宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

電波の影絵から分かる希薄な星間分子ガスの組成

2015年12月30日 | 宇宙 space
明るい電波源を背景にして希薄な分子ガスを検出する。
っという観測方法に用いられる観測対象が、
アルマ望遠鏡のデータベースから新たに見つかったんですねー

天の川銀河の星間ガスの化学組成などを明らかにし、
性質を解明するうえで大きな成果になるようです。


希薄な分子ガスを検出する方法

宇宙空間には水素やヘリウムなど、
様々な分子からなる星間ガスが多量に存在しています。

それらの星間ガスは、
主に分子自身が発する光(分子輝線)の電波観測によって、
ガスの性質が研究されてきました。

でも、ガスがあまり多くない領域からの電波は微弱になるので、
輝線の観測から希薄なガスの環境を探ることは困難になるんですねー

こうした希薄な分子ガスを検出する手法としては、
遠方の明るい電波源を背景光源に使用して、
手前側に存在するガスによって生じる分子吸収線を、
とらえるという観測方法があります。

これは、背景の電波に照らされた分子ガスの「影絵」から、
ガスの正体や特徴を探る手法で、
その背景の観測対象は“分子吸収線系”と呼ばれています。

そして、この“分子吸収線系”を多く見つけることが、
希薄な分子ガスの研究において重要になります。
分子吸収線系の模式図。
遠方電波源のスペクトルは平坦だが、
手前に存在する星間ガス中の分子で吸収されると、
観測されるスペクトルの特定の周波数に吸収線が現れる。


アルマが観測した基準光源データ

そこで研究グループが着目したのは、
南米チリのアルマ望遠鏡で観測されている基準光源のデータでした。

基準光源とは、目標天体の「位置合わせ」を行い、
データの質を高めるために観測される「本来の観測対象とは異なる」天体のこと。
主に遠方の明るい銀河が用いられています。

研究グループが、アルマ望遠鏡が観測した基準光源36天体のデータを調査したところ、
4方向の天体から天の川銀河内に存在する多種の分子吸収線が検出されました。

とくに3天体は今回初めて分子吸収線系として発見されたんですねー
分子吸収線系“J1717-337”の電波強度画像(上)と、
同天体の分子吸収線スペクトル。

さらに、非常に珍しいホルミルラジカル(HCO分子)の吸収線も検出。

希薄な分子ガスが紫外線にさらされて、
特徴的な化学変化が引き起こされていることが確認されました。

過去の例と比べて、
半分程度しかホルミルラジカルが検出されていない天体もあり、
これまでで最も希薄な部類の星間分子ガスをとらえたことになります。

今回の成果は、
天の川銀河内にも相当な量存在していると考えられている、
希薄な分子ガスの性質などを理解するうえで大きな意義のあるもの。

同時に、アルマ望遠鏡により観測された基準光源の、
潜在的な価値を示すものになります。

アルマ望遠鏡のデータベースには、
1000天体以上に及ぶ基準光源のデータが収められています。

この中には新たな分子吸収線系が隠されている可能性があり、
「宝の山」と言えるんですねー

なので、この基準光源データの調査が進むことで、
新たな分子吸収線系が発見され、
希薄な星間ガスに関する知見がさらに広がることが期待されますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ Ia型超新星の起源は紫外線パルスから分かる?

