ビッグバンから1億8000万年後という宇宙の歴史のごく初期に生まれたとされる“宇宙最初の恒星”。
今回検出された電波信号は“宇宙最初の恒星”が生まれた証拠になるようです。
宇宙の暗黒時代
私たちの宇宙は約138億年前にビッグバンと呼ばれる超高温の状態から誕生し、ビッグバンから約38万年が経った頃には宇宙の温度が下がり、中性の水素原子が作られたと考えられています。
この頃の宇宙には、物質は中性水素ガスとダークマターしか存在せず、光を放つ天体はまだ生まれていなかったんですねー
この時代は“宇宙の暗黒時代”と呼ばれ、数億年にわたって続いたと考えられています。
やがて、物質密度の高い部分が重力で集まって収縮し、最初の恒星や銀河が生まれると、恒星から放射される強い紫外線によって中性水素ガスは全て電離されることに…
この“宇宙の再電離”によって宇宙の暗黒時代は終わると考えられています。
でも、宇宙の最初の恒星がいつ生まれ、再電離がいつごろ起こったのかなどはいまだに確定しておらず、この時代の宇宙史を解明することは天文学の最優先目標の1つになっています。
宇宙マイクロ波背景放射に残る痕跡
初期宇宙のモデルによると、宇宙で最初に誕生した恒星は質量が大きく、青色の高温星で寿命が短かったと予想されています。でも光学望遠鏡では、この時代の宇宙は遠すぎて観測できず…
そこで、アメリカ・アリゾナ州立大学が立ち上げたのはEDGESと呼ばれる観測プロジェクト。
宇宙最初の星々が放射した紫外線によって“宇宙マイクロ波背景放射”に生じる変化を検出するという方法で、最初の恒星の間接的な証拠を捜し求めるプロジェクトです。
水素原子は波長21センチの電波(21センチ線)を吸収・放出する性質を持ちます。
宇宙最初の恒星が生まれ、暗黒時代の宇宙を満たしていた中性水素ガスが星からの紫外線を受けると、紫外線の影響で水素原子の特性が変わり、21センチ線を放出するよりは吸収する傾向が強くなります。
なので、宇宙マイクロ波背景放射の電波強度を精密に観測すると、21センチ線の吸収の跡がシルエットのように現れるんですねー
そしてEDGESチームが電波観測から検出に成功したのが、最初の恒星の影響で宇宙マイクロ波背景放射の強度がはっきりと低下している痕跡でした。
さらに、吸収が現れている周波数の範囲から、最初の恒星が生まれたのはビッグバンからおよそ1億8000万年後になることも明らかにします。
宇宙最初の星々が一生を終えると超新星爆発を起こして、後にはブラックホールが残されます。
このような超新星爆発やブラックホールが増えてくると、残っている中性水素ガスはX線で強く加熱され、21センチ線を吸収する性質を失ってしまいます。
今回の観測結果からは、ブラックホールが増えた年代がビッグバンの約2億5000万年後だということも明らかなっています。
ダークマターの解明へ
今回のような電波観測にとって探査の妨げになるのが地球上で使われている様々な電波です。
今回の宇宙マイクロ波背景放射の変化は65MHzから95MHzの範囲で検出されたのですが、この周波数帯はFMラジオ放送で最も広く使われている周波数と重なっているんですねー
それだけでなく、出力の大きな電波は天の川銀河からも放射されています。
そう、宇宙マイクロ波背景放射の変化を検出するには技術的ハードルがあり、ノイズ源からの電波は、見つけようとしている信号よりも1万倍も強いこともあります。
今回、この信号が本物であることが確認された一方で、新たな疑問も生まれています。
それは、今回検出された吸収の痕跡は理論予測よりも強度が2倍も大きかったことでした。
研究者たちが考えているのは、暗黒時代の中性水素ガスが推定よりも低温だったか、当時の宇宙マイクロ波背景放射の温度が推定よりも高かったのかのどちらではないかということ。
あるいは別の可能性として、ダークマターと通常物質との相互作用を考えることで、この食い違いを説明できるのかもしれません。
もし、この説が正しいと確認されれば、ダークマターについて新たな根本的事実を見つけたことになります。これによって標準模型を超える物理の手がかりが得られるかもしれませんね。
