宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

何が超新星爆発の衝撃波から形成中の太陽系を守ったのか? 分子雲フィラメントの吸収が盾の役割を果たした可能性

2023年07月31日 | 宇宙 space
およそ46億年以上前のこと。
太陽系が形成されつつあった時期に近くで超新星爆発が発生し、それに由来する放射性元素が太陽系形成現場に降り注いだそうです。
このことは、隕石の同位体組成の分析結果から明らかになっています。

でも、超新星爆発の衝撃波により、太陽系の形成が妨げられていたかもしれないんですねー
そうなれば、今のような太陽系の形成には至っていなかった可能性もあります。

国立天文が6月22日に発表したのは、太陽系の形成現場になっていた“分子雲フィラメント”が盾になって超新星爆発の衝撃波から守ってくれたこと。
この成果は理論的研究によって示されたそうです。
この研究の概念図。形成されつつある太陽系は、分子雲フィラメントによって超新星爆発の衝撃波から守られる。さらに分子雲フィラメントは、超新星爆発に由来する放射性元素を、太陽系の形成現場に取り込む助けになった。(Credit: 国立天文台委)
この研究の概念図。形成されつつある太陽系は、分子雲フィラメントによって超新星爆発の衝撃波から守られる。さらに分子雲フィラメントは、超新星爆発に由来する放射性元素を、太陽系の形成現場に取り込む助けになった。(Credit: 国立天文台委)

太陽系はどこで形成されたのか

これまで、太陽系は天の川銀河において中心から2億5000万光年前後離れた“郊外”で誕生し、中心からの距離を大きく変えることなく公転してきたと考えられてきました。

でも、およそ46億年前に郊外で誕生した惑星系にしては、重元素の含まれる割合がとても多いことが分かってきたんですねー
その割合の高さから考えると、より中心部に近い星の過密地帯(棒状構造の回転範囲とされる)で生まれた可能性があると提唱する研究成果が報告されています。

銀河中心領域の上下に膨らんだバルジ内では、余りにも星が密集しているので、夜でも昼間のように明るいと言われています。

それだけ星が多いと、超新星爆発の発生頻度も高くなってくるはず。

天文学では、水素とヘリウムよりも重い元素のことを“重元素”と呼びます。
重元素は、恒星内部の核融合反応により合成され、恒星の死に伴い星間空間へと放出されるので、星の生と死のサイクルが十分に繰り返されていないと増えないんですねー

なので、中心部の方が郊外よりも重元素の量が早く増えることになります。
太陽のような小質量星の場合、核融合反応は水素からヘリウムでほぼ終わり、最終盤にヘリウムの暴走的な核融合反応であるヘリウムフラッシュが起きて、炭素までは生成されると考えられている。それに対して、質量が太陽の8倍以上の大質量星は、その先も核融合反応を続け、宇宙で最も安定した元素である鉄までが生成される。鉄より重い元素は恒星の中心部では生成されない。それは、鉄の核融合反応ではエネルギーが放出されないので、鉄を生成するようになった恒星は自重を支えきれずに超新星爆発を起こしてしまうから。このため、鉄よりも重い元素は超新星爆発などの激しい現象にともなって生成されると考えられている。

超新星爆発の衝撃波は分子雲フィラメントに吸収された

その一方で、超新星爆発の頻度が高ければ、被害を受けるほどの近い範囲で、発生する可能性も高くなってしまうことに…
つまり、太陽系はまるで地雷地帯のような危険領域を通り抜けて外側へ向かい、運よく郊外まで避難できたとされてきました。

ただ、近傍では発生してほくない超新星爆発も、惑星系が形成されるきっかけの1つになっていたりします。

超新星爆発の衝撃で、星間ガスが特に濃い領域である分子雲の濃淡が変化します。
それにより、より濃い部分ができると、さらに周囲の物質を集めるようになり、星の卵になる“分子雲コア”へ成長していくと考えられるからです。
宇宙空間には星の材料になる水素原子や水素分子を主成分としたガスが漂っている。その中でも特に水素分子が豊富に存在する場所が分子雲。さらに濃くなった場所は分子雲コアと呼ばれていて、いわゆる星の卵(種)に相当する。分子雲コアがさらに収縮することによって、太陽のような恒星や、それよりもさらに重い星(大質量星)その連星が誕生する。
実際に太陽系も無縁では無かったようです。
およそ46億年以上前の太陽系が形成されつつあった時期に、近くで超新星爆発が発生。
それに由来する放射性元素が太陽系形成現場に降り注いだことが、隕石の同位体組成の分析結果から明らかになっています。

でも、超新星爆発は、太陽系の形成がどの段階にあるのか、また発生した衝撃波がどれだけ強いのか(どれだけ近くで発生したか)によっては、太陽系の形成を妨げてしまうことも…
そう、今のような太陽系の形成には至っていなかった可能性もあるんですねー

では、実際に太陽系の近くで超新星爆発はあったのでしょうか?

