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恒星が2度も暗くなったのはなぜ? 彗星の群れが原因かも…

2015年11月30日 | 宇宙 space
“KIC 8462852”という恒星の光が、
劇的に暗くなるとう風変わりな現象がとらえられました。

この現象をとらえたのは、系外惑星探査衛星“ケプラー”による4年間のモニター観測。

これまで見られたことがない謎のふるまいで、
追加の赤外線観測によると、彗星が関係しているかもしれないそうです。


何かが恒星の光をさえぎった?

NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”による観測で、
地球から約1500光年離れた“はくちょう座”方向の恒星“KIC 8462852”が、
暗くなるようすがとらえられました。

暗くなったのは2011年と2013年。

その理由について研究者が考えているのは、
一群の彗星の存在や、惑星か小惑星の破片が関係しているということ。
粉々になった彗星によって光がさえぎられる“KIC 8462852”(イメージ図)。

そして、どちらの説が正しいのかを調べるため、
赤外線探査衛星“スピッツァー”による観測が行われます。

赤外線観測は、
恒星についてより多くのことを知る1つの方法として利用されています。

もし、“KIC 8462852”に見られる謎の現象が、惑星か小惑星によるものだとすると、
互いの衝突でチリのように粉々になった岩石は、
赤外線で輝くと予測され、星の周囲で赤外線が過剰になるはずです。

今年行われた観測の結果、
“KIC 8462852”の周囲に赤外線過剰は見られず…

実は、2010年にも天文衛星“WISE”を使った観測は行われていて、
赤外線過剰は検出されていませんでした。

この結果が示すのは、
惑星や小惑星といった岩石質天体の崩壊説は、正しくなさそうだということ。

かわりに冷たい彗星が関与していると考えた方が良さそうで、
次のような現象が考えられます。

  “KIC 8462852”の周りを、
  非常に長い楕円軌道を持つ一群の彗星が公転している。

  その先頭にとても大きな彗星が存在していて、
  それが2011年に恒星の光をさえぎった。

  その後の2013年に、
  さまざまな大きさの破片を含む帯状となった残りの彗星の群れが、
  遅れて恒星に到着し、光が再びさえぎられることになった。

“スピッツファー”が観測した今年には、彗星は遠ざかってしまっていて、
検出できるほどの赤外線は残っていなかったそうです。

“KIC 8462852”の周りで何が起こっているのかは、
まだ、はっきりとしたことは分かっていません。

もっと多くの観測が必要みたいですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 地球外文明の巨大建造物かも!? 恒星を周回する謎の物体…

鉄が多い恒星の周りを観測する理由は? 答え) 惑星が存在する確立が高いから。

2015年11月29日 | 宇宙 space
岡山天体物理観測所などの観測から、
金属量過剰を示す3つの太陽型恒星の周りに、計5つの系外惑星が発見されました。

中心星から遠く離れた公転周期の長い惑星は、
検出例が少なく、こうした惑星系の形成を理解するうえで重要な情報になるようです。


高金属量の星

今回の研究を行ったのは、
国立天文台、東京工業大学、アメリカ・エール大学を中心とするグループ。

岡山天体物理観測所の口径188センチ望遠鏡と、
ハワイにある“すばる望遠鏡”と“ケック望遠鏡”を用いて、
高金属量星の周りの系外惑星探査を進めてきました。

金属量とは、恒星大気中に含まれる重元素(水素とヘリウム以外の元素)の量になります。

研究グループでは太陽に近い温度の主系列星の中でも、
とくに鉄の含有量が高い星を中心に惑星探査を進めています。

なぜ鉄の含有量かというと、
高金属量の恒星は、惑星が存在する確率がより高く、
さらに最近の研究では惑星形成の現場になる原始惑星系円盤も、
金属量によって特徴に違いがあるという指摘があるからです。

なので惑星形成を理解する上で、高金属量の星は興味深い対象になっているんですねー


年老いた準惑星“HD 1605”

