宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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超小型深宇宙探査機“PROCYON”、小惑星フライバイは断念…

2015年05月31日 | 宇宙 space
超小型深宇宙探査機“PROCYON”が、
目標としていた小惑星“2000 DP107”の接近観測(フライバイ)を断念するそうです。

原因は、イオン・スラスターに生じていた問題が解決できず、
加速できないことでした…

2014年12月3日に、
小惑星探査機“はやぶさ2”などと共にH-IIAロケットで打ち上げられたのが、
超小型の深宇宙探査機“PROCYON”です。

“PROCYON”の開発は東京大学とJAXAが手掛け、
機体は1辺が約60センチの立方体で、質量は約65キロという小柄な機体。

でも、小型のイオン・スラスターや深宇宙用の通信装置、カメラなどを搭載していて、
立派な小惑星探査機と言えるんですねー


打ち上げ後の状態は正常で、今年4月6日には、
  「深宇宙での発電、熱制御、姿勢制御、通信、軌道決定に成功すること」
  「超小型電気推進系の深宇宙での動作に成功すること」
  「超小型電気推進系が所定の性能で一定の増速量を達成すること」
という3つの項目からなる“ルミナル・ミッション”を達成。

また、“アドバンスト・ミッション”に位置づけらている、
「GaNを用いた高校率X帯パワーアンプによる通信」にも成功し、
「超長基線電波干渉法(VLBI)による航法」も実施されました。

そして“PROCYON”は究極の目標として、
2つの小惑星から成る二重小惑星“2000 DP107”のフライバイを目指していました。

でも、今年3月10日の運用終了数時間後に、
イオン・スラスターの内部で金属ゴミ(フレーク)による、
スクリーン・グリッドとアクセル・グリッド間の導通(短絡)と思われる事象が発生…

イオン・スラスターには、イオンを引き出して加速するための、
直径0.4ミリの孔が数百個開いています。

1つ1つの孔は電極になっていて、これをグリッドと呼びます。

イオン・スラスターの放電室でプラズマ化された推進剤は、
まず、スクリーン電源から高い電圧を与えられたスクリーン・グリッドによって、
放電室から引き出されます。

そして次に、アクセル電源から負の電圧を与えられたアクセル・グリッドによって、
加速され噴射されることになります。

でも、両グリッドが短絡していることで、高電圧を与えられず、
“PROCYON”は加速が出来ない状態になったんですねー

その後、“PROCYON”チームは、
様々な手段を使って復旧に当たったのですが、まだ回復にはいたっていません。

このまま飛行を続けると、地球との最接近距離は300万キロ弱。

地球の重力を使って探査機の軌道を変更する“地球スイングバイ”によって、
小惑星“2000 DP107”にフライバイするために必要な最接近距離、
“地球から約50万キロ以内”まで地球に近づくことができず…

また今後、仮にイオン・スラスターが回復したとしても、
残された期間では、小惑星に向かうための地球スイングバイ条件を、
整えることができない状況なんですねー

なので“PROCYON”チームは、
小惑星“2000 DP107”へのフライバイを実施しないことを決定…

さらに、小惑星“2000 DP107”よりも容易に、
かつ、科学的成果が得られる距離まで接近できる小惑星は、
今のところ見つかっていません。

このことから、“PROCYON”による小惑星の接近観測に関しては、
厳しい状況にあると言わざるを得ません。

まぁー ジオコロナ観測装置“LAICA”による観測や、
その他の工学実証実験の継続など、
今後の“PROCYON”運用については、協議をする価値はあるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 超小型衛星でイオンエンジンの作動に成功!

小惑星からの隕石で分かったこと、月が作られた時に作られていた?

2015年05月30日 | 宇宙 space
今から45億年近く前のこと、
地球と火星サイズの天体との激しい衝突“ジャイアント・インパクト”が、
引き金となって形成されたのが、夜空に輝く月でした。

この衝突で飛び散った破片が、
小惑星帯まで到達して、小惑星に痕跡を残していた。
っという論文が発表されたんですねー
アポロ12号から見た月。
この論文によると、
内部太陽系(火星から太陽までのエリア)で起こった衝突として最大の規模が、
“ジャイアント・インパクト”だそうです。

“ジャイアント・インパクト”では、
膨大な量の破片ができて、
そのうちのかなりの部分が、地球と月のエリアから放り出されることになります。

研究チームでは、まず衝突のシミュレーションを行い、
多数の大きな破片が、火星と木星の間にある原始小惑星帯を突き抜けた可能性を明らかにします。

次に、その小惑星帯から隕石として地球に落ちてきたもの34個を調査。

すると、彼らが調べた隕石の多くに、大昔の衝突の痕跡が残っていたんですねー
その中には、2013年にロシアのチェリャビンスク州上空で爆発した、
隕石の破片も入っていたそうです。