この矛盾に対しては以前から指摘があったのですが、これまでのところそれを解消できる有力な説は出てきていません。

そうした中で今回研究チームが着目したのは、星が作られる現場の違いでした。

星は分子雲と呼ばれる星間ガスが特に濃い領域で形成されます。

星の誕生の場になる分子雲の中には、星間ガスがひも状に集まった分子雲フィラメントが存在しています。

太陽のような小質量星が形成されるのは、この分子雲フィラメントの中。
一方で、超新星爆発を起こすような大質量星が形成されるのは、分子雲フィラメント同士が重なった場所だと考えられています。

研究チームによる理論的な分析により判明したのは、分子雲フィラメントが重なる場所で起こった超新星爆発の衝撃波は、分子雲フィラメントに吸収され、形成途中の太陽系にはほとんど影響を与えなかったことでしました。

さらに、爆発で放出された放射性元素が、一度分子雲フィラメントに降り注いだ後に、フィラメントから太陽系形成現場へと間接的に運ばれることで、効率的に集められることも明らかになりました。

つまり、私たちの太陽系も分子雲フィラメントの中で形成されたと考えることができますね。


こちらの記事もどうぞ


小惑星ベンヌのサンプルを収めたカプセルは9月24日に帰還予定! NASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”が軌道修正操作を実施

2023年07月30日 | 太陽系・小惑星
NASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”を地球へ接近させるための軌道修正操作が7月26日に実施されました。

“オシリス・レックス”のミッションは、日本の“はやぶさ”や“はやぶさ2”と同様に小惑星からサンプルを採取して地球に持ち帰ること。

小惑星ベンヌ(101955 Bennu)から採取されたサンプルを収めたカプセルは、現地時間2023年9月24日に地球へ帰還する予定です。

地球近傍小惑星の一つであるアポロ群に属しているベンヌは、1999年に発見された直径約560メートルの小惑星で、そろばんの玉のような形をしています。

有機物(炭素を含む化合物)や水を多く含む“C型小惑星”と呼ばれる天体に分類されていて、これは“はやぶさ2”が探査した小惑星リュウグウと同じ特徴といえます。
現在のベンヌの軌道から、将来的に地球に衝突する可能性がわずかにあることも知られている。
左が小惑星ベンヌ(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)、右がリュウグウ。形や表面の様子が互いに似ている。(Credit: JAXA/University of Tokyo)
左が小惑星ベンヌ(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)、右がリュウグウ。形や表面の様子が互いに似ている。(Credit: JAXA/University of Tokyo)
こうした小惑星は、46億年前の太陽系形成時の始原的物質を保持している“化石”と考えられているんですねー

なので、探査や持ち帰ったサンプルを詳しく分析することで、太陽系初期の様子や惑星形成などに関する手掛かりが得られるはず。
さらに、生命の起源の謎を解く手がかりも得られると期待されています。
小惑星ベンヌの表面に向けて降下する小惑星探査機“オシリス・レックス”(イメージ図)。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)
小惑星ベンヌの表面に向けて降下する小惑星探査機“オシリス・レックス”(イメージ図)。(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)
アメリカ版“はやぶさ”とも呼ばれる“オシリス・レックス”は2016年9月に打ち上げられ、ベンヌに到着したのは2018年12月。
“オシリス・レックス”はNASAとロッキード・マーティン社、アリゾナ大学などが開発した小惑星探査機。打ち上げ時の質量は約2110キロで、同じようなミッションを背負った日本の“はやぶさ2”の約3.5倍にもなる。2016年9月9日午前8時5分(日本時間)に、フロリダ州のケープカナベラ空軍ステーションからアトラスVロケットで打ち上げられた。
周回軌道上からの観測を重ねた後の2020年10月に表面からのサンプル採取が実施。
目標の60グラムを大幅に上回るサンプルが集められた判断されていたんですねー

