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これで暗いブラックホールも発見できる! ガス雲の運動を解析して見つけたのは中間質量ブラックホールだった

2019年02月25日 | ブラックホール
天の川銀河の中心付近に存在する特異な分子雲の様子が、アルマ望遠鏡で詳細にとらえられました。
この分子雲の運動の解析から分かってきたのは、太陽の3万倍の質量を持つ中間質流ブラックホールが存在しているらしいこと。

これまで存在は予測されていた中間質量ブラックホール。
今回の研究で存在するという強い証拠が見つかるのでしょうか。


決定的な証拠が見つかっていないブラックホール

多くの銀河の中心部には、太陽の約100万~100億倍もの超大質量ブラックホールがあることが知られています。

もちろん、太陽系が属している天の川銀河の中心にも、太陽の400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール“いて座A*”が存在しています。

また、大質量星が超新星爆発を起こした後に誕生する、太陽の数倍~10数倍程度の質量意を持つ恒星質量ブラックホールも宇宙には多数存在しています。

ただ一方で、存在は予測されているのですが、決定的な証拠が見つかっていないブラックホールもあるんですねー
それが、太陽質量の100倍から1万倍という中間質量ブラックホールです。

超大質量ブラックホールは、恒星質量ブラックホールが合体してできるとも考えられています。
なので、この2つのブラックホールの中間くらいの質量を持つ“中間質量ブラックホール”もあるはず。

そう、中間質量ブラックホールの研究は、どうやって超大質量ブラックホールが出来るのか? っといった疑問を解くカギになります。
さらに、ブラックホールと銀河の相互進化の理解にも役立つんですねー


銀河の回転に逆行する分子雲

国立天文台野辺山宇宙電波観測所の研究チームは2016年に、天の川銀河の中心から約20光年離れた位置に小型の特異分子雲“HCN-0.009-0.044”を発見します。

この分子雲の挙動は、銀河の回転に逆行するような特異なものでした。

そこで、研究チームが考えたのは、そこに暗い独立した“野良ブラックホール”が潜んでいて、分子ガス雲との重力相互作用の結果として特異分子雲が生じた可能性でした。

今回、研究チームは新たにアルマ望遠鏡を用いてこの分子雲を観測。
すると、それまで不明瞭だった“HCN-0.009-0.044”の詳細な構造と内部運動が明らかになります。
これまで1つだと考えられていた分子雲が、複数の構造だと判明するんですねー
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(a)東アジア天文台のサブミリ波観測装置“ジェームズ・クラーク・マックスウェル電波望遠鏡”で観測された特異分子雲“HCN-0.009-0.044”のシアン化水素(HCN)354.6GHzスペクトル線強度図。単一の構造として見えている。
(b)アルマ望遠鏡で観測された同スペクトル線強度図。内部構造が非常に詳細に描き出されている。
(c)視線速度分布図。遠ざかる速度が赤色側、近づく速度が青色側。
この構造の運動状態を調べて分かったのが、速度の変化パターンが軌道回転運動をしている天体に典型的なものだということ。
そのような回転運動を生み出す「見えない重力源」が存在していることを強く示唆する結果でした。

観測データの解析とモデル計算により、2つの構造は共通の重力源を中心とした異なる楕円軌道上を運動していて、その重力源の質量は太陽のおよそ3万倍であると求められます。

軌道と重力源との距離は0.2光年程度と非常に小さいので、“HCN-0.009-0.044”の中に存在する重力源はコンパクトで大質量な天体になります。
そう、中間質量ブラックホールだと考えるのが妥当なんですねー
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(a)観測された視線速度分布図、(b)モデル化された視線速度分布図。
赤い★のところにブラックホールが存在している。


ガス雲の運動の解析でブラックホールの存在が分かる

“いて座A*”の近傍に発見された中間質量ブラックホールは、将来的に超大質量ブラックホールに飲み込まれて、その成長に寄与する可能性があります。

超大質量ブラックホールや銀河の研究という点において、中間質量ブラックホールの発見は、それ自体が重要な意義がある成果なんですねー

さらに注目すべき点があります。
それは、今回発見されたブラックホールが暗いという点です。

理論予測によれば、天の川銀河内には大小含め少なくとも1億個以上のブラックホールがあると考えられています。
でも、そのほとんどは伴星からの物質供給が十分ではないので暗く、降着円盤からの明るい放射を検出するという従来の方法では発見が困難でした。

今回の研究成果は、運動するガス雲の検出が暗いブラックホールの探査に有効な手段であることを示すものになりました。
  研究チームはこれまでにも、
  “いて座A*”から約200光年の位置に10万太陽質量を持つ、
  中間質量ブラックホールの候補天体を発見している。