通常、小惑星同士が衝突しても、クレーターが出来るだけです。

でも、遠方から高速で飛んできた場合、
衝突の瞬間、岩石が過熱して“衝突溶融岩石”が生成されます。

そして、これらの痕跡の形成時期と性質を考慮すると、
月を形成した衝突の痕跡だろうと判断出来たわけです。

痕跡の形成時期を見積もるために、研究チームが用いたのは、
カリウム-アルゴン法という年代測定法。

岩石中の放射性カリウムは、一定のペースで崩壊してアルゴンになります。

でも、小惑星の衝突などにより岩石が加熱されると、
アルゴンガスは、岩石の中から全てが放出されて無くなってしまうんですねー

このように“アルゴン時計”がリセットされるおかげで、
岩石に含まれるアルゴンの量を利用して、
衝突溶融が起こった時期を見積もることが可能になります。

アルゴンの測定方法は、
痕跡が約44億年前にできたことを明らかにしてくれました。

そして、この年代は、
月の石の同位体時計から導かれた年代とよく合うようですよ。

球状星団中で起こった惑星破壊

2015年05月29日 | 宇宙 space
球状星団中の白色矮星によって、
惑星が破壊されたかもしれない っという現象の証拠が、
NASAのX線天文衛星“チャンドラ”などの観測から見つかりました。
球状星団“NGC 6388”。
“チャンドラ”とハッブル宇宙望遠鏡による観測データから作られた、
擬似カラー画像。

この発見は、まず天文衛星“インテグラル”が、
さそり座の球状星団“NGC 6388”に、新しいX線源を検出したことから始まります。

以前の観測で、
この球状星団の中心に、ブラックホールがあることが示唆されていたので、
X線は、ブラックホールに流れ込む高温ガスから発せられていると、
考えられていました。

でも、“チャンドラ”で観測を行ったところ、
このX線源の位置が、中心からズレていることが分かることに…

さらに衛星“スウィフト”が、
約200日間にわたって、X線の強度変化を追い続けたところ、
X線が弱くなっていくようすは、
「惑星が白色矮星に破壊された」とする理論モデルと一致したんですねー

この惑星の質量は地球の3分の1ほどで、
元は別の星の周りを公転していたと見られています。

球状星団中の中心部には星が密集しているので、
それらの影響で、惑星は親星と離れ離れになり、
そして惑星が、白色矮星の近くを通りかかったときに、
強い重力の影響で、粉々に破壊されてしまったようです。

なのでX線は、
惑星のかけらが白色矮星の表面へと降っていく際に、
放射されたものと考えられ、
その強さも計算とよく合っていたそうです。

白色矮星は、
太陽程度の質量の星が、進化の最終段階に迎える天体です。

大きさは地球ほどしかないのですが、
質量は元の星と同程度なので、極めて高密度になり、
近くの天体に強い潮汐力を及ぼします。

今回の解釈が正しければ、
惑星の破壊というまるでSFのような現象が、
実際に宇宙で起こっていることになりますね。

有人宇宙船“ドラゴン2”が、打ち上げ中断システムの試験に成功!

2015年05月28日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
“ドラゴン2”はスペースX社が開発中の有人宇宙船で、
5月6日に打ち上げ中断システムの試験に成功したんですねー

“ドラゴン2”の試験が行われたのは、ケープ・カナベラル空軍ステーション。

装備されている“スーパードレイコー”と呼ばれるスラスターが噴射され、
“ドラゴン2”は勢いよく空中へ。

上空で宇宙船の後部にあるトランク部を分離し、
続いて“ドローグ・シュート”と呼ばれる小さなパラシュートを開き、
さらに、そのメイン・パラシュートを展開して、ゆっくりと降下、
打ち上げから1分39秒後に大西洋上に着水しています。

今回の試験は、“ドラゴン”に装備された打ち上げ中断システムが、
設計通り機能するかを試験するためのもの。

打ち上げ中断システムは、宇宙船を載せたロケットが、
発射台の上で爆発しそうになったり、飛行中にエンジンが止まるなど、
といった問題が発生した際に、宇宙船をロケットから分離することで、
搭乗している宇宙飛行士の命を守る役割を持っています。