アンドロメダ座の7.5等級の恒星“HD 1605”は、
年齢が約46億歳、質量は太陽の1.3倍、直径は太陽の3.8倍と見積もられた、
やや年老いて進化した“準巨星”という分類の恒星です。

この星の周りには2つの惑星が検出されています。
2つの惑星を持つ太陽系外惑星系(イメージ図)

2つの惑星の軌道がほぼ円形なので、
惑星の形成後に、お互いの重力や周りの星々から、
重力の影響を長い間受けていないと考えられています。

でも、この惑星系の外側に伴天体が存在していることが分かるんですねー

遠くの伴天体は、
内側の惑星の軌道を乱してしまう(古在機構が働く)可能性があるのですが、
軌道が乱された形跡は見られず…

どうやら、この惑星系は、
外側の伴天体が、どのように内側の惑星軌道に影響するのかを知るうえで、
重要な手がかりとなるようです。


太陽よりやや熱い“HD 1666”

F型星になる、くじら座の8.2等級の恒星“HD 1666”は、
太陽(G型星)よりもやや熱い主系列星です。

年齢はおよそ18億歳、質量は太陽の1.5倍、直径は太陽の約2倍と推定されています。

この恒星には惑星が1つ検出されています。

質量が太陽の1.5倍以上の主系列星は、自転速度が非常に速いものが多く、
視線速度法による惑星探索は困難になります。

なのでこの惑星系は、
アプローチが困難な重い主系列星周りでの惑星の姿を垣間見ることができる、
貴重なサンプルといえます。

ただ、検出された惑星は非常に質量が大きく、軌道が大きく歪んでいたんですねー

この惑星系で考えられることは、
形成直後に同時に存在した惑星同士の重力で、お互いを弾き飛ばし、
系外に放り出されたり中心星に落ちてしまったりしたこと。

結果、「歪んだ軌道の惑星が1つだけ残った」
という形成シナリオ(惑星散乱)が考えられます。

“HD 1666”は金属量が非常に高いので、惑星の材料になる個体物質が多いと考えられ、
惑星がいくつも同時に形成できる余地があります。

このことも惑星散乱シナリオと合っているんですねー


2つの巨大惑星を持つ“HD 67087”

ふたご座の8.2等級の恒星“HD 67087”もF型の主系列星です。

年齢はおよそ15億歳、質量は太陽のおよそ1.4倍、直径は太陽の1.6倍と推定されています。

この恒星では、2つの巨大惑星が検出されました。

この惑星系で着目された点は、
外側の惑星だけが高い離心率を示している(軌道が細長く楕円である)ことです。

惑星散乱シナリオ(くじら座の惑星系と同じ)では、
惑星同士の重力で離心率を大きく上昇させるのですが、
外側だけが大きく歪んだ軌道を持つことについての説明は難しいんですねー

一方、古在機構(アンドロメダ座の惑星系と同じ)による軌道進化では、
伴天体からの重力を強く受ける外側の惑星の軌道だけが歪んでいることを、
説明できる可能性があるものの、そうした伴天体はなさそうでした。

また、アンドロメダ座の惑星系では、
伴天体の存在が示唆されるたにもかかわらず惑星は円軌道であり、
ふたご座の惑星系と合わせて考えると、
それぞれ理論的に予想される進化とは、対照的な特徴を持っていることになります。

これらの惑星系は、伴星の有無と惑星の軌道進化への影響を調べるうえで、
極めて重要な手がかりになると期待されています。

さらに精密な軌道決定も重要になります。

岡山天体物理観測所による継続的な観測と、
研究グループによって2004年に開始された国際プロジェクト“N2Kコンソーシアム”で、
10年以上にわたり蓄積されたデータは、長周期の惑星探査において、
世界的にも非常に大きなアドバンテージとなっています。

それは、中心星から遠く離れた惑星については、
周期が非常に長いため観測が進まず、まだ分からないことが多いからです。

研究グループでは、今後も継続的に観測を進めていくようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 1万3000光年彼方の系外惑星

地球の周りには、髪の毛のような細長いダークマターが存在する?