今回の研究と同様に、異常な速度を持つ分子ガス雲に注目していけば、これからも続々とブラックホールの候補天体を発見できそうですね。
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ガス雲を振り回す中間質量ブラックホール(イメージ図)


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アポロ14号によって月から持ち帰えられたのは地球最古の岩石かもしれない

2019年02月23日 | 月の探査
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約50年前にアポロ14号の宇宙飛行士が地球に持ち帰った月の石。
分析してみると地球ではよく見つかる物質が見つかったんですねー

この石は月面で見つかることは非常に珍しいもの。
なので、40億年前の天体衝突によって地球から飛び出し、月に到達したものかもしれないそうです。


酸素のある環境で結晶化した物質

48年前のこと、アポロ14号の月探査で岩石のサンプルが地球に持ち帰られました。
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1971年2月に月面で作業を行うアポロ14号の宇宙飛行士。
今回の研究で分かってきたのは、この岩石が元々は地球で作られたものである可能性でした。

スウェーデン自然史博物館の研究チームによる分析で見つかったのは、質量2グラムの岩石の破片中に石英や長石、ジルコニウムといった物質。
これらはいずれも地球ではよく見つかるもの。
でも、月面で見つかることは非常に珍しい物質なんですねー

化学分析から示されたのは、この破片が地球のような酸素のある環境で結晶化したものだということ。
月の奥深くのマントルで形成された可能性もあるのですが、地球で作られたと考える方がシンプルですね。
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今回、分析用のサンプルが採取された月の石。
矢印の先が地球で形成されたと考えられる珪長岩。


なぜ月にあったのか?

研究チームが考えるシナリオは次のようなものです。

まず、40億年前から41億年前に、岩石が地球の表面から約20キロの深さのところで結晶化。
その後、小惑星や彗星のような天体の衝突によって地表が掘り起こされ、岩石が地球から飛び出し月に到達します。

当時の月は今よりも地球に近いところにあり、その距離は現在(約38万キロ)の3分の1しかありませんでした。

月に到達した地球由来の岩石は、月への天体衝突によって部分的に融け、月の地下へと埋められることになります。

そして、長い年月を経た後、今から約2600万年前にこの岩石が埋まっているあたりに小惑星が衝突し、直径340メートルのコーンクレーターを形成。
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画像中の一番左にある“ALSEP”は月面上における各種実験装置群、
その右が着陸船“アンタレス”の下降段。
さらに右上のコーンクレーターまで、宇宙飛行士が歩いた跡が細い筋になっている。
48年前の1月31日に月面に着陸したアポロ14号の探査で“月の石”のサンプルを採取したのが、まさにこのコーンクレーターだったんですねー
コーンクレーターが選ばれたのは月の地下に眠る物質が露出していて、貴重なサンプルが採取できると考えられたからでした。

“冥王代”と呼ばれる、今から40億~46億年前(地球誕生から5~6億年間)の地球で、この岩石が誕生したという考えは理にかなっているのですが、議論の余地も大きいんですねー

もし、正しいということになれば、月で同様の岩石がもっと見つかるはず。
今後の探査や研究が楽しみですね。


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探査機“はやぶさ2”が小惑星リュウグウへのタッチダウンに成功!

2019年02月22日 | 小惑星探査 はやぶさ2
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昨年の6月から小惑星リュウグウを探査中のJAXAの探査機“はやぶさ2”が、サンプル採取のためリュウグウ地表への最初のタッチダウンに挑みました。

“はやぶさ2”がリュウグウ上空20キロのホームポジションから下降を開始したのは2月21日午後。
翌22日6時頃には高度約500キロの位置に到達します。

そして、着陸実施の最終判断により完全自立運転に移行しタッチダウンへ。

“はやぶさ2”は、7時30分頃にリュウグウの赤道上にある着陸地点“L08-E1”に接地し、弾丸を地表に発射して舞い上がった地表物質を採取。
その後、すぐに離脱上昇に転じることになります。
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2月22日7時30分頃、タッチダウン直後に“はやぶさ2”が撮影したリュウグウの地表。
中央付近の灰色の領域は、タッチダウンにより変色した部分で、
スラスターや弾丸で舞い上がった砂による可能性も指摘されている。
7時48分、プロジェクトチームは“はやぶさ2”が予定通り上昇を開始したことを受信電波から確認。

