宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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初検出! 宇宙最初の星が残した痕跡

2018年03月31日 | 宇宙 space
ビッグバンから1億8000万年後という宇宙の歴史のごく初期に生まれたとされる“宇宙最初の恒星”。
今回検出された電波信号は“宇宙最初の恒星”が生まれた証拠になるようです。


宇宙の暗黒時代

私たちの宇宙は約138億年前にビッグバンと呼ばれる超高温の状態から誕生し、ビッグバンから約38万年が経った頃には宇宙の温度が下がり、中性の水素原子が作られたと考えられています。

この頃の宇宙には、物質は中性水素ガスとダークマターしか存在せず、光を放つ天体はまだ生まれていなかったんですねー
この時代は“宇宙の暗黒時代”と呼ばれ、数億年にわたって続いたと考えられています。

やがて、物質密度の高い部分が重力で集まって収縮し、最初の恒星や銀河が生まれると、恒星から放射される強い紫外線によって中性水素ガスは全て電離されることに…
この“宇宙の再電離”によって宇宙の暗黒時代は終わると考えられています。

でも、宇宙の最初の恒星がいつ生まれ、再電離がいつごろ起こったのかなどはいまだに確定しておらず、この時代の宇宙史を解明することは天文学の最優先目標の1つになっています。


宇宙マイクロ波背景放射に残る痕跡

初期宇宙のモデルによると、宇宙で最初に誕生した恒星は質量が大きく、青色の高温星で寿命が短かったと予想されています。でも光学望遠鏡では、この時代の宇宙は遠すぎて観測できず…

そこで、アメリカ・アリゾナ州立大学が立ち上げたのはEDGESと呼ばれる観測プロジェクト。
宇宙最初の星々が放射した紫外線によって“宇宙マイクロ波背景放射”に生じる変化を検出するという方法で、最初の恒星の間接的な証拠を捜し求めるプロジェクトです。

水素原子は波長21センチの電波(21センチ線)を吸収・放出する性質を持ちます。

宇宙最初の恒星が生まれ、暗黒時代の宇宙を満たしていた中性水素ガスが星からの紫外線を受けると、紫外線の影響で水素原子の特性が変わり、21センチ線を放出するよりは吸収する傾向が強くなります。

なので、宇宙マイクロ波背景放射の電波強度を精密に観測すると、21センチ線の吸収の跡がシルエットのように現れるんですねー

そしてEDGESチームが電波観測から検出に成功したのが、最初の恒星の影響で宇宙マイクロ波背景放射の強度がはっきりと低下している痕跡でした。

さらに、吸収が現れている周波数の範囲から、最初の恒星が生まれたのはビッグバンからおよそ1億8000万年後になることも明らかにします。
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宇宙で最初に生まれた恒星(イメージ図)
宇宙最初の星々が一生を終えると超新星爆発を起こして、後にはブラックホールが残されます。

このような超新星爆発やブラックホールが増えてくると、残っている中性水素ガスはX線で強く加熱され、21センチ線を吸収する性質を失ってしまいます。

今回の観測結果からは、ブラックホールが増えた年代がビッグバンの約2億5000万年後だということも明らかなっています。


ダークマターの解明へ

今回のような電波観測にとって探査の妨げになるのが地球上で使われている様々な電波です。

今回の宇宙マイクロ波背景放射の変化は65MHzから95MHzの範囲で検出されたのですが、この周波数帯はFMラジオ放送で最も広く使われている周波数と重なっているんですねー

それだけでなく、出力の大きな電波は天の川銀河からも放射されています。

そう、宇宙マイクロ波背景放射の変化を検出するには技術的ハードルがあり、ノイズ源からの電波は、見つけようとしている信号よりも1万倍も強いこともあります。

今回、この信号が本物であることが確認された一方で、新たな疑問も生まれています。
それは、今回検出された吸収の痕跡は理論予測よりも強度が2倍も大きかったことでした。

研究者たちが考えているのは、暗黒時代の中性水素ガスが推定よりも低温だったか、当時の宇宙マイクロ波背景放射の温度が推定よりも高かったのかのどちらではないかということ。

あるいは別の可能性として、ダークマターと通常物質との相互作用を考えることで、この食い違いを説明できるのかもしれません。

もし、この説が正しいと確認されれば、ダークマターについて新たな根本的事実を見つけたことになります。これによって標準模型を超える物理の手がかりが得られるかもしれませんね。


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アンドロメダ座大銀河の質量が下方修正されるかも… 天の川銀河との衝突時期も変わってくる?

2018年03月07日 | 銀河・銀河団
これまで私たちの“天の川銀河”より2~3倍大きいと考えられてきた“アンドロメダ座大銀河”の質量。
でも、最新の研究では両銀河の質量がほぼ同じという結果が出たそうです。


銀河の質量

私たちの“天の川銀河”のすぐ隣にある巨大な渦巻銀河が“アンドロメダ座大銀河”です。
隣といっても2つの銀河の間隔は約200万光年もあるのですが、宇宙的なスケールで見れば非常に近い存在。

この2つの銀河に加えて、さんかく座の渦巻銀河M33、その他数十個の矮小銀河で“局部銀河群”と呼ばれる銀河の集団が構成されています。

その“局部銀河群”の中で飛び抜けて大きな質量を持っているのが“アンドロメダ座大銀河”と“天の川銀河”です。
この2つの銀河を比較してみると“アンドロメダ座大銀河”の方が“天の川銀河”より2倍から3倍重いと考えられてきたんですねー


