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モバライダー mobarider

火星で有機化合物を検出、けど火星のものかは不明

2012年12月10日 | 火星の探査
NASAの火星探査車“キュリオシティ”が、炭素が主体の単純な有機化合物を火星で検出しました。

ただし、これが地球からの汚染によるものなのか、火星にもともとある元素だけで構成されたものなのかは、まだ分かってないんですねー

以前、火星の極地で確認された過塩素酸塩化合物が、“キュリオシティ”の探査現場であるゲイルクレーターにもあるようです。

有機物とは炭素化合物のことです。
今回、水素と結びついた炭素系の化合物である、炭化水素を発見したということは、より複雑な有機物質を探している“キュリオシティ”のミッションに大きな影響が出るかもしれません。

このことは、火星にいま生命が存在しているとか、かつて存在したということを決定づけるにものではありません。
でも、これまでの生物学では、利用可能な炭素があることが、とても重要だと考えられています。
なので、いまより水があり温暖だった遠い昔の火星に、生命がいた可能性はいくらか高くなります。

見つかった有機化合物は、炭素、水素、塩素が組み合わさっていて、1970年代中ごろにバイキング計画の着陸船で検出された有機塩素化合物と同じか、似たものなんですねー

当時、これは地球からの汚染物質だと見なされていました。
でも現在では、火星における化合物の生成について、当時よりも分かってきています。
化合物で見つかった炭素の起源が、火星なのか地球なのかというのが問題になります。






“キュリオシティ”が
すくい上げた土




土壌サンプルを採取したロックネストは、岩の集まりが波状の砂に囲まれた場所です。
特に発見が期待される環境とは、考えられていなかったんですねー
しかも、サンプル採取の第一目的は、分析装置の掃除でした…

ゲイルクレーターにあるシャープ山のふもと、そこに存在が確認されている粘土と硫酸塩鉱物。
これらの方が、有機物が見つかる可能性は、ずっと高いと考えられていたんですねー

サンプル分析装置(SAM)が、検出したシンプルな有機物は、クロロメタンの仲間でした。
クロロメタンの仲間には、電子機器の洗浄で使われることがある化合物があります。
バイキング計画のときは、有機物は火星に持ち込まれた汚染物質かもしれない っという説が広く受け入れられました。

でも、2010年に過塩素酸塩の化合物があるなかで、ほかの有機物質を熱するとジクロロメタンが発生する可能性があることを、説明する有力な論文が発表されたんですねー

SAMの分析結果には、重要な結論が2つあります。

ひとつは、過塩素酸塩説を確認中だということ。
過塩素酸塩である可能性が高く、それが高温で有機物質と反応して、ジクロロメタンなどのシンプルな有機物を形成していると思われます。

もうひとつは、近くに過塩素酸塩がない環境、そこで有機物を見つける。
あるいは有機物の特定を阻む、過塩素酸塩の壁を回避する方法を見つける必要があることです。

いずれにせよ、“キュリオシティ”による探査は、始まったばかりです。
すぐに結論を出さずに、次の調査データを待つとしましょう。

有機物の発見が期待されるシャープ山のふもと。
“キュリオシティ”は来年早々に、そこに向かうようですよ。