さらに、8時42分には地表サンプル採取のための弾丸発射コマンドが送信されたこと、“はやぶさ2”が正常な状態だと確認され、タッチダウンが成功したと判断されたんですねー
その後、上昇を続けホームポジションに戻るそうです。

この後、“はやぶさ2”に待ち受けているのは、地表にインパクターをぶつけてクレーターを作り、宇宙風化を経ていない地表下の物質を採取するとうミッション。
この世界初の難関ミッションは年内予定されていて、サンプルを携えて地球への帰路に着くのは2019年の末予定。

まだまだ、“はやぶさ2”のミッションから目が離せませんね。


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偶然発見されたのは、他の銀河から孤立している宇宙の年齢と同じくらい古い銀河。

2019年02月18日 | 銀河・銀河団
今回は、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像のお話し。
球状星団の年齢を調べるために撮影した画像に、未知の銀河が埋もれていたそうです。

偶然発見されたのは、はるか彼方にある矮小楕円体銀河と呼ばれる種類のもの。
他の銀河から離れて孤立している古い銀河らしいです。


偶然撮影されたのは未知の矮小銀河

ハッブル宇宙望遠鏡の高性能掃天カメラで、くじゃく座の方向約1万3000光年の距離にある球状星団“NGC 6752”を撮影したところ、星団の外縁部に密集した星の集団が見つかったんですねー

見つけたのは、イタリア・国立天体物理学研究所のパドヴァ天文台の研究チーム。
球状星団“NGC 6752”の年齢を調べるための撮影でした。

研究チームでは、この星々の明るさや温度を注意深く分析。
すると、これらの星は天の川銀河の一員である球状星団“NGC 6752”に属するものではなく、球状星団のはるか彼方にある未知の矮小銀河だと分かります。


他の銀河から離れて孤立している銀河

“Bedin I”と名付けられたこの矮小銀河の直径は約3000光年。
天の川銀河(直径約10万光年)の数十分の1しかなく、細長い形状をしています。

明るさは非常に暗く、これらの特徴から“Bedin I”は“矮小楕円体銀河”に分類されます。
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矮小楕円体銀河“Bedin I”が見つかった球状星団“NGC 6752”。
(下)地上望遠鏡で撮影された“NGC 6752”の全体像、
(右上)“NGC 6752”の一部をとらえたハッブル宇宙望遠鏡の写野、
(左上)“Bedin I”の拡大画像。
“矮小楕円体銀河”の特徴は、輝度が低く大きさが小さいこと、そしてチリがほとんど存在せず、年老いた星々で構成されていることです。

天の川銀河が属する“局部銀河群”でも、これまでに36個の“矮小楕円体銀河”が見つかっていて、そのうち22個は天の川銀河の伴銀河でした。

“矮小楕円体銀河”は珍しい銀河ではないのですが、“Bedin I”には注目すべき特徴があります。
それは、距離がはっきり分かっている数少ない“矮小楕円体銀河”の1つであり、しかもほかの銀河から極端に離れて孤立しているという点です。

“Bedin I”は天の川銀河から約3000万光年離れていて、母銀河と思われる銀河“NGC 6744”からも200万光年も離れています。
これまでに見つかっている矮小銀河の中で、最も孤立している銀河なのかもしれません。
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ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“Bedin I”。
さらに、この銀河に含まれている星の特徴から分かってきたのは、この銀河の年齢が約130億歳だということ。
そう、宇宙の年齢と同じくらい古いことになります。

他の銀河から離れて孤立しているので、他の銀河とは誕生以来ほぼ相互作用をしたことがないとなると、“Bedin I”は初期宇宙の「生きた化石」と呼べる存在になるんですねー

ハッブル宇宙望遠鏡の画像に“Bedin I”のような暗い天体が写ることはほとんどありません。
しかも、ハッブル宇宙望遠鏡の視野が非常に狭いことを考えると、今回“Bedin I”を発見できたのは極めてまれなことになります。

今回の発見は偶然でしたが、将来、NASAの広視野赤外線サーベイ望遠鏡“WFIRST”のような視野の広い望遠鏡が稼働を始めれば、天の川銀河のお隣さんになるこうした矮小銀河がもっと発見されるのかもしれませんね。


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“はやぶさ2”の小惑星リュウグウ着陸はほんの少し、表面に数秒間接地してサンプルを採取するようです。

2019年02月16日 | 小惑星探査 はやぶさ2
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地球を出発して4年も航海を続けてきたJAXAの小惑星探査機“はやぶさ2”。
2月22日の朝8時頃に小惑星リュウグウに着陸することが決まったんですねー