スイングバイによる軌道変更に成功! 探査機“はやぶさ2”は目標への軌道を順調に航行中

2015年12月16日 | 小惑星探査 はやぶさ2
12月3日に地球スイングバイを行った小惑星探査機“はやぶさ2”。

今回、軌道の計測と計算が完了し、
目標の軌道を順調に飛行していることが確認されたんですねー

地球の重力と公転速度を利用

12月3日に“はやぶさ2”は地球スイングバイを実施しました。

地球スイングバイとは、
地球の重力を利用して軌道の変更を行い、
その際に地球の公転速度を利用することで探査機の航行速度を上げる、
航法テクニックのこと。

“はやぶさ2”は日本時間の19時8分7秒ごろに地球に最接近して、
ハワイ付近の上空3090キロを通過しています。

そして、JAXAが行ったスイングバイ後の軌道計測と計算では、
目標としていた軌道上を航行していることを確認。

“はやぶさ2”は軌道を約80度曲げ、
スピードは秒速約1.6キロ上げて秒速約31.9キロになり、
目標としていた数値を達成したそうです。

スングバイにより軌道を大きく曲げるとともに速度を上げた“はやぶさ2”。

地球を離れて探査目標の“リュウグウ”に向かう軌道進むことになります。

約3億キロ離れた“リュウグウ”への到着は、
2年半後の2018年6月~7月ごろになる予定です。


着陸地点を決めるカメラ

“はやぶさ2”は地球スイングバイ後に、
光学航法望遠カメラ“ONC-T”使用して地球を撮影していました。

このカメラでは7つのフィルターを使ってカラー画像を取得することができ、
このうち3色の画像を使って作成したのが、この地球の画像になるんですねー
スイングバイ翌日の12月4日13時9分(日本時間)に、
約34万キロの距離から撮影された地球。
画像右上にオーストラリア大陸、右下に南極大陸が見えている。

“ONC-T”は、物による反射の性質の違いを認識することができます。

“はやぶさ2”は、この機能を利用して、
小惑星“リュウグウ”のどこに有機物や含水鉱物があるのかを確認し、
着陸する場所を決めることになります。

この“ONC-T”の性能を活かして、
2色の画像から植物の存在を示す場所を明るく表示した画像や、
氷と雲で反射の性質が異なる2色を使い、雲を白く、氷を青く表示し、
同じ色に見える雲と南極の氷を見分けるようにした画像も作成されています。

事前に試験は行われていたのですが、
今回の地球観測で、しっかりとその性能が発揮されていることが、
確認できたそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 地球スイングバイに向けて軌道修正に成功! “はやぶさ2”は順調に飛行

ブラックホール周辺で起こる活動的な現象には、磁場が重要な役割を果たしていた?

2015年12月15日 | 宇宙 space
天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール。


このブラックホール“いて座A*”付近の電波観測から、
すぐ近くに存在する複雑な磁場構造が明らかにされ、
時間変動もとらえられたんですねー

このことは、ブラックホール周辺の活動的な現象に対して、
磁場が重要な役割を果たしているとする説の観測的な裏付けになり、
物理過程の解明につながる大きな成果になるそうです。


電波望遠鏡を組み合わせた高解像度観測

天の川銀河の中心には、
太陽の430万倍もの質量を持つ超大質量ブラックホール
“いて座A*(エー・スター)”が存在しています。

その直径は約2600万キロ。

こんなに大きいのに、約2万5000光年離れている地球からだと、
小さくしか見えないんですねー

なので、“いて座A*”の周囲の様子を明らかにするには、
非常に高い解像度の観測が必要になります。

今回の研究では、
ハワイとアメリカ本土にある4台の電波望遠鏡を
VLBI(超長基線電波干渉法)という技術で接続。

直径4000キロ相当の巨大な電波望遠鏡を構成し“いて座A*”を高解像度観測しています。

この手法を用いることで、
“いて座A*”の周辺を詳しく調べることができたんですねー


磁場が果たす役割

今回の観測の最大の特徴は、
これまでより高感度化したことにより偏光の計測が、
初めて可能になったことです。

観測の結果、
“いて座A*”のブラックホール半径の6倍ほどの領域から出る放射が、
直線的に偏光している様子が初めて計測されています。

また、その偏光の度合いから、
“いて座A*”の周りの磁力線は、一部が渦を巻いていたり複雑に絡み合ったりした、
「絡まったスパゲッティ」のような状態になっていることも…