2021年5月にベンヌを出発した“オシリス・レックス”は、カプセルの地球帰還に向けて飛行を続けていました。
2022年7月~2023年10月にかけての小惑星探査機“オシリス・レックス”の軌道を示した動画。(Credit: NASA Goddard Space Flight Center, Scientific Visualization Studio, Kel Elkins)
NASAによると、2023年7月26日にスラスターを約63秒間噴射する軌道修正操作“TCM10(Trajectory Correction Maneuver)”を実施。
“オシリス・レックス”は軌道修正操作前よりも地球へわずかに近付く軌道に入っています。

7月26日の時点で“オシリス・レックス”は、地球から約3860万キロ離れた空間を時速3万5000キロ(秒速約9.7キロ)で移動中。
今後は“TCM10”の実施前後に取得されたデータを元に、軌道修正操作が計画通りに実施できたかどうかを分析することになります。

今回、実施されたのは地球帰還に備えた最終段階の軌道修正操作。
NASAによれば、回収予定地になっているアメリカ・ユタ州のユタ試験訓練場にカプセルを正確に進入させるための軌道修正操作が、9月10日と9月17日にも実施される予定です。

また、ユタ試験訓練場では現地時間7月18日から20日にかけて、回収作業の本格的なリハーサルを実施しています。
アメリカ・ユタ州の試験訓練場で実施されたカプセル回収のリハーサルの様子(現地時間2023年7月19日撮影)。(Credit: NASA/Keegan Barber)
アメリカ・ユタ州の試験訓練場で実施されたカプセル回収のリハーサルの様子(現地時間2023年7月19日撮影)。(Credit: NASA/Keegan Barber)
なお、探査機“オシリス・レックス”本体はカプセル分離後のミッション延長がすでに決定しています。

ミッション名は“オシリス・アペックス(OSIRIS-APEX)”に改められ、2029年に小惑星アポフィス(99942 Apophis)に到着して周回探査を実施する予定です。


こちらの記事もどうぞ


なぜ活動銀河“OJ 287”は複雑な変光周期を持っているの? 銀河中心に超大質量ブラックホールの連星が存在すれば説明できる

2023年07月29日 | ブラックホール
“OJ 287”は、最も古い記録では1888年に観測されている活動銀河です。
でも、本格的に注目されたのは、ほぼ一世紀後の1982年頃からなんですねー
活動銀河は、星や星間チリ、星間ガスといった通常の銀河の構成要素とは別の部分から、エネルギーの大半が放出されている特殊な銀河。このエネルギーは、活動銀河の種類によって若干異なるが、電波、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線など、電磁波のほぼ全ての波長域で放出されている。このエネルギーの大半を、銀河の中心1%程度のコンパクトな領域から放出していて、この部分を活動銀河核と呼ぶ。
その理由は、“OJ 287”の明るさが、55年周期および12年周期という、2つの周期が複雑に絡み合いながら変化しているから。
これは過去の観測記録を精査して分かったことでした。

短い方の12年周期で現れる変化を詳しく観測してみると、さらに短い時間をおいて2回の閃光が生じていることも分かります。

こうした複雑な変光周期を説明するために、「“OJ 287”の中心部には連星を成す2つの超大質量ブラックホールが存在する」というモデルが提唱されることになります。

12年と55年の偏光周期

このモデルで仮定しているのは、“OJ 287”の中心にはブラックホールの連星が存在していること。
それぞれの質量は、太陽の約184億倍と約1億5000万倍だと考えられています。

なお、“OJ 287”の超大質量ブラックホールを区別する決まった名称や仮符号は存在しないので、重い方のブラックホールを“プライマリー”、軽い方のブラックホールを“セカンダリー”と呼ぶことにします。

降着円盤をまとっていて、“OJ 287”の放射の大部分を占めているのがプライマリー。
一方でセカンダリーは、プライマリーの周りで非常に長い楕円軌道を描きながら12年周期で公転していると考えられます。

