宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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探査車“キュリオシティ”がとらえた火星のパノラマ画像

2016年08月31日 | 宇宙 space
現在も元気に火星探査を続けているNASAの探査車“キュリオシティ”から、
新たな火星の360度パノラマ映像が届きました。

今回の映像は8月5日に撮影されたもので、
まるでアメリカやオーストラリア、アフリカにあるような乾ききった岩石の荒野を、
映し出しているんですねー

“キュリオシティ”のマストカメラが、
マレービュートと呼ばれる地域でとらえた360度画像

撮影されたのは火星のマレービュートと呼ばれる地域で、
岩石が浸食され“メサ”や“ビュート”と呼ばれる地形が見てとれます。

  メサは浸食されたテーブル状の大地、ビュートは周囲から孤立した丘を意味している。

“キュリオシティ”が今いるのはゲールクレーターにあるシャープ山の麓を越えた辺り。

火星のゲールクレーターとシャープ山。
楕円形の部分が“キュリオシティ”が降り立った場所。

今回の映像は、本体上部に搭載されたマストカメラからで撮影した画像を、
つなぎ合わせたものです。

映像に映るメサは15メートルの高さで、
“キュリオシティ”から90メートル離れた場所に位置しています。

“キュリオシティ”がゲールクレーターに送り込まれたのは、
クレーターが隕石の衝突で出来たこと、さらに水に流された流送土砂の存在が期待されたからでした。

そして“キュリオシティ”は期待通り、
ゲールクレーターには過去に湖があったことを解き明かしています。

さらに“キュリオシティ”は、メタンなどの有機物も岩石の中から発見しています。

“キュリオシティ”が昨年撮影した自撮り画像

現在の“キュリオシティ”は、
拡張ミッションとしてシャープ山に登り岩石の若い層を調査しているところ。

そして、かつては水が存在していたはずの火星が、なぜこのように乾ききった星になったのかを、
解き明かそうとしているんですねー


こちらの記事もどうぞ ⇒ エラーで停止していた? 火星探査車“キュリオシティ”は再び稼働開始

国際宇宙ステーションで起こる電子の集中豪雨って何?

2016年08月30日 | 宇宙 space
国際宇宙ステーションには“CALET”という観測装置が設置されています。

この観測装置のデータから明らかになったことがあるんですねー

それは、国際宇宙ステーションが磁気緯度の高い地域を通過する際、
数分間にわたり大量の放射線電子が降り注ぐ“電子の集中豪雨”が起こっていること。

どうやら“オーロラのさざ波”を感じて大気に落とされたバンアレン帯の電子が原因のようです。


高エネルギーの観測

2015年8月に“こうのとり”5号機で国際宇宙ステーションに運ばれたのが、
“高エネルギー電子・ガンマ線観測装置(CALET)”です。

“CALET”が設置されたのは、日本実験棟“きぼう”の船外実験プラットフォームでした。

宇宙を飛び交う非常に高いエネルギーの電子やガンマ線、陽子・原子核成分を、
高精度に観測するための装置が“CALET”です。

この観測データから、高エネルギー宇宙線・ガンマ線の起源と加速の仕組み、
宇宙線が銀河内を伝わる仕組み、暗黒物質の正体などを解明することができるんですねー
日本実験棟“きぼう”の船外実験プラットフォーム。
“CALET”は赤い位置に取り付けられている。

オーロラ活動が活発だった2015年11月10日のこと、
数分間だけでしたが、放射線電子のカウント数が想定の数十倍から数百倍にまで急上昇し、
準周期的に強弱の変化を示すという状況を“CALET”が検出しています。

これをきっかけに“CALET”の観測開始から4か月間のデータを分析。

すると、11月に検出されたものと同様の“電子の集中豪雨”現象が、
国際宇宙ステーションが夕方から夜中にかけて、磁気緯度の高い地域を通過するタイミングに、
繰り返し起こっていることが明らかになります。