ただ、磁力線は際限なく絡み合っているわけではなく、
ブラックホール1、2個分の大きさまで細かく見るときれいに整列していて、
この構造は15分程度の短い時間で変動していたんですねー
“いて座A*”のブラックホール極近傍領域(イメージ図)。
磁場構造(磁力線)も描かれている。

ブラックホールの周囲には、
降着円盤からのガス流入やジェットの生成などがあり、
これらの活動的な現象がエネルギーを生み出す「ブラックホールエンジン」として、
とらえられています。

理論モデルでは、
こうした現象に磁場が重要な役割を果たしていると考えられてきました。

今回の観測は、実際にブラックホールの周辺で、
磁力線が複雑に絡まりながら短時間で変動している様子が、
初めてとらえられたもので、
理論モデルを観測的に裏付けるという大きな意義を持っているんですねー

また今回の観測は、
ブラックホールの姿そのものを撮像するという
“Event Horizon Telescope(EHT)”の実現に向けても、
重要なステップになるそうです。

EHTでは解像度をさらに向上させるために、
今回組み合わされた望遠鏡群に、ヨーロッパや南米にある電波望遠鏡を加える予定です。

そして、ブラックホールの表面ともいえる「事象の地平線(event horizon)」を、
初めて直接撮影することを目指すそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 新現象を発見! ブラックホール近傍から噴き出す電波ジェットのふらつき

1年振りの打ち上げ! 無人補給船“シグナス”が国際宇宙ステーションに到着

2015年12月12日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
補給物資を載せた“シグナス”補給船運用4号機が、12月9日に国際宇宙ステーションに到着しました。

ただ今回は、前号機の打ち上げ失敗により、ロケットを変えての打ち上げになったんですねー

1年振りの補給ミッション

“シグナス”が打ち上げられたのは12月7日のこと。

その後、順調に国際宇宙ステーションに向けて飛行を続けていました。

国際宇宙ステーションへのランデブーには、
日本の無人補給船“こうのとり”と同じ、三菱電機が開発した誘導接近システムが使われ、
十分に接近するとロボットアームにより捕捉。

9日の23時26分にハーモニーモジュールに結合し、
チェックが行われた後、物資の搬出が始まることになっています。
“シグナス”は、アメリカのオービタルATK社が開発した無人の補給船で、
国際宇宙ステーションに物資を届けることを任務としています。

今回打ち上げられた運用4号機には、
食料品やクルーへの支給品、ステーション用の機器、実験関連機器など、
合計で約3350キロの物資が搭載されていました。


ロケットを変えて打ち上げ

ただ、これまで“シグナス”を打ち上げていた“アンタレス”ロケットは、
前号機で失敗し飛行は停止中…

原因調査とロケットの改良を行うため、
“アンタレス”の打ち上げが出来ない期間が生じることになるんですねー

なので今回はロケット変えて打ち上げることになり、
ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社の“アトラスV”ロケットが、
“シグナス”を宇宙に運んでいます。

“アトラスV”は“アンタレス”よりも打ち上げ能力が大きいので、
より多くの補給物資を運べるようになります。

また“シグナス”補給船も、
この運用4号機から機体を大きくした改良型“エンハンスド・シグナス”となり、
より多くの物資を積み込むことができるようになります。

2000キロの搭載能力が、改良型では3500キロまで搭載できるそうです。

オービタルATK社では、失敗した“アンタレス”の改良を続けていて、
2016年春ごろに新しい“アンタレス”の打ち上げが行われる予定になっています。

改良型“アンタレス”は従来型よりも打ち上げ能力が向上するので、
“アトラスV”とほぼ同等の物資を運べるそうです。

また、“アンタレス”の改良と並行し、
“アトラスV”による打ち上げも、もう1回行われるそうですよ。


こちらの記事もどうぞ
  ケネディ宇宙センターに到着していた! 12月打ち上げの改良型“シグナス”補給船
  “アンタレス”ロケット改良の目玉! ロシアから来た新エンジン