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私たちの宇宙は約138億年前にビッグバンと呼ばれる超高温の状態から誕生し、ビッグバンから約38万年が経った頃には宇宙の温度が下がり、中性の水素原子が作られたと考えられています。
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やがて、物質密度の高い部分が重力で集まって収縮し、最初の恒星や銀河が生まれると、恒星から放射される強い紫外線によって中性水素ガスは全て電離されることに…
この“宇宙の再電離”によって宇宙の暗黒時代は終わると考えられています。
でも、宇宙の最初の恒星がいつ生まれ、再電離がいつごろ起こったのかなどはいまだに確定しておらず、この時代の宇宙史を解明することは天文学の最優先目標の1つになっています。
宇宙マイクロ波背景放射に残る痕跡
初期宇宙のモデルによると、宇宙で最初に誕生した恒星は質量が大きく、青色の高温星で寿命が短かったと予想されています。でも光学望遠鏡では、この時代の宇宙は遠すぎて観測できず…
そこで、アメリカ・アリゾナ州立大学が立ち上げたのはEDGESと呼ばれる観測プロジェクト。
宇宙最初の星々が放射した紫外線によって“宇宙マイクロ波背景放射”に生じる変化を検出するという方法で、最初の恒星の間接的な証拠を捜し求めるプロジェクトです。
水素原子は波長21センチの電波(21センチ線)を吸収・放出する性質を持ちます。
宇宙最初の恒星が生まれ、暗黒時代の宇宙を満たしていた中性水素ガスが星からの紫外線を受けると、紫外線の影響で水素原子の特性が変わり、21センチ線を放出するよりは吸収する傾向が強くなります。
なので、宇宙マイクロ波背景放射の電波強度を精密に観測すると、21センチ線の吸収の跡がシルエットのように現れるんですねー
そしてEDGESチームが電波観測から検出に成功したのが、最初の恒星の影響で宇宙マイクロ波背景放射の強度がはっきりと低下している痕跡でした。
さらに、吸収が現れている周波数の範囲から、最初の恒星が生まれたのはビッグバンからおよそ1億8000万年後になることも明らかにします。
宇宙で最初に生まれた恒星(イメージ図) |
このような超新星爆発やブラックホールが増えてくると、残っている中性水素ガスはX線で強く加熱され、21センチ線を吸収する性質を失ってしまいます。
今回の観測結果からは、ブラックホールが増えた年代がビッグバンの約2億5000万年後だということも明らかなっています。
ダークマターの解明へ
今回のような電波観測にとって探査の妨げになるのが地球上で使われている様々な電波です。
今回の宇宙マイクロ波背景放射の変化は65MHzから95MHzの範囲で検出されたのですが、この周波数帯はFMラジオ放送で最も広く使われている周波数と重なっているんですねー
それだけでなく、出力の大きな電波は天の川銀河からも放射されています。
そう、宇宙マイクロ波背景放射の変化を検出するには技術的ハードルがあり、ノイズ源からの電波は、見つけようとしている信号よりも1万倍も強いこともあります。
今回、この信号が本物であることが確認された一方で、新たな疑問も生まれています。
それは、今回検出された吸収の痕跡は理論予測よりも強度が2倍も大きかったことでした。
研究者たちが考えているのは、暗黒時代の中性水素ガスが推定よりも低温だったか、当時の宇宙マイクロ波背景放射の温度が推定よりも高かったのかのどちらではないかということ。
あるいは別の可能性として、ダークマターと通常物質との相互作用を考えることで、この食い違いを説明できるのかもしれません。
もし、この説が正しいと確認されれば、ダークマターについて新たな根本的事実を見つけたことになります。これによって標準模型を超える物理の手がかりが得られるかもしれませんね。
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