宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

火星の砂嵐を地表と上空から同時観測

2012年12月02日 | 火星の探査
火星で巻き起こる砂嵐は、地表にいる探査車の活動に大きく影響することもあるんですねー
今回の観測は、上空の探査機と地表の探査車が共同で行っていて、砂嵐の領域と、それによる変化について調べています。

火星を周回している探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”は、11月10日から南半球の砂嵐を追跡監視しています。

  “マーズ・リコナサンス・オービター”が、とらえた火星の南半球の砂嵐
  (中央下部の白い三角内)
  白い円で示されているのは、“オポチュニティ”(左)と“キュリオシティ”(右)の現在地

“マーズ・リコナサンス・オービター”のデータでは、砂嵐の25キロ上空の気温が11月16日以来25度も上昇していました。
これは、その高度にあるチリが太陽光を吸収したためなんですねー
チリが上空に巻き上げられ、風で広がり“もや”となっていることが分かっています。

南半球だけでなく北半球でも、大気循環によって一部局地的な気温上昇が見られました。
チリの“もや”から離れたところにある探査車“キュリオシティ”がとらえた気圧の低下なども、同様の変化によるものなんですねー

また、“マーズ・リコナサンス・オービター”は砂嵐の状況を、約1400キロ離れたところで活動している探査車“オポチュニティ”に連絡しています。

もし、砂嵐が火星の全球に広がっていたら… 大気中のダストが増えて、“オポチュニティ”の太陽光発電パネルに砂が落ちて、大きな影響が出ていたんですねー
幸い砂嵐は、それ以上接近せず、“オポチュニティ”の視界がやや曇った以外には影響は出ませんでした。

“キュリオシティ”は、放射性同位体熱電気転換器という発電装置から、主な電力を得ているので動力の面での影響はありません。
でも、気温上昇の影響や、撮影画像の画質低下が問題になります。
なので、火星探査車の運用のためにも、砂嵐を監視する必要があるんですねー

数十年にわたる火星探査から、火星最大の砂嵐には季節的周期があることが分かっています。
現在、砂嵐が発生している季節は、今から数週間前に南半球の春の到来とともに始まっています。

今回のサイズの砂嵐は、このまま成長が止まるものもあれば、全球的規模まで成長するものもあります。
どこでこのような違いが生まれるのか?
これが分かれば、砂嵐の監視と探査車の運用が、少しは楽になるんですかねー