スコア』のスコット・マン。
物語。
ベッキーは、ある出来事で落ち込んでいた。
彼女を立ち直らせようと親友のハンターことデンジャーDが配信用に比較的近所の高所クライミングに連れ出す。
登るのは地上600メートルの使われなくなったテレビ塔。
4時間ほどのクライミングの予定で、昼食を食べて帰るつもり。
二人は、頂上へ向かって、一段一段軋む梯子を登り始めた。
脚本:ジョナサン・フランク、スコット・マン
出演。
グレイス・キャロライン・カリー (ベッキー/ベッキーC)
ヴァージニア・ガードナー (ハンター/デンジャーD)
メイソン・グッディング (ダン/ベッキーの夫)
ジェフリー・ディーン・モーガン (ジェームズ/ベッキーの父)
スタッフ。
製作:ジェームズ・ハリス、マーク・レーン、スコット・マン、クリスチャン・マーキュリー、デヴィッド・ハリング
製作総指揮:ロマン・ヴィアリ、ジョン・ロング、ダン・アスマ
撮影:マグレガー
プロダクションデザイン:スコット・ダニエル
衣装デザイン:リサ・カタリーナ
編集:ロブ・ホール
音楽:ティム・デスピック
『FALL/フォール』を鑑賞。
現代アメリカ、2人の女性クライマーが、地上600メートルのテレビ塔の頂上で立ち往生するサバイバル・スリラー。
高いところでピンチになるのを現代的なガジェットで攻め続ける丁寧なシナリオで次々につるべ落とし。
もう出したものは隅から隅まで全部使うお手本のような脚本で、そのせいでちょっと読め過ぎるとこもあるけども。なので、伏線を張るのがうまいとはいえないが、回収は丁寧で好感が持てる。シャレード(シナリオ技術で、映像で写せるものをある種の象徴として用い、意図を伝達する手法のこと。小道具の使い方で言われることが多い)も効いているしね。
製作陣は、『海底47m』シリーズのチームなので、「深い」の次で「高い」か。てことは次は「広い」とか「より深い」とかかしら。
実は内容的には『ゼロ・グラビティ』にも似ているし、『クリフハンガー』のオマージュみたいなのもあったりする。
さて、スカイツリーより少し低い600mもの鉄塔が出てくるが、これ実際にある塔をモデルにしている。1986年に建設されたカリフォルニア州に実在する支線式鉄塔サクラメント・ジョイント・ベンチャー・タワーで高さ625mを誇り、で、頂点からベース・ジャンプを試みる者が後を絶たなかったという。
撮影は、グリーンバックをほとんど使わず、実際に山の上に20~30mほどの塔を建てて撮影したらしく、主演女優二人は本当に怖い思いをして撮影したと言っている。
『アナベル 死霊人形の誕生』、『シャザム』のグレイス・キャロライン・カリーとドラマシリーズ『マーベル ランナウェイズ』のヴァージニア・ガードナーが、まさに体当たりで画面を立たせる。危険に比例して露出度の高くなるのはサービスでもあり、危うさにもなっていて、唸る。
スパイスに、ジェフリー・ディーン・モーガンが渋さをまき散らす。
監督は、『ザ・トーナメント』、『ファイナル・スコア』、『タイム・トゥ・ラン』のスコット・マンで、佳作アクションをつくり出してきた娯楽職人(テレビシリーズもいくつも手がけている)で、今作でさらに認知されるだろう。
展開は、ちょっと強引なところもあるのも、真面目さゆええすかね。気づく人は気づいちゃうでしょうが、そこをサービス精神として、この世界の見せようとしているものに身を委ねましょう。
これで見た後で、感想とか見ていて気づいたのは、人間ドラマはうっすらでいい人と、人間ドラマがしっかりないと物足りない人ががいるんだろうなってこと。この映画の人間ドラマはあるけど薄いのよね。そこを人間ドラマだと言ってる人が結構多いので。あ、おいらはつくり手の意図に乗っかる派なので、人間ドラマの濃さは描き方に合わせて楽しめるタイプではあります。
今作はその点で薄いけど、展開と連動しているので、巧いのよ。オチも安定しているしね。
光の変化をうまく取り入れ、空気感を活かした撮影は、『ビバリウム』のマグレガー、ここでもいい仕事をしてます。
高所恐怖症ではないおいらでもお腹がヒョンとするほどの高所恐怖感。これは大画面で怖さ倍増するヤツ。
そうそう、音もいいのよね。
そして、絶望感のつくり方がいい。分かっていても「ああぁぁー」となるのは見事の一言。
見た後、こんなに筋肉が疲れる映画は久々でした。
