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これまでのロケットエンジンと同推力で2~5倍高い効率! NASAとDARPAの核燃ロケットエンジン試験機はロッキード・マーティンが製造

2023年09月27日 | 宇宙 space
NASAとアメリカ国防高等研究計画局“DARPA”には、将来の有人火星探査を見据えて“核燃ロケットエンジン”の技術実証を行う“DRACO(Demonstration Rocket for Agile Cisulunar Operations)”というプログラムがあります。

今回、NASAとDARPAが発表したのは、“DRACO”プログラムについて。
試験機の設計・製造を行う主契約者がロッキード・マーティンに決定したことでした。
DRACOプログラムの核燃ロケットエンジン試験機のイメージ図。(Credit: Lockheed Martin)
DRACOプログラムの核燃ロケットエンジン試験機のイメージ図。(Credit: Lockheed Martin)

核分裂反応で発生する熱を利用するロケットエンジン

核燃ロケット(Nuclear Thermal Rocket : NTR)エンジンは、核分裂反応で発生する熱を利用して水素などの推進剤を加熱・膨張させノズルから噴射することで推力を得る推進システムです。
“核燃推進(Nuclear Thermal Propulsion : NTP)ロケットエンジン”や“原子力推進ロケットエンジン”などとも呼ばれています。

核燃推進の研究は東西冷戦時代にまで遡り、かつてはNASAでも“NERVA(Nuclear Engine for Rocket Vehicle Application)”プログラムのもとで研究が進められたことがありました(1972年に中止)。

それぞれ特徴がある2種類のロケットエンジン

現在利用されている主なロケットエンジンには、推進剤の化学反応で生じたガスを噴射する“化学燃料ロケットエンジン”と、電気で加速させた推進剤を噴射する“電気推進ロケットエンジン”があります。

2種類のロケットエンジンを比較すると、化学燃料ロケットエンジンは推力が高くて比推力(効率)が低く、電気推進ロケットエンジンは推力が低くて比推力が高いという特徴があります。

例えば、JAXAの小惑星探査機“はやぶさ”や“はやぶさ2”の場合。
地球と小惑星を往復する巡航フェーズでは、効率に優れるイオンエンジン(電気推進ロケットエンジン)を使用。
機体の姿勢制御やサンプル採取(タッチダウン)時などでは、イオンエンジンよりも高い推力を発生させるスラスター(化学燃料ロケットエンジン)を使用しています。
ロッキード・マーティンによるDRACOプログラムの核燃ロケットエンジン試験機のイメージ動画(英語)。(Credit: Lockheed Martin)

月や火星に効率的かつ迅速に物資を輸送するために

一方、ロッキード・マーティンによると、核燃ロケットエンジンは化学燃料ロケットエンジンと同程度の推力でありながら、2~5倍高い効率を実現可能にするそうです。

飛行時間を短縮して宇宙飛行士が負うリスク(宇宙放射線の被ばくなど)を軽減できるだけでなく、月や火星に効率的かつ迅速に物資を輸送できる可能性もあることから、核燃ロケットエンジンは改めて注目されているそうです。

NASAとDARPAが、DRACOプログラムのもとで核燃ロケットエンジンの技術実証に共同で取り組むことを発表したのは2023年1月のことでした。

今回、ロッキード・マーティンとの間で合意に達したのは、2027年に打ち上げが予定されている核燃ロケットエンジン試験機“experimental NTR vehicle : X-NTRV”の設計と製造に関する契約。
核燃ロケットエンジンの心臓部になる核分裂炉の開発は、ロッキード・マーティンのパートナーのBWXテクノロジーが担当することになります。

DARPAによると、DRACOプログラムの試験機ではNERVAプログラムで用いられた高濃縮ウランではなく、高純度低濃縮ウラン(HALEU)が核分裂炉に採用されています。
また、トラブルへの対応のため目標の軌道に到達するまでは、核分裂炉の停止状態が維持されるようシステムが設計されることを、DARPAは強調しています。
DRACOプログラムの核燃ロケットエンジン試験機のイメージ図。(Credit: Lockheed Martin)
DRACOプログラムの核燃ロケットエンジン試験機のイメージ図。(Credit: Lockheed Martin)
これまでの宇宙開発における原子力といえば、放射性物質の崩壊時に発する熱から電気を得る“放射性同位体熱電気転換器(Radioisotope Thermoelectric Generator : RTG)”が主に利用されてきました。

“放射性同位体熱電気転換器”はNASAの惑星探査機“ボイジャー”や土星の衛星タイタンに向けて2027年に打ち上げを予定の探査ドローン“ドラゴンフライ”での採用も決定しています。

4年後に試験機を打ち上げ予定のDRACOプログラムが目指しているのは、核分裂反応を利用したロケットエンジンの開発。
さらに、長期間の月面滞在などを想定した電源としての核分裂の利用についても、現在研究が進められています。

そう遠くない将来の有人探査ミッションでは、核分裂の活用が一つの重要なポイントになるのかもしれませんね。


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1 コメント

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マルテンサイト千年 (グローバルサムライ)
2024-04-22 10:37:19
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタインの理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。

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