  磁気緯度は地球の自転軸ではなく地磁気の軸を基準とした緯度。

また、現象が主にバンアレン帯の放射線電子が豊富なときや、
オーロラ活動が活発なときに発生していることも明らかになりました。


原因はオーロラ活動の余波

赤道上空の高度1万~4万キロに放射線電子が集中する領域があり、
ここをバンアレン帯と言います。

つまりここは、地球大気に落ちなかった電子が宇宙空間で滞留している場所になり、
ここから常に地球大気に向かって電子が降り注いでくるわけではありません。

今回の現象で集中豪雨の雨雲に対応するバンアレン帯から、実際に大量の電子が降り注ぐ現象は、
オーロラ活動に間接的に刺激されることが引き金になっています。

オーロラを活発にする原因は、真夜中側から地球に押し寄せてくる、
電子と陽子が一体となって流れるプラズマの大波です。

大波は地球に近づくと強い地磁気を感じてブレーキがかかるのですが、
その際に電子の流れは明け方、陽子の流れは夕方の方へと回り込みます。

明け方側に回り込んだ電子の一部はオーロラやバンアレン帯の一部となり、
夕方側の陽子は、その場所でプラズマのさざ波(電磁イオンサイクロトロン波)を立てます。

そして、さざ波に出会ったバンアレン帯の電子の多くが、
電磁場の揺れを敏感に感じ地球大気に叩き落とされることになります。

このように、オーロラ活動の余波によって、
国際宇宙ステーションで電子の集中豪雨が検出されたと考えられます。
電子の集中豪雨の状況説明図。

電子の集中豪雨という現象自体は新発見ではありません。

これまで主に極軌道衛星によって高緯度地域で観測されてきた相対論的電子降下と呼ばれる、
バンアレン帯電子の大量落下現象と同じものだと考えられています。

そして電子の集中豪雨の観測は、
現在の国際宇宙ステーションの放射線環境を正しく知る上でも貴重なデータになります。

さらに、秒単位で乱れる激しい振動を詳しく分析していくことで、期待されることがあります。

それは、オーロラ活動によるさざ波の成り立ちに関する理解が進み、
電子の集中豪雨の宇宙天気予報や人工衛星の帯電障害の軽減対策、
大気科学の研究などに貢献することなんですねー


こちらの記事もどうぞ ⇒ 現役最長寿の衛星が解明したもの

プレアデス星団の星々の自転速度を測定

2016年08月29日 | 宇宙 space
探査衛星“ケプラー”の観測から、
プレアデス星団の星々の自転速度が計測されました。

このことにより、星の周囲のどこでどのように惑星が形成されるのか、
星団の星がどう進化するのかについて理解が深まると期待されているようです。


星の自転速度を観測

日本では“すばる”という名前でよく知られているプレアデス星団は、
地球からおよそ440光年の距離に位置する若い星の集まりです。

星々の年齢は約1億2500万歳で一生のうちの“若い成人期”に相当し、
その自転速度は生涯を通じて最も高速の状態にあると考えられています。
NASAの赤外線天文衛星“WISE(現NEOWISE)”がとらえたプレアデス星団。
4種類の赤外線波長による観測データをもとにした疑似カラー画像。

今回の研究でカリフォルニア工科大学の研究チームは、
NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”の“K2ミッション”で、
プレアデス星団を72日間にわたって観測し、750個以上の星の自転速度を調べています。

  “K2ミッション”は姿勢制御装置の不具合により、
  主要ミッションを終了していた“ケプラー”の新しいミッション。
  姿勢制御装置(リアクションホイール)の代わりに太陽光圧を姿勢制御に利用する。


  故障中の“ケプラー”が復活ミッションで系外惑星を発見!

太陽の黒点と同様、恒星の表面にも磁場の影響で低温の暗い部分が存在します。

星の自転に伴って暗い部分が見え隠れすることにより、星の明るさが変化するので、
その明るさの変化から星の自転速が分かります。

とくに若い星では、強力な磁場の影響によって暗い部分が巨大になるので、
自転に伴う明るさの変化も大きくなり、自転速度が測りやすくなります。


自転速度と内部構造

観測データからは、質量の大きな星ほど自転速度が遅く、
小さな星ほど速いという傾向が明らかになってきます。

質量の大きい星(太陽と同程度)の自転周期は1日から11日、
小さい星(最も小さいもので太陽の10分の1ほど)の多くは自転周期が1日以下でした。

こうした自転速度の違いは、星の内部構造の違いによると考えられています。

大きい星はその内部の対流層が薄く、
反対に小さい星ではほぼ全体が対流層になります。

星の自転は星からの質量放出(恒星風)と磁場の働きによって遅くなります。
でも、この磁場ブレーキが効果的に影響するのは対流層が薄い大きい星の方なんですねー

プレアデス星団は地球に近いので、
今後の観測で、星の自転速度とその他の特徴との間にある複雑な関係も明らかにできそうです。

星の特徴は、その周りを回る系外惑星の気候や生命に適した環境の有無にも関係してきます。

なので、プレアデス星団と他の星団とを比較することにより、
星の質量や年齢とその関係、その星系における歴史についても多くのことが、
今後分かってくるのかもしれません。


こちらの記事もどうぞ ⇒ プレアデス星団までの距離が、ついに特定!