落ちたりもしたけど私は元気ですな靴作。
おまけ。
原題は、『FALL』。
『落下』。
2022年の作品。
製作国:アメリカ
上映時間:107分
映倫:G
配給:クロックワークス
高いとこに取り残されるというのは、これまでもいくつかあった。
雪山のリフトの『フローズン』、気球に二人きりの『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』、宇宙船の『密航者』の後半とか、ビルの綱渡りの『ウォーク』、『『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』、ビルでとっびろ脅迫の『崖っぷちの男』、山岳アクション『クリフハンガー』や『バーチカル・リミット』、ジャッキーアクションでは定番で『プロテクター』の巨大クレーン上のバトルとかね。韓国映画の『EXIT』もそこをつかってましたね。
なんといっても、無声映画時代のスターであるハロルド・ロイドは高さを使うのがうまかった。
なんといっても、クライマーのドキュメンタリーは『フリーソロ』、『MERU メルー』などいくつかあるので、高所恐怖症を煽るのはけっこう古典的とも言える。
ヒッチコックの『逃走迷路』のクライマックスの自由の女神での対決はその白眉の一本だろう。
それに、撮影でも高いところから取るのは、一つの見どころとなっている。『イントレランス』のタワー撮影台や空撮、今ならドローンだね。
つまり、高いは、映画の楽しませ方の原点なんだろうなぁ。
ちなみに、他には、早い、多い、大きいがありますね。
ネタバレ。
ベッキーの靴が片方なのも、彼女の心情になってるってことでしょうね。
カラビナと結婚指輪、留守番電話メッセージとスマホ、ロープによる絆など、夫とベッキーを繋ぐものがどんどん落とされていくのもシャレードが効いている。
なにしろ、143の刺青が入った友人も落とすわけで、ある意味、タイトルの「フォール」は憑き物を落とすという風にも取れる。
ハゲワシを締め落としたり、電源が落ちるなど日本語の言葉遊びとして受け取るのもちょっと楽しかったり。
ポスターには、途中のあんたなポイントや支線のワイヤーがないです。
ハンターを二回目にロープだけで引き上げる時に軽いこと、電球で充電するときにハンターが助けないことで、ハンターいないなって感じがわかる。
それより、この脚本が、出してきたものを全部使うので、夫の幻影を夢で見るシーンを使ってないので、ああ、ハンターが幻影だなと気づくので、3つの仕掛けがあるので、たぶんつくり手は隠す気はない。
人間ドラマの部分は、夫と浮気をした友人、1年間ほっといていたことなどの話をさらっと片付けるところですね。
父は夫の人間性に気づいていたのか。
これにより、ベッキーが死体を傷つけること、ハンターが贖罪をすませるという部分がある。(キリスト教的にね)
6万人のフォローを得ているなら、移動しながら写真をあげてもいるので、知り合いにあのあの場所に行ったのを誰にも知らせないのがちょっと気になる。
とはいえ、アメリカのこういう事故再現番組とか見ていると、うっかりがけっこう出てくるので、あり得るとも思うけど。(フォクションだと、そこをご都合ととらえる人も少なくない)
ベッキーは「映さないで」とは言っているので、お父さんも気づかない可能性はある。
なぜ、ハンターは、ロープが短いの、支柱につけたのだろうか?
足場の縁につけたら少しでも長くなると思う。
最初はそうだとしても、アンテナの上に落ちたら、届かないって言ってるんだから、んすび直せよと思った。
少しだけ残ったハシゴは壊れる可能性あるから結ばないだろうけど。
あと、突風対策として、外のハシゴになってからは、ベッキーは補助ロープ(それぞれを結ぶロープではなく)をしてもよかったんじゃないかな。
2本のロープがある状態ならではのピンチも描けたと思うのよね。
たとえば、ベッキーが自分のハーネスと支柱を繋ぎ、ぎりぎりまで行き、ハーネスに長いロープを繋ぎ(元々繋いでいた方法)、下のハンターを引き上げようとするとか。
あと、夜に飛行機除けの灯りを消したら、気づく人がいるのではとは考えなかったのかな、とか。
FALL (2022) | Backyard Rehearsal Featurette
https://www.youtube.com/watch?v=hJ9WgLH1_wI