2015年11月28日 | 宇宙 space
シミュレーション研究から、
髪の毛のように細長いフィラメント状のダークマターの存在が提唱されました。

しかも、この細長いフィラメントは、地球の周りにも多く「生えて」いるそうです。


目に見えない謎の物質“ダークマター”

宇宙を構成しているエネルギーと物質のうち27%を占めている、
目に見えない謎の物質がダークマター(暗黒物質)です。

電磁波で検出することはできないのですが、
周囲に及ぼす重力的な影響を観測することで、その存在は確実視されています。

1990年代に行われた計算や、
過去10年間に実施されたシミュレーションによれば、
ダークマターは、きめの細かい粒子の流れを作り、
同じ速度で動き、銀河の周りを回っているそうです。

その粒子の流れが地球のような惑星に接近した場合、
どんなことが起こるのでしょうか?


重力がダークマターを髪の毛状にする

その答えを出すために、
NASAのジェット推進研究所ではコンピュータシミュレーションを実施。
地球の周囲にあるとされる、
髪の毛のようなフィラメント状のダークマター(イメージ図)。

シミュレーションを分析した結果、
ダークマターの流れが惑星を通り抜けると粒子が集まり、
超高密度のフィラメント状ダークマターになることが示されました。

ダークマターの流れは、
地球から「まるで髪の毛が生えている」ような状態になるそうです。

普通の(目に見える)物質の流れは、
地球を通り抜けることはできず別の方向へそれてしまいます。

でも、ダークマターにとってみれば地球は障害物でもなんでもないんですねー

シミュレーションによると、
地球の重力でダークマターの粒子の流れが集まり折り曲げられると、
髪の毛状になるそうです。
フィラメント状のダークマターの「毛根」ような部分と地球(イメージ図)。


髪の毛を調べれば惑星の内部が分かる

ダークマターの毛にも、
ダークマターが最も集中している「毛根」と、毛の終わりになる「毛先」があります。

地球の核を通り抜けるダークマター粒子は、
粒子の密度が平均の10億倍近くになる「毛根」に集中し、
その位置は地表から約100万キロも離れています。

「毛先」の位置はというと、
地球の表面をかすめて通る粒子の流れによって作られ、
「毛根」の2倍以上も遠いところにあります。

また、木星の核を通り抜けて作られる「毛根」の密度は、
元の1兆倍になるというシミュレーション結果も得られました。

これらのシミュレーション結果を参考に、
ダークマターの「毛根」の場所を、ピンポイントで突き止めることができれば…

そこへ探査機を送ると、
ダークマターに関する、たくさんのデータが得られる っということになります。

シミュレーションを使った発見は他にもあります。

それは、地球内部における密度の変化、
つまり核やマントル、地殻といった構造の変化が、髪の毛に反映されるということです。

もしそういった髪の毛に反映された情報が得られれば、
理論的には、惑星内部の層や凍った衛星の地下海の深さについても、
地図が作れることになります。

興味深い研究成果ですよねー
でも、今回の発見を補強しダークマターの性質を解き明かすには、
まだまだ研究が必要なようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 宇宙の網を作る暗黒物質のフィラメント構造

世界初! 形成途中の惑星を直接撮像

2015年11月27日 | 宇宙 space
若い恒星の周囲を取り巻く濃いガスが回転している円盤。

この円盤の中に、現在作られつつある惑星が見つかりました。

これまで、こうした天体の存在が間接的に示されることはあったのですが、
直接撮像されたのは初めてのことなんですねー


円盤の隙間

周囲に遷移円盤を持つ若い恒星“LkCa 15”が位置しているのは、
地球から450光年彼方のおうし座方向。

そして、“LkCa 15”を取り囲む円盤の内側には隙間があるんですねー

隙間の存在には意味があり、
「そこで惑星形成が進んでいる」っという可能性を示しています。

それは、円盤内の物質が中心星ではなく惑星へと落ち込むことで、
中心星と円盤の間に隙間ができると考えられているからです。

今回の研究で用いられたのは、
巨大双眼望遠鏡“LBT”の補償光学システムと新撮像技術や、
チリのラスカンパナス天文台マゼラン望遠鏡の補償光学システム“MagAO”。