彗星のような軌道を公転しているセカンダリーの軌道面は、降着円盤に対して傾いているので、セカンダリーは時々降着円盤を横切ることになります。

この時、降着円盤の物質が加熱されることで、2週間程度続く明るい閃光が生じるんですねー

このプロセスこそが短い12年の変光周期を生み出していて、さらに短い間隔で2回の閃光が生じるのは、セカンダリーが降着円盤を2回横切るからだと考えれば説明が付きます。
図1.“OJ 287”のイメージ図。プライマリーの周りをセカンダリーが公転し、セカンダリーは時々プライマリーの降着円盤を通過する。これが地球では12年周期での変光として観測される。(Credit: AAS 2018)
図1.“OJ 287”のイメージ図。プライマリーの周りをセカンダリーが公転し、セカンダリーは時々プライマリーの降着円盤を通過する。これが地球では12年周期での変光として観測される。(Credit: AAS 2018)
それでは、55年の長い変光周期は、どのようなプロセスになっているでしょうか?

こちらは、セカンダリーの公転軌道が大きく変化することによるものと考えられています。

プライマリーとセカンダリーは、お互いに強い重力を及ぼし合うので、セカンダリーの公転軌道の近点(お互いが最も近づく軌道上の点)は、大きく移動し続けています。

この近点移動に伴う変化が、55年の変光周期になります。

セカンダリーが存在しないと説明できない現象

“OJ 287”の中心部に大きなブラックホールの連星があるというモデルは、長年支持されてきたのですが、セカンダリーの存在を示す証拠が見つからない状態が長く続いていました。

その理由は、“OJ 287”が地球から約35億光年の彼方に位置する極めて遠い銀河な上に、セカンダリーとプライマリーがかなり接近していることにありました。
これらを分離して観測することが難しかったんですねー

今回の研究では、事前に予測されていた2022年の閃光について、相対性理論を考慮した正確な時期の推定を行い、“OJ 287”の観測を試みています。
この研究は、トゥルク大学のMauri J. Valtonenさんたちの研究チームが進めています。
その結果、事前に予測された時期に閃光が観測されたのですが、その中に約1日間だけ非常に明るさが増大する時期が含まれていることが分かりました。

これは、全くの予想外の出来事で、短時間に天の川銀河の100倍の放射を行っている現象を、初めて観測したことになります。
図2.“OJ 287”の明るさの変化を示したグラフ。観測の歴史が長いので、長い周期の変光も明らかになった。(Credit: Valtonen, et.al.)
図2.“OJ 287”の明るさの変化を示したグラフ。観測の歴史が長いので、長い周期の変光も明らかになった。(Credit: Valtonen, et.al.)
分析の結果、短時間の急激な放射の原因は、セカンダリーがプライマリーの降着円盤に突入した直後に、大量の物質が一気に吸い込まれたことで生じたジェットの加速にあることが判明。

このような放射はセカンダリーが存在しなければ、説明することは困難なので、今回の観測結果は“OJ 287”にセカンダリーが実在することを強く支持するものになりました。

過去のデータには、このような急激な放射が記録されていないので、今回観測されたような短時間の放射は、たまたま見逃されていた可能性が高いことも分かりました。

“OJ 287”は、天球上の見た目の位置が太陽に近付くことがあり、すべての閃光を観測できているわけではありません。
なので、観測精度が高くなった近年でも、短時間の変化を見逃す余地が十分にある状態でした。

セカンダリー由来のシグナルを観測できたのは、技術革新の成果だけでなく、運も絡んでいたことになります。

さらに、“OJ 287”の中心に存在する2つの超大質量ブラックホールは、非常に周期の長い重力波を放出しているとされているブラックホールの連星としても注目されています。

今回の研究によって、セカンダリーの存在がほぼ確実になったことで、重力波望遠鏡による観測が強化されるかもしれません。


こちらの記事もどうぞ


【三大流星群】この夏もペルセウス座流星群がやってくる! 2023年の見頃はいつ? どの方角を見ればいいの?

2023年07月27日 | 流星群/彗星を見よう
夏の風物詩“ペルセウス座流星群”が今年もやってきます!