アポロ宇宙船やソユーズ宇宙船の打ち上げ中断システムは、
塔のような形をしていて、宇宙船の先端に装備されています。

でも“ドラゴン2”では、
宇宙船自体に装備された“スーパードレイコー”と呼ばれる、
スラスターを使うんですねー

“スーパードレイコー”の推進剤は、モノメチルヒドラジンと四酸化二窒素。

“ドラゴン2”の側面に、2基を1セットとした計8基が装備され、
2秒で100メートル、5秒で500メートルもの距離を飛行することが可能です。

また、脱出時だけでなく、宇宙線が陸上へ着陸する際の噴射でも用いられます。


今回の試験での最大速度は時速約555キロ、最大到達高度は1187メートル、
パラシュート展開時の高度は970メートル。

速度と高度は、予定より若干小さかったのですが、
これはスラスターのうち2基1セットの推進剤の混合比率で異常が起き、
予定より低い性能しか出なかったため。

ただ脱出の際には、8基中4基のエンジンが稼働すれば十分とのこと。
なので、今回の試験は成功ということになるそうです。

試験に用いられた“ドラゴン2”には、
270個近い数のセンサーや、
自動車の衝突試験などでおなじみのダミー人形などが搭載されていて、
今後得られたデータが分析され、さらなる開発に役立てられます。

スペースX社では、この夏に、
飛行中のファルコン9ロケットから“ドラゴン2”を脱出させる試験を、
実施する予定。

これが順調に進めば、
2016年12月には、無人の“ドラゴン2”宇宙船を地球周回軌道に打ち上げる試験、
そして2017年にも有人飛行を実施するそうですよ。


ダークマターの雲にズレ? 実在の証拠かも…

2015年05月27日 | 宇宙 space
天文学者は80年近く前から、
宇宙を満たす謎めいたダークマターの正体を、
明らかにしようとしてきました。

彼らがダークマターの概念を思いついたのは、
「銀河の運動を観測すると、
宇宙の質量が、目に見える星や銀河の質量だけでは、
説明できないほど大きいように見える」 からでした。

彼らはこの物質を、ビッグバンの際に大量に生成された、
「重力には関わるものの、どうやっても目に見えない素粒子」
だと推測することに…

ただ、こうした素粒子を直接観測できていないので、
ダークマターは基本的に、まだ理論上の存在なんですねー

そして今回行われた、
“ハッブル宇宙望遠鏡”とチリの超大型望遠鏡“VLT”による新たな観測により、
ダークマターの正体について、決定的な手がかりが得られた可能性があるそうです。

それは、地球から約14億光年の彼方にある銀河団“エイベル3827”。
ここのダークマター粒子は、重力以外の力を感知しているそうです。
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、融合する4つの銀河の画像。
そのうちの1つの銀河を取り巻く、ダークマターのハローの分布が、
ズレているように見え、ダークマター粒子が実在する証拠の可能性が出てきた。

この観測で実際に検出されたのは、ダークマターの異常な分布でした。

通常、ダークマターは、
銀河を取り巻く巨大な“ハロー(かたまり)”を形成していて、
これは、私たちの銀河系も例外ではありません。

銀河系は猛スピードで回転しているので、
ダークマターの大きな重力で、つなぎ止められていないと、
バラバラに飛び散ってしまうはずです。

でも、銀河団“エイベル3827”にある1つの銀河は、
ダークマターハローの中心と銀河自体の中心が、
約5000光年もズレていたんですねー

宇宙では5000光年などたいした距離ではないのですが、
ダークマター粒子が重力にしか反応しないのなら、
この距離のズレは、ゼロでなければなりません。

ただダークマターは、重力以外の力も感知すると考える理論家もいます。


20年ほど前から、
ダークマターは、相互作用が弱くて重い粒子“WIMP”であると考えれば、
その性質をうまく説明できるという説が有力になってきています。

“WIMP”は、重力だけでなく、原子核のβ崩壊などを引き起こす、
いわゆる「弱い力」も感知するとされています。

なので今回の発見は、
ダークマターが“WIMP”からできていることを示す、
最初の証拠になるのかもしれないんですねー

また、この雲が“エイベル3827”の中心にある、
もう一つのダークマターの雲の中を通り抜けているところ、
と考えれば、検出されたダークマターの雲のズレを、
うまく説明できのかもしれません。

なんらかの力が働いて、2つの雲の間に摩擦が生じ、
一方のダークマターの動きが遅れたので、銀河の中心からズレた…
ただ、その力の正体については不明なんですねー

この力は、ダークマターを直接見えるようにするものではないのですが、
謎に包まれたダークマターに光を投げかけるものでもあります。


一方で、ダークマターの雲のズレの原因が、
もっと月並みな現象にある可能性も否定できません。

例えば、目に見える銀河の一部で爆発的に星形成が起こると、
そこだけ異常に明るくなって、
銀河の中心位置の見積りに歪が生じるかも…

さらに、
近隣の銀河の重力が、目に見える銀河の形を乱し、
中心位置を特定しにくくしている可能性とか…

ダークマター粒子が未知の力を通じて、
お互いの動きを遅くしているんだとか…


っと言うことで、さらなる情報が必要なんですねー