アリゾナ大学の研究者は、
これらを使って、“LkCa 15”の円盤の内側に存在する形成途中の惑星の姿を、
とらえることに成功したんですねー
惑星形成中の証拠となった画像。
MagAOデータ(青)、LBTデータ(緑と赤)

その様子は、Hα線という輝線星雲に見られるような赤い光が、
惑星と“LkCa 15”の両方から放射されているものでした。

つまり、共に同じ成長過程を経ているということななります。

今回の観測では、
はるかに明るい“LkCa 15”の光と、かすかな惑星の光を分離し、
成長中の天体が、非常にはっきりと赤く光っているところをとらえています。

はっきりとした色は惑星形成の確かな証拠であり、
今回の研究は、こうした現場をとらえた世界初の成果となりました。

これまでに約2000個の系外惑星が見つかっています。

でも、直接撮像されたのは10個ほどしかないんですねー
しかも、それらは形成中ではなく、すでに形成された後の惑星でした。

ようは、今まで形成中の惑星の検出に確実に成功した例がなく、
今回が初めてというわけです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 原始惑星系円盤に2つ目のリングギャップを、すばる望遠鏡が発見

ロケットの着陸試験に成功! ブルー・オリジンの新型有人ロケット“ニュー・シェパード”

2015年11月26日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
ネット通販の大手にアマゾンがありますよね。

このアマゾンを設立したジェフ・ベゾフさんが、
2000年に有人宇宙旅行の商業化を目指すベンチャー企業を立ち上げているんですねー

ベンチャー企業の名はブルー・オリジン社。

今回行われた飛行試験で、
新型ロケット“ニュー・シェパード”が宇宙に飛び立ち、無事に帰還したそうです。

新型有人ロケット“ニュー・シェパード”

“ニュー・シェパード”は、
地球の軌道に乗らない“サブオービタル”飛行を目的に開発されているロケットです。

普通のロケットよりも寸詰まりで、
前部と後部が丸くなった、カプセル錠剤のような姿かたちをしています。

ブルー・オリジン社は2010年前後に、
より小型の実験機の打ち上げを行っていたことが知られていますが、
ちょうど、その機体を大きくしたような形をしています。

機体を構成しているのは、先端のクルー・カプセル(宇宙船)と、
それを打ち上げるための推進モジュール(ロケット)。

クルー・カプセルが運べる宇宙飛行士は3名以上。
推進モジュールには、BE-3という液体酸素と液体水素を推進剤とする、
ロケット・エンジンが搭載されます。

ただ、推進モジュールは打ち上げ後、
地表に垂直に着陸することができるように作られていて、
BE-3は推力を変えられる(スロットリング)能力を持っているんですねー


ロケットを着陸させて再利用する

1回目の飛行試験は今年の4月29日に行われ、
“ニュー・シェパード”は最大高度94キロまで上昇し、最大速度はマッハ3を記録。
誘導や航法、制御システムは、すべて予定通り機能したそうです。

最大高度まで到達すると、推進モジュールと無人のクルー・カプセルは分離され、
クルー・カプセルはパラシュートで地上に帰還。

ただ、垂直に着陸する予定だった推進モジュールは、
油圧系統に問題が発生し、回収は失敗に終わっています。

そして11月24日に行われた2回目の試験では、
高度100.5キロに達したところで乗組員用カプセルが分離。

宇宙空間を飛行したのちに降下し、3つのパラシュートを開いて着離しています。

推進モジュールは、誘導飛行によりテキサス州西部の着陸場へ。
今回は時速約7.1キロで無事着陸に成功したんですねー
この成功でロケットの再利用に向けて開発が進み、コスト削減につながれば、
商業宇宙旅行に向け、はずみがつくことになります。

ブルー・オリジン社では、今後も宇宙船の飛行試験を続け、
その後は有人飛行を開始するそうです。


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  補給船の打ち上げは成功したけど着地は失敗に… ファルコン9ロケット