脱出速度から質量を測定

今回、研究により新たに推定されたのは“アンドロメダ座大銀河”の質量。

西オーストラリア大学およびオーストラリア国際電波天文学研究センターの研究チームは、銀河からの脱出速度を測定する新しい手法を用いています。

たとえばロケットの打ち上げでは、地球の重力を振り切るために秒速11キロの速度で宇宙へ飛び立ちます。

私たちの“天の川銀河”は地球の100京倍(10億の10億倍)以上重いので、“天の川銀河”の重力に打ち勝って銀河の外にでるには秒速550キロもの速度が必要になるんですねー

今回研究チームは、この原理を用いて“アンドロメダ座大銀河”の質量を絞り込んでいます。

そして、明らかになったのが“アンドロメダ座大銀河”の質量は太陽の約8000億倍で、“天の川銀河”の質量とほぼ同じということでした。

“アンドロメダ座大銀河”に存在する高速度星の軌道を調べて脱出速度を見積もったところ、“アンドロメダ座大銀河”のダークマターの量は、これまで考えられていたよりもはるかに少なく、過去の観測から推定された量のわずか3分の1にすぎないことが分かりました。

  オーストラリア国際電波天文学研究センターの研究チームは、
  今回の研究と同様の手法で“天の川銀河”の質量の推定値を下方修正していて、
  今回の発見は“天の川銀河”の周辺にある数々の銀河の性質を理解する上で、
  大きな意味を持つと考えられている。


そう、この研究結果により、“アンドロメダ座大銀河”のダークマター(暗黒物質)の総量が、これまで過大に見積もられていた可能性がでてくることになりました。

今回の成果は、“アンドロメダ座大銀河”と“天の川銀河”の両銀河が属する局部銀河群についての理解を、すっかりと変えてしまうものになります。

過去50年間にわたって蓄積されてきた局部銀河群に関する知識が覆されたんですねー
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シミュレーションによる衝突前の“アンドロメダ座大銀河”と“天の川銀河”
“アンドロメダ座大銀河”が“天の川銀河”に比べて大きいわけではない。
っということになると、遠い将来に起こると考えられている2つの銀河の衝突についても、新たな数値シミュレーションなどの研究が必要になりますね。


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最大級の質量を持つ中心ブラックホールは母銀河よりも速く成長する?

2018年03月03日 | 銀河と中心ブラックホールの進化
銀河の質量が増えれば、その銀河の中心にある超大質量ブラックホールの質量も増える。

これまで銀河と中心ブラックホールの質量には、強い正の相関があることが分かっていて、お互いに影響を及ぼしながら成長してきたと考えられています。

今回、X線天文衛星“チャンドラ”などの観測データを使った2つの研究から新しい発見がありました。

どうやら最大級の質量を持つ銀河中心ブラックホールの成長速度は、母銀河の星形成率よりもずっと速いようですよ。


X線データを調査

ほとんどの銀河の中心には、太陽の数百万倍から数十億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在すると考えられています。

こうしたブラックホールの成長とその母銀河の星形成は互いに連動していることが多くの観測から示唆されていて、その成長速度の比はすべての銀河でだいたい普遍的だと考えられていました。

今回の研究ではアメリカ・ペンシルベニア州立大学のチームが、銀河の中心に潜むブラックホールの成長率を調査。

対象となったのは、NASAのX線天文衛星“チャンドラ”が観測した“チャンドラ・南北ディープフィールド”と呼ばれる領域などに含まれる、43億光年から122億光年彼方に位置する銀河でした。
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X線と可視光線のデータを合わせた“チャンドラ・南ディープフィールド”の画像と、
銀河中心に潜む超大質量ブラックホールのイメージ図。
研究チームが調べた超大質量ブラックホールの成長率と母銀河の星形成率の比を計算したところ、太陽1000億個分の星が存在する銀河における比は、太陽100億個分の星が存在する銀河の比の約10倍も大きいことが示されます。

つまり、質量が大きい銀河では小さいものに比べて、銀河に対する超大質量ブラックホールの成長がずっと速いということになるんですねー
質量が大きい銀河の方が、冷たいガスをより効率的にブラックホールに送り込めるということでしょう。


電波のデータを加えてみると

また、スペイン・宇宙科学研究所の研究チームでは、複数の銀河団の中心に位置する72個の銀河を調査しています。

用いられたのは“チャンドラ”によるX線データと、オーストラリアコンパクト電波干渉計、アメリカのカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群などの観測から得られた電波データでした。

超大質量ブラックホールの質量とブラックホールに付随する電波やX線の強度との間にあるよく知られた関係を利用して、研究チームが銀河団中心の銀河内にある超大質量ブラックホールの質量を計算。

すると、ブラックホールと銀河が連動して成長するという仮定に基づいた質量よりも約10倍も大きいことが明らかになります。

最大級の質量を持つブラックホールの成長速度が母銀河の星形成率を上回っているという証拠を、ペンシルベニア州立大学のチームとは独立した研究で、スペイン・宇宙科学研究所のチームが示したことになります。

研究チームが計算で得たのは、観測対象になったブラックホールのうち約半数が、太陽の1000億倍以上の質量を持つということでした。

ブラックホールは究極の天体ともいえるので、なかでも最も極端な超大質量ブラックホールが母銀河と連動した成長に関する法則を破っていたとしても、驚くようなことではないのかもしれませんね。


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