12月の“ふたご座流星群”や1月の“しぶんぎ座流星群”と共に三大流星群と呼ばれているのが“ペルセウス座流星群”なんですねー
年間でも1,2を争う流星数を誇っています。

2023年の“ペルセウス座流星群”の活動が最も活発になる“極大”を迎えるのは、8月13日(日)17時頃だと予想されています。

ただ、この時間帯は、まだ日も高く日本では観察できません…
でも、前後の時間帯にはそれなりに多くの流星が見られるはずです。

普段より目立って多くの流星を見ることができるのは、11日の夜から14日の夜までの4夜ほど。
いずれの夜も、21時頃から流星が出現し始め、夜半を過ぎて薄明に近づくにつれて流星の数が多くなると予想されています。

最も多く流星が見られると考えられているのは、14日の夜明け近く
このときに空の暗い場所で観察すると、1時間当たり30個程度の流星を見ることができそうです。

この前日の13日の夜明け近くにも多めの流星が期待され、こちらは空の暗い場所で1時間当たり25個ほどの流星が見られそうです。

“ペルセウス座流星群”の放射点は日没後には北の空に昇ってきます。
時間とともに北の空高くに昇るので観察しやすくなります。

気になるのは、各夜とも夜半過ぎから明け方の時間帯に月が昇って来ること。
でも、下弦(半月)を過ぎた細い月で、月明かりの影響はそれほど気にせず観察ができそうです。

2023年8月10日現在、台風7号の動向や、他の熱帯低気圧の動向、太平洋高気圧の勢力などの予想が難航しているようです。
傾向としては、日本列島付近には南から湿った空気が流れ込みやすいことが予想されるので、晴れる所はあっても雲の出やすい状況になりそうです。
場合によっては雨の降る所もあるかもしれません。
日が近づくにつれて予報が確かになっていくので、こまめに最新の天気予報を確認するのがイイですね。

ペルセウス座流星群と放射点(Credit: 国立天文台)
ペルセウス座流星群と放射点(Credit: 国立天文台)

夜空のどこを見ればいいの?

流星が、そこから放射状に出現するように見える点を“放射点”と呼びます。

流星群には、放射点の近くにある星座や恒星の名前が付けられています。
“ペルセウス座流星群”の場合はペルセウス座の辺りに放射点があるので、この名前が付けられたというわけです。

ただ、流星が現れるのは、放射点付近だけでなく、空全体なんですねー

流星は、放射点から離れた位置で光り始め、放射点とは反対の方向に移動して消えます。
いつどこに出現するかも分からないので、なるべく空の広い範囲を見渡すようにします。

あと、流星の数は放射点の高度が高いほど多くなり、逆に低いほど少なくなります。
なので、放射点が地平線の下にある時間帯には、流星の出現は期待できません。

また、目が屋外の暗さに慣れるまで、最低でも15分間ほどは観察を続けるといいですよ。

レジャーシートを敷いて地面に寝転んだり、背もたれが傾けられるイスに座ったり… 楽な姿勢で観察を楽しんでください。

“ペルセウス座流星群”とは?

“ペルセウス座流星群”は、少なくても2000年近くは継続して観測されている歴史ある流星群です。

記録も紀元前から始まり、様々なところで記録に残っていて、その量はかなり膨大なものになります。

約135年周期で太陽系を巡っているスイフト・タットル彗星(109P/Swift-Tuttle)が“ペルセウス座流星群”の母天体になります。
母天体とは、チリを放出して流星群の原因作っている天体のことです。

現在スイフト・タットル彗星は地球から遠く離れた位置にありますが、彗星から放出されたチリは彗星の軌道に広がって分布しているんですねー

地球は毎年同じ時期に、このスイフト・タットル彗星の軌道を通過。
軌道に残されたチリの帯に突入することで、チリが地球の大気圏に飛び込んで燃え尽きるところを流れ星として見ることになります。


こちらの記事もどうぞ


カラカラに乾いた小惑星“イトカワ”は過去に大量の水を含んでいたかも? 惑星の水供給のシナリオを書き換える可能性

2023年07月25日 | 宇宙 space
2003年に打ち上げられ、2010年に小惑星からのサンプルリターンを世界で初めて成功させたJAXAの小惑星探査機“はやぶさ”。
“はやぶさ”が小惑星“イトカワ”から採取したサンプルは、無事に地球へ運ばれ、様々な研究に用いられることになります。

このサンプルは今回の研究でも用いられていて、そこから見つかったのが塩化ナトリウムの結晶でした。
このことは、イトカワの元になった天体(母天体)が、かつて液体の水を含んでいたことを間接的に示す証拠になるようです。
この研究は、アリゾナ大学のShaofan CheさんとThomas J. Zegaさんの研究チームが進めています。
イトカワは一般的なタイプの小惑星で、非常に乾燥していることで知られている。でも、今回の研究で過去には豊富な水が含まれていたことが明らかにされた。(Credit: ISAS / JAXA)
イトカワは一般的なタイプの小惑星で、非常に乾燥していることで知られている。でも、今回の研究で過去には豊富な水が含まれていたことが明らかにされた。(Credit: ISAS / JAXA)

