宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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火星に似た環境でもジャガイモ育つようですよ

2017年05月11日 | 火星の探査
火星でもジャガイモは栽培できる?

映画オデッセイではシェルターの中で栽培していましたが、
南米ペルーで進められている実験で、今後の成果に期待できる結果が出たようです。


火星環境で育つジャガイモ

火星の自然環境に似せた条件でジャガイモを栽培してみる。

この実験は、南米ペルーの首都リマにある国際ポテトセンターが、
NASAの協力を得て行っているもの。

火星の大気環境を模した環境で、ジャガイモの生育実験を実施しています。

もちろん目的の一つは、
宇宙飛行士が火星でジャガイモが生産できるかを確かめることになります。
  いくつかの品種を実験環境に植えつけて育ちの良さの比較を、
  いま研究チームが進めている。


火星でジャガイモ栽培というと、映画オデッセイでのエピソードが思い当たりますよね。

でも、あれはハビッタット(居住空間)内、
つまり地球環境を模した環境でのジャガイモ栽培なので、きちんとやれば育ってあたりまえ。

一方、研究チームが進めているのは素の火星環境。
つまり、大気全体の量が少ないうえに、二酸化炭素の割合が非常に高い状態での実験なんですねー


育成実験

植物は光が当たっていれば、光合成によって水と二酸化炭素から糖類を生み出し、
その過程で樽俎を放出します。

でも、日の当たらない夜間では逆に酸素を消費します。
一方、火星では水がほとんどなく気温も低いので、夜間に野ざらしにすれば、
映画に出てきたように、あっという間に凍結してしまうはずです。

ところが研究チームでは、ジャガイモの種類によっては、
極限環境に適応可能な遺伝子を備えるものがあり、それをすでに見つけているそうです。
  初期段階の実験では、ペルー南部にある高塩分濃度の土壌を使って、
  塊茎がきちんと育つことを確認している。


実験の期間は2月14日~3月5日で、火星の環境が再現されたのは、
リマにある工科大学UTECの技術チームが開発した小型人工衛星の内部。

研究チームによると、
ジャガイモの栽培を試してみると、生育が確認されたそうです。


将来の気候変動にも有効

ジャガイモには、たくさんの収穫ができて高カロリーという利点があります。

より少ない農地で、より多くのカロリーを作り出せるという点では、
理想的ともいえる植物なんですねー

なので、火星と似た環境でもジャガイモが栽培できる可能性が示されたということは、
気候変動の影響下や、過酷な環境での食糧供給実現に向けた明るい兆しの1つといえます。

気候変動の影響を受ける地域での食糧安全保障の強化は、
火星での有人探査や、将来実現されるかもしれない火星への移住でも、
有利な材料になります。

なんせ、現地で食料を調達できるのは大きいです。

国際ポテトセンターでは、
気候変動の影響を受ける地域での食糧安全保障を強化するため、
さまざまな将来性の高い品種を開発しているそうです。

今回の実験で使用した土は、ペルー南部にある極度に乾燥したもので、
地球上で最も火星の土壌の条件にもの。

国際ポテトセンターによると、この実験は今後5年にわたり継続される予定です。

火星だけでなく、将来の気象変動が悪化した地球で、
人類を生き延びさせてくれるのは、どんなジャガイモなのか?

水害に強いジャガイモが見つかればポテトチップスの生産も安泰(^_^)
品種も気になりますが、「おいしいジャガイモ」が見つかればいいですね。


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“スペースシップ2”が再突入システムで初飛行

2017年05月09日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)

民間による宇宙旅行の実現。
このために設立された会社がヴァージン・ギャラクティック社です。

ヴァージン・ギャラクティック社が開発中の宇宙船“スペースシップ2”は、
ロケットで打ち上げるのではなく、航空機“ホワイトナイト2”に吊るされて離陸。

上空で分離した後に、“スペースシップ2”のロケット・モータが点火され、
一般的に宇宙とされている高度約100キロまで上昇するんですねー

ただ乗客が宇宙空間を体験できるのは数分間で、
その後“スペースシップ2”は、地球を1周する前に飛行機のように地上に帰還する、
サブオービタル軌道を飛ぶことになります。

今回、カリフォルニア州で行われた試験飛行で“スペースシップ2”の2号機(ユニティ)は、
4回目になるグライダー飛行を実施。

“ホワイトナイト2”に吊るされた“スペースシップ2”は、
約1万5500メートル上空から、再突入システムを利用した初飛行に成功したんですねー
  再突入システムは2014年の機体事故以来のテストになり、
  この事故で1号機が失われることになります。

  “スペースシップ2”の事故は、安全対策の不足と操縦士のミスが原因
    

この再突入システムは“フェザー・システム”と呼ばれ、
機体後部のテールを上方に跳ね上げる動作をします。

宇宙からの帰還時に使用されるもので、
主翼の後ろ半分を約60度ほど立てることで機体面積を大きくし、
降下のスピードを抑えつつ、機体を安定させることができる機構です。