中国が世界初の量子通信衛星を打ち上げ

2016年08月28日 | 宇宙 space
素粒子物理学の力を利用した解読不可能な暗号を用いた通信システム。

このシステム構築を目指すため、中国が世界初の量子通信衛星を打ち上げました。

急速な進歩を遂げているこの技術の応用化には、
日米をはじめとする各国も取り組んでいます。

紀元前5世紀の学者にちなみ、“墨子”と名付けられたこの衛星は、
長距離向けの量子通信技術の利用可能性を検証する実験に活用されることになるようです。
量子通信衛星“墨子”は中国甘粛省の酒泉衛星発射センターから打ち上げられた


量子通信衛星“墨子”

国営新華社通信によると、“墨子”が打ち上げられたのは16日のこと。

ゴビ砂漠にある酒泉衛星発射センターから長征二号丁ロケットで打ち上げられ、
地球の北海から南極方向へと周回する太陽同期軌道への投入に成功しています。

“墨子”は衛星軌道上(宇宙空間))と地上の間で、
量子通信の技術実証を本格的に行う世界初の衛星になります。

運用は上海量子科学実験衛星管制センターが担当し、
北京興隆局、新疆南山局、青海徳令哈局、雲南麗江局など5か所の地上局との間で、
量子もつれ実験及び量子配送鍵実験を行う予定です。

また、チベット・ガリ地区にある地上局とは量子テレポーテーション実験を予定しています。
宇宙空間と地上局に量子実験


グローバル量子通信ネットワーク

量子暗号通信は、
その特性から現在の暗号化技術よりも、はるかに高いセキュリティ性を持ちます。

なので、アメリカやヨーロッパ、日本で研究実証試験が行われ、
一部はすでに実用化されています。

中国でも量子もつれの研究を2000年代から進め、
近年、特に進めているのが実用化に向けた取り組みです。

2012年から安徽省合肥市で量子通信網の試験運用、
北京市で金融システム用の量子通信の実証試験を開始しています。

こうした実験を元に、北京市から山東省済南市、合肥市を経由して上海市へとつながる、
全長2000キロに及ぶ量子暗号通信バックボーン“京滬幹線”の建設がスタート。

2014年に着工した“京滬幹線”が開通するのが今年中の予定で、
北京~上海間の金融システム向けに量子暗号通信を提供する計画です。

さらに中国の計画では、
2020年までにアジアとヨーロッパのネットワーク間で量子鍵配送を実現。

そして30年頃には20機の衛星を打ち上げ、
宇宙と地上で全世界をつなぐグローバル量子通信ネットワークを構築するそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 残念… 中国の月面探査車“玉兎” ついに稼動停止


自然界に働く“第5の力”を発見かも…

2016年08月27日 | 宇宙 space
新しく発見された可能性がある、これまで知られていなかった亜原始粒子が、
自然界の“第5の力”の存在を示すものかもしれないそうです。

もし、これが本当なら革命的な発見になるんですねー

これまで自然界では、
“重力・電磁気力・強い力・弱い力”という4つの力の存在が知られてきました。

今回の発見が正しければ4つの力とダークマターが統一され、
宇宙に対する私たちの理解が根本的に変わることになります。
わし座の銀河NGC 6814。
“第5の力”が発見されれば、こうした銀河を1つにまとめている仕組みの理解も、
これまでとは異なってくる。

2015年にハンガリー科学アカデミーの核物理学者によって行われた実験で、
電子の30倍の質量を持つ軽い粒子の存在を示す放射性崩壊の異常が明らかになりました。

研究チームは、このデータを含めた多くの実験を詳しく調べ、
この粒子が普通の物質を構成する粒子でもダークフォトン(ダークマター候補)でもないことを
示しています。

そこで研究チームは新たな理論を打ち立てることになります。

この粒子発見が、
5つ目になる自然界の基礎的な力の存在を示唆するものである可能性を、
提案するんですねー

粒子の正体はダークフォトンではなく、疎プロトン性Xボソンかもしれないそうです。

普通の電磁気力は電子や陽子と相互作用するのですが、
新発見されたボソンは電子と中性子としか相互作用せず、
作用する距離が非常に小さいという特徴を持っていました。

1つの方向性として興味を駆り立てるのは、
“第5の力”がひょっとすると電磁気力・強い力・弱い力と、
結合されるかもしれないということ。

ただ、検証にはさらなる実験が必要になるようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ ダークマターの雲にズレ? 実在の証拠かも…