カラカラに乾いた一般的なタイプの小惑星

イトカワは“S型小惑星”という非常に一般的なタイプの小惑星。
地球に落下する隕石の67%は、S型小惑星と同じタイプの岩石でできているとも言われています。

S型小惑星を一言で表すと“カラカラに乾いた岩石”で、長年の研究でも水の証拠は見つかっていませんでした。
ここでいう“水”とは、液体や固体の水(遊離水)に限らず、化学成分の中の水、例えば鉱物に含まれる結晶水なども含まれる。
S型小惑星は、太陽系誕生時に太陽から近い距離で作られた天体で、水は太陽の熱や天体同士の衝突による熱で蒸発してしまったと考えられています。

このため、地球などの惑星に水をもたらしたのはS型小惑星ではなく、もっと少数の珍しいタイプの小惑星だとする考えが主流でした。

その有力候補が、太陽系の外側の低温環境で作られたとされる“C型小惑星”です。
C型小惑星には、JAXAの小惑星探査機“はやぶさ2”の探査天体“リュウグウ”や、NASAの小惑星探査機“OSIRIS-REx”の探査天体“ベンヌ”があります。

S型小惑星は過去のある時点で大量の水を含んでいた

今回の研究によって示されたのは、乾燥したS型小惑星も過去に豊富な流体、すなわち液体の水が存在した可能性が高いことです。

その理由は、イトカワのサンプルに含まれていた“塩化ナトリウム(NaCl)”の結晶の存在でした。
身近にある食卓塩と同じ組成の塩化ナトリウムの結晶は、液体が関与しないと生成されにくいことで知られています。
イトカワのサンプルから見つかった塩化ナトリウムの結晶(丸で囲まれた結晶)。大きさは1μm(0.001mm)よりもはるかに小さい。(Credit: Che & Zega)
イトカワのサンプルから見つかった塩化ナトリウムの結晶(丸で囲まれた結晶)。大きさは1μm(0.001mm)よりもはるかに小さい。(Credit: Che & Zega)
実は、これまでにもS型小惑星を起源とする隕石中から、塩化ナトリウムの結晶が見つかったことがありました。
ただ、地球の大気中の湿気や人間の汗などが、実験室で隕石のサンプルを分析する際に付着したとする、汚染による可能性を排除することができていなかったんですねー

一方で、地球の環境に一度も晒されたことが無かったのが、“はやぶさ”が持ち帰ったイトカワのサンプルでした。
カプセルに入って厳重に管理されていたためですね。

このサンプルは5年間保管されていました。
でも、保管開始直後の写真と比較して、塩化ナトリウムの存在する場所が変化していないことや、比較のために同様の環境に晒された地球の岩石に新たな塩化ナトリウムが付着していないことも、サンプルが汚染されていないことを示す証拠になりました。

結果的に、今回イトカワのサンプルから見つかった塩化ナトリウムの結晶は、地球に届けられてから付着したものではなく、イトカワに元々存在していたことが分かります。

さらに、今回明らかになったのは、塩化ナトリウムの分布がナトリウムの豊富なケイ酸塩鉱物の脈と一致することや、ケイ酸塩鉱物の化学組成が熱水による変質を受けたことを示していることでした。

研究チームは、イトカワの元になった天体には凍った水と塩化水素が含まれていて、それらの化学変化と最終的な水の蒸発が、塩化ナトリウムの結晶を作ったという仮説を立てています。

このシナリオが正しい場合、イトカワのようなS型小惑星は過去のある時点で大量の水を含んでいたことになります。
そう、惑星形成時の水の供給にも影響した可能性があるんですねー

ただ、今回の研究だけでは、S型小惑星が過去に含んでいたかもしれない水の量を推定することは難しいので、惑星の水供給のシナリオを書き換えることには繋がりません。

でも、太陽系でありふれたタイプの天体が、過去には乾燥していなかったことを示す今回の成果は、惑星形成論に影響を与える可能性はあります。


こちらの記事もどうぞ