最新の予定によると、
2人のパイロットと6人の乗客が搭乗可能な“スペースシップ2”が、
商業飛行を行うのは2018年末のこと。

ただ、現時点でのチケット価格は1人あたり約2800万円もするそうです…


こちらの記事もどうぞ
  スペースシップ2が試験飛行を再開! 近づいてきた民間による宇宙旅行
    

“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”を史上最高解像度で観測

2017年05月06日 | 宇宙 space
地球から48億光年彼方にある銀河団を取り囲む高温ガスを、
アルマ望遠鏡がとらえました。

ただアルマ望遠鏡では、高温ガスの存在を直接知ることは出来ないんですねー
なので今回行われたのは、“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”と呼ばれる現象の観測。

“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”の観測としては、
これまでで最も高い解像度が得られたことで、銀河団を取り巻くガスの分布や温度を、
詳しく観測する新たな手法の確立につながったようですよ。


銀河団を取り囲む高温ガス

銀河は、太陽のような星や星間ガスが集まっている天体ですが、
その銀河も宇宙の中で集団を形成して存在していることがあります。

銀河が数百個から数千個集まったものは銀河団と呼ばれていて、
そこには銀河の質量の合計よりも数倍も大きな質量を持つ、
大量の高温ガスが含まれています。

今回の研究では、この銀河団を取り囲む高温ガスを調べるために、
アルマ望遠鏡による観測を実施。

ただ、高温ガスから放射されるX線は、
アルマ望遠鏡ではとらえることは出来ないんですねー

なので、高温ガスの様子を調べるために、
高温ガスが引き起こす特殊な現象“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”を
電波で観測しています。


“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”

地球にはビッグバンの名残りとされる電波“宇宙マイクロ波背景放射”が、
あらゆる方向からやってきています。
  “宇宙マイクロ波背景放射”とは、
  天球上の全方向からほぼ等方的に観測されるマイクロ波。


“宇宙マイクロ波背景放射”の電波が、銀河団の高温ガスを通り抜けるとき、
高温ガスに含まれる電子と電波が衝突し、電子の持っていたエネルギーの一部が電波に渡されます。

その結果、高温ガスを通り抜けた電波は、
もともとの“宇宙マイクロ波背景放射”の電波よりも高いエネルギーに偏ることになるんですねー

これを地球から観測すると、高温ガスのある方向では、
他の方向に比べて“宇宙マイクロ波背景放射”の電波が弱くなる現象が起こります。

この現象を提唱者の名前を取って“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”と呼びます。
  銀河団をつなぐ1000万光年のフィラメントの橋
    


高解像度の観測

観測の対象となったのは、
おとめ座の方向48億光年の距離にある銀河団“RX J1347.5-1145”。

この銀河団は“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”が比較的強く、
これまで様々な電波望遠鏡で観測されてきました。

とくに2000年に国立天文台野辺山宇宙電波観測所の
45メートル電波望遠鏡で行われた観測では、高温ガスの分布にムラが発見され、
これまでのX線観測に基づいて想定されていた滑らかな分布とは異なることが、
示唆されました。
アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で観測した銀河団“RX J1347.5-1145”。(青色)アルマ望遠鏡による“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”の分布。銀河団の中止に近いほど“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”が大きく、電波が弱くなっていることが分かる。

高温ガスの分布を詳しく知るには、より高い解像度での観測が必要になります。

ただ、銀河団をのっぺりと覆う高温ガスは、
解像度の高い電波干渉計では観測しにくい対象の1つになります。
  複数の電波望遠鏡をつないで、それぞれの観測データを合成することで、
  1つの巨大な望遠鏡とする観測設備を電波干渉計と呼ぶ。


でも、日本が開発を担当したアルマ望遠鏡のアタカマ・コンパクト・アレイによって、
広い視野を実現し、広がる天体の分布を正確に調べることができるんですねー
  アタカマ・コンパクト・アレイ(愛称“モリタアレイ”)は、
  アルマ望遠鏡のうち日本が担当した直径7メートルのパラボラアンテナ16台。


研究チームでは、これまでの約2倍高い解像度と10倍高い実質感度で、
この銀河団における“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”の観測に成功。

その結果、これまでの観測を強く裏付けるガス分布が得られただけでなく、
高温ガスの圧力分布が、これまでよりも高い解像度と密度で描き出され、
この銀河団が激しい衝突を起こしていることが確実になりました。

“スニヤエフ・ゼルドビッチ効果”の存在が始めて提唱されてから50年近く経ちますが、
この現象は非常に微弱なので、高解像度の観測を実現するのはまさに至難の業でした。

今回、アルマ望遠鏡によってその壁がついに破られ、
宇宙の進化を探るための新たな道が切り開かれたことになります。


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