岩の少ない地点に確実に着陸するため採用されたのは、先代“はやぶさ”とは違う誘導方法でした。
サンプルの採取は、表面に数秒間接地して行われるようです。


水や有機物が多く存在する小惑星の探査

2003年に打ち上げられ小惑星イトカワの探査を行い、そして2010年に地球へのサンプルリターンを成功させた探査機“はやぶさ”。

その“はやぶさ”の後継機として、2014年12月3日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット26号機で打ち上げられた探査機が“はやぶさ2”です。

“はやぶさ2”のミッションは、搭載された観測機器を使って小惑星の探査を行い、砂などのサンプルを採取して地球に持ち帰ること。

観測データや、持ち帰ってきたサンプルを地球上で分析し、“はやぶさ”や他の小惑星・彗星探査機が得たデータと比較することで、太陽系の起源や進化、生命の原材料を探求することを目指しているんですねー

目的地のリュウグウと呼ばれる小惑星は、有機物や含水鉱物をより多く含んでいると考えられている“C型”という種類の小惑星です。
先代の“はやぶさ”が探査した“S型”小惑星イトカワと比べ、より始原的な天体になります。
  赤外線天文衛星“あかり”が実現した、探査に行かなくても小惑星に水が存在するかを知る方法
    


岩が少ない場所への安全な着陸方法

小惑星リュウグウへの第1回タッチダウン(TD1)に向けて、探査機の運用チームでは候補地を慎重に検討してきました。
それは、岩が多くあるリュウグウの表面に“はやぶさ2”を安全に着陸させるためでした。

1月の段階で絞られていた候補地は、リュウグウの赤道部分にある“L08-B1”と“L08-E1”という2つの地域。

そして、最終検討で決まったのが、10月の着陸リハーサルで投下したターゲットマーカーに近く、岩がより少ない“L08-E1”への着陸でした。
広さは“はやぶさ2”の太陽電池パネルの幅とほぼ同じ直径6メートルほどあるようです。
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“はやぶさ2”の着陸地点。
ピンクの正方形“L08”の中にある赤い四角形が最終的に決まった着陸地点“L08-E1”。
この狭い場所に確実に着陸するために用いられるのは、“ピンポイントタッチダウン”と呼ばれる誘導方法。
この方法は、すでにリュウグウ表面に投下済みのターゲットマーカーをカメラの視野内に捕捉し続けることで、マーカーから指定の距離・方向にシフトした場所へ着陸するというもの。

当初予定されていたのは、着陸のための降下中にターゲットマーカーを投下して、落ちていくターゲットマーカーをカメラの視野中心にとらえ続けることで、マーカーの真上に着陸するという方法でした。

これは初代“はやぶさ”と同じ誘導方法です。
でも、この方法だと誘導精度がターゲットマーカーの投下の精度で決まってしまうので、±数メートルという高い誘導精度を実現するのは難しいんですねー
そこで採用されたのが、“ピンポイントタッチダウン”でした。
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着陸地点付近の拡大図。
当初最有力候補とされていた“L08-B”(白い円)の中にある着陸候補地“L08-B1”(赤)と、
そのそばにある着陸候補地“L08-E1”(緑)。赤やピンクの楕円が着陸の妨げになり得る岩塊。
左下は地図と同じ縮尺で描かれた“はやぶさ2”の機体。
“TM”は10月25日に投下したターゲットマーカー。


着陸は2月22日の8時15分ころ

現在の計画では、“はやぶさ2”は2月21日8時32分に高度20キロのホームポジションから降下を始め、翌22日の8時15分にリュウグウに着陸。
表面に数秒間接地してサンプルを採取してから上昇します。
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着陸の約50分前から約7分後までは、機体の姿勢を地形に合わせて傾ける必要があります。
なので、この間は“はやぶさ2”の高利得アンテナ(HGA)は使えず、地球から探査機の状態や画像などを受信することができないんですねー

それでも、探査機の速度が変われば電波の波長がドップラー効果で変わることを利用すれば、探査機が下降から停止、上昇に転じたことは確認できるようです。

上昇後に高利得アンテナを再び地球に向け、第1回タッチダウンが計画通りに行えたかをデータで確認できるのは9時頃になるようですよ。
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“はやぶさ2”のタッチダウンの流れ。高度45メートルまで降下したところでいったんホバリングして、
表面のターゲットマーカーをカメラで捕捉する。
補足できたら高度8.5メートルまで下降し、ここで探査機の姿勢を地形に合わせて傾ける。
そのままの姿勢でターゲットマーカーの真上から水平に移動して、
最後にスラスターを噴射して放物運動するように下降して着地する。


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