太陽より小さいのに磁場は数百倍も強い? 暗くて冷たい恒星を発見

2015年12月11日 | 宇宙 space
太陽の10分の1以下の質量しかない暗く冷たい赤色矮星に、
驚くほど強力な磁場が見つかったんですねー

この恒星からの放射は太陽の1万倍も強いので、
もし近くを惑星が回っていたとしても、星の強烈なフレア活動によって、
荷電粒子が絶えず降り注ぐことになり…

生命にとっては過酷な世界になっているそうです。


強力な磁場のなぞ

今回観測されたのは、
うしかい座の方向約35光年の距離に位置している、
赤色矮星“TVLM 513-46546”。

質量が太陽の10%しかない非常に小さく冷たい星で、
水素が核融合して輝く星と、核融合していない褐色矮星の、
ちょうど境界線に分類される天体です。

また、太陽の自転周期が約25日なのに対して、
“TVLM 513-46546”は、わずか2時間という特徴も持っています。
赤色巨星“TVLM 513-46546”(イメージ図)

アメリカ国立電波天文台の
カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡(VLA)による以前の観測では、
この恒星が太陽の最も強力な磁場に匹敵する磁場を持ち、
それは太陽の平均的な磁場より数百倍強いことが分かっていました。

でも、太陽で磁場を発生させる物理的なプロセスは、
このように小さな恒星では起こりえないので、研究者の頭を悩ませていたんですねー


磁力的には太陽とは異なる怪物

今回の研究では、
ハーバード・スミソニアン天体物理センターの研究チームが、
アルマ望遠鏡でこの恒星を観測しています。

すると95GHzという、
特に高い周波数(波長にすると約3ミリ)の電波を検出したんですねー

赤色矮星において、フレアで発生するような電波が、
これほど高い周波数で検出されたのは初めてのこと。

さらに、このような恒星がミリ波で検出されたのも初めてのことでした。

こうした電波信号が発生する過程は、シンクロトロン放射と呼ばれています。

シンクロトロン放射は、
電子が強力な磁力線の周りを勢いよく進むときに出る放射で、
磁場が強力であるほど電波の周波数は高くなります。

恒星のフレアは磁力線に絡みつくように発生し、
磁力線はまるで粒子加速器のように働き、
電子が軌道をゆがめられることで電波の信号を発生します。

アルマ望遠鏡は、その電波をとらえたことになります。

太陽フレアでも似た放射が見られますが、それは瞬間的なもの。
一方、この恒星は太陽の10分の1以下の質量しかないにもかかわらず、
その放射は太陽の1万倍も強いんですねー

アルマ望遠鏡がたった4時間の観測で放射を検出したことからも、
この赤色矮星は途切れることなく活動しているといえます。


赤色矮星を回る惑星に生命は存在する?

今回の結果は、生き物が存在するかもしれない、
太陽系外惑星の探査と重要で密接な関係があります。

それは、赤色矮星が天の川銀河内で最も典型的な星なので、
今後の系外惑星探しのターゲットになるからです。

その赤色矮星は太陽よりずっと低温なので、
惑星が表面に液体の水をたたえるほど暖かくなるには、
星のすぐ近くを公転する必要があるんですねー

でも、そのように近いところでは、
星からの強烈な放射を受けることになります。

なので、惑星では表面の大気が剥ぎ取られたり、
強烈なフレア活動で荷電粒子が惑星に絶えず降り注いで、
複雑な分子が破壊されてしまったりすることに…

このような荒れ狂う環境で、
生命が進化していくのは非常に困難なことになります。

今後、似ている星を研究し、
今回の星が珍しい変わった星なのか、
それとも嵐のような星の仲間の一例にすぎないのかを、
調べる必要がありますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 150光年の近い場所に、地球より1.5倍